書き溜めはこれを抜いて後3話あるので元日に投稿したら不定期になります。
「あなた達もキャベツ収穫の報酬ですね。サトウカズマさんのパーティーの分は・・・はい、それでは一人ずつ並んでくださいね。」
普段より比較的長かった待ち時間を終え、俺達の分の報酬を受け取ることになった。
先にめぐみん、ダクネスが受け取ったが、どちらもかなりの大金のようだ。どれだけの金額かは聞いていないが、ジャイアントトードの時の報酬がちっぽけに思える札束が渡されている。
「アマミサトシさんは収穫には参加していませんが、備品の確保や事務作業で目覚ましい活躍をしました。今年はトラブルが多く、あなたがいなければクエストの実施も危うかった程です。なので、報酬として50万エリスが支払われます」
50万⁉確かジャイアントトード5匹の討伐が肉の買い取り抜きで10万エリスだったのを4人で山分けしたんだったか・・・圧倒的だな。俺の仕事は肉体的な危険はなかった筈だが、それほどの事態だったのか。
「・・・あなたがやった仕事の量は、平均的な生産職の方を大きく上回っていたんですよ?質をあまり問わない内容だったとはいえ、あなたの活躍はそれほど大きかったんです」
―――まあ、そういうことならありがたく受け取っておこう。
さて、次は和真か。確か凄くたくさんのキャベツを収穫していた筈だが、どれだけ稼いだのか・・・
・・・・・・・・なんか俺の二倍くらい稼いでませんかね彼。
そしてアクア。彼女も和真ほどではないが、けっこうな量のキャベツを収穫していた筈だ。ひょっとしたら7、80万くらいは貰ってくるかもしれない。
「なんですってえええええ⁉ちょっとあんたどういう事よっ!何で5万ぽっちなのよ!どれだけキャベツ捕まえたと思ってんの⁉十や二十じゃない筈よ!」
・・・・・・・・5万?
「そそ、それが、申し上げ難いのですが・・・・・・アクアさんの捕まえてきたのは、殆どがレタスで・・・」
「・・・・・・なんでレタスが混じってるのよー!」
「わ、私に言われましてもっ!」
・・・・・・・・・どこから突っ込めばいいのか。ここはもはや俺達の知る世界では・・・最初からなかったな。
そういえば彼女は、今回の報酬に期待してここで多額のツケを作っていた筈だが、5万で払えるのだろうか。
「サトシ様ー!前から思ってたんだけど、あなたってすごく真面目で、なんか良い感じよね!」
なんかって何だなんかって。
ともあれこの様子では5万じゃ返せない金額なのだろう。まずは10万エリスを出して様子を見る。
「ありがとー!丁度ここの酒場のツケも10万ちょっとだったのよ!一時はどうなることかと思ったけど助かったわ!」
喜んでその10万に手を伸ばすアクアを和真が遮る。
「おい聖。こいつをあんまり甘やかすな。こいつを甘やかしたら確実に調子に乗ってまたどっかで借金を作る。俺にはそうなってまたお前に泣きつくアクアが簡単に想像できるな。そしてアクア、お前仮にも女神なんだろ?それが大声で喚き散らしたと思ったら金の無心・・・俺のことヒキニートって呼んでるお前も大概
「あ・・・あああ・・・・・・」
アクアが悲しげな顔でフルフルと震え出したが、和真の言う事は正しい。言い方はどうかと思うし、俺としては脛をかじらせてもいいくらいだが。
「・・・・じゃあ、貸し」
「・・・・はい」
後ろ髪の引かれる思いをしながら、俺はアクアに貸しとしてお金を渡すことにした。
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そしてその後、俺達は思い思いに武具や魔道具なんかの店を巡ることになった。
程度の違いこそあれど多くの冒険者があぶく銭を手にした今、彼らも同じように街に向かっており、またそれを予期したのだろう商人が色々な高級品を仕入れて来ている。
そして俺は和真と連れ立って武具ショップに来ていた。めぐみん、ダクネスは自分好みの装備を既に工房に発注しており、アクアは自分用の杖を天界から呼び寄せることができるらしく装備を更新する必要が無い、ということらしい。
どちらも武器の種類の変更はないとして、現在の装備より良い感じのものを購入する、という予定になっている。俺が腕輪で和真が片手剣だ。流石にその2つが隣り合って陳列されている筈もなく、俺達は早々に分かれて品揃えを確認することにした。
・・・・やけに腕輪が人気だな。
腕輪は魔法強化としては同ランクの杖にはまず劣る。しかし手に握らなくていいことから魔法戦士の魔法補助に役立ち、また種類によっては特定の魔法を魔法使い以外にも使用可能にする物があり、戦士や盗賊がそういったタイプの物を使用することがあるのだとか。
