軽い少女   作:ふーじん

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遊戯派で原作エピソードと絡まない話を別主人公で書いてみたくなったので書きます。
不定期投稿です。


序章
初ログインじゃんよ


 □???

 

 さてさて買ってきたぜ<Infinite Dendrogram>。なげーからデンドロでいいか。

 あっちゃんに誘われて購入したはいいものの、御歳九歳のお子様に一万円の急な出費はなかなか痛かったんよ。あっちはセレブでもこっちは一般家庭だぜ? お年玉の貯金を残してなかったらどうすんだってね。

 あっちゃんならこともなげに軍資金を寄越して(貸して、じゃないあたりセレブ)くれそうなもんだけど、んなマネしたらママにぶっ飛ばされるじゃんよ。

 わざわざ第一報の時点で買いに走ったあたり、あいつの謎の嗅覚が働いたんだろうけど、これでクソゲーだったらマジゆるせん。これまで幾つのVRゲーが期待を裏切ってきたことか。

 ともあれ帰宅するなりマイルームに滑り込んで即ログイン。とりあえずチュートリアルだけでも済ませておくかね。

 

 んでまぁそのチュートリアルだけど、こりゃすげーわ。

 NPCの受け答えとかは既存タイトルでも割りと優秀だったけど、感覚の再現がすごすぎて現実と区別つかねー。

 たまに見るリアルな夢よりもリアルな感覚に戸惑ってると、管理AIだとかいううさんくせー帽子野郎がガイドを名乗り出た。

 見た目もうさんくせーけど口調もうさんくせー、ザ・不審者って感丸出しのロールはキャラ付けなんかね。NPCのキャラ付けにどうこう言うのも野暮だけど。

 

 マッドハッターとかいう管理AIの説明を右から左に、進められるままほいほいと設定していく。

 見え方はアニメにCG、あと現実そのものなのもある? 感覚だけリアルなのに見え方がアニメやCGなのも気持ち悪いから現実視でいいや。

 アバターのキャラメイクもリアル準拠でいいやね、別に見られて恥ずかしいだらしねーカラダしてねーし。完全同じは避けとけってダメ出しくらったから適当にちょいちょい変えてほい決定。

 初期装備も貰って、あと<エンブリオ>とかいうやつも移植された。なんでもこれが個人個人に合わせた独自進化を果たして、自分だけの<エンブリオ>に育つんだってさ。まるで一昔前のVRMMO小説みたいじゃんね、まさか空想に現実が追いつくなんてびっくりだわ。

 ちなみにこのゲーム、リセマラできないみたい。目当ての<エンブリオ>を引き当てるまでやり直すってことはできねーんだってさ。脳波登録とやらでどのハード使っても同じアカウントになるらしいね。脳波って、なんかちょっとこえー感じじゃんね。

 

 んで<エンブリオ>の移植も終わったらいよいよ最後、一番最初に所属する国家の選択ってか。

 これもいろいろあるけど、んー……そういやあっちゃんはどこにすんだろ? この手のゲームであっちゃんのやることって毎回同じだから、ダメ元でマッドハッター……帽子屋でいっか、帽子屋に訊いてみた。

 そしたらたぶん黄河かレジェンダリアのどっちかだろうねだってさ。あー、なるほどね。見るからに西洋系と東洋系だもんね、天地とかいう戦国日本みたいなとこはお国柄的に除外っぽいし……どうすっかなー。

 そういやこないだ一緒に見たのはキョンシーだっけ? なら黄河かねたぶん、とりまそっちに決定。

 

 そしたらかしこまって勿体つけた言葉を贈られた。なにをするにも自由だってさ、めっちゃうさんくせーこと言われたぜ。

 自由自由って、その手の文句言いだすゲームって大抵ハズレなジンクスあっからやめてほしいじゃんね。

 ま、いいや。とりま黄河帝国とやらにレッツゴーよ。まさか空中に放り出されるとは思わなかったケド。

 

 ◇

 

 デンドロすげーよデンドロ、ちょっとナメてたわマジヤバイ。

 龍都とかいう黄河の首都の真ん前に放り出されたとこを親切なおっちゃんに拾ってもらってあれこれ説明してもらったんだけどね、うちらプレイヤーのことを<マスター>とか呼んで、その辺のことをいろいろ詳しく教えてもらったんよ。

 んでまぁそれがヤバイっていうか、深い。たかがMMOじゃんって高を括ってたら豆鉄砲くらった気分だわ。単なる世界観設定と思いきや誰がそこまで細かく考えんだよってツッコミ入るくらい真に迫ったっつーか、ゲームどころかまるで異世界そのものみたいってーの? わざわざログインやログアウトだのにそれらしい理由を設定付けてるあたり、ロール派大歓喜って感じじゃんね。

