この素晴らしい世界にアンサンブルを!   作:青年T

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 今更かもしれませんが、駄ヒロイン三人はカズマとのカプから変えるつもりはありません。まあ彼女達以外はまだ決まってませんが。


紅魔族の最強魔法使い

 仲間を募集する事には二人も賛成らしい。

 昨日は二人してとんだ無様を晒してしまったし、今後もこの三人だけでやっていけるとは思えない。ゴーレムの操作にもある程度慣れたしこのクエストはクリアできるだろうが、後々また不意打ちでやられてゲームオーバー、という展開も十分にあり得る。後数人くらい仲間がいた方がいいだろう。

 あまり大所帯だと管理が難しいし、こういうものは四、五人くらいが相場だと聞く。一人か二人、仲間を増やす事になった。

 

 で、晩御飯のカエルの唐揚げを囲みながら、どんな仲間を募集するか、という議論をする事になった。

 

「この私がいるんだから、仲間なんて募集かければすぐよ。なにせ、私は最上級職のアークプリーストよ。補助魔法に毒や麻痺なんかの治癒、蘇生だってお手の物。どこのパーティーも喉から手が出るくらい欲しいに決まってるじゃない。ちょろっと募集かければ『お願いですから連れてってください』って輩が上級職にだって山ほどいるわ!分かったら、カエルの唐揚げもう一つよこしなさい!」

 

 冒険者登録の時にもちらっと聞いたが、アークプリーストは上級職の中でも特に万能の職業らしい。その中でも特に有能な美人がいるパーティーとなれば、確かに引く手数多だろう。しかし・・・

 

「やらんぞ・・・というか、お前がそんな凄い職業でもこっちは最弱職と生産職だぞ。そんな人と一緒とか気まずくなっちまうわ。そもそもこんな駆け出し冒険者の街に、上級職がどれだけ居ると思ってるんだ?それもまだパーティーに所属してない、俺達と喧嘩とかにならない様な奴だぞ?ここは将来有望そうな駆け出しを見つけて、俺達と共に成長していく感じでいくべきだろ」

 

 和真の言う通り、この街で俺達と相性の良い上級職が都合良く居るとは思えない。むしろ断られるのではないか、と駆け出しが遠慮する姿が容易に想像できる。ギルドのパーティー募集の掲示板を見てこちらから誘いに行くべきか・・・?

 いや、俺達は魔王を倒すという壮大な目標があるのだ。アークプリーストからのパーティー募集に物怖じしない豪胆な人物を迎え入れるべきかもしれない。その人物が俺達と性格面で好相性かどうかは本人を見て決めればいい。

 あるいは・・・

 

「『最終目標は魔王討伐』と明記して、来た人を加える・・・?」

「なるほど・・・そうすれば勇敢な奴が来るかもな」

「じゃあそれで貼り出しましょう!今夜中に貼っておけば、明日の朝にでも勇敢な仲間が加わっている筈よ!」

 

 ────────────────────

 

 翌朝。

 

「・・・・・・・・来ないわね・・・」

「来ないな・・・」

 

 案の定というべきか、誰も俺達のパーティーに参加しようという冒険者は現れなかった。

 パーティー募集の貼り紙が気づかれていない訳ではない。一瞥しただけで目を離し、クエストの掲示板なんかに向かうのが大半なのだ。若干引き攣った様な顔を見るに、魔王討伐に参加する自信が無いのが大半なのだろうか。あるいは同パーティーに冒険者やクリエイターという弱そうなメンバーがいるのがマイナスなのか。

 

 もう少し誰も来なければ今日はこのままクエストの続きを、と考えたところで、俺達の元に一人の少女が寄って来た。

 

「魔王討伐を目標としたパーティーというのは、こちらでしょうか?」

 

 黒いマント、黒いローブに黒いとんがり帽子、指ぬきグローブとブーツも黒く、眼帯の無い左目だけは赤い少女の手にある巨大な杖は、彼女が魔法使い系の職業だと主張している。しかしそれらを身に纏う少女はかなり幼く見える。14前後くらいか?外見年齢だけならウチのしずくと同じくらいだ。更に右目が眼帯によって隠されており、すずさんを彷彿とさせる。彼女もまた、自身を他者と隔絶させる様な恐るべき禁忌を封じているのか・・・?

