最強陰陽師の幼なじみ   作:紅ヶ霞 夢涯

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 前回は深夜テンション?なる勢いで書きました。申し訳ない限りです。
 こういうときに、反省すれど後悔なし、とか言うのでしょうか?

 どうでもいいですよね。


第7話 宣戦布告

 

 私が天馬を連れて帰ることなどレイシアに伝えた覚えはないが、そんなの彼女にとって予想通りの出来事だったのだろう。

 

 インターフォンを鳴らしたわけでもないのに家の玄関を開けたら、当たり前のようにレイシアが私と天馬を出迎えた。

 

「お帰りなさい李江さん、天馬さん。大分濡れてしまっていますね」

 

 あらかじめ彼女によって用意されていたバスタオルが私と天馬に渡された。

 

「ありがとうね、レイシア。はい、天馬もどうぞ」

 

「………悪い」

 

 バスタオルを受け取って体を拭く。その際気づいたが、雨のせいでピタッと服が張り付いていて体が透けてしまっていた。

 

 一度手を止めて天馬を見る。

 

 慌てて顔を背けていたが、その顔は若干赤くなっている。

 

「………何見てるんですか」

 

「い、いや見てない見てない」

 

「嘘はよくないですよ」

 

 これだと家に帰ってくるまでに見られているだろうから、今更慌てたりしない。ある程度水分を拭き取り終わったらレイシアにタオルを渡し玄関に上がる。

 

「それじゃあ私は部屋で着替えてくるので。レイシアは天馬に着替えを用意してあげて下さい」

 

「分かりました。食事の準備はその後にでもやっておきます」

 

「頼みますね」

 

 そして自分の部屋に行こうとしたときに、天馬が声をかけてきた。

 

「………李江」

 

「はい?何ですか天馬?」

 

 天馬は何か言いたそうにしていたが、結局「何でもない」と言ってレイシアと一緒に居間に行ってしまった。

 

 何を言おうとしたのか少し気になったが、今の天馬から無理に聞くのもなんなので私はさっさと着替えようと思って部屋に向かった。

 

 

 

 

 雨で濡れた服を洗濯籠に放り込み中を覗く。男物の服が入っているので、天馬は先に着替え終わっているのだろう。

 

「待たせてごめんね、レイシア。ちょっと着替えに手間取っちゃった」

 

 やっぱり和服の着付けは難しい。こうして一人で出来るくらいには慣れたものだが、レイシアにやってもらう方が楽でいい。

 

「あれ?天馬は?」

 

「あぁ。天馬さんならそこに」

 

 どうやら天馬は居間のソファーに寝転がっているらしい。私とレイシアの会話が聞こえたのか、ソファーの裏からひらひらと手を振ってきた。

 

 レイシアが台所で夕食の準備をしているのを見て、私は居間に置いてあるソファー……………は、天馬が占拠しているので床に無造作に放られている座布団を引き寄せて座った。

 

「で、天馬。貴方がここ数日何をしていたかですが」

 

「うっせ~。てめぇには関係ねぇだろ」

 

 仰向けに寝転んでいた天馬はゴロリと体を動かして私に背を向ける。その背中から感じるのは拒絶。拒絶ではあるのだが、何だか違和感がある。

 

「?まぁ、言いたくないなら無理に聞くようなことはしません。ただ私から一つ言いたいこと、というか元傘下筆頭の娘として言うべきことがあってですね……」

 

 

「「貴人」継承おめでとうございます」

 

 

 

 

 

<天馬side>

 

 ーーーあぁ、やっぱり知ってたか。

 

 寝転がった体勢からゆっくりと起き上がってソファーに座り直し、幼なじみに目を向ける。

 

 考えればこいつがそれを知っていて不思議なことなんて何もない。

 忘れがちだがこいつは鵜宮の傘下筆頭だった人たちの娘だ。今は他の奴が傘下筆頭をやっているとはいえ、新しい「貴人」を選ぶ、なんてこと教えないわけがない。

 

「何で知ってる、とか聞かれる前に言いますけど士門君から聞きました」

 

 そう思ったのだが全然違った。

 

「は?あいつから?鵜宮の人間から聞いたんじゃねぇのか?」

 

「逆に何で鵜宮の人たちから聞いたと思ったんですか。確かに私の両親は凄い陰陽師だったわけですけど、今の私はただの小学生なんですよ」

 

「………それもそうだな」

 

 言われてみればそんな気がする。

 

「だったらお前は、「貴人」を選ぶ儀式がどんなもんか」

 

「ええ、勿論知ってます。“蠱毒”でしょう?」

 

 何を当たり前のことを、という風に李江は答えた。

 

 つまり俺が人を殺していると知った上で、李江はいつも通り俺に話しかけたのか。

 

 思わず顔が歪んだ。

 

 こいつは優しい。本人に言ったら間違いなく否定するだろうが、人殺しの俺の手を取ってくれたのだから。

 

「天馬?」

 

 突然立ち上がった俺の名前を呼ぶ幼なじみに声をかける。

 

「もう、俺に構うな」

 

 俺は今後鵜宮家当主として、最強の陰陽師「貴人」として戦い続けることになる。

 これから俺は当たり前のように高難度の任務を受けるだろう。それは俺の近くにいる奴が一番死ぬ可能性が高くなるということだ。 

 

 そんな単純なこと、李江が分かっていないはずないのに。

 

「言いたいことはそれだけですか?」

 

 何でこいつはこう言うんだろう。

 

<天馬side終>

 

 

 

 

  

「もう、俺に構うな」

 

 何を考えて天馬がそんなことを言ったのかは分かる。

 

 しかしよりにもよって私に向かって「構うな」など。

 

 

 いい度胸している。

 

 

「言いたいことはそれだけですか?」

 

 私は座ったまま天馬を見上げて、一度視線を外した。

 

 胸の内に溢れる感情を出さないようにゆっくりと口を開く。

 

「……天馬が何を考えているかはだいたい分かります。今後貴方と、最強の陰陽師「貴人」と一緒だと色々と危ないでしょうね。もしかしたら死んでしまうかもしれません」

 

 生憎とそれが分からないほど私は子供ではないし、同じく天馬を放っておけないという理由だけで、天馬の発言を否定するような子供でもない。

 

「だったら……、何でお前はそんなこと言うんだよ!分かってんだろ!?俺の近くが、俺が危険なんだ!!だからっ……」

 

「だから自分の側に居るなと、そう言うんですか?本気で呆れましたよ天馬!前々から馬鹿だ馬鹿だとは思ってましたけどここまでとは思いませんでした!!」

 

 だが、自ら進んで独りになろうとする愚かな幼なじみに怒るくらいには私は子供だったらしい。

 

 バンッ

 

 机に両手を叩きつけて勢いよく立ち上がり、腕を組んで深呼吸をした。ここで天馬と子供じみた言い争いをしたところで、天馬は考えを改めたりしないだろう。

 

「いいですか、天馬。これから私が言うことに一切口を挟まずに、最後まで聞いて下さい」

 

「あぁ?いきなりなん「いいですね?」……分かったよ」

 

「ありがとうございます」

 

 天馬はソファーに座り直し私はその横に腰を下ろす。そのとき天馬がササッとソファーの端に寄ったのに少し苛っとしたが、わざわざ突っ込むようなことはしない。

 

「とりあえずはっきりさせておきますけど、天馬。私は貴方の気持ちなんて分かりません。その辺り、勘違いしないで下さい」

 

 そこで天馬がなぜ意外そうな顔をするのか分からない。まぁ私の言うことに納得してくれたように見えるので、一先ず置いておく。

 

「……李江?」

 

 不思議そうに天馬が私の名を呼ぶ。

 

「……貴方の側が危ないと思っているのなら、自分のせいでこれから人が死んでしまうと、そう思っているのなら」

 

 他に言うべきことがあるはずなのに、言いたいことはたくさんあるはずなのに。

 

 私はそんなことを口走っていた。

 

 何言ってるんだろうなぁ私、なんて思いながらも私は天馬に向けての言葉を止めない。

 

「ーーー私がずっと側にいます。貴方の考えが間違いだと、私の一生を使ってでも分からせてあげましょう」

 

 隣にいる天馬の手を握る。もしかしたら放されるかもしれないと思ったが、天馬は遠慮がちに握り返してきた。

 

 そして弱々しく口を開く。

 

「……俺は泉里姉や他の奴らを殺してここにいる。こんな俺の側にいたら、絶対に不幸になる」

 

「それこそ知ったこっちゃありません。未来のことなんて分かりっこないんですから、そんな心配したところで無意味です」

 

「でも、それでも……」

 

「そもそも陰陽師やるなら今更なんですよ、危ないなんて。だから天馬。貴方が何と言おうと私は貴方の隣にいます」

 

 

「私が貴方を、いつまでも“最強”(独り)でいさせてやるもんですか」

 

 それは十二天将「貴人」への宣戦布告。

 私からのそれを天馬は………。

 

 

 

 

 

「ーーーはっ」

 

 笑って受け取った。

 その顔に浮かんでいるのはいつもの笑み。

 

 

「ーーーやれるもんならやってみろ」

 

 

 天馬は強気に言い放つ。

 そこから感じられるのは、すでに己こそが“最強”であるという自負。

 

 これ以上の言葉は私たちに必要なかった。

 

 私はいずれ天馬を超える。

 

 天馬はその挑戦を受ける。

 

 今はそれで良かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お話が済んだところで」

 

 見計らったとしか思えないタイミングでレイシアが声を上げた。

 振り返ってみれば、彼女は湯気が立つ鍋を両手に持っている。それを軽く掲げて彼女は言った。

 

「ご飯にしましょう」

 

 そこからのことは語らないが、ただ、私と天馬の関係は変わらない。

 

 それだけは言っておこうと思う。

 

 




 
 正直に言いますと、最後の数行をやりたかっただけです。
 さて、次回辺りから頑張って戦闘シーンを入れていこうと思います。
 これからも私の自己満足で投稿しますが、お付き合い願います。
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