この素晴らしい世界にアンサンブルを!   作:青年T

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ダクネスの力量とアクアの能力

 和真のレベルが6に上がったらしい。

 昨日はキャベツ収穫しかしていない筈だが何故レベルアップしたのか。キャベツとはいったい・・・うごご

 ともあれ、これで得たスキルポイントと使って彼は《潜伏》《片手剣》《初級魔法》を習得したそうだ。バランスとしては良い方ではなかろうか。

 そして今日、彼は自身の装備を買い揃えに、同じく着のみ着のままでこの世界に放り出されたアクアを連れて武具ショップへと向かった。本当は俺も誘われていたし、確かに装備は買っておきたかったが、ダクネスの剣がどれほど酷いのか確認したい、というと納得してくれた。

 

 ────────────────────

 

「何、私の技量を確認しておきたい、と・・・ならさっそくクエストか。私の防御力を見るなら高難度の奴を・・・」

「違う。ゴーレム」

 

 今は鎧が修理中らしく軽装のダクネスが意気揚々と高難度クエストを受けようとするのを止め、空き地でまず一体の土ゴーレムを作成する。

 それは一般的なゴーレムと同程度の鈍重さでダクネスに迫る。まあ見た目ほど攻撃力は高くないようにしているし、上級職ならまず問題なく倒せるレベルだがはたして。

 

「あれを倒せばいいんだな・・・てぇぇい!」

 空振り。

「・・・ふんっ!」

 命中。でも一回目に空振りしてからも速度を変えなかったが。

 

「こんなところだ・・・どうだ、私がパーティーに入るのは不満か?」

 

 見たところ攻撃力も侮れない。器用さを除けば前線として欠点らしい欠点も無さそうだが。

 じゃあ次はもっと本気のゴーレムでやってみよう。一般的な人間と同程度の速度で、反応も普通にする、というかそう動かす。

 

「はあぁっ!てぇい!たあぁ!」

 

 見ていて可哀想になるほどの空振りだ。しょうがないので立ち止まらせ、ゆっくりと腕を振りかぶらせながら隙を演出する。

 

「・・・せぇぇい!」

 ・・・空振り。

 

「・・・いっそ殺せ!」

 そして涙目になられた。

 

 とはいえ本当に殺すわけにもいかないので、今度はダクネスの防御力を試してみる事にする。

 まずは挨拶代わりに・・・ちょっぷ☆

 

「・・・?今度は防御力か?なら全力で打ち込んでくるがいい・・・さあ来い!」

 

 お言葉に甘えて、徐々に腕の力を強くしていく。

 しかしいくら強くしていっても痛そうではない。そろそろ岩も割れそうなくらいには力を出させているが、ダクネスが少し嬉しそうになっている程度だ。

 

 とりあえずダクネスの強さは分かった。これなら立ち回り次第だが十分にやっていけるかもしれない。今日は付き合ってくれて感謝する。

 

「ああ・・・しかしお前はギルドに戻らないのか?まだカズマ達が戻ってくるには早いが、修行でもするのか?」

 

 そんなところだ。

 まずは地面の土をゴーレムの作成時と同じ様に加工し、土の柱を生やす。粘土状になったこれは強度こそあまり無いが、どの様に壊れたか、というのは分かりやすい・・・筈。

 

 俺が今からやろうとしているのは《片手剣》スキルの習得だ。

 特訓によってスキルを習得する、というのがどれだけ難しいのかを知りたいのだ。これでスキルが習得できれば万々歳、無理でも別に費用はかからないから損失もない。

 片手剣はまだ持っていないが、真の剣士にとって素手とは短い得物と同じなのだと聞く。ならば素手でも・・・短剣扱いになるのか?まあせっかくだからこれでいこう。

 柱に手刀を振り下ろす。途中で腕が止まる。二撃、三撃と繰り返して柱は折れたが、どう見ても力任せに折った跡だ。

 二本目の柱を立て、そこに手刀を振り下ろす。先程より早く折れたが、やはり『斬れた』というより『へし折れた』といった具合だ。

 面倒なので複数本を同時に立てる。また手刀を振り下ろそうと思ったが、ふとある事を思いつく。

 魔法の発動時に使っていた魔力。それを手に纏わせる様に放出し、威力が変化するかどうか見てみるのだ。

 