 そして彼女はおもむろにマントを翻し、

 

「我が名はめぐみん!アークウィザードを生業とし、最強の攻撃魔法、爆裂(ばくれつ)魔法を操る者・・・!」

 

 ・・・凄い名前だ。

「・・・冷やかしに来たのか?」

「ち、ちがわい!」

 

 男二人、この少女について測りかねているところ、アクアが口を開く。

 

「・・・その赤い瞳、もしかして、あなた紅魔族?」

 

 知っているのかアクア⁉

 

「いかにも!我は紅魔族随一の魔法の使い手、めぐみん!我が必殺の魔法は山をも崩し、岩をも砕く・・・!・・・という訳で、優秀な魔法使いはいりませんか?・・・そして図々しいお願いなのですが、もう三日も何も食べていないのです。できれば、面接の前に何か食べさせては頂けませんか・・・」

 

 なんと。

 今は食事時などではなく、俺達のテーブルには何もない。さて何を注文する?

 

「そうですね・・・ミートスパゲッティを、大盛りでお願いします」

「・・・飯を奢るくらいなら構わないんだがもう少し俺達の事をだな・・・・・・ところで、その眼帯はどうしたんだ?怪我でもしてるのなら、こいつに治してもらったらどうだ?」

「・・・フ。これは、我が強大なる魔力を抑えるマジック・アーツ(巻き舌)・・・☆もしこれが外される事があれば・・・その時は、この世に大いなる災厄がもたらされるだろう・・・」

 

 そんな強大な力を秘めたアークウィザードがこの街にいたのか・・・案外上級職限定の募集でも人が集まったかもしれない。

 

「まあ嘘ですが。単にオシャレで着けているただの眼帯です」

 

 嘘かよ。

 

 和真がマジック・アーツを引っ張って遊んでいるところに、アクアから説明が入る。

 曰く、紅魔族は総じて高い知力と強い魔力を持ち、大抵は魔法使いのエキスパートになる凄い民族らしい。そして彼女達は、黒い髪と紅い目、そして変な名前を共通して持っているらしい。

 とりあえず家族の名前がどんな感じなのか聞いてみたところ、彼女は母ゆいゆいと父ひょいざぶろーの間に生まれた長女で、妹のこめっこがいるそうだ・・・凄い名前だ。ちなみに紅魔族からすれば、里の外の人間の方が変な名前らしい。

 

「・・・・・・とりあえず、この子の種族は質のいい魔法使いが多いんだよな?仲間にしてもいいか?」

「いーんじゃない?冒険者カードは偽造できないし、彼女は上級職の、強力な攻撃魔法を操る魔法使い、アークウィザードで間違いないわ。カードにも、高い魔力値が記されてるし、これは期待できると思うわ。もし彼女の言う通り本当に爆裂魔法が使えるのなら、それは凄い事よ?爆裂魔法は、習得が極めて難しいと言われる爆発系の、最上級クラスの魔法だもの」

 

 アークウィザードは攻撃魔法に優れた魔法使いであり、瞬間火力としてはトップクラスだ。それが攻撃力トップクラスの魔法を使うというのなら、その威力はどれほどのものなのか。むしろ俺達が寄生しているみたいにならないだろうか?

 まあ、今日一日ならそんなに問題も起こらないだろう。今日の活躍を見て、正式契約はその後にしよう。

 

「だが私と組むというのなら、私の事はちゃんと名前で呼んで欲しい」

「そうかいアークウィザード。俺はカズマ。こいつはアクアで、こっちがサトシ。ほら、何か頼め」

「・・・よろしく、めぐみん」

 

 和真の態度にめぐみんが何か言いたげな顔をしていたので、とりあえず撫でる。

 

「・・・おい、私を子供扱いするな。もう数ヶ月すればこの国では成人ですよ」

 

 ふむ、この国の成人は何歳からなのか。そういえばこの国の名前もまだ知らないな。後々にでも調べておくか。

 まあ、今日の目標はジャイアントトード三匹以上の討伐だ。昨晩はゴーレムの練習もしたし、わざと足を引っ張られるような事もなければ大丈夫だろう。

 

 ────────────────────

 

「爆裂魔法は最強魔法。その分、魔法を使うのに結構時間がかかります。準備が調うまで、あのカエルの足止めをお願いします」

 

