どうも、紅李江です。
正月も本格的に終わってしまいとても残念に思います。
私が現実に絶望しないうちに新しい幕でも上げてしまいましょうか。
私の前にいる人の名は外院周助。
泣き黒子があり、長い髪でクールな見た目が特徴。現在の鵜宮家傘下筆頭を務めている人物でもある。
なぜ外院さんの紹介をしているのか。それは
『それではこれより!鵜宮家傘下筆頭の座を賭け、外院周助様と望月李江様による勝負を行います!』
こういうことだ。
外院さんも私も黒い狩衣を着ていて、外院さんは刀、私は剣。それぞれの得物を持っている。
そんなフル装備の私たちがいるのは、二年に一度開かれる御前試合、その舞台である波達羅盈城という闘技場だ。そこにある観客席は全て埋まっていて、現十二天将の面々、更に私たち陰陽師のトップである隠陽頭までいる。
天馬が鵜宮家当主となって早三年。私、望月李江は中学生になっていた。
何でこうなったのだったか。
私は現実逃避するつもりで過去に意識を馳せた。
青陽院。
そこは
そしてその中等部の校舎に私と天馬、あとついでに士門君もいた。
「飛び級とか……本気でやる人いたんですね~。私はとっても意外に思います」
「ホントだよなぁ。飛び級なんか出来るにしたって普通はやろうなんて思わねぇよなぁ。んん?」
「お前たちは揃いも揃って俺に喧嘩売っているのか?そうなのか?」
そう。何を思ったのか士門君はまだ小6なのに、飛び級して私たちと同時に青陽院に上がったのだ。
そして、学年という区別がない青陽院において私たちは当たり前のように、成績優秀者が集められる一組に在籍している。
「そういえば次の授業って何だか分かります?」
「さぁ?別に何でもいいだろ」
「いいわけあるか!いいか、次は実際に術を使う訓練だ。学校の時間割くらいちゃんと把握しておけ」
「なるほど。それで教室に私たちしかいないんですか」
「「ん?」」
私が言ったように教室には私たちしか残っていなかった。懐から懐中時計を取り出し、時間を確かめたところでチャイムが鳴った。
どうやら私たちの遅刻は確定したらしい。
場所は変わって体育館。
私たち以外の一組の生徒は、チームになってすでに訓練を始めていたようで、すでに終わっているチームもある。
「鵜宮ぁ!望月ぃ!誰がいないと思ったらまたお前たちかぁ!いい加減にしろぉ!」
「先生、士門君もですよ?」
「誰のせいだと思っているんだ」
「相変わらずうるせーなぁ、あいつ」
基本的に人の名前も顔も覚えない天馬が覚えているほどに印象的な人物。だが印象的といった割には、これといった特徴があるわけでもなく、どこにでもいるような平凡な顔だ。
なら何で覚えているかというと。
「まさか青陽院の中等部にまで来て、この顔を拝むことになるとは思いませんでした」
その教師は私、そして天馬がサボって遅刻して来る度に怒鳴りつけてきた人だった。ほとんど毎日顔を合わせていたのだから顔を見たら分かる。
「鵜宮に望月。ついでに斑鳩、か。お前ら……」
何を思いついたのか、その教師は私たち遅刻組を眺めてニヤリとした。
「特別メニューだ」
体育館の中央に私たちが立っていて、その他の中等部の生徒は端に寄っている。そして私たちから少し離れたところにケガレを模した式神がある。
それを三人で協力して倒す、というのが私たちに課せられたペナルティーだった。
「意味あんのかぁ?んん?」
「この程度なら余裕だな」
「手こずる要素無しです」
無駄にデカい式神を見て各々が好き勝手に感想を述べる。そもそもこの程度で躓くようなら、私たちは一組に籍を置いてない。
「私が両手足。その後に天馬が胴体を。最後に士門君が頭部をやって下さい」
「あ?俺一人で十分だろ」
「三人で協力しろって条件がないならそれでいいんですけどねぇ。まぁ、数少ない天馬が協調性を学ぶ機会です。単純作業以外の何でもありませんが、有効利用しましょう」
「どうやって倒すかはもう決めているんだ。早く終わらせるぞ」
もう“裂空魔弾”用の石を構えている士門君が私たちを急かす。いつの間にか天馬も石を出して、手のひらで転がしていた。
「それじゃあ士門君、詠唱開始。すぐに貴方の出番になりますからね」
ジャラッと手に持つ石は2つ。
「み恵みを受けても背く
士門君がそこまで詠唱してから、私は手にある石に呪力を込めた。
「『裂空魔弾』」
本来の呪文のほとんどを省いたそれだけを唱えて“裂空魔弾”を放った。
そして途中で“裂空魔弾”同士を衝突させて計4つとする。4つに分けた“裂空魔弾”は狙い違わず式神の両手足を破壊した。
「ズドオオオオン!」
その直後に呪文を必要としない天馬が放った“裂空魔弾”が大きな胴体を破壊する。
「裂空魔弾、救急如律令!」
最後に一番小さな頭部を士門君が打ち抜いた。
バンッ
音を立てて式神が消えた瞬間に上がる歓声。
「まっ、こんなもんだろ」
「手応えなかったな」
「楽勝でしたね」
授業に遅れたとはいえ、見せ物のような扱いには少々の文句がある。まぁ、しょうがないといえばしょうがないだろう。
私にはこれといった肩書きなどまだないが、天馬は最年少「貴人」で鵜宮家当主。士門君は斑鳩家の人間だし、ごく最近に飛び級したことで有名になった。
学院側は、この二人中心に学院全体が盛り上がることでも期待しているのだろうか?
仮にそうだとしてもどうでもいいことである。
「天馬。今日ちょっと貴方の家に行かせてもらっていいですか?」
「んん?そりゃ別に構わねぇけどよ。何か用でもあるのか?」
「はい。少し」
私は天馬に笑いかけながら言った。
「今の鵜宮家傘下筆頭を務めている方に用がありまして」
戦闘描写を描いたつもりなのですが初戦闘にしては大変地味なものになってしまいました。分かっていたことですが、やはり難しいものですね