天元の道、一つの夏が通る   作:楓の

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新年、明けましておめでとうございます。
まさか、年明けてからしか投稿できないとは思わなかった(困惑)

福袋はまさかのスカディ2体目、呼符で新セイバー一発抜き。これは幸先いいですねぇ


漆の太刀

 竹林の中、いくつもの火花がほとばしる

片や二振りの刀が振るわれると、片や一本の槍がその斬撃をいなし女剣士の懐に一撃を入れようとする。しかし、それも体をずらすことによって槍が空気を貫いた

 

 師匠の動きをいつも見てきた俺と、人類最後のマスターであり数多の戦闘を見続けてきたリッカの二人は、彼らの動きは視認こそ出来ているが、それに反応、ましてや乱入なんて出来なかった。武器なしの俺は言うまでもないが、本来サポート役である筈のリッカでさえ魔術をかけるタイミングを見失っている。

 神速の槍と対等に渡り合うには絶え間なく刀をふり、動き、また刀を振る動作そして自身の移動も高速で行うことや、竹林という障害物がまばらに散らばっているのが原因となっていた。

 

 

「リッカ、あれなんとかならないのか!?」

 

「無理!!確かに私のサーヴァントなら対抗出来るかもしれないけど、いつもと違って正規で呼べる訳じゃないから!」

 

 

 いまこの場所にいるリッカは夢でこの場所に現界しているので、マシュという後輩の楯から経由されるカルデアの召喚方法では夢の世界での召喚は不完全なものになってしまう。しかし、この世界のはぐれサーヴァントや俺みたいなリッカと同じ別世界の存在やサーヴァントもどきならば契約可能であり、本来の召喚と同等の力が出せる。しかし、俺は契約によって力自体は増幅しているが、武器はないのであれ(超高速戦闘)に介入する余裕はない。

 

 

(せめて、武器さえあれば……)

 

今の自分は、無力だ

 

 

 

 

□□□

 

 

(この神槍使いめ、さらに速度を上げてきてるわね!?)

 

 先の競争で見た胤舜の側面とは力も槍の性格も変わっているが、一番の変わりようを見せているのは槍の速度である。この槍使い、こちらが大振りするとすかさずカウンターを狙い、首を落とそうとしてくる。そのカウンターは的確に急所を、さらには一度トップスピードに入られたらこちらに防ぐ手段がないので大振りが出来ない。

 必然的にこちらは大技は放てず、牽制を行いつつ隙を探って行く戦闘になってしまう。

 

一手、二手、三手と先を読み相手にダメージを与えようとしても、その読みを読まれていたかのように槍でいなし、ついには反撃をも許してしまう場面が出てくる。さらには、竹林というフィールドが両者の手数を減らしている原因にもなっており、戦闘が開始してからずっと泥沼の状態である。

 

……だが、目が慣れてきたのか彼の戦い方に違和感を感じてきたのである。

 

 

(動きに体が追いついていない?)

 

 

 僅かにだが、槍の振り型が雑になっているのである。おそらく、胤舜が呪いか何かで狂ってしまった際の影響で、体と魂が上手くかみ合っていない。それでも一突きがここまでの驚異となるのは生前の彼の鍛錬や実践の賜物といえよう。だが、そのズレはこの均衡を破るきっかけとなってくれた。だが、そのズレもすぐに修正されてしまうだろう。

彼が最後まで抗って残してくれた機会‥‥‥無駄には出来ない。なら、私がやるべきことは一つ

 

「なら、その思い、無駄にはしない!」

 

 

タイミングを見計らい、彼が槍を突くと同時に刀で逸らしながら体を前に持っていく。彼は槍を払い距離を取ろうとするが‥‥‥

 

「あまい!」

 

「ぐぅ!?」

 

それよりも先にこちらの制空圏に捕らえる方が早く、そのまま2本目の刀で切り裂く。体と技が一致せず、それ故脆くなる瞬間が出てくる。本来の彼の槍ならばこちらも簡単に払い除けられただろうが、脆くなった瞬間を突かれた彼はいとも容易く懐に入られてしまう。

 

「ぬ、ぬぅ‥‥!?」

 

彼も流石にこのダメージは深いようで、後ろに飛び下がりながらもよろめいている。

しかし、それもすぐに姿勢を直し‥‥

 

「何の、これしきぃぃぃ!!」

 

こちらに向かって槍を振りかざしてくるが、流石にこれは雑になりすぎている。ここまでのようね‥‥

刀を一本に持ち替え、居合いの構えを取る。そして、槍が振りかざされた瞬間

 

 

ズブシュ

 

 

肉を切った感触を感じながら、刀を納めた。一体、胤舜殿に何があったのだか‥‥

 

 

 

□□□

 

 

「すげぇ‥‥‥」

 

師匠の動きを見ていて、改めてその強さを思いしった。その隣では子供二人に首が切られる瞬間を見せないようにしているリッカでさえもその凄みに言葉を失っている。

首を切られてしまっては、あの胤舜さんでさえも生きてはいないだろう。そう思い、師匠のほうに近づこうとするが‥‥

 

「‥‥うそだろ?」

 

胤舜さんの死体‥‥いや、先程まで死体だったものが立ち上がり、首を拾い頭にくっ付けて、槍を師匠の方に向けて立ち上がった。

しかも、新たな体躯をはかった?それは自分の体の性能を試したかったってことか?

 

‥‥‥ふざけんなよ

 

「あいつ、ゆるさねぇ!!」

 

自分が一番近くで見てきた、魅せられた剣をそんな不死身かどうか確かめるために使ったのかよ!

我を忘れてあいつに殴りかかろうとするが‥‥

 

「一夏!!」

 

リッカが俺の手を握り、いまにも胤舜に殴りかかろうとする俺を止める。止める手を力ずくで振りほどこうとするが‥‥

 

「怒りに呑まれるのはだめ!今は頭を冷やして!」

 

彼女の目が、必死に俺に訴えかけている。そんな目を見ていたら、不思議と頭が冷え、冷静さを取り戻した。

 

「落ち着いた?」

 

「すまない‥‥」

 

確かに、ここで自棄になってあれに突っ込んでも無駄死にするだけだろう。なら、いまここでやることはただ一つ

 

「リッカちゃん、一夏くん!転進!」

 

「逃げるが勝ち!」

 

そういって、俺はおぬいちゃんと田助を背負い、林の奥へと走り逃げていく。あんな化け物、策無しで戦っても無限に復活してこちらの疲労が貯まっていくだけだろう。

 

竹林に紛れながら、一行は不死の化け物から逃れて庵を目指す。

 

 

 

しかし、それでも化け物は追っていく。

刀に、武蔵に染み付いた血の臭いを追いながら‥‥‥

 




一夏は原作でも千冬さんの剣筋を使われてキレていました。なら、なおさら武蔵の剣がこんなことに使われるのはあのシーン以上にキレるのではないでしょうか

次回もよろしくお願いします。
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