最強陰陽師の幼なじみ   作:紅ヶ霞 夢涯

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 書き溜めしていた分の投稿は終わってしまいましたので、今後は投稿する間隔が空くと思います。
 ………ひょっとしてこれは前書きではなく、活動報告なのでは?とふと思いましたが、細かいことはお気になさらず。
 楽しんで読んでいただければ幸いです。


第6話 幼なじみ

 

 天馬の姿を探し始めてから結構歩いた。

 

 雨が止んでくれたならまだ楽に探すこともできたんだろうが、雨は降り続いていてその中で一人の人間を特定するのは難しい。

 

 少し悩んで自分の家に続く道を行くことにする。これで見つからなかったらもっと広い範囲を探そう。

 

 

 

 

 

「………………ひゃはっ、ははは」

 

 その時、微かな笑い声が聞こえた。

 

「……天馬?」

 

 振り返る。

 

 じっと目を凝らせば遠くに小さな人影が見えた。

 

 

 

 

 

<天馬side>

 

 あの人の、泉里姉さんの最期の言葉が脳裏に浮かぶ。

 

 

 

 

 

 人殺し…はねぇ~~~地獄に堕ちる…のよ?ねぇ~~~~~~どんな気分~~~っ

 

 この先…一生っ誰もっ…っあんたを…理解してくれる人間なんて現…れない!!

 

 あんたの苦悩も孤独もっひとつも理解…されない…まま“最強”…と称えられ続けるっ

 

 滑っっっっ…稽ぇ~~~~~よねぇ

 

 

 

 

 

「…ふ、はは…うひひひ、くははははっふほほはははははははははは、ふひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ」

 

 ただ笑う。

 

 笑っているはずなのに視界が滲んで仕方ない。それが自分を打ちつける雨のせいなのか、流れる涙のせいなのかも分からない。

 

 だけどただ一つ分かることは。

 

 俺の中で何か(・・)が死んだ。

 

「ひゃひゃひゃひゃひゃははは!!ひゃはははははははははははははひゃはははははは!!はははひゃひゃははははははははははははははははははははははははははは!!」

 

 

 

 

 

「こんな雨の中声を張り上げて高笑い。そんなことして何か楽しいんですか?個人の趣味嗜好に口を出すつもりなんてありませんけど風邪引きますよ?」

 

 ………え?

 

 随分聞き覚えのある声がしたと思ったら、いつの間にか後ろにいた人が差しているだろう傘の中に入れられる。

 

「なんで、お前が」

 

 なんで、などと言いつつ不思議な納得を覚えた。

 

 あぁーーーきっとこいつは、当たり前のように俺の隣にくるだろう。

 

 振り返ってみれば声の持ち主が呆れたような表情を浮かべていた。

 

「なんで、とは?また可笑しなことを聞きますね。まぁそんなことは後です」

 

 望月李江。

 

 俺の幼なじみがそこにいた。

 

「貴方ハンカチ一つも持っていないんですか?本当に天馬はしょうがないですね」

 

 彼女はポケットからハンカチを取り出して優しい手つきで雨に濡れた俺の顔を拭く。今更こんなことをしてもらっても風邪を引いてしまうだろうが、気休め程度にはなる。

 

「生憎と手持ちのものではこれくらいしかできませんが、まぁしないよりマシでしょう」

 

 そう言って彼女はポケットにハンカチを仕舞う。そして当たり前のように俺の手を取った。

 

 けどこのときの俺は、こいつの優しい手に触れていてはいけないと思った。

 

「李江、もうお前はっ」

 俺に構うな。

 

 だからそう言おうとしたのに、言おうとした瞬間に李江が人差し指を伸ばして俺の口に当てた。

 

「とりあえず私の家に行きますよ」

 

 まるで全て分かっているという風な顔をして、李江は俺の手を強く握る。

 

「話はそれからです」

 

 こんなときなのに、俺は李江の澄んだ瞳が綺麗だと思った。

 

<天馬side終>

 

 

 

 

 私はあくまでもいつも通りに天馬に接した。

 

 別にこれから天馬に向けて優しい言葉をかけようと思ったわけでも、天馬を甘やそうと思ったわけでもない。

 

 それでも私には今の天馬を放っておくことなどできなかった。

 

 だからというわけではないけれど私は天馬を自宅へと連れて帰ることにした。

 

 そのことに何か言ってくるかと思ったが、意外なことに天馬は文句も何も言わない。私も特に何も言おうとしないので帰り道は沈黙に包まれている。

 

 だが唐突に天馬が私に話かけてきた。

 

「……なぁ李江。少しいいか」

 

「……珍しいですねぇ、天馬がそんな風に遠慮するなんて。遠慮なんかすることありませんよ。質問でも何でも言うだけならタダです」

 

 本当に珍しい。天馬が遠慮するなどらしくないにもほどがある。

 

 どれだけ「貴人」継承の儀式“蠱毒”の影響を受けているかは分からないが、どうやら思っている以上に天馬は追い詰められているらしい。

 

 その証拠とは言えないかもしれないが、さっきは手を放そうとした天馬が、まるで縋るように私の手を握って放さない。

 

「……何でお前は、俺のところに来たんだよ。こんな雨なんだから普通は家の中にいるもんだろ」

 

「改まったと思ったら何だ、そんなことですか」

 

「そんなことって何だよ」

 

 天馬は不満そうに口を尖らせる。

 私にとっては割とどうでもいいことだが、天馬にとってはそうでもないのか。

 

 少し嬉しいようで複雑だ。

 

「笑ってねえで答えろよ、李江」

 

 どうやら知らない内に笑っていたようだ。

 笑っていることを指摘された私は天馬に微笑んだ。

 

「あぁ、すみません。といっても今のは天馬が悪いですよ」

 

「俺が?」

 

 うん。どう考えても今のは天馬が悪い。

 

 だって。

 

「だって貴方は私の幼なじみでしょう?」

 

「……………………は?それだけ?」

 

「はい、それだけです。今更そんな当たり前なこと聞かないで下さい」

 

「……ふぅん」

 

 それ以降会話はなくなったが、少しだけ天馬の纏う雰囲気が軽くなったと思う。

 




 
救うことなどできなくとも、せめて寄り添うくらいは、ね?
 それくらいは許して下さい。
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