軽い少女   作:ふーじん

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初めてのフレンドじゃんよ

 □【軽業師】???

 

「うーっし撃破完了! ドロップも落ちてるし死んでんじゃんね。竹馬ちゃんおつおつー」

「あ、ドロップはそっちでOKじゃんよ。助けてもらった礼だしね、こんくらいじゃ返しきれてないけど手持ちに良いの無いから今は勘弁してほしいじゃんよ」

「あ、それとも龍都戻って飯食う? もう夜だし晩飯奢るじゃんね、遠慮はなしだぜぃ」

「つかあんた名前は? ってあたし今耳聞こえねーんじゃんよ。ええとパーティー組んでりゃ簡易ステータスで見れんだっけ?」

 

 いきなりおでこに【符】を貼られたじゃんよ。さすがにこのまま爆殺は勘弁じゃんね。

 

「うるせーよ。んな大声出さなくても聞こえてるっつーの」

「あれ、聞こえてる? なんで?」

「回復用の【符】だぜ、ありがたく受け取れ。大した状態異常でもねーし、これで治んだろ」

「うっわまた借りが一つできちゃったんじゃんね。こんなにあたしに貸し作って、さてはあたしの身体が目的!?」

「自意識過剰ウゼェ。単にこのままハイサヨナラじゃ失礼ってだけだぜ」

「わお、意外にも良い子じゃんよ。とりま助かったわ、改めてサンキューね」

「別にいいぜ、ばっちり飯奢ってもらうしな」

「おっけおっけ、んじゃあ戻る?」

「だな、今日のとこは狩りは仕舞いだ」

 

 クマのドロップアイテムを拾って帰路へつく。

 竹馬少女の脚は長いからコンパス違って歩幅が合わねーじゃんね。あたしも小走りになりながら横に並ぶ。

 

「んであんたは? 命の恩人の名前も知らないなんてあたしの名が廃るじゃんよ」

「命っつってもこっちで三日ログインできなくなるだけじゃん、大袈裟だろ」

「明日クエの本番あるんじゃんよ、デスペナってたら失敗だし」

「だったらボスモンスターなんて相手にしてんじゃねーよ、責任持てよ」

「まさかのマジレス、これにはあたしも苦笑いじゃんよ」

 

 ぐだぐだ言い合いながら歩を進める。

 こいつ、けっこー話してて面白いじゃんね。容赦無いとこが最高。

 

「んで名前は? あ、あたしは黒猫っての」

黒猫(ヘイマオ)? チャイニーズか? ちなみにオレは迅羽だ」

迅羽(じんう)? そっちはジャパニーズ? あたしはこれでも日本人じゃんよ」

「まじか、オレはチャイニーズだな。読みは設定すんの忘れてたんだよ、気にすんな」

「おっけー気にしない。あ、フレ登録いい? 同年代は珍しいし、せっかくだしね」

「いいぜ別に。袖触れ合うも他生の縁ってそっちの諺だっけか」

「むずかしー言葉知ってんね、さすが優等生」

「これでもヒール志望だっての」

「ビジュアル的に似合いそうじゃんね。怪人テナガアシナガって感じで」

「ドンピシャだな、オレの<エンブリオ>がテナガアシナガだし」

「まじか、あたし冴えてんね。正答報酬は?」

「ねーよンなもん」

 

 ゲラゲラ笑いながらの帰り道。うん、あたしこいつのことかなり好きじゃんね。

 同年代ってのもあるけど、互いに遠慮しないのが最高にウマが合うじゃんよ。

 

「言い当てちゃったからあたしも言うけど、うちの<エンブリオ>はヒダルガミってんだ。迅羽の<エンブリオ>と同じ妖怪モチーフじゃんね」

「ほー、日本のヨーカイなんてマイナー繋がりはおもしれーな」

「ちなみにどっちも人を取って食う悪い妖怪じゃんね、さすがヒール」

「ゲァハハハハ、そりゃいいな! そんくらいインパクトあるほうが()が付くってもんだぜ!」

「いい趣味してんねおたく。だけどあたしもそういうのキライじゃないぜ」

 

 あーだこーだ言いながら、互いのジョブについても話してみる。

 向こうはさっきのバトルで見た通り、黄河じゃメジャーな【道士】だった。「無言で【符】を貼り付けて始末するのはスマートだろ?」ってことだけど、超わかるじゃんよ。実際あのバトルでもすげーかっこよかったし、特に終盤の地雷原なんて最高にクールだったじゃんね。

 