しかし後者のタイプは高額で、こんな駆け出し冒険者の街では普通に買える者などまずいないのが実情である。しかしこの盛況を見るに、キャベツの報酬で買えそうか見に来た冒険者が多数、といったところか。
一番注目されているのは『エンチャント・セイクリッド』が戦士などにも使用可能になる腕輪だ。悪魔やアンデッドに優位に立てる属性であり、アークプリーストくらいしか実用レベルで扱えないそれを容易に使用可能となれば需要はかなりある筈だ。性能次第ではもっと強い冒険者のひしめく街でも売れるだろう。
事実、約30万エリスという超高額に成金冒険者達も手を出せないらしい。俺は買えなくもないが、アークプリーストのアクアがいる以上無理に買う必要もないし、これは別にいいか。
・・・と立ち去ろうとすると、真剣な顔で財布とにらめっこしている女冒険者がいた。
緑がかった金髪の彼女はショートソードを腰に下げており、戦士系の職業だとわかる。他の冒険者より高そうな装備が周りの駆け出しとの差を感じさせるが、それでもその腕輪は高額だったらしい。しかしそれを見る彼女の目は真剣で、それを手にいれなければならない事情があるようだ。
いくらか金を出してやるべきか。そう思った俺は彼女に話しかける。
「・・・・あの」
「ん?何あんた・・・・・・本当に何あんた。札束なんか見せつけて自慢のつもり?それとも身体目当てなの?」
「金が必要なのかと」
そう言うと、彼女の俺を見る目つきが変質者を見るものから不審物を見るものになった。
「確かに必要だけど、あんたみたいな得体の知れない奴から借りてろくな事になる気がしないわよ・・・なんなのあんた、結局何が目的?」
「何か困ってたみたいだから」
「だから!それで何で見ず知らずの相手に金を貸す事になるのって話!」
そう言われても話すような理由が最初から無い。困っている人を助けるのはもはや俺にとって条件反射の様なものなのだ。
返答に詰まっていると、いつの間にか少女の目つきが変質者を見るものに戻っていた。
「ほらやっぱり!どうせ何か良からぬ事を企んでたんでしょ!ああ気持ち悪い!」
・・・・・・そんな風に思われてしまうのか。
俺としてはこれが最善だと思ったのだが、どうやら失敗だったようだ。
ああ、辛い。本当に辛い。
「え、オイ
「・・・金を貸そうと」
「あの知らない娘に・・・いくら?」
「10か20万くらい」
「この馬鹿!馬鹿野郎!!」
あああ引きずられる~
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そして店から出された俺に和真は言う。
「・・・俺な、正直お前がいなけりゃあのパーティーで魔王討伐なんて無理だと思ってたんだよ」
―――アクア達は能力だけはあると思うが。
「それでも性格にくせが強すぎてな・・・俺達がいなけりゃあいつら、そもそも冒険者としての活動からして無理だと思うだろ?・・・あ、ダクネスにはクリスがいたか。ともかく、あいつらは誰かが手綱を取らないと暴走しかねない奴らなんだが、あいにく俺は一人だ。俺だけだったらあいつらの起こす問題を全て止められるとは思えない」
―――まあ、そうか。
「そこでお前もあいつらを上手く抑えて欲しかったんだが・・・」
―――だが?
「やっぱお前もあいつら側な気がしてきた」
・・・・見限られた?
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君咲学院3-B所属。黒髪のショートボブに、左目を眼帯で隠している僕っ娘。オッドアイで右目は赤、左目は金。
軽音部の部長で重度の中二病患者。自分のことを『翼の折れた
『アンジー』の親友。君咲学院に入学したばかりの頃は自分の目がコンプレックスでオドオドした少女だったが、彼女との日々の中で立派にロックンロールを高らかに歌い上げる堕天使になった。
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君咲学院3-A所属。茶髪のポニーテール。
剣道部主将のやべー奴。『番長』と呼ばれた時代もある。日本刀を持ち歩いており、少なくとも現代科学が説明できる範囲の強さでは作中最強クラスと言っても過言ではない。約数名未知数すぎるのがいるから・・・
実は良家のお嬢様で、婚約者(ただし女)もいる。しかし体は闘争を求める。後たまにマゾい。