最強陰陽師の幼なじみ   作:紅ヶ霞 夢涯

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 天馬ファンの方々。誠に申し訳ありませんが、しばらく天馬は出てきません。
 予めご了承願います。

 


第4話 斑鳩士門と望月李江(前)

 

 儀式が終わったのだから天馬は戻ってくるんだろうが、今すぐということはない。

 

 流石に2日連続で学校を休む気にはなれない。士門君の忠告に従うわけではないが大人しく学校に行くことにする。

 

 ザァザァと雨が降る通学路を一人傘を差して歩いているとき、士門君を見つけた。その様子は、トボトボという表現がしっくりくるほどに元気がなく、覇気がまるで感じられなかった。

 

「おはようございます、士門君」

 

「……李江、か」

 

「どうしたんですか?毎日斑鳩家のために精進している貴方がここまで意気消沈するなんて」

 

 理由など分かりきっている。

 彼は新しい「貴人」が天馬だと知って、同時に他の人たちが死んだということを知った。常日頃、顔を合わせていた人物、それも士門君が尊敬していた人たちの死は、彼の心に堪えたことだろう。

 しかし、彼はそれを私に言うつもりはない。

 私が何も知らないと思っているのだから当たり前だ。

 

「それは気のせいだ。そんなことより!お前は昨日また学校をサボったな!?お前も天馬もなんでそんなに」

 

 

 

 

 

「誰か知っている人でも死んだんですか?」

  

 

 

 

 

 私がそう言った瞬間に痛いほどの沈黙が耳を打ち、士門君は分かりやすいほどに動揺を表した。

 

「い、いきなり何を、言うんだ。いくらお前で、も、その冗談、は悪質が過ぎる、ぞ」

 

「士門君……」

 

 それは見ていて滑稽だ。

 

「ほら、さっさと、学校に行くぞ。今日も、一日でも早くケガレとの戦いを終わらせるために、精進しないと、な」

 

 本人は、あれで必死に誤魔化したつもりなのだろう。彼は私を見ようとせずに、足早に通学路を歩く。

 

「はぁ」

 

 士門君が色々と喋ってくれたら、私が色々と知っているのは士門君から聞いたからだという言い訳が効くのだが、なかなか思い通りにはいかない。

 これは中途半端なことでは彼は口を開かないだろう。

 

「あのですね、士門君」

 

 

 なので、もう一押し。

 

 足早に去ろうとする彼の前に回り込む。

 

「なんだ李江。言っておくが、これ以上俺はお前の戯れ言に付き合うつもりは」

 

「私の両親は、私が5つのときに死んだんですよ?」

 

 気づかれないように呪力を込めて、士門君にかけていた呪いを解く。

 

「……あっ」

 

「だから、分かりますよ」

 

 これは本当のことだ。

 

 私の両親は天馬たちと私の顔合わせを行った後に、禍野のケガレを討伐する任務を受注し、そして死んだ。

 

 今の士門君の表情はそのときの私と同じなのだ。

 

 とても辛くて、とても悲しくて、それでもこれ以上周りの人たちを心配させないように必死でいつものように振る舞った。

 

「そんなに無理をしないで下さい。まるで昔の私を見ているようで嫌になります」

 

「別に、俺は無理なんて、」

 

「分かるんですよ、士門君」

 

 ただ告げる。

 

 人が死んだとき、どういう顔をするのか私は知っているのだと。自身の身をもって知っているのだと。

 

「……………今日の放課後、少し時間を空けておいてくれ」

 

「……分かりました。放課後に士門君の教室に行かせて貰いますね」

 

 今度こそ、士門君は私を置いて学校へと歩いていった。

 

 

 

 

 そして一日が終わる。

 

 

 

 

 

<士門side>

 

 望月李江と約束していた放課後になった。

 

 学校が終わったらほとんどの人は家へと帰るので、今の時間帯に俺以外の人物は教室にいない。

 

 今朝の出来事が頭に浮かぶ。

 

 ーーー誰か知っている人でも死んだんですか?

 

 ーーー私の両親は、私が5つのときに死んだんですよ?

 

 ーーーそんなに無理をしないで下さい。まるで昔の私を見ているようで嫌になります。

 

 

 まだ俺が斑鳩の本家に引き取られる前に、風の噂で聞いたことがある。

 

「鵜宮家傘下筆頭が亡くなった」

 

 それだけの出来事だったというのに忘れていた。あいつの名前を聞いたときに思い出せず、今まで気づかなかった。

 

「私の両親は、私が5つのときに死んだんですよ?」

 

 李江がそう言った瞬間に、まるで靄がかっていた記憶が晴れるように、急速に忘れていたことを思い出した。

 

「俺はどうすればいいんだ……?」

 

 ふとそんな疑問が口を吐いた。

 鵜宮の皆が、あんなに素晴らしい人たちが殺し合いをするなんて思ってもいなかった。

 

 望月李江が鵜宮家傘下筆頭の娘なんて考えもしなかった。

 

 果たして鵜宮の皆に起きた出来事を、天馬以外が死んだという事実を、彼女に語ってもいいものだろうか。

 両親を亡くし、俺と違って親代わりになってくれる人もいない。

 これ以上そんな彼女に何かを背負わせていいのか。

 

「意外でした。士門君は案外馬鹿なんですね」

 

 声が聞こえた。

 

 バッと顔を上げて、いつの間にか教室の入り口に立っていたその人の名を呼ぶ。

 

「望月、李江……」

 

 彼女が放った言葉とは逆に、望月李江は優しい笑顔を浮かべてそこにいた。

 




 よし、千八百文字越え。
 頑張った。
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