 俺達は満腹になっためぐみんを連れ、昨日と同じ平原に来ていた。目標はもちろんジャイアントトードだ。

 辺りを見渡すと、遠く離れた所に一匹、その逆方向の比較的近い所にもう一匹カエルがいた。どちらも俺達に気づいてこちらに向かって来ている。

 

「遠い方のカエルを標的にしてくれ。近い方は・・・俺とアクアで行くぞ。聖は新しいカエルが出てこないかめぐみんの横で警戒していてくれ。アクア、お前一応は元なんたらなんだろ?たまには元なんたらの実力を見せてみろ!」

「元って何⁉ちゃんと現在進行形で女神よ私は!アークプリーストは仮の姿よぉ!」

 

 涙目で和真に掴みかかるアクアの言葉を聞き、めぐみんが不思議そうに、

 

「・・・女神?」

「・・・を、自称している可哀想な子だよ。たまにこういった事を口走ることがあるんだけど、できるだけそっとしておいてやって欲しい」

 

 ああもう、アクアが涙目になっちゃった。よしよし、お前は立派な女神だよ・・・

 

「・・・お前ちょくちょく女の子の頭撫でてるよな。趣味なのか?」

「・・・撫でた方が良いと思った」

「ほう、さっき私も食堂で撫でられましたが、それは私が泣き出しそうにでも見えたからですか?」

「機嫌が悪そうだった」

「「・・・・・・」」

 

 そんな中、俺の手を振り払ってアクアがカエルへと駆け出した。

 

「何よ、打撃が聞き辛いカエルだけど、今度こそ女神の力を見せてやるわよ!見てなさいよカズマ!今のところ活躍してない私だけど、今日こそはッ!」

 

 そう言って果敢にカエルに殴り掛かるも今日も頭から食べられてしまう。急いで助けなければ。

 しかし俺のすぐ横から、空気が震える様な感覚を感じた。そちらを見ると、めぐみんがその杖に魔力を集中させている。魔法については今のところからっきしな和真でも、彼女の使おうとする魔法が凄まじいものである事は容易に理解できた様だ。

 魔法を唱えるめぐみんの声が大きくなり、そのこめかみを汗が一筋伝う。

 

「見ていてください。これが、人類が行える中で最も威力のある攻撃手段・・・これこそが、究極の攻撃魔法です」

 

 めぐみんの杖の先端に、濃密な魔力の球体が現れる。小さくも眩しい光を放つそれは、俺には到底出せない様な圧倒的な量の魔力だと感覚で分かった。

 

 そして、めぐみんは紅く輝く目をカッと見開き、その名前を口に出す。

 

「『エクスプロージョン』ッ!」

 

 平原を一筋の閃光が走る。

 大小様々な大きさの魔方陣が、カエルのいる所を指すように一列に現れる。

 そしてそこから放たれる圧倒的な炎は、カエルを一瞬にして焼き尽くし、そこには隕石でも落ちたかの様な巨大なクレーターだけが残った。

 

 これが・・・

 

「最強の攻撃魔法・・・」

「・・・すっげー・・・」

 

 駆け出し冒険者の街にいたからめぐみんも駆け出しなのかと思ったが、実は経験豊富なベテランの楽隠居だったり・・・しないか。しかしまだ成人していないらしいのにこれ程とは・・・

 俺や和真もいずれあの領域に至るのか?火力が全てではないとは分かっているが、駆け出し冒険者の街にいる未成年の少女がこんな力を持っている事に驚嘆するばかりだ。

 そんな紅魔族の少女は・・・

 

 

 

 うつ伏せになって倒れていた。

 

「ふ・・・我が奥義である爆裂魔法は、その絶大な威力ゆえ、消費魔力もまた絶大・・・要約すると、限界を超える魔力を使ったので身動き一つ取れません」

 

 ええー・・・何でそんな奥義をカエル一匹に使っちゃったの。

 いや、今回は既に途中まで進めていたクエストを終わらせる予定だったし、この機会に全力を披露しようとしたのか。

 それならその目論見は大成功といえるだろう。あの爆発を見た時、俺h

 

 

 

 

 

 

 

 ────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 俺やアクアを食べた二体のジャイアントトードを和真が倒し、クエストクリアしたと聞いたのは、俺が和真に救出されてすぐの事だった。




 多分これが最後の(さとし)丸呑みだと思います。

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