この素晴らしい世界にアンサンブルを!   作:青年T

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『遅くなる』の間隔がどんどん長くなってる気がする。こうしてエターナるんやな・・・


帰宅、即、決戦

 バリケードの製作を指揮しているダクネス曰く、(いにしえ)の魔導技術大国ノイズが造り出した機動兵器デストロイヤーがアクセルの街に接近しているらしい。

 

 デストロイヤーは、この世界では子供でも知ってる超大物モンスター ―――― 厳密にはモンスターではないのだが、それに匹敵する脅威だ。

 山の様な巨体がクモの様な八本足で走り回り、進行ルート上の生き物はおろか、アクセルのような街さえも跡形もなく踏み潰す危険な存在であり、デストロイヤーの通った後はアクシズ教徒しか残らないとまで言われる危険な存在・・・・何でアクシズ教徒までついでに恐れられてるのか。

 それはさておき、デストロイヤーにはノイズ謹製の魔法防御が全身に張られており、魔法で遠距離から攻撃するのは今まで一度もダメージを与えられなかったという。

 それじゃあ落とし穴なんかで動きを止められないか、といえば、その巨体から想像できないような身軽な動きで脱出され、じゃあ上から攻めればいけるんじゃないか、と何らかの飛行手段を用意すれば無数のバリスタが待っている。という驚異の防御性能だ。おまけに資料からは防衛用のゴーレムの存在まで確認されていて、多くの勇士、軍師が匙を投げたと言われている。

 ちなみにそのデストロイヤーを造ったノイズは、デストロイヤーの暴走で真っ先に滅んだのだとか。僅かに残った資料から、魔王軍対策という名義でデストロイヤーを製作した科学者がアンデッドとなって世界を滅ぼそうとしている、というのが最も有力な仮説として挙げられている。

 

 しかし、今回のアクセルは女神アクアが超性能な魔法解除の魔法を発動可能。めぐみんに加えウィズも爆裂魔法を使えるらしい。冒険者達の士気も和真を中心にかなり高いらしく、デストロイヤーから逃げるのではなく倒すため、一丸となって準備をしているところだ。

 その賞金もすさまじく高額で、報酬を参加者で山分けにしても借金の返済が大きく進むことは間違いない。個人的にも負けるわけにはいかない戦いだ。

 

 ―――それはそうとダクネス。()()、どこに置いてきたらいい?

「ん?何だそれは・・・待て待て待て、本当に何だそれは!?」

 ―――報酬。

「報酬・・・報酬・・・あ、ああ、実はお前のいない間に色々あって、家が手に入ったんだ。私達の中で一番手の空いてるカズマにでも案内してもらって行ってきたら・・・・あれ、徒歩で間に合うか?さっきの馬がいないが」

 ―――ああ、あれならほら、この通り。

「・・・・この際その馬についての言及は後にする。行くなら早く行けよ」

 

 俺はダクネスが示した方向に馬を走らせる。そこで和真と再会したのだが、

 

「おお、和真!久しぶり・・・だけど・・・・その馬は何なんだよ」

 ―――貰った。

「貰った!?こんな凄そうな馬を!?」

 ―――それはそうと手に入れたっていう自宅に荷物を置いておきたいんだけど。

「そ、そうか。今のところ行き詰ってる感じはないし、ちょっとくらいなら大丈夫だけど・・・それ、ちゃんと乗れるんだよな?」

 

 通常の馬とは違って魔力で乗る、というのが適切だが、整備された街中なら二人乗りも大丈夫だろう。

 

「ちょっ、いきなり乗せんなって!落馬したらお前のせいだからな!どうせ初めてなのに大丈夫だって思ったんだろその顔!」

 ―――ギクッ。

「まったくお前は・・・・せめて安全運転で行ってくれよ?」

 ―――了解!