 一方であたしが【軽業師】だってことを伝えると、「お前頭おかしいんじゃね?」って言われたけど、それこそあたしだってクールじゃんね? 戦闘向きじゃないジョブで強敵相手に立ち回るって、一昔前のラノベでめっちゃ流行ってたってパパが言ってたし。まぁピンチくらったのは片手落ちだから、ここは甘んじて迅羽の言葉を受け止めるケド。

 

 そんなこんなで龍都に到着、そのまま適当な料理屋に流れ込む。

 迅羽のリクエストは特に無い(子供じゃないから好き嫌いなんてしないらしい)から、とりあえず手持ちで腹一杯食えそうなとこ選んだけど、こういうとき役立つのが鼻じゃんね。

 ここらで一番いい匂い漂わせてた店に入ると、中華料理のいい匂いがあたしのお腹を刺激する。もう匂いだけで白米食えんじゃんね、あたしの期待がMAXボルテージってわけよ。

 

「ところで迅羽ってばいつの間にかちっちゃくなってるけどなんで?」

「どこの世界に竹馬乗って飯食うやつがいるんだよ。竹馬じゃねーけど。あと普通に邪魔だろ、常識で考えろよ」

「うちならやりそうだわー。ていうかあたし竹馬乗ってご飯食ったことあるわ」

「【軽業師】の芸人と一緒にすんじゃねーよ、こちとら【道士】だっての」

「打てば響くようなツッコミのキレ。あたしと組んで漫才やってみる?」

「ヒール志望だっつってんだろ、なんでそっちの舞台立つんだよ」

「だよねー。あ、そっちのメニュー取って」

「あいよ」

 

 ちなみにお店に人だけど、子供だけのお客と最初は訝しがられたけど、あたしらの左手の紋章を見て<マスター>だって察すると、そのまま笑顔で通してくれた。

 <マスター>が見た目や年齢で判別できないイレギュラーな存在だってのは周知されてるから、こういうとこで年齢認証パスできるのはありがたいことじゃんね。

 まぁえっちいのは国籍で許可される年齢にならないと弾かれるらしいけど。さすがのあたしもえっちいのはまだ早いじゃんね。

 

「とりあえずこのページのやつ一人前お願いね。ドリンクはオレンジジュースで」

「うわ、初めて見たそんな頼み方するやつ」

「実はちょっぴり憧れてたじゃんね。まぁお金はあるしへーきへーき」

「いや、オレがそんな食えねぇんだけど」

「あたしが食えるからへーきへーき。こう見えて大食いじゃんね。身体動かす方だからいっぱい食わないと保たねぇじゃんよ」

「一応言っとくけど残すなよ、好き嫌いすんじゃねーぞ」

「うちのママと同じこと言ってんね」

「そりゃお前のママンが正しいだろ、人としての常識だぜ」

「またもマジレス。さすが優等生」

「ヒール志望だっつってんだろ、いい加減裂くぞおめー」

「そりゃ勘弁じゃんね。っと、きたきた」

 

 あーだこーだ言ってたら先にドリンクが届いた。

 リアルとは違う果汁一〇〇%の天然ジュースじゃんね。つってもあれ別に一〇〇%だからって必ずしも美味しいってわけじゃないらしいけど。いくらか水で割ると美味しいって鉄○のジャンで大谷せんせーが言ってた。

 

「んじゃま初のボス戦勝利を祝ってかんぱーい」

「あいよ、おつかれ」

 

 なみなみ注がれたジュースを一息に飲み干す。この一杯のために生きてんじゃんね。

 そして飲み干して駄弁ってるうちに出来上がりの早い前菜がテーブルに並べられ、各々取り分けて箸でつつく。

 んー、ンまい! 味が濃くて労働者向けじゃんね。前菜からこのボリュームならメインはどんだけって感じで期待が高まるじゃんよ。

 そして意外にも迅羽の箸使いってばめっちゃ綺麗じゃんね。こいつヒールヒール言ってるクセに育ちいいよな。

 

「そいやさ、なんで迅羽ってばあんなトコにいたわけ? まさかあたしの後を尾けてたわけじゃないっしょ?」

「ンなわけねーだろ、単純に狩場が重なっただけだよ。こないだ<エンブリオ>の段階も上がって、【道士】のレベルもカンスト近かったしな。試しに寄ってみたのさ」

「ふーん、なかなかペース早いじゃんね。大体あたしと同じくらいかー、戦闘職な分そっちのほうがそら適正だわな」

「むしろなんで【軽業師】がいたんだよ、おとなしく芸やってろよ。馬鹿かよ、死ねよ」

「助けてくれたのそっちなくせに言うじゃんね。あと死んでもゲームだから治んないしどうしようもねーな!」

「違ぇねぇな、ゲェハハハハハ」

「ところでその笑い声もヒールっぽく?」

「それっぽいだろ?」

「んー……笑い方はいいけど声がミスマッチじゃんね。なんつーか悪役に憧れてる感丸出し?」

「まじか。どうにかして声変えらんねーかな……」

「そこまでやるってよっぽどかよ、こだわんねーチミィ」

「やるからにはトコトンだろ」

 