「あれ、聖、こんなところで何やってるんだ?」

 

 どうやら和真達は装備を買って帰って来たようだ。今までのジャージ姿では冒険者には見えなかったが、この世界の服に革の胸当て、青銅か何かの篭手と()()()()が随分とさまになっている。

 ちょうどいいタイミングなので、《片手剣》スキルを持つ和真にも見てもらおう。

 右腕が仄かに光り、何かしらの特殊な力があるのが他人からも分かるだろう。俺はそれを胸の前で横向きに構え、横薙ぎに振るった。

 

「特訓」

「なんだ今の⁉腕がピカッて光ったぞ!何のスキルなんだ⁉」

 

 そう言われても感覚で今作った攻撃方法だしスキルになるのかも分からない。冒険者カードを確認してみるが、武器関係も含め目新しいスキルは無かった。

 柱を見てみると、一撃で折れてはいたが破壊痕は変わらず粗い。強くなったのはパワーだけの様だ。

 

 それはそうと今日はこれからどうするのだろうか。せっかくならクエストに行ってもいいが。

 

「お、おう、そうだな。二人はギルドにいるのか?そうならまず合流したいが・・・」

 

 ────────────────────

 

「ジャイアントトードが繁殖期に入っていて街の近場まで出没しているから、それを・・・」

「カエルは嫌!」

 

 言いかけたダクネスを、アクアは強く制止した。

 

「・・・なぜだ?カエルは刃物が通り易く倒し易いし、舌による捕食以外の攻撃もまずしてこない。倒したカエルも食用として売れるから稼ぎもいいし、今のカズマの装備なら、金属を嫌がって狙われないと思うぞ。私も後衛三人を守るくらいはできる」

「あー・・・アクアと聖はカエルに食われかけた事があってな・・・二人とも頭からパックリいかれて粘液まみれにされたんだが、聖は大丈夫なのか?」

 ―――むしろリベンジに行きたいくらいだが。

「成程な・・・俺は大丈夫らしいし、なんならアクアを置いていってもいいけど」

 

 そんな会話をしていると、こちらを見るアクアの顔は怒りを露わにし、めぐみんの顔は得体のしれないものを見る感じになり、ダクネスはハァハァと興奮し始めた。

 

「何よ!仮にも女神であるこの私を無視する気⁉」

「何ですか今の・・・言葉無しで分かりあった感じは・・・⁉」

「・・・あ、頭からパックリ・・・粘液まみれに・・・」

 

「もうどこから突っ込めばいいのか・・・話を戻すが、緊急クエストのキャベツ狩りは除くとして、このメンツでの初クエストだ。楽に倒せるヤツがいいな」

 

 アクアからの文句がなければカエル討伐がそれにあたったのだろうが、駄目なら仕方ない。他にいいクエストが無いか探しに行こう。

 そう思って掲示板を見に行ったのだが、テーブルではアクアと和真の口喧嘩が起こっている様だ。大丈夫か、と遠巻きに様子を(うかが)っていると、アクアが泣きながら俺を呼びつけた。

 

「ねえ・・・サトシって、何か役に立ってる?」

 

 そんな事を俺に聞かれても。

 

「アクアがまだ何も役に立ってないって事を言ったらこうなったんだ。お前は一応カエルも一匹だけ討伐したし、キャベツ狩りの時はトラブルに対処してたって聞いたぞ。そういえば工事の時もかなり頑張って報酬に色つけて貰ってたな。それに対してアクアは何やってた?」

 

 アクアの活躍・・・ええと・・・ええと・・・

「・・・・・・宴会芸?」

「わああああーーーっ!サトシにもいらない子扱いされたあああ!」

 

 そんなつもりは無かったのだが。

 

