最強陰陽師の幼なじみ   作:紅ヶ霞 夢涯

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第2話 私(の式神)は知っている

 

 最近鵜宮の皆を見ていない。

 天馬だけなら珍しくもないが、泉里さんが無断欠席なんて珍しいなんてもんじゃない。

 

 心配だったが、何をするにしても今更だった。

 

 

 

 

 

 本日は気分が優れないので学校に休む旨を伝え、適当に霊符を弄って時間を潰し、絶賛暇を満喫していた頃に士門君から電話が掛かってきた。

 それだけでも意外なことだというのに、しかもその内容は「天馬や他の鵜宮家の方々のことを知らないか?」というものときた。

 

「天馬はともかく他の方々ですか?」

 

 とりあえず、私は何も知らないということにする。

 

 何で十二家の彼が一介の学生に過ぎない私に鵜宮のことを聞いてきたのかは分からないが、士門君の知らないことを私が知っていたら、何かと面倒だ。

 

「ああ。今日も誰も学校に来ていないんだ。何か知っていることとかがあったら教えて欲しい。頼む」

 

「…………少し待って下さい」

 

 最初は「何も知りません」と言って切ってやろうと思っていた。

 

 思っていたのだが、気が変わった。

 

 私はどうせその内戻ってくるだろうと思っていたし、学校のほとんどの人が未だそう思っているだろう。

 

 けれど、彼は違った。

 彼は、斑鳩士門は本気で皆のことを心配している。そう、思った。

 

 彼が今更何を知ったとしても無意味だし、彼が今更何をしようとしたところで手遅れなのだろうが、優しい士門君には少しくらいのヒントをあげてもいいだろう。

 

「憶測になりますが構いませんね?」

 

 あくまでも私の何の根拠もない、いい加減な妄想でしかないと予め言っておく。

 

「!何か知っているのか!?」

 

「憶測だと言ったでしょう。いいですか………」

 

 何があるにしろ十二家、しかも鵜宮家が組織的に動いているのだ。同じ十二家の斑鳩家の士門君に話が届かないはずはない。その士門君に届いていないのだから、まだ斑鳩家に情報が回ってないのか、情報を得ながら士門君に言っていないかのどちらかだろう。

 

「つまり、士門君は今日の夕飯くらいに峯治さんにでも聞けばいいんです。そうすればきっと何かしらの情報を得られます」

 

「……そうか。分かった。わざわざすまないな、李江」

 

「いえ、少しでも役に立てたなら私も嬉しいですし」

 

「それはともかく!お前はいつまで自宅に引き籠もるつもりだ!早く学」

 

 ブツン

 

 余計なお節介を焼かれる前に電話を切った。

  

 本当は私から答え(真実)を教えてあげることもできるが、それをまだ10歳の、しかも十二家ですらない子供が知っているというのは、流石に色々とマズい。

 

 なので、そういった大人の事情は、峯治さんから士門君に語って貰った方が私としても都合がいい。

 

 

 

 

 

「レイシア」

 

「何でしょうか、李江さん」

 

 部屋の隅で黒い棺桶のようなものを手にしている彼女に声をかけた。

 

 彼女の名はレイシア。

 アイスブルーの瞳と淡紫の髪。人生のもっとも美しい時期に入ろうとする、透き通るような表情の娘。息を呑むほどの美貌の持ち主だ。

 

 そして、私が生み出した式神だ。

 

「……どこまで分かった?」

 

「鵜宮家の皆様方の現状と、禍野と“島”がなぜできたのかという段階まで把握しました」

 

 問の“かたち”が不明瞭であったにも関わらず、彼女は明確な“かたち”で答えを返してくる。

 

 何を隠そう彼女こそが、私が斑鳩家の人間である士門君が知らない情報を知ることができた最大の要因なのだ。

 

 彼女の能力の詳細は省くが、鵜宮家の皆を見なくなった初日にレイシアには皆の捜索を命じ、彼女を生み出した当時から“島”のことと禍野のこと、その他諸々の「総覇隠陽連」の重要機密を調べさせていた。

 

 彼女のおかげで、陰陽師に関わる大体のことは分かっている。

 

「なら儀式を行っている島はどこ?」

 

「すみませんが、その情報を会得することはできませんでした。原因は鵜宮家の先祖が施した呪術的な隠蔽によるものです。これを突破するには“デバイス”のロックを解除する必要があります」

 

「そっか。流石にデフォルトじゃあ無理だよね」

 

 予想通りだ。予想通りだが、面倒だ。人間の知能を超えている彼女でも、姿形が人間である以上やれることには限度がある。

 鵜宮家が抱える島などいくつあるか分からないし、その中の一つを特定しろなど“手段を選んでいる”今だと無理だ。

 

「鵜宮の皆の捜索は断ち切って。あと“島”のことも禍野のこととかも、もういいや。その代わりに今後は天将十二家のこと、特に十二天将のことを調べておいて」

 

「受諾しました。これより過去の命令を破棄し、天将十二家の詳細を調査します」

 

「あぁ、それと新しい「貴人」が決まったら真っ先に教えて」

 

「分かりました」

 

 改めてレイシアに調べさせた情報を整理する。

 

 今、鵜宮家で行われているのは十二天将「貴人」継承の儀。

 その内容は呪術において最も有名なものの一つである“蠱毒”を、人間を用いて行うというもの。

 

 元々不思議には思っていたのだ。

 

 なぜ同じ十二天将、同じ天将十二家の中で、「貴人」を所有する鵜宮家だけが“最強”と言われてきたのか。

 

 レイシアに調べさせる前に私が立てた推論は、「貴人」が最も多く呪力を得ているから。

 まぁこれは、高い呪力を持った陰陽師は強いという、陰陽師の常識に当てはめただけのこと。

 

 その方法についても大方予想通りだ。

 そもそも高い呪力を得る方法はそんなに多くない。ならば確実に呪力を得られる“蠱毒”を行うのが最も有効的だろう。

 

 しかし、“蠱毒”をするにしたってわざわざ死人を出す必要はないと思うのは甘えだろうか。

 

 もう既に「貴人」継承の儀式は最終段階に入っているだろう。

 泉里さん、八尋、左馬之助、天馬、光ちゃん。

 他にも選ばれた人はいるのだろうけど、その中でも生き残れるとしたらこの5人の内の誰か。

 きっと誰が生き残ってもおかしくない。それでもーーー

 

「死んだりしないで下さいよ、天馬」

 

 私は天馬に生きて欲しかった。

 

 

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