 

 そして馬は幻獣さながらの脚力で、しかしほとんど足音を立てず、和真達が手に入れたという家まで・・・

 

 ―――屋敷じゃねーか!誰も住まないようなボロ家かと思ったら、完璧に屋敷じゃねーか!こんな屋敷をいったいどうして・・・・・・いや、それは今は置いておこう。荷物は庭にでも置いていけばいいのか?

「とりあえず荷物は屋内に置いときたいな。鍵開けてくるから、玄関にでも置いといてくれ」

 

 中身も外観相当の快適空間。俺・・・この戦いが終わったら、この屋敷の来歴とかを聞き出すんだ・・・

 そして荷物を置いたらまたアクセル正門前に戻り、俺はバリケード制作の最終調整の手伝いに回る。

 そもそもデストロイヤーを相手に通用するような防衛体制など机上の空論、ましてこんな辺境ではやるだけ無駄なのかもしれない。しかし、それは努力を諦める理由にはならないだろう。バリケードや落とし穴は大きさこそ駆け出し達の集まりといった程度だが、落とし穴を前から見えなくするように土で覆ったバリケードが築かれており、デストロイヤー側からは土の山に見えるだろう。うかつに山を越えようものなら転倒し、僅かでも隙が生まれるだろう。彼らは決して諦めていないのだ。

 先に工事をしていた人達の許可を得て、バリケードの一角にゴーレム製造のための()()()をする。予定通りに爆裂魔法を食らわせられたなら使うこともないだろうが、もしデストロイヤーがこのバリケードを越えようとするのなら俺のゴーレムがそれを押さえる。操作を抜きに重さだけ増せばいいのだ。

 

 

 

 ────────────────────

 

 

 

『冒険者の皆さん!そろそろ機動要塞デストロイヤーの姿が見えてきます!街の住民の皆さんは、直ちに街の外に遠く離れていて下さい!それでは、冒険者の各員は、戦闘準備をお願いします!!』

 

 機動兵器デストロイヤー。

 その脅威はまさしく破壊者(デストロイヤー)を名乗るのに相応しいものであり、もはや肉眼でも見え始めた今になってなお逃げない俺は、いや俺達は頭のおかしな奴らの集まりなのかもしれない。

 しかし、アクア、めぐみん、ウィズという希望が俺達の後ろ、外壁の上でデストロイヤーを待ち構えている。彼女達が上手くやれたとしても、俺達が動けなければ事態はどんな方向に転ぶかわからない。

 

 アクアの元から青白い光の球が放たれ、デストロイヤーに直撃する。デストロイヤーの巨体に対してあまりにも小さい光球だが、デストロイヤーの表面の膜の様な結界と僅かに拮抗(きっこう)し、まもなく結界はガラスが割れる様に壊れ、弾けながら消えていった。

 それでもデストロイヤーは止まらない。だが俺達の希望を背負うのも一人ではない。走り続けるデストロイヤーの脚部目掛けて二条の閃光が走る。その光は爆裂魔法。左右に四本ずつあったデストロイヤーの脚は粉々になり、胴体部分だけが重力によって大地に叩きつけられる。先ほどまで疾駆していた胴体は地面をえぐり、最前線で身構えていたダクネスの目の前でようやく静止する。

 

 ―――止まった?

 

 このまま何もしないというのなら明日にでもめぐみんの爆裂魔法の的にしてもいいのだが、内部でデストロイヤーを操縦しているであろう存在を考えるとそれは無理だろう・・・・・・と思っていたのだが、今のところ何かが出てくる様子はない。

 

「やったわ!何よ、機動要塞デストロイヤーなんて大げさな名前しておいて、期待外れもいいところだわ。さあ、帰ってお酒でも飲みましょうか!なんたって一国を亡ぼす原因になった賞金首よ、報酬は、いったいお(いく)らかしらね!!」

 

 わあ、見事なまでのフラグ建築。とはいえこんな要所要所でテンプレートから外れるような世界なんだ。あれくらい問題ないだろう。畑とかは大丈夫なのだろうか。体が軽い。こんな気持ちでクエストクリアするのは初めてだ。もう何も怖くない!