 言ってたらメインが来た。肉やら魚やら野菜やら、ホカホカあったけー中華料理の数々がテーブルに並ぶ。

 北京料理に広東料理、四川料理に江南料理、リアルでいう中国各地の料理っぽいのがズラリと並ぶ光景は圧巻の一言。

 やっぱ黄河って中華イメージじゃんね。一つの店でそれぞれ趣の違う料理が楽しめるってとこは流石だけどサ。

 

「おい、肉と野菜ばっか取ってねーで魚も食えよ」

「魚だけは勘弁してほしいじゃんよ。他のはちゃんと食うからさ」

「なら考えなしに頼んでんじゃねーよ。ったくしゃーねーな……それ寄越せ」

「あいよ。あ、おねーさんジュースおかわり二つ追加でー!」

 

 迅羽が長箸で取り分けるのを他所に飲み干したジュースのおかわりを頼む。

 待ってる間に料理を突けば、たちまち広がる味わいに頬が緩んで思わず舌鼓を打った。

 

「お、こりゃ美味いな。リアルの外食よりよっぽど美味ぇ」

「それな。こっちの料理って基本めちゃくちゃ美味いじゃんね」

「自炊できねぇ連中には毒だな。こっちで食ってもリアルは腹膨れねーし」

「ちなみに迅羽はご飯作れる?」

「ケーキも作れるぜ。てか普通に手伝いしてたら覚えんだろ」

「良い子か! なら迅羽作る人であたし食べる人な」

「なにオレがお前に飯作るみたいなってんだよ、作らねーよ」

「ちぇー」

 

 誰かとお喋りしながら外食なんて、パパママやあっちゃん以外とは久しぶりだけど、こいつ相手だとなんか楽しいね。

 なんてーかちょっとお姉ちゃんっぽいじゃんね。いたことないからよくわかんねーけど。

 

「迅羽おねーちゃん、そっちの取って♪」

「うわキメェ、さぶいぼ立った」

「ひっでーの、こんな美少女相手に辛辣じゃんね」

「自分で美少女とか宣うやつは心が醜いだろ、常識的に考えて」

「まじか……自他共に認めててもダメかー」

「自意識過剰か。てかはよ食え、量多すぎて冷めちまうだろうが」

「ほいほい。魚は掃けた?」

「食った食った。これ以上はキツイからお前頑張れ」

「まじか。おデブちゃんになっちゃうじゃんよ」

 

 ともあれ食べる食べる。んー、やっぱ最高じゃんね料理。

 個人的にデンドロやって一番の収穫は料理の美味さじゃんね。五感再現のあるべき姿って感じで、ぶっちゃけ美味い料理食えるだけでゲームとしての価値あるわ。

 おまけにあたしの胃袋は無限大。……まぁそれはウソだけど、美味いものならいくらでも入るじゃんね。

 あんまりにも美味しすぎるものだから、三十分もする頃には頼んだやつ全部平らげた。

 

「ふぃー食った食った、ごちそーさまじゃんね。この店は当たりだなー」

「よく食うなぁお前、見ててこっちが腹膨れるわ」

「よく言われるじゃんね」

 

 食事も終えたけど、すぐ出るのもなんか味気ないしお喋り再開。

 つっても話すことと言えばデンドロ関連の話題ばかりで、無名のダークホースの圧倒的実力への賞賛が飛び交う飛び交う。

 

「こっちで何日か遊んでみてさ、やっぱ半端ねーじゃんねデンドロ」

「だなぁ、事前情報も無かったから完全に不意打ちだな。今すっげー売れてるらしいぜ」

「まじか。となると転売とかめっちゃ出そうじゃんね。元手安いし入れ食いじゃんよ」

「みっともねぇ話だぜまったく。他人の褌で商売なんて大の大人がやることじゃねーな」

「わお辛辣。でも完全同意じゃんよ。あたしは友達に誘われて買ったクチだけど、こればかりは感謝じゃんね」

「ん? お前ダチいるのか? なのにソロか」

「すれ違いで別の国所属になっちゃったんじゃんよ。あっちはレジェンダリアで会おうにも会えねーし」

「うは、そりゃ遠いな。少なくとも下級のうちは無理だろ。砂漠越えなんて金掛かるだろうし」

「向こうが来るか、こっちが行くかどっちが早いかって感じだねー」

 