「で、何か手軽にできて儲かる商売って何か思いつくか?商人か何かを兼業して、楽に経験値稼ぎができる様になりたいんだよ・・・あと、アクアは最後の取り得の回復魔法をとっとと俺に教えろ。スキルポイント貯まったら、俺も回復魔法の一つぐらい覚えたいんだよ」

「嫌ーっ!回復魔法だけは嫌!嫌よおっ!私の存在意義を奪わないでよ!私がいるんだから別に覚えなくてもいいじゃない!嫌!嫌よおおおっ!」

 

 確かに回復魔法を使える仲間が一人だけなのは不安ではあるが。

 そうしてアクアが泣き喚いているところにめぐみんとダクネスが戻って来た。どうやら悪目立ちし過ぎたらしい。彼女達の目はアクアに同情する類のものだ。

 

「こいつの事は気にしなくていい。しかし・・・

 

 ・・・ダクネスさん、着痩せするタイプなんですね・・・」

 

 成程、和真の言う通りだ。

 今日のダクネスは黒いタンクトップとスカートに革ブーツで、ボディラインが浮き出ている。

 出るところは出て、締まるところは締まる。まさに女性的なスタイルだ。

 俺は性欲を律する事には慣れているが、そうではないらしい和真は視線がダクネスの身体に釘付けになっている。

 

「・・・む、今、私の事を『エロい身体しやがってこのメス豚が!』と言ったか?」

「言ってねえ」

 

 まあ中身が()()だから、和真もむやみに手を出す様な事にはならないだろうが。

 

「話を戻すがクエストを受けるなら、アクアのレベル上げができるものにしないか?」

「どういう事だ?そんな都合のいいクエストなんてあるのか?」

 

 ダクネスの発言に、いつの間にかめぐみんと睨み合いになっていた和真が疑問を呈する。

 

「プリーストは一般的にレベル上げが難しい。なにせプリーストには攻撃魔法なんてものが無いからな。戦士のように前に出て敵を倒すわけでもなく、魔法使いのように強力な魔法で殲滅するわけでもない。そこで、プリーストが好んで狩るのがアンデッド族だ。アンデッドは不死という神の(ことわり)に反したモンスター。彼らには、神の力が全て逆に働く。回復魔法を受けると身体が崩れるのだ」

 

 成程、エ*エフなんかでもそんな感じらしいし、それならアンデッド相手はアクアの独壇場という訳か。なにせ仮にも女神様だからな。ちなみにダクネスなどのクルセイダーもある程度は神の力を扱えるらしい。

 そういえばアクアは自身を水の女神と言っていたが、それなら水属性の魔法も使えたりするのだろうか。使えるなら炎系モンスター相手にも戦力として戦えるし、攻撃力次第では水に強くないモンスター相手でも十分戦えそうだ。

 それはそうと、知力と幸運以外のアクアのステータスはまさしく人間を逸脱しているレベルのものだった。最初から高いステータスを持つ者はレベルアップがゆっくりになると聞いたが、それなら尚の事レベル上げをこまめにする必要がありそうだ。

 

「うん、悪くないな。問題はダクネスの鎧がまだ戻ってきてないことなんだが・・・」

 

 和真も同じ事を考えたのか、ダクネスの意見に賛成した。当のダクネスの防御についてだが、

 

「ダクネス、凄く硬い。強い」

「うむ、私は防御力特化のスキル構成だからな。鎧無しでもアダマンマイマイより硬い自身がある・・・別に筋肉で硬い訳ではないからな?」

「お、おう・・・そうか・・・後は、アクアにその気があるかだが・・・」

 

 いつの間にか泣き止んでいたアクアに視線を向ける。僅かに身じろぎをする姿は・・・これは・・・・・・

 

「・・・すかー・・・・・・」

 

 泣き疲れたアクアはそのまま眠ってしまったようだ。

 やれやれ、困った女神様だ。

 

「しれっと毛布かけんな」




 少し前にも書きましたが、三人娘は攻略対象外です。
 そもそも聖は出会った女性を軒並み落とすレベルのイケメンではないです。
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