ちなみに今話以上のチートは当分出てくる予定はないです。
機動要塞デストロイヤーに乗り込んだ俺が見たものは、防衛用であろうゴーレムと意外にもいい感じの戦闘を繰り広げている冒険者達だった。
単体であればゴーレムの方が強いのだろうが、冒険者側の数と勢いがその差を埋めている。ロープ等で転倒させてから袋叩きにする戦法は着実にゴーレムの数を減らしているが、反撃をくらって手痛いダメージを負う冒険者もちらほらと見える。この調子ならば全滅はしなさそうだ。
少し遅れてやって来た和真とアクアもこれを見る。一瞬だけ目を丸くし、そして微妙な表情になった。まあ街を守るって感じの絵面じゃないしな・・・
ふとゴーレムから視線を外すと、砦の様な建物の扉を壊そうとしている冒険者がいた。彼らはこの扉の奥にデストロイヤーの主が立て籠もっていると考えているらしい。多分扉の奥あたりがデストロイヤー胴体の中心にあたるだろうし、動力なり制御装置なり大切な部分がありそうだ。
―――あれを突破するにはどうするべきか・・・
「デカイのがそっち行ったぞーっ!」
その声に反応して振り向くと、一際大きなゴーレムが今にも殴りかかろうとしていた。
俺の横にいた和真もそれに気づいたらしく、俺達は別々の方向に跳び退いてそれを
床の形こそ変わらなかったが、それは単に床が硬質の素材で出来ていただけだろう。感じた衝撃は凄まじく、岩さえ一撃で破壊できるだろうと俺に思わせた。
しかし、和真は不適な笑みを浮かべて言った。
「俺があのゴーレムを倒す。なーに、心配すんな。俺には秘策がある」
―――秘策?それって一体・・・
和真はゴーレムに向けて右手を突き出す。手のひらを上に向け、その指をわきわきと不審に動かしている。
そして彼は必殺のスキルを叫ぶ。その名は――――
「『スティール』!」「ちょっ!カズマ、待っ・・・」
和真の発動したそのスキルは、ゴーレムの巨大な頭部をその手に盗み取った。
・・・・・・その直後に和真の細腕がその重量に耐えられずに床に叩きつけられ、悶絶するはめになったが。
「っぎゃー!腕が!腕があああああっ!」
「ああっ!大丈夫ですかカズマさん!?重い物を持っているモンスター相手には、スティールを使ってはいけませんよ!」
激しく手を痛めた和真はウィズの言葉を聞いていないだろう。あえて聞かずとも痛いほど理解しているだろうが。
「アクア・・・これ折れてる。絶対折れてるよ」
「ヒビも入っていないわよ。一応ヒールぐらいかけるけど、あんまり調子に乗ってバカな事しないでね?」
こうして痛い目にあった事を不幸と嘆くべきか、致命的なダメージを負わずにそれを理解した事を幸運と見るべきか・・・知識不足は運とかじゃないただの努力不足だが、そこを偶然でフォローできたと考えればやっぱり幸運・・・?
「開いたぞーっ!」
不意にその声が聞こえる。どうやら開いたのはあの扉らしい。
雪崩のように扉の奥へと突き進む冒険者達は、その凶暴性に反して効率的にゴーレムを破壊している。ゴーレムは数こそ少なかったが、本当に駆け出しなのかと問い詰めたいくらいだ。
そうして来た、見たら勝ってた、とばかりのハイペースで進んだ奥の部屋では、その冒険者達が一様に沈んだ表情をしていた。
部屋の奥にある椅子には、この機動要塞を乗っ取ったと言われている科学者らしき――――白骨死体が座っていた。
後ろの方にいたアクア達を呼んで、この死体について何か分かることがあるか聞いてみる。すると、
「すでに成仏してるわね。アンデッド化どころか、未練の欠片もないぐらいにはそれはもうスッキリと」
「スッキリと、って・・・・・・未練くらいあるだろこれ。どう考えても一人
「やるべき事は全部終わらせてから、毒か何かで?」
「ああ・・・・確かデストロイヤーはいくつもの街を破壊してきたんだっけ?その中に何かの恨みがある国があったか・・・?ん、聖それ何だ?」
「そこに・・・」
俺は資料の山の中にあった手帳らしきものを開く。どれどれ中身は・・・・・・
―――っ。
「ん?何か変なものでも描いてたのか?」
―――いや、大丈夫だ。いやしかしこれは・・・・説明に困るから全部終わってから改めて話すか。さて、内容は・・・
その内容を三行で表せというのなら、俺は以下の様にする。
『上からクモを叩き潰した用紙を上司にだしたらとんとん拍子に機動要塞が出来たよ!
酒に酔った勢いで動力源のコロナタイトを根性焼きしたらデストロイヤーが暴走したよ!