 

 

 ・・・・なんて思考は、デストロイヤーの方から聞こえる地響きによって中断させられた。

 この国では地震はほとんど無い筈。しかし、この世界のモンスターの中には天災に匹敵する超強力モンスターも存在するし、それが地響きを起こすケースもいくつか確認されている。

 そして、デストロイヤーもまたそれだけの脅威として人々から認識されており、それだけのパワーも持っている。

 

 ―――まさか。

『この機体は、機動を停止致しました。この機体は、機動を停止致しました。排熱、及び機動エネルギーの消費ができなくなっています。搭乗員は速やかに、この機体から離れ、避難して下さい。この機体は・・・』

 

 その機械的なアナウンスは、目の前のデストロイヤーから聞こえていた。

 どう考えてもこれは暴走状態、もっといえば自爆直前の状態だろう。どうやって暴走を止めればいい?エネルギーの消費か?どうやって?安全装置とかはないのか?あるいはブラフ?いや、ブラフにしてはエネルギーが大きすぎる。百歩譲っても何も起こらないなんて事はないだろう。アナウンスに何かヒントはないか?そもそも今、内部はどうなってる?

 

 そんな俺の思考を中断するように、拡声器を使った和真の声が聞こえてきた。

 

『機動要塞デストロイヤーに、乗り込む奴は手を挙げろー!』

 

 その呼びかけに挙手で答える者はいない。

 アーチャー達がフック付きのロープをデストロイヤーに撃ち込み、それ以外は思い思いの武器を手にし、デストロイヤーに乗り込む行為を答えとしたのだ。

 彼らは一様に士気が高く・・・・あれ、ちょっと高すぎない?逃げる人もいくらか出ると思ったんだが、むしろ何人かの女性冒険者が男性冒険者達の勢いにドン引きしてるというか・・・あ、アクアもその一人だ。

 

 少し出遅れてしまったが、俺も乗り込もう。どこまで出来るかは分からないが、無力とも限らない筈だ。

 サキュバスの少女――そのうちあの子も呼び名とか付けようかな――を召喚するのも可能だが、色々な意味で未知数だ。あれは秘密兵器的な立ち位置にしておこう。

 

 俺は先発の冒険者達に続き、デストロイヤーから伸びるロープを(つた)って機動要塞へと乗り込んだ。




・ファントムオブキル
「gumi」社制作のシミュレーションRPG。スマートフォン向けのアプリゲームだがDMMからブラウザ版のサービスも実施。伝説の武器が擬人化したキャラ『キル姫』が多数登場し、メインヒロインのティルフィングはCV:雨宮天。
 今話投稿時点でこのすばコラボ実施中・・・なのだが、このコラボ、やたら豪華仕様である。ヒロイン3人の実装はまだしも、イベントクエストで獲得するタイプとガチャ産のちょっとキメ気味なバージョンのみならず、水着バージョンまで含めた3パターン×3、さらにゆんゆんとウィズ、このすばキャラのコスプレをしたファンキルキャラ3種で合計14種(+α)のコラボキャラが使用可能。このコラボストーリー専用の演出もあり、ものすごく特別感がある。しかしスキル習得用のクエストでは主人公(和真とは違いすぎるイケメンな言動)と絆を深めるため、キャラ崩壊と受け取られる可能性があるので注意。
 ・・・注意とは言ったが、このアプリで本当に注意すべきはその容量である。データの一括ダウンロードを行うと操作が快適になるが、現在それをすると6GB以上の大容量になる。ちなみにFGOはデータを一括ダウンロードすると4GB以上。プレイするなら上述のブラウザ版も考えておくべき。
 後、キャラの恰好がエロい。某花騎士並み・・・は言い過ぎかもしれない。やっぱ言い過ぎでもないかもしれない。実際どうなのかは自分の目で確かみてみろ!(グーグル可)

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