この素晴らしい世界にアンサンブルを!   作:青年T

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 今回は後書きに番外編を入れてみました。単体でページを持たせる程の文章量ではないので。


死の騎士、再来

 放送を聞いた俺達は急いで正門まで駆けつけた。ダクネスだけは重装備なので、彼女だけ一足遅くなってしまったがまあ仕方ない。

 正門前にいたのは確かに先日のデュラハンだが、その後ろには数十体の鎧の騎士を引き連れている。デュラハンの特徴や僅かに見える腐った肉体から察するに、彼らはアンデッドナイトと呼ばれる中位のアンデッドだろう。数だけなら先に集まっていた冒険者達と互角にも思えるが、一体一体の強さはあちらの方が上かもしれない。

 

 デュラハンは俺達――――特にめぐみんを見つけ、怒りの声を上げた。

 

「なぜ城に来ないのだ、この人でなしどもがあああああっ!!」

 

 ―――案の定というか、予想外にまともというか。

 デュラハン曰く、あの後も毎日欠かさず廃城に爆裂魔法を撃ち込んでいたらしい。和真に睨まれて目を逸らすめぐみんを見るに本当なのだろう。

 しかしめぐみんが爆裂した後、誰かが彼女を連れて帰らなければならない筈だが・・・・あれ、そういえばここ一週間、アクアは毎日どこかに出かけていたような・・・・

 

「・・・・・・・・・(ふいっ)」

 

「よし聖、ゴー」

「わああああああーっ!だってだって、あのデュラハンにろくなクエスト請けられない腹いせがしたかったんだもの!私はあいつのせいで、毎日毎日店長に叱られるはめになったのよ!」

 

 つまみ食いとか無駄に尊大な態度まではデュラハンのせいじゃないと思うが。

 

「この俺が頭にきているのは何も爆裂魔法の件だけではない!貴様らには仲間を助けようという気はないのか?不当な理由で処刑され、怨念によりこうしてモンスター化する前は、これでも真っ当な騎士のつもりだった。その俺から言わせれば、仲間を庇って呪いを受けた、騎士の鑑の様なあのクルセイダーを見捨てるなど・・・・・・」「・・・や、やあ・・・・・・」「・・・・・・・・」

 

 呪いを受けた直後の痴態は忘れる事にしたのか。まあめぐみんを庇ったのは流石に性癖ではなく正義感だろう。

 しかし、神クラスの浄化魔法でわりとすぐに呪いが解けたダクネスはピンピンしている。今日もワニの群れに襲われるアクアを羨んでいたし、命にはまったく問題ない筈だ。

 

「・・・・・・あ、あれえ--------っ!?」

 

 気持ちは分かるが五月蠅い。

 そして驚愕するデュラハンを煽りまくるアクアも五月蠅い。デュラハンがそろそろ怒りに肩を震わせている。

 

「・・・おい貴様。俺がその気になれば、この街の冒険者を一人残らず斬り捨てて、街の住民を皆殺しにする事だって出来るのだ。いつまでも見逃して貰えると思うなよ?疲れを知らぬこの俺の不死の体。お前達ひよっ子冒険者どもでは傷もつけられぬわ!」

「見逃してあげる理由が無いのはこっちの方よ!今回は逃がさないわよ。アンデッドのくせにこんなに注目集めて生意気よ!」

 

 お互いの挑発が一通り終わり、先に動いたのはアクアの方だった。

 

「消えて無くなんなさいっ!『ターンアンデッド』!」

 

 だがデュラハンは不自然な程に動かない。浄化の魔法はアンデッドにとって弱点の筈だが・・・

 

「魔王の幹部が、プリースト対策も無しに戦場に立つとでも思っているのか?残念だったな。このアンデッドナイトの軍団は、俺も含めた全員が魔王様の加護を受けている。神聖魔法など毛程(けほど)も効かぬわあああああー!!」

 

 余裕の態度を見せていたデュラハンは、ターンアンデッドの直撃で多大なダメージを受けていた。

 

「ね、ねえカズマ!変よ、効いてないわ!」

 

 ―――効いてるでしょあれは。

 ・・・いや、制止さえ無ければリッチーさえ浄化したであろう彼女の神聖魔法であれだけ、と考えると効果が弱いかもしれない。これを弱いとかいったら全国のプリーストから苦情が来そうだが。

 

「ク、ククク・・・この俺はデュラハンのベルディア、魔王様の加護を受けた鎧だけでなく、俺自身の防御力もそんじょそこらの下級アンデッドとは一線を画している。駆け出しプリーストのターンアンデッドなど全く効かぬわ!・・・効かぬのだが・・・・・・な、なあお前、お前は今何レベルなのだ?本当に駆け出しか?駆け出しが集まる街なのだろう、ここは?」

 

 手の上の首をかしげる様に傾けたデュラハン改めベルディアは、何やらぶつぶつとひとり言を始めた。この街周辺に落ちて来た強い光とやらの調査に来たらしいが、この街に来たばかりの俺達には心当たりが無い。もっとも、どうやら周りの先輩冒険者達も分からないようだが。

 

「・・・・フン、わざわざこの俺が相手をしてやるまでもない。さあ、お前達!この俺をコケにしたこの連中に、地獄というものを見せてやるがいい!」

「・・・・逃げた?」「アクアの魔法に恐れをなしたな」

 

 俺の呟きに和真も同意。パ*スみたいな悲鳴上げてたし、アクアの魔力が尽きるのを狙っているのか?

 

「ちちち、違うわ!最初からそのつもりだったのだ!魔王の幹部がそんなヘタレな訳がなかろう!いきなりボスが戦ってどうする。まずは雑魚を片づけてからボスの前に立つ。これが昔からの伝統と」「『セイクリッド・ターンアンデッド』!」「ひああああああああー!!」

 

 今度は神聖な魔力を多く使った強化版だが、それでも致命傷には至っていないらしい。

 

「サトシもおかしいって思うわよね!?あいつ、私の魔法がちっとも効かないの!」

 ―――あれを見てちっとも効いていないと思えるお前も十分おかしい。

「何よー!本当なら最初の一発で塵も残さず昇天させるつもりだったんですけど!あんなちょっとしたダメージ程度で終わる魔法じゃないんですけど!」

 

 怒るアクアを(なだ)めながらベルディアの様子を(うかが)っていると、体から黒い煙を吹きながらも立ち上がった。

 

「こ、この・・・っ!セリフはちゃんと言わせるものだ!ええい、もういい!おい、お前ら・・・街の連中を・・・・皆殺しにせよ!」

 

 彼の号令により、アンデッドナイトの軍団は一斉に襲い掛かった!

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・・()()()()()()()()()()()()()

 

「クハハハハ、お前達の絶望の叫びをこの俺に・・・・・・俺・・・に・・・?」

 

 駆け足で進軍する無数のアンデッドナイトの鎧が音を立て、アクアの絶望の叫びが響く。

 質と量を兼ね備えた不死者の軍勢に冒険者達は慌てふためくも、アクアにしか襲い掛からない事態に誰もが困惑の表情を浮かべる。

 大切な仲間が襲われるのを見ているしかできない聖騎士の少女は、彼女を羨望の目で見つめ、不満が口からこぼれる。

 

「こっ、こらっお前達!そんなプリースト一人にかまけてないで、他の冒険者や街の住民を血祭りに・・・!」

 

 はっきり言って、当初想定された切迫した展開とは言い難い。

 俺はゴーレムにより安全圏から攻撃できるクリエイターだが、下手に手を出してこちらにその矛先を向けられたらどうなるか分からない。きっと他のクリエイター達も同じような考えなのだろう。

 どうしたものかと立ち尽くす俺に、冒険者の一人が声をかけてきた。

 

「・・・なあ、あんた、足の速さには自信があるか?」

「まあ、ある・・・何をすればいい?」

「王都からこの街に来てる凄腕冒険者の事は知ってるか?いけ好かない奴だが正義感はあるし、放送を聞いていれば来ない筈がないと思うんだが・・・」

「・・・その人を探せと?」

「ああそうだ。今はあのプリーストの人がアンデッドを引きつけてるから大丈夫だが、本格的な戦いになったらあいつの力は欲しい・・・引き受けてくれるか?」

 

 なるほど。ひょっとしたら何かのトラブルに巻き込まれているのかもしれない。誰かが探しに行くべきか。

 

「分かった。居場所に心当たりは・・・?」

「ああ、たしか、あいつらが泊ってる宿屋は・・・」

 

 彼の説明は続く。

 

「・・・ああそうだ、その凄腕冒険者の特徴がまだだったな。そいつの名前はミツルギ。黒髪黒目で魔剣を持ってる、青い鎧の若い男だ。連れが二人いるがどっちも女の子だな。そっちの名前は知らないが・・・まあそれはいいだろう。じゃ、頼んだぞ!」

 

 ―――お、おう。

 

 

 







 ここから番外編。




 ある日の事、俺――天光(あまみ)(さとし)――は、同じ日本人仲間である佐藤(さとう)和真(かずま)と二人で駄弁(だべ)っていた。

 「そういや、日本とこっちの時間の流れが違うーとかじゃなきゃ、今頃バレンタインの時期だな」
 ―――あー、確かにそんな時期か。
「・・・和真はチョコとか貰う方?」
「おう、貰うぞ。たっぷり、貰うぞ」
 ―――ええー?本当でござるかぁー?
「・・・・・・前工作とかしておけば。大体、そういうお前はどうなんだよ。前工作するならするって言えよ?」
「・・・貰えたり貰えなかったり?」
「・・・どういう事なんだそれ」
「昔からちょくちょく転校してたけど、貰える時と貰えない時がある」

 特に多く貰えたのは高2、君咲学院にいた時だ。シチュエーションも相まって本命としか思えないチョコを複数貰い、わりと本気で対応に困ったものだ。
 しかし特に貰えなかったのが高1、夢ノ咲学院にいた時だ。あの時は・・・・はぁ・・・・・・・・

「え、何があったんだよ!?あっという間に目が死んだぞ!?」
「・・・・アイドル養成校の普通科に所属してた事があったんだが、有名な奴には校外からの郵送とか、イベントに持ち込まれたりとかで山ほど送られて・・・」
「・・・・・・もしかして、()()の処理を?」
 ―――うん・・・・

「「・・・・・・・・・・」」

 冒険者(おれたち)の日常はまだ終わらない。
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