この素晴らしい世界にアンサンブルを!   作:青年T

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 けっこう前に出したけどその後出ずっぱりだったのでもう一回掲載するオリ設定。

・『黒猫の尻尾』
 サキュバス達が営む風俗店。店自体は原作にもあったが店名は出なかった。


番外編
サキュバス・メリークリスマス


 しんしんと雪の降る冬のある日。

 

「あ゛あ゛・・・・クリスマスとか馬鹿らしい・・・・・・」

 

 『黒猫の尻尾』にて、サキュバス達はやたらと嫌悪に満ちた声を漏らしていた。

 

 ―――何かあるんですか?

「・・・あ、サトシさん。いやね?この時期って、そっちの世界では聖人の誕生を祝う祭りがあるらしいじゃないですか。私達悪魔にとってそういうのは・・・ねぇ?」

 ―――ああ、そういう・・・・

 

 この世界でも、この時期にクリスマスは存在する。

 案の定というべきか、日本から来た昔の転生者がこっちでも広めたものらしい。大本の宗教がこっちで信仰されてない以上、そこまで熱心に祝っていた訳ではないのだろう。何かの折に話の種にし、紆余曲折を経て今も市民権を持つ具合になった、といった具合か。

 しかし、クリスマスは聖人の誕生日。悪魔にとっては決して良い日ではないだろう。彼女達が女子力の低い顔でうだっているのも転生者って奴の仕業なんだ。

 

 ・・・そういえば、こっちにクリスマスはどんな風に伝わっているのだろうか。ひょっとしたら変な伝わり方をしているかもしれない。

 

「こっちでのクリスマスの過ごし方?そりゃあ、プレゼントを親しい人と送りあって、ケーキを食べたり、神に祈りを捧げる日ね。そっちだとどんな神に祈ってるのかは知らないけど、こっちではエリス神に祈る人間が多いわ。まったくやんなっちゃう」

「真面目」

 

 今の日本では、そこまで熱心にクリスマスを祝うのは少数派だろう。俺からすれば、現代日本のクリスマスはサンタのキャラクターやコスプレが街やゲームに溢れかえり、家族ですごすならケーキや七面鳥を食べ、カップルが結ばれたり結ばれなかったりし、時に一線を超える日といっても過言ではないと思う。

 

 そんな事をサキュバス達に話すと、彼女達の目に少しずつ元気が戻り始めた。

 

「聖人をモチーフにしたミニスカート・・・・新しい、惹かれるわね」「そんな日に悪魔が活動するってのも()()な気がしてきたね」「そんな風に祭日を過ごすとは・・・・やはりニホンは魔境・・・・」

 

 そして彼女達は話し合いを始めたが、その結論が出たのはその僅か数分後だった。

 

「話し合った結果、今年のクリスマスは当店でもキャンペーンをすることになりました。それで、そのための衣装の制作をあなたに依頼したいのですが・・・よろしいでしょうか?」

「・・・どんな衣装?」

「あたしは話に出てきたミニスカサンタってので!」「私はブラックサンタにしてみようかしら」「それじゃあ私は・・・変化球でレオタードに」

 ―――多い多い。とりあえずメモにでも書いてくれ。

 

 メモに注文を書いた―――あるいは描いた者から、その寸法を計測する。しかし・・・皆大胆な衣装を注文してるなぁ・・・・これ作るの俺だぞ?依頼人が依頼人だから他の人に委託する訳にもいかない。精密性は第二形態で底上げするとして、デザインは・・・鋼の精神で作るか・・・・・・

 

 

 

 

 

 ────────────────────

 

 

 

 

 

 切る。

 切る。

 切る。

 眼前の赤を切る。

 針が突き立てられ、赤を貫く。

 

 混ぜる。

 混ぜる。

 混ぜる。

 溶け合う様に、色が混ざる。

 混ざりあった色が、次第に赤色へと変化する。

 

「サトシ何やってるんだ?」

 ―――あっ和真。聞かないで・・・

 

