原作で名前の出なかったロリサキュバスにオリジナルの名前を付けました。
ここでのキャラ名に特に由来はありません。強いて言えば母音が"aiu"になるのを意識した程度です。
目が覚めると、頭上には知らない天井があった。
「おう、おはよう・・・でいいのか?そろそろ昼飯でも食べようかと思ってたくらいの時間だけど」
横を見て、和真と俺の目が合う。
何で俺はそんな時間まで寝ていたんだったか・・・確か、俺はデストロイヤーの動力を―――
―――デストロイヤーはどうなった!?
「落ち着けって・・・お前がコロナタイトを床と一体化させてよく分からない物質に変化させたおかげで、発熱が一気に弱まって簡単に対処できるようになった。それとは別に機体に溜まってた熱が暴発しそうだったけどめぐみんの活躍で無事だった。で、今はそれから丸一日くらい後で、お前はその間魔力不足でぐっすりだ」
「めぐみんみたいに」
「理屈はあれと同じだけど、今回のお前の方が危険な状態だったらしいぞ?さっきまで意識もなかった訳だし」
めぐみんは爆裂魔法を使っても、何だかんだで騒ぐくらいの余力はあるしな。
そんな事を考えていると、和真は俺に何か聞きたそうにしていた。
「いや、な?お前が気絶する前に使ってたあれ、いったい何だったんだ?使ってた魔法は悪魔召喚だけど結果が明らかに違う、ってアクアが言ってたな。クリエイターのスキルでもなさそうだし、冬将軍にでも教わったのか?」
「違う・・・・・・・・体質?」
「体質・・・悪魔を召喚したらあんな感じになる体質?」
「あんな感じ?」
あれはぶっつけ本番だったから、鏡なんて見てないんだよな・・・多分悪魔みたいになってたと思うんだけど。
「シルエットだけなら悪魔だったんだけど、色は天使みたいな感じだったな。白いコウモリみたいな翼が背中から生えてた。角は生えなかったけどな」
どう考えても普通じゃない見た目だよなそれ。
「綺麗っちゃあ綺麗なんだろうけど・・・リッチーのウィズもそんな見た目の存在には心当たりがないらしい。あの時何をやