この素晴らしい世界にアンサンブルを!   作:青年T

10 / 51
 今回、ご都合主義、チート要素があります。何が、というのはサブタイを見て察した方もいるでしょうが、一応あんガル側の描写を意識した結果がこれなんですよね・・・


冒険者カード発行

 冒険者とは、街の外に生息するモンスター(人に害を与えるモノの総称)の討伐を請け負う人の事らしい。

 そして冒険者には職業とレベルがある。生き物を食べる、殺す等してとどめを刺す事で、その生き物の魂の記憶の一部、通称、経験値を吸収できるらしく、それによってレベルアップでき、ステータス、つまり能力値が上昇するそうだ。職業によってステータスに補正がかかり、得意なことが各職業で分かれていく。また、職業の取得時やレベルアップ時にスキルポイントというものが手に入り、冒険者カードでそれを使い、スキルというものを獲得できるらしい。

 成程、ゲーム的だ。詳しい理屈は聞かなかったしひょっとしたら受付の彼女も知らないのかもしれない。あるいはリンゴが木から落ちるように当たり前の事として見ているのか。地球でそういった話は聞いたことが無いが、おそらくこの世界特有の現象なのだろう。

 

 まあそんな事は今、重要ではない。

 肝心なのは、俺達が今からその冒険者になる、ということだ。

 受付の女性に言われた通り、書類に自分の特徴を書いていく。見るのも書くのも初めての文字の筈だがすらすらと読み書きできる。神の力ってすげー!

 

「はい、結構です。えっと、ではお二人とも、こちらのカードに触れてください。それであなた方のステータスが分かりますので、その数値に応じてなりたい職業を選んでくださいね。経験を積む事により、選んだ職業によって様々な専用スキルを習得できる様になりますので、その辺りも踏まえて職業を選んでください」

 

 おお、それだけで各個人の能力が判るとは凄い技術だ。それともそれを簡単に実現させる手法がこの世界で発見されたのか?

 しかしこれは所謂『三値』とかいう奴に近いのか?本気で厳選すると果てしないと聞くが、職業を決めてから判定ではないのが救いか。体力には自信があるが、こちらで通用するステータスかどうか・・・まあまずはカズマからなのだが。

 

「・・・はい、ありがとうございます。サトウカズマさん、ですね。ええと・・・筋力、生命力、魔力に器用度、敏捷性・・・どれも普通ですね。知力がそこそこ高い以外は・・・あれ?幸運が非常に高いですね。まあ、冒険者に幸運ってあんまり必要ない数値なんですが・・・でもどうしましょう、これだと選択できる職業は基本職である《冒険者》しかないですよ?これだけの幸運値があるなら、冒険者稼業はやめて、商売人とかになる事をオススメしますが・・・よろしいのですか?」

 

 おい、商売は運だけでやっていける仕事じゃないぞ。

 

「え、ええと、その、冒険者でお願いします・・・」

 

 それをカズマも理解していた、というよりは、今更後には引けない、といった顔だ。だがアクアはそんな彼を見てニヤニヤしている。戦力が少ないとアクアが天界に帰る日も遠くなるのだが分かってなさそうだ。

 

「ま、まあ、レベルを上げてステータスが上昇すれば転職が可能ですし!それに、この冒険者という職業は、冒険者という総称が指す様に、あらゆる職業をまとめたと言いますか・・・ええ。初期の職業だからって悪い事は無いですよ?なにせ、全ての職業のスキルを習得し、使う事ができますから!」

「その代わり、スキル習得には大量のポイントが必要になるし、職業の補正も無いから同じスキル使っても本職には及ばないんだけどね。器用貧乏みたいな」

 

 受付のフォローに速攻で水を差すアクア。

 大丈夫だカズマくん!誰にだって駆け出しの頃はある。それを恥じる事はない。それに全ての職業のスキルが使えるとかカッコいいじゃん。カズマくんマジ可能性の獣!(高速ハンドシグナル)

 

 それはさておき次は俺の番か。アクアは「真打は最後に登場するものよ」とでも言いたげな顔でこちらを見ている。ラストは彼女に譲るとしよう。

 

「えああっ⁉何ですかこの生命力!人間のそれじゃありませんよ⁉他の数値も軒並み高い水準でまとまってますし・・・あ、知力は平均並みですね。これだったら狂戦士みたいな近接特化の職業に・・・ええっ⁉最初からけっこうな数のスキルが発現してますよこれ!格闘、浄化に一時強化系、この辺りのゴーレム関係なんて伝説級と言っても過言ではないレベルです!こうなるとどれを勧めるべきなのか・・・」

 

 どうやら俺のステータスは凄いことになっていたらしい。人間のそれではないと言われてしまった。ちなみに俺は秘めた力を解き放つとママチャリで京都までバスと並走するくらいの持久力と筋力を出せたりする。何なんだ俺は・・・

 

「・・・なあアクア、あいつが貰った特典って本当に《ゴーレムマスター》なのか?なんか色々チート要素がてんこ盛りみたいなんだが」

「そのはずよ。冒険者になる前に鍛えたりしてたらその分高いステータスから始まるわ。見た感じ全力で生き急いでる様な生き方してたっぽいしこんなこともあるんじゃないかしら?」

 

 後ろで二人がひそひそと話をしているが《ゴーレムマスター》に身体能力強化とかが付与されていないのならこのステータスは俺の自前のものだ。君咲学院でのあの日々は俺に様々な技能を習得させていたらしい。普通の高校生はそんなに技能の習得を余儀なくされる日常は送らないのだろうが、まあ是非も無いよね!