 つかおっちゃんらみたいなNPC……こっちの言葉ではティアンっつーんだっけ? それとうちらプレイヤーつか<マスター>って区別されてんのね。こっちの常識やらなんやらを懇切丁寧に教えてもらったわ。

 とりあえず言えることは、オフゲーみたいに気分任せにNPC殺すのはNGってことかね。うっかり殺しちゃったら有罪確定で隔離不可避らしいし、あたしもうっかりヤッちゃわないようにしねーと危ねーじゃんね。

 

 とりあえず親切なおっちゃんに礼を言って別れて、あちこちぶらぶら歩き回ってみた。

 いろんなジョブのギルドがあって、勧誘やらなんやらで説明を受けてみたけど、やっぱ【戦士】とか【魔術師】とか、その辺のメジャーどころはどの国にも共通してあるらしーね。あたしはとりあえず保留しといたけど。

 なんつーかね、自由が売りのゲームらしいじゃん? せっかくだからそういうフツーのはやめて、もっと別のおもしろそーなのをやってみたいじゃんね。ぶっちゃけ戦闘系じゃなくてもいいっつーか。

 そう思って歩いてたら、なんか見えてきたじゃんおもしろそーなの。広場に天幕張って芸を見せてるティアンがさ。

 中華っぽい黄河だと雑技団っつーんかね? 骨が無いみたいにぐねんぐねん柔らかい身体を折り曲げたり、一見キショい動きで芸をしたり、そうそうこういうのがいいんだよこういうのが。

 

 そのままじーっと見てたら芸を見せてたおっちゃんの一人がこっちに気付いて寄ってきた。

 ここは関係者以外立ち入り禁止だって怒られちった。道理で一人で芸をしてたわけだ。あれって客に見せてるんじゃなくて練習してたんね。よく見りゃあたし以外に観客いねーじゃんよ。

 こんなとこで何してんだって聞かれたから、おもしろそーだから見てたんじゃんよっつったら、おっちゃんはあたしの左手を見て「ひょっとして<マスター>か?」って聞かれた。

 そだよーっつったら驚かれた。そういや<マスター>って最初のおっちゃんの口振りからするとお伽噺の存在っぽいもんね、こっから先プレイヤーも増えるだろうから<マスター>も増えていくんだろけど。

 

 そっからなんやかんやあって、あたしは【軽業師】に就くことにした。

 あ、【軽業師】ってのはおっちゃんがやってたような大道芸をメインにしてるジョブね。おっちゃんに言われた通りに身体動かしてみたら是非やってみないかって言われたし、なんとなく流れに乗っかってみたよ。

 ジョブの傾向としてはAGIとDEXが突出してて、HPやENDなんかはかなり低めってとこかな。身のこなしを主に強化していく非戦闘系ジョブっぽいじゃんね。

 おっちゃん曰くあたしは逸材らしいし? まぁね、素でマンションよじ登るとかよゆーだし、これくらいはね?

 とりまおっちゃんの勧めに従って中でいろいろ練習することにしてみたじゃんよ。ちなみにこのおっちゃん、まさかの団長さんだった。だんちょー。

 

 ◇

 

 結論から言うとね? 【軽業師】ってばちょー楽勝じゃんね。

 なんてーのかな、別に初期ステでもリアルでできる動きばっかだし、もっとむずかしー演目はレベルとステ上げてからじゃないと危ないってんで、初級の合格はくれてやっからとりあえずレベル上げてけって言われたわ。

 レベル上げるにはどーすんのっつったら、やっぱ戦うしかないっしょってことで外出ようとしたんだけど、よく考えたらあたし今【軽業師】で戦う用のジョブじゃないじゃんね。

 一応投擲武器の補正はあるけど、初期装備の金で消耗品なんてそんな買えねーし、ひょっとして素手でやるっきゃないって考えて、ちょっとダルいなーって思ってきたとこ。

 そしたらおっちゃんにアホの子を見る目で言われたじゃんよ、普通は【軽業師】のしゅぎょーしてレベル上げんだよって。

 あー、なるほどね? 非戦闘系なら別に戦う以外にもレベリングできるっぽいわ。少なくとも最初のうちは地道な軽業の練習で上げてくっぽいじゃんよ。

 マジかー、地道な練習まじかー。ま、いいけどね、どうせ暇だし。身体動かすのは別に嫌いじゃないし、ご飯と寝床あるならやぶさかじゃないじゃんよ。

 あるよね? 寝床。……しょうがねーなーって用意してくれたわ、このおっちゃんめっちゃ良い人じゃんね。

 あ、おっちゃんじゃなくて団長かだんちょー。

 ……やっべ、ママがお呼びじゃんよ。そういやそろそろ晩御飯の時間だったわ。一旦ログアウトしなきゃ。

 

 ◇

 