 皆布面積少ない・・・少ない・・・・・・さっきまで本当に何も考えずに図面に従い続けてた。

 

「服か?これは・・・・・・あれ、リボン?」

「今年のクリスマス、サキュバス達が」

「あの店か。ひょっとしてクリスマスプレゼント?悪魔がクリスマスを祝うとはちょっと思えないんだが・・・しかしいやに長いな。これだとプレゼントより人間を巻くのに使いそうな・・・・え、もしかしてそういう?」

 ―――そこにあるのも含めて全部な。

「はえー・・・・・・そういえば、こっちにもクリスマス自体は伝わってるみたいだけど、こんなサンタコス・・・らしき服装はこっちで見たことないな」

「今の日本のクリスマスをサキュバス達に伝えたら、こんな企画が」

「お前の入れ知恵かこれ!?」

 

 和真がそう叫ぶと、完成している奴からいくつかを確認しだした。サキュバス向けのエロいサンタコスを無言で確認している。ちなみに、これらの衣装は全てサイズ調整と防寒の効果を少々持っている。寸法とかに不備があっても安心!

 和真が四着目――――ブラックサンタ風のコスチュームの確認を終えると、こちらを向いた。

 

 ―――良い仕事してるなお前!

 ―――アイデアはサキュバス達なんだけどな!

 

 和真(むっつりスケベ)に目線で褒められた。嬉しい。

 

 ・・・さて、気が付けばもう昼だ。そろそろお腹が減ってきたし、ちょうど一着作り終わったところだから切りもいい。昼ご飯を食べたら、店に行って完成分を確認してもらうとしよう。

 

 

 

 ────────────────────

 

 

 

「サトシさんじゃないですか。衣装の制作はもう終わったんですか?」

「途中経過」

「ふーん・・・私をおいて先輩とまだまだヨロシクやる予定ですか。そうですか・・・ふぅーん・・・・・・」

 

 ヤバい。サリスがお(かんむり)だ。

 サリスとは別に、裁縫の得意なサキュバスがいたので今回は彼女と合体していたのだが、どうやらそれが気に入らないらしい。

 

「あら、私が頼んだ衣装は完成しているのですね。それじゃあ私は試着してきますね」「じゃああたしもー」

 ―――サリスの分も出来てる。

「あ、そうなんですか。じゃあ私も・・・」

 

 サリスを含めた三人が箱から衣装を取り出し、奥で着替え始める。三人以外にも衣装は用意できたのだが、ちょうど今が休憩時間なのは彼女達だけらしい。

 

「依頼通りの衣装ですね・・・」「これ可愛い!お客さんも喜びそう!」「その・・・・ど、どう、でしょうか・・・?」

 

 先に出てきた方から順に、白いモコモコしたコートと動きやすそうな赤いホットパンツにトップス、肩を出している以外はオーソドックスな赤のサンタコス(当然、ミニスカート)、下着程度の面積のカラフルな衣装とそこに巻くリボンだ。

 どうやら衣装にかけたサイズ調整の魔法は機能しているらしい。サイズについては若干不安だったが、これなら大丈夫か。

 

「可愛い」

「まあ、いつもの衣装の方が露出は多いんですけどね」

「でもいっつもあれだとマンネリ化しそうじゃん?たまにはこういう格好もありでしょ!・・・・あ、サリスちゃんはむしろリボンが別方向のエロさになってるけど」

「えへへ・・・これなら今年のクリスマスは活躍できそうです」

 

 露出が減ったのは残念と思われるかもしれないが、この衣装ならそれを(おぎな)える可愛らしさを演出できるだろう。

 

「これから残りの衣装を作る・・・何かある?」

「ああ、ちょっと依頼のメモ貸して下さい・・・・この人の衣装の手袋、指抜きにしたらいいかって迷ってましたね。他は特に何も」

「じゃあこれ、二組作る」

 

 露出度の高い奴はキツいから意識的に後の方に回してたけどな!

