レーメに子供たちを送り届けた後は、アラハギーロに帰るだけだ。
帰宅はアークスのルーラで一瞬。無論、大人達も一緒だ。
ただ、やった本人は相当疲れた顔をしていた。
魔力、結構使うんだ……
俺・クロウリーには魔法適正無いから解らんが。
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アラハギーロ城。
故郷に戻って来れた感慨で泣きそうなテレサ以下22人を連れて、謁見の間へと歩く。
騎士団の鎧に身をまとった直属兵や、カイルさん達門番兵、俺やフローラのような学生まで動員した誘拐事件が、終わりを告げた事を伝えるために。
国王様は、手放しで喜んで下さった。
動員した人全員への特別賞与は勿論のこと、一番の元凶を伸した俺たちには、大金が送られた。
そして、俺はこの事件に関する個人的な見解を述べた。
『新たな勇者が誕生する。彼らはそれを狙っていた』
と。
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アラハギーロ修剣学校にて、少しどころかだいぶ早い卒業式が執り行われた。
俺は、この日、アラハギーロ修剣学校を卒業する。
それは、あの日、謁見の間で言われた事が原因だった。
新たな勇者を探し、導け。
それが俺の使命だと。
五月三十一日。
クロウリー、異例の卒業の日だった。
夜。
旅支度は、もう終わりだ。
明日からは、世界をまたに掛け、旅を始めなければならない。
終わりは無いのだろう、きっと。
勇者と出会うだけで、英雄譚が終わるなんて、無い。
むしろここからが始まりだ。
そして、その英雄譚には、きっと自分もいるのだろう。
そんなことを考えながら、瞼を閉じて眠りについた。
さよなら、故郷。
いつかまた、戻って来る時もあるだろう。
でも、それは英雄譚の半ばかもしれない。
俺たちという名の英雄譚の。
見送りは、フローラやテレサ、俺の家族だった。
俺は、振り返らずに歩いた。
東門を出て、港へ。
進む。
止まらない。
始まってもいないのだから。
そして、一つの幕が閉じる。
過去という名の幕が。
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船上。
新聞を読んでいた俺は、思わず口の中のものを吹き出した。
そこには、こう書かれていた。
『マンハイム王国女王陛下、またもや王城脱走』
と。
……またかよっ!!
はい、章タイトル回収です。