夏休みに入ってから、俺は一日足りとも不機嫌じゃない日がなかった。
それは全てあの監督が大西先輩をひいきして先発で出すのが原因である。
夏休み中の練習試合でも俺は抑えとして出てそれまではセンターを守らされている。
ただでさえ夏は暑くてイライラしやすい。
マウンドに立てばこのイラつきも忘れ去れるいうのに……
夏休みの間に組まれた練習試合で俺が先発として出た試合は一試合もない。それどころか嵐丸にさえ先発を取られた!何故だ!
「そりゃハヤテと違って嵐丸は素行がいいからだろ」
「え、奥居?あれー俺どの辺から声に出してたかなー?」
「ただでさえ夏は暑くてって辺りからだぞ。今はノック中なんだから集中しようぜ」
「わかったよ。ノッカーっ!センターにボールくれぇ!」
俺は捕球したボールを全力でホームに投げた。
「ハヤテ君!イラついてるのが見え見えデース!もっと落ち着くんデース!」
なら俺を先発で出せってんだ!
「ならもう少し素行良くしようぜ?」
「あれー?また声に出てた?」
「駄々漏れだぞ……」
「なんでハヤテはそう素行が悪いんだ?」
学校からの帰り道、奥居にそう訪ねられた。
「なんでって……」
言いたかったが言えなかった。
俺の前世じゃ俺はとっても素行が良かったなんて。
「まあ、監督からの評価を上げるようにしないと、来年ほんとに嵐丸にエースの座を取られるから気を付けろよー。ちなみにオイラは毎日監督にゴマをすってるぜ!」
奥居なりに笑いを取りにいったのだろうが、俺は全然笑えなかった。
結局素行がよくたって、実力がなきゃ認められないんだ。俺は知ってる。実力さえあればプロでやっていける。実力が無くなれば素行が良くてもクビなんだ。
「おーいハヤテ~聞いてるか~?」
「んあっ!?お、おう。すまねぇ、考え事してた」
「なんだー?好きな子でも出来たかー?」
「バカ!ちげーよ!」
「へへん、なら今度一緒に合コンに行こうぜ?」
「はぁ、お前もほんとそういうの好きだよな。まあ、ストレス解消に行っても良いけどよ」
「(そういう場所では無いんだよなぁ……)」
そして約束通り俺は奥居と合コンに行ったのだが、俺の心を奪うような女は居なかったね。俺は大人っぽい人が好みなんだよ。
「お前が子供っぽいからか?」
「あれ、また心の声が出てたか…」
「まあオイラは断然ボンキュッボンなお姉さんに限るなぁー」
「性欲丸だし丸坊主め」
「何を~!」
「へへっ、まあ男らしくていいじゃねぇか!」
俺はケラケラと笑いながら走って奥居から逃げた。
正直こんな日だが、夏休みで一番楽しい日だった。
その後俺は夏休みの部活の無い日に一年生でプールに行った。
「ほら、奥居の好きなボンキュッボンがいっぱいいるぞ」
「へぇー奥居さんってそう言うのがタイプなんですね」
嵐丸がどうフォローすればいいのかわからない表情でそう言った。
「ちょっ!ハヤテ、人の性癖を晒すのはやめろぉ!」
「悔しかったら俺を捕まえてみろ!」
「いや、プールで走らないでくださいよ」
「へん!お前を捕まえるよりオイラは好みの女を捕まえる方がいいね!」
「ったく、釣れないな~」
奥居がそのままほんとにナンパに行ったので、俺は嵐丸達とウォータースライダーで遊んでいた。
「ふむ、これがウォータースライダーというスライダーか」
変な女がいた。俺より少し年下に見えるその女の子は、ウォータースライダーを見るなりそう言った。
こいつはウォータースライダーをなんだと思ってるんだ?
「む?そこの人」
「え、俺?」
ウォータースライダーに再び乗ろうと階段を上ろうとしたら変な女から声をかけられた。
「その体格、野球をやっているのか?」
「え?ああそうだけど?」
「ん?どうしたハヤテ~お前まさかロリコン」
俺のあとを滑っていたチームメイトが俺とこの子をみてそう言った。
「バカちげーよ!こいつから話しかけてきたんだよ!」
「じゃあ逆ナンかー?」
「あーもー先行ってろ!後で合流するから」
「で、俺が野球部員ならなんだってんだ?」
「私はキャッチャーをやっているのだが、私の目が狂ってなければお前は凄いピッチャーだ。是非高校を教えてくれないか」
「はぁ!?教えるわけ」
「俺たちはアンドロメダ学園野球部だぜー!」
あの野郎、まだ上に登って無かったのかよ!
「アンドロメダ学園……か、ふむ。すまぬ、邪魔をしたな」
そういうと変な女の子は去っていった。
ほんと変なやつだぜ。まさか、来年うちに来たりしないよな?
さて、皆様既にお分かりでしょうか?
変な女の子の正体は(一応誰だかわからなくて、ネタバレしたくない人はこのまま戻るのだ!)
六道聖ちゃんです。