 ジュースを飲む。やっぱちゃんと事前に確認しときゃよかったなぁとは思うけど、今はこっちで就いた【軽業師】も面白いし、結果オーライだけど場合によりけりじゃんね。

 んでやっぱ、第一陣プレイヤーは有利だわ。時間三倍速で一日のログインの有無がこっちでは三日の差になって、それだけで稼げる経験値やこなせるクエストの数が大分変わるし。

 運良く第一陣のハードを買えたあたしらはともかく、転売屋が出回った今は入手経路も難しくなってるだろうし、現実時間で一週間か一ヶ月か、あるいはそれ以上の差が出るじゃんね。

 そうなるとこっち時間で一ヶ月単位の差が出るから、MMOでこのプレイ時間の差はかなり絶望的だ。まぁガチでやるつもりならだけど。

 

「迅羽はどうすんの? このゲーム続ける?」

「どうした、藪から棒に」

「いやさ、このゲームいろいろ完全再現なのはいいけどさ、その分ハードじゃんよ。今回戦ったモンスターなんてクマだぜ、クマ。リアルじゃ幾つ命あっても足んねぇじゃんよ」

「あー、確かに気になるやつは気になるだろうな。リアルすぎて怖いって層は出てくるだろうし」

「じゃんね。リアルすぎるってこれ、ある意味ゲームとして破綻してるしさ。矛盾してっけど」

「それは言えてるな。つまりアレか、ビビってやめちまわねーかって言いてぇのかお前は」

「極論を言えばそうかな? で、どう?」

「舐めんな。少なくともオレは降りる気はねーよ。せっかく<エンブリオ>なんておもしれぇギミックもあるんだしな、やりたいことは何でもやるつもりさ」

「んー、かっこいいこと言うじゃんね。ま、あたしも同感だケド。少なくとも美味い飯がある時点で何にも勝るって感じだし」

「食い意地張ってんな、筋金入りじゃねーの」

 

 そりゃあね、食い意地は張ってるさ。じゃなきゃこんな<エンブリオ>なんて出ねーだろうし。

 なんつーか、<エンブリオ>って不思議だし不気味だけど妙に納得できるのが謎じゃんね。

 こんな<エンブリオ>、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ま、いいぜ。そういうことならオレとお前はライバルってことだな。今日はたまたま共闘したし一緒に飯食ったけど、仲良しこよしでやるつもりは毛頭ねぇ」

「それ、後々味方になるパターンのセリフっぽくね?」

「言ってろ。少なくともオレはやれるとこまでやるつもりだぜ。そうだな……とりあえず決闘にでも参加してみっかね」

「その心は?」

「闘技場こそヒールの本領だろ」

「そっちこそ筋金入りじゃんね」

 

 言って、ゲラゲラ笑い合う。

 でも決闘かー、あたしは多分やらないかな。なんとなくだけど。

 でも迅羽ならビジュアルも映えるしうってつけじゃんね。怪人テナガアシナガのシルエットはイイ感じにロックでパンクでヒールだし、派手だしな。

 

「んじゃ今日はお開きってことで、改めてありがとじゃんよ。達者でなー」

「おう、そっちこそ頑張れよ。精々有名になったらお前の舞台見てやんよ」

「えー、なにそれあたしに【軽業師】続けろってこと?」

「さぁな、んじゃあばよ」

 

 席を立って会計を払って、店の前で別れの挨拶を交わす。

 そして互いに言い合うと、迅羽は竹馬を伸ばして去っていった。うーん、やっぱ怪人だわ。

 

 ……思ったよりもお金減っちゃったじゃんね。さすがにメニューの全部はやりすぎたわ。

 でも長年の夢を一つ叶えられて、ちょっぴり達成感。反省はあっても後悔は無いぜ。

 

 さてと……それじゃあ一座に戻りましょうかね。

 ボス倒して歩いて帰って、飯も食ってお喋りしてたらすっかり日も落ちて真っ暗じゃんよ。

 明日は本番だし、今日はこっちで寝起きしないとなー。

 

 ◇◇◇

 

 だんちょーに今日の戦果を報告したら、今までで一番でかいゲンコツもらった。

 「死んだらどうする!」だって。あたしは<マスター>だから心配ご無用じゃんよっつったら、「そういうことじゃねぇ!」って同じとこにもひとつデカいの食らった。

 だんちょーマジで容赦ねーじゃんね。着々とあたしへのゲンコツ記録更新中じゃんよ。

 ……今回はあたしが悪かったかな。




序章が終わりなので本編に戻ります。
いい感じに息抜きできました。世界観が世界観だけにいろんなキャラを動かしてみたくなるから困りますね。
こちらの作品で出たキャラも本編で匂わすかもしれません。出すかは未定ですが。
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