私は驚きで一瞬時が止まったかのように感じた。
私達は確かに公式戦への出場資格を得たのだが、結局あの連合チームで戦うのはあの試合だけで、甲子園予選には各高校として出ないといけないのだ。
私達の高校は人数不足で出れないのだ。
これはもう冴木さんや早川さん達の健闘を祈るしかない。
今私達はマネージャーのねこりんを抜いて六人しかいない。
私は再び小鷹さんの元を訪れた。
「あなたもしつこいわね。私は野球部には行かないって言ってるでしょ?」
「ちょっと見に来て欲しいの。太刀川さんの球を」
「あいつの球を?ふん、見に行くだけよ。それにあいつに見付からないところから見るだけよ」
「ありがとう小鷹さん」
「ちょっと待ってくださいよ!」
私達の会話が終わろうとしたとき、一人の女性が現れた。
「小鷹、それは間違いなくズルズル行って野球部に入らされる罠ですよ!危険です!」
「さ、さすがに考えすぎよ美藤」
青い髪の真面目そうなこの人は美藤千尋と言うらしい。ソフトボール部の頼れる外野手だそうだ。現在は投手にコンバートしようと小鷹さんと練習をしているらしい。
「まあ、あいつも真面目なやつだから許してやってよ。ソフトボール部でちーちゃんを投手にしようとしてるのは私なんだから、私がいなくなったら無責任なのよ」
「それでも私は来て欲しい。とりあえず放課後、野球部のブルペンが見える場所に居てね!」
そして放課後、小鷹さんがいることを確認した上で太刀川さんのボールを私が受けた。
「どうだった?小鷹さん」
「全くだめねヒロ、そんなんじゃヘボバッターすら打ち取れないわよ!」
「えっ!?鷹!?」
「わかるでしょ小鷹さん。太刀川さんはこっちに来てから全力を出し切れてない。本人は出してるつもりでもね。太刀川さんの、全力は全てを知っていて、太刀川さんの信頼が置ける小鷹さんしかいないのよ」
「悪いけど私は強豪ソフトボール部のレギュラーだから、裏切り者のいる野球部に行くことはできないわ」
そう言い残すと小鷹さんはソフトボール部の方へ帰っていった。
ダメだったか…
「涼風さん、あたしにチャンスをくれない?」
太刀川さんの頼みで、私は小鷹さんを河川敷に呼び出した。
太刀川さんが私に頼んだのは小鷹さんと仲直りするための前段階のお互いに会うことだけ。そこから先は自分の力で何とかすると言った。
私のせいで二人の仲を引き裂いたようなものだし、この際二人の仲直りすれば小鷹さんが野球部に入らなくても良いと思った。
翌日、私は部室で太刀川さんに尋ねた。
「昨日は上手くいった?」
「うん、これであたしの心の整理が出来たしこれから頑張るよ!」
「信用できないわね!」
声の主は小鷹さんだった。
「ヒロは強がりばっかり言うから、そういう言葉はアテにならないのよ。涼風さんも覚えといてね。で、ヒロ。私がいないと全力で投げれないのは嘘だってことでいいの?」
「いや、嘘じゃないし小鷹がいてくれたら嬉しいよ。でも…」
「だったら一緒にいてあげるわよ!」
「えっ、それって」
「私も野球部に入ってあげるってことよ!まったく、キャプテンになる前で良かったわ。もし来年の今頃私が抜けてたらソフトボール部はしっちゃかめっちゃかよ!」
「タカ、タカ-!!」
「ほらヒロ、こんなところで泣きつかないでよ!」
二人は仲直りし、小鷹さんも野球部に入った。
これでハッピーエンドしちゃいそうな勢いだ。
さて、今度は美藤さんにも声をかけてみようかな?