 それはさておき、

 

「・・・どんな職業が選べるんです?」

「そうですね・・・非常に高い生命力と筋力を生かすなら、魔法が使えない代わりに高い近接性能を持つ狂戦士や武闘家、いくつかの魔法と高い防御力を誇るクルセイダーでしょうか。《ゴーレム創造》を使うなら、クリエイターを筆頭とする生産系の職業で高い補正を得られますが、生産職は基本的に戦闘をするものでないため、その方面での補正はほぼ無いものと・・・」

 

 そこで受付さんがはた、と何かに気付いたように口を止める。不具合でもあったのだろうか?

 

「・・・これだけの高い能力値ならば、補正がかからなくとも並の近接職に劣らぬパワーを発揮できるのではないか、と・・・」

 

 成程。それは盲点だった。

 近接職ならそれこそ桁外れの性能になるのだろうが、よく考えるとそれが有効な戦略かどうかという疑問が生じる。

 アクアの口振りを思い出すに、これまでにも俺達と同じように転生した日本人が複数人こちらに来ている筈だ。彼らも何かしらの特典を持ってこちらに来ていた筈で、その中に近接戦闘に特化したものを持って来た者も当然いただろう。勇者が剣を持ち勇ましく突撃するのは王道であるが故に人気も高い筈だ。しかし彼らは未だ魔王を倒していない。そうなると、愚直な近接戦闘では後々通用しない可能性が高い。

 ならば支援系のアイテムなんかを豊富に作り、敵の弱点を突くような戦い方ができる方が良いのではないだろうか。火力についてもゴーレムがあるから不足はしないだろう。

 やはりそちらの方がいいな。しかし生産職にはどんなものがあるのだろうか?

 

「はい、それでしたら、ポーション等の回復系アイテムの生産が得意な薬師、武器や防具の生産に特化した鍛冶師、魔道具の生産に長けたクリエイターの三つがありますね。鍛冶師なら筋力等にも補正がかかりますが、クリエイターはゴーレムにも精通しているため、生産系ならそのどちらかがオススメですね」

 

 ふむ、当面の金策を考えると鍛冶師が有利か。装備を買わなくていいのならかなり出費が減る筈だ。だが装備だけでやっていける程甘い冒険にはならないだろう。高価な回復アイテムや消費アイテム、需要も供給も少ないアイテムを自由に生産できればそれも貢献になる筈だ。だが鍛冶師になったらどんな性能の装備が作れるのだろうか。それ次第では心置きなく鍛冶師でやっていくのだが。

 

「鍛冶師自身のスキルにもよりますが、素材が良くないと高い品質の装備は作れませんね。魔道具なら製作者の魔法への理解によるところが大きいですが、魔道具並みの万能性と実践向けの強度を兼ね備えた装備はどうしても難しく、特殊な素材があっても単純な魔法を発動させるのが限界ですね・・・」

 

 強い衝撃が駄目なのだろうか。精密機械で殴りつければ機械としては壊れるのは自明か。一発だけならありかもしれないけど。

 しかし将来性を考えると、クリエイターとしてゴーレムの運用やアイテム生産を頑張っていくのが最善か?

 

「クリエイターでお願いします」

「クリエイターですね!魔道具を主に多種のアイテムを生産可能で、多少の魔法も扱える職業です!それではクリエイター・・・っと。冒険者ギルドへようこそ!今後の活躍を期待していますよ!」

 

 《クリエイター》と表示された冒険者カードをしみじみと眺める。ふと横を見るとカズマは何とも言えない表情でこちらを見ている。どうかしたのだろうか。

 

「いや、何と言うか、相方が凄いチート野郎だったと言うか・・・」

「・・・いや、不意打ちとかは、苦手・・・」

「そういう事じゃなくて!もっとこう、歓迎されたいと言うか、チヤホヤされたいと言うかァ!」

「・・・最初から、何でもできる訳じゃない。じっくり、頑張れ」

「そうれはそうだけどッ・・・!」

 

 尚、この後アクアが全体的に非常に高い(生命力と知力以外は全ての数値が俺より圧倒的に上)ステータスをたたき出し、俺の時より大きな喝采を受けてアークプリーストという職業になった。治癒や支援系の魔法に優れ、近接戦も馬鹿にならない万能職らしい。

 カズマの俺への怒りはその歓声でうやむやになった。




星海(ほしうみ) こよい
 君咲学院2-A所属。腰まで届く金髪ロングの合法ロリ。CV:豊崎愛生。
 母親と死別してしまったが父親には溺愛されている。天文部所属の人見知りがちな少女。関西弁で喋るんよ。
 従妹の八朔(はっさく) つゆりは、主人公と彼女を恋愛的な意味でくっつけようと画策している。こよい自身はそれをお節介だと感じているが、恋愛感情はある。
 ノベル版3弾は彼女のストーリーの詰め合わせ。


時国(ときくに) そら
 君咲学院3-C所属。腰まで届く銀髪碧眼。「ゆん、ゆん」と鳴く。
 常人を圧倒的に上回る聴覚を持ち、うるさい環境を嫌う。宇宙人との交信や、そのための募金をよく行うオカルト研究部所属の電波少女。『すぺりあん』という作中のキャラクターのぬいぐるみを持っている。
 主人公と一緒にいるのは苦痛ではない。むしろ完璧にデレデレである。可愛い。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。