 ほいめしもどりー。

 たった三十分くらいだけどこっちはもう九十分経ってた。三倍時間ってやっぱマジだったんね、マジやべー。

 だんちょーは戻ってきたあたしを見て「なるほど、これが<マスター>か」とか言ってた。まぁね、ほいほいログアウトしていなくなるプレイヤーなんて、現地人からすれば神出鬼没じゃんね。この辺の時間間隔の磨り合わせってけっこー重要な気がするじゃんよ。

 とりま戻ってきてこっち時間で十八時間は大丈夫っつったら、じゃあ早速練習だっつって裏の練習用天幕に連れて行かれた。

 つっても基礎的な身体能力はもうあるからってんで、レベル上げるためだけの反復練習だけどね。ふつーはここで柔軟やらバランス感覚やらを鍛えて地力を上げるらしいけどね、でもあたしってば天才だし? 自分のさいのーが怖いじゃんね。

 とりあえず言われたとおりにジャグリングやら玉乗りやらしてったら、けっこーなスピードでもりもりレベル上がるじゃんよ。

 関連スキルのレベルもちょいちょい上がって、そのたびに補正掛かってAGIやDEXが上がっていくから、どんどん難易度高い技もよゆーでこなせる。さすがあたしじゃんね。

 一緒に練習してた見習いさんもぽかーんてしてこっち見てるし、さすがあたし(二度目)。<エンブリオ>も孵化してない今なら条件はティアンと変わんないし、これなら別にチートでもなんでもないじゃんね。あたしの純粋なさいのーってやつじゃんよ。

 あ、<エンブリオ>って孵化すると大なり小なりステ補正掛かるらしいよ。これの有る無しがティアンと<マスター>を大きく分ける差ってやつらしいじゃんね。ログイン前にちらっと覗いた掲示場で誰かが書き込んでたわ。

 早い人は今日の朝イチにログインしてとっくに<エンブリオ>を孵化させてるらしいしね。掲示板の情報網はさすがですわ、半信半疑だけどね。

 四時間もするころには駆け足で上げれる分はもう上がりきったかな。そこで一旦休憩入って、飯食ってから再開らしい。さっきリアルで晩御飯食べたとこなんだけどこっちでも食えるんかな? 別腹かなー。

 なんやかんやで結構楽しいじゃんね【軽業師】。つってもまー趣味の延長線上だけど、これで軽業向けの<エンブリオ>が出てきても困るじゃんね、あたし。別に軽業一本でおまんま食ってく気は無いし。ま、なるようになるじゃんね。

 飯休憩終わったあともしばらく練習して、夜も更けてきたところで今日の修行はお開きだってさ。家のある子は家に帰って、住み込みの子はそのまま寝起き用の天幕に入ってった。

 あたしも相部屋だけど場所もらって、そこで一旦ログアウトした。目の前で消えてくあたしにびっくりしてた見習いの子の顔がちょっとおもしろかったじゃんね。

 

 ◇◇◇

 

「あっちゃんおっすおっす。そっちどない? こっちはそこそこイイ感じじゃんね、今回はあっちゃんの鼻大正義だったじゃん」

『……ねこちゃん、こっちいなかった。いっしょに遊ぶっていってたのに……』

「あっれー? あっちゃんもしかして別ん国? うちは黄河にしたんだけど、こないだ一緒にアレ観てたからてっきりこっちかなって」

『わたし、オクシデンタル派だし。受付の人にきいたら「それならレジェンダリアがおすすめ」って言ってたから、そっち』

「あっちゃー、マジかー。レジェンダリアと黄河ってけっこー離れてるじゃんね。これる?」

『むり。だからしばらくこっちでなんとかする……お金溜まってなんとかできそうになったら、そっちいくか、ねこちゃんこっち来て』

「無茶いうねーチミィ。ところで初ジョブ何にしたん? あたし【軽業師】じゃんね」

『【死霊術師】。……【軽業師】? へんなの』

「あっちゃんこそ相変わらずじゃんね、おたがいさまー」

『あ、わたし<エンブリオ>孵化したよ』

「マジで? どんなん?」

『――――――――』

「まぁじでぇ? うっわーマジモロじゃんね、そんなんありかー」

『おかげで第一号できた。みる?』

「ちなみに見え方どれにしたん?」

『リアルなやつ』

「まじかー、とりま見してちょ」

『はい』

「……うっわグロ、耐性無かったらリバース不可避じゃんよ」

『かわいい』

「ほいほいおつおつ。んじゃ今日はもう寝るわ、おやすみー」

『おやすみ……』

 

 ケータイぽーい。

 ベッドずさー。

 

「……あっちゃんちょーイキイキしてたじゃんね。よきかなよきかな」

 

 




クッソ頭軽い系小生意気主人公(天才肌)
正反対なせいか逆に書いてて楽しかったです。
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