 

 

 

 ────────────────────

 

 

 

「サトシー、そろそろ晩飯・・・・って、すごいグロッキーなことになってんなお前・・・大丈夫か?」

「食べる・・・・」

 

 今夜の晩ご飯はわりと質素なメニューだ。パンとサラダにスープだけで、お金を使わないようなメニューだと感じる。この時期にお金を貯める理由というと・・・クリスマスか?

 それを皆が考えたのか、今夜の料理当番のめぐみんを含めた全員が食事に関する話をしていない。

 

「・・・そういえば、今日はサトシさんてばずっと部屋にいたわよね。何してたの?」

 

 ゲエーッ!どんな風に説明すればいいんだあれを!

 

「何かしらの生産依頼ではないか・・・・・って、そのサトシの表情がすごいことになってるな」

「怪しいですね・・・・何かよからぬ品物でも作っていたのではないですか?」

「でも聖は口が堅いからな・・・依頼されれば人に言い辛い物でも作りそう」

 

 アクアに続きめぐみん、ダクネスも俺を(いぶか)しむような目でみてきたが、和真のフォローにとりあえずは納得した。これで納得されるのをどう考えればいいのか判断に困るが。

 

 延々と服を縫ったり錬成したりし続けたおかげで、頑張れば今日中に衣装の制作が終わりそうな具合だ。それを抜きにしても、実質苦行のようなエロコス制作をここまで数時間に渡って続けてきたのだから、なるべく早めに仕事を終わらせたいのもある。

 

 

 

 食べ終わってから、俺は部屋に戻って衣装制作のラストスパートをかけようとしていた・・・・・・のだが、廊下の角に隠れて俺の様子を窺う影がいる。それはまぎれもない、アクアだ。

 俺が作っている衣装を見られれば、彼女に何を言われるか想像できない。しかし、これがサキュバスからの依頼だと彼女が知ったなら、彼女は決していい顔をしないだろう。

 とりあえず部屋に入ったら施錠をし、無断で部屋に入らないように無言で念押しする。彼女に鍵開け等の技術はない筈なので、作業中のこの部屋に押し入るというのは難しいだろう。

 後は俺が寝た後の衣装の管理だが・・・しょうがない。今夜は俺がこの部屋で寝るか。一応毛布は置いてあるし、一晩だけなら何も問題は・・・

 

 ガチャッ!

「上手く開けられたわ!私のピッキングも大したもの・・・ね・・・・・・」

 

 ピッキングしてまで部屋に入ってきたアクアの目線の先には、俺の手の中の物――――作りかけのサンタコス、それもレオタード仕様の、言い逃れようのないエロ仕様のものに向けられていた。

 

「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・」

「これは、依頼に基づいた製作品であり、俺自身の猥褻(わいせつ)目的は一切ない」

「え、えっと」「一切ない」「・・・・・」

「い い ね ?」

「あっうん」

 

 こうして、俺の社会的地位は守られた。

 

 

 

 

 

 ────────────────────

 

 

 

 

 

「「「「いらっしゃいませー」」」」

「お、おう・・・今日は衣装が普段と違うな・・・・イメチェンか?」

「せっかくですから、今年は試験的にクリスマスシーズン専用の衣装も導入してみたんです・・・・どうです?似合いますか?」

「お、おう!これもなかなかいいじゃねえか!今日はその衣装でやってもらおうかな・・・」

 

 衣装を納品してから数日後、『黒猫の尻尾』は新サービスで賑わっていた。

 元々行列を作るタイプの店ではなかったし、今もぱっと見ただけでは変化が分かり辛いが、長時間観察していれば普段より客の回転率が高いと分かる。

 

「まさかクリスマスだというのにこんなに客が来るなんて・・・以前は想像もしてませんでした」

 

 この時期は家で神に祈りを捧げたりして過ごす者もそこそこいるらしいが、ここで軽食だけ食べていく者もちらほらといる。おそらく彼らは一緒にクリスマスを過ごす家族がいて、今夜はその人と過ごすのだろう。

 

「よかったら、あなたも何か頼んでいきますか?サービスしますよ」

「それじゃあ・・・」

 

 メリークリスマス。

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