ヤベえどうにもならねえ\(^O^)/』
こんなもんである。本当にこんなもんである。
君咲学院にもこんな馬鹿はいなかったぞ・・・あいつらは自分の手に負えない事態を故意に起こすような奴らじゃなかったからな・・・
おそらく、この場にいる大半の冒険者は同じ感想を抱いているだろう。俺もそうだ。せめて皆と一緒にこの想いを叫ぶとしよう。
「「「「「「なめんな!」」」」」
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さて、この記述から察するに、動力のコロナタイトさえどうにかすれば爆発(物理)寸前の現状を打破できるかもしれない。
しかし、これは人数を揃えてどうにかなる話ではないだろう。そう考えた俺達は、優れた魔法使いであるアクアとウィズに、汎用性の高い俺、咄嗟の判断力に優れた和真の四人で動力炉に向かうこととなった。
手記を見つけたのとは別に内部を荒らしまわっていた冒険者グループが動力炉らしき部屋を見つけており、防衛用ゴーレムも軒並み機能停止している通路を指示に従って駆け抜けるだけで動力炉に到着した。
そこには赤々と光り輝く
装置の中の物体――手記にあったコロナタイトだろう――は鉄格子でしか守られていないが、どう見ても赤熱しているコロナタイトを長い間守り続けていたにしては経年劣化がさっぱり無い。どうなってんだこれ・・・?
俺がゴーレムを作る要領で変形させようとしてもビクともしない鉄格子は、和真のスティールで素通りされる結果に終わっていた・・・・・・直後、和真の右手が赤熱したコロナタイトで激しい火傷を負うことになったが。
「あああああああああ!!」「『フリーズ』!『フリーズ』!」「『ヒール』!『ヒール』!」―――天丼じゃねーか!
「ねえ、バカなの?カズマって、普段は結構知恵が働くって思ってたんだけど、さっきのゴーレムの件といい、実はバカなの?」
「他に手段、あった?」
「それは・・・思いつかないわね・・・」
犠牲になった和真の手は早急な処置もあって大事には至らなそうだが、コロナタイトは装置から外しても依然として発熱し続けている。放っておけば確実に爆発か何かを起こすだろう。
これを封印とかできないのか、と和真はアクアに怒鳴っているが、理論上はこのコロナタイトを無力化できる手段は俺にもある。ただそれを可能にするだけの魔力が俺の中にないという決定的な問題がある・・・・・・しかし、
「ん?サトシ、その魔導書みたいなのは何だ?この状況をどうにかできるんなら正直何だっていいんだが」
―――あいにくこれもぶっつけ本番なんだ。「『インスタント・サモン・デビル』!」
「はあッ!?女神として無視できない名前の魔法が聞こえたんですけど!ここがアルカンレティア辺りだったら私の可愛い信者達が集団で神罰かますレベルなんですけど!」
やっぱり人前で使うのはマズい奴だった!アクアの宥め方は後で考えるとして、夢の中で偶然できたアレが今度も成功するかどうか・・・
普通なら事前に用意する魔法陣の中に召喚して行動を制限するところだが、今回は俺自身と一体化する形に召喚する。普通なら間違いなく召喚失敗するであろう無茶だが、成功するという謎の確信があった。
召喚が始まるとともに、強い異物感が体内・・・特に背中辺りに発生し、やがて俺の背中から何かが飛び出す。それと同時に異物感も収まり、俺の能力が全体的に上昇しているのが感じられた。背中の何かはわりと小さく、自分の目では確認できそうにない・・・が、動かす感覚や触り心地からして悪魔の翼なのだろう。召喚したあいつと同じ色だったりするのだろうか。だが腕の肌の色はウィズくらいには白くなっており、確信はできない。
ともあれ、今はコロナタイトの処理だ。
まず、コロナタイトから溢れるエネルギーを床へと放出する。色々な処理で強化されていたであろう床がどんどん溶けるほどの熱量だ。
そしてそこにコロナタイトを置き、溶けた床を操って覆い被せる。『クリエイト・ゴーレム』系列の魔法とは切っても切れない縁といっても過言ではない『錬金』の魔法だ。これだけでは何の解決にもなっていないが・・・
そこから更に『錬金』の魔力を増やす。床とコロナタイトが高熱を伴ってグルグルとかき回され、溶けあっていき、その地点から
「・・・・・・すっげぇ」
和真がそう漏らす。実際俺もここまで上手くいくとは思ってなかったが・・・
―――ッ。
「え?今ふらついてたけど、何かヤバい状態だったりする?」
「ただの・・・気絶・・・・・・」
「えっ、ちょっ、本当に大丈夫か!?とりあえず外に・・・!」
慌てる和真の声を聞きながら、俺の意識は途絶えた・・・
もうそろそろ・・・もうそろそろオリジナル回を入れられる・・・
・『インスタント・サモン・デビル』
当作オリジナルの魔法および接頭語。
『サモン・デビル』は文字通り悪魔を召喚する魔法。用途や呼ぶ悪魔ごとに使う魔法陣が違うため、魔法そのものというより魔法のジャンルとして見たほうが適切かもしれない。でもその辺を細かく魔法名にすると長くなるので基本的にこの呼び方。
『インスタント』は「即席」などの意味の接頭語。今回は正式な契約ではない上、制御用の魔法陣なんかも設置する余裕がなかったためのインスタント。他の複雑な魔法でもこの接頭語をつけることは可能だが、基本的に魔力消費や所用時間を軽減する代わりに威力の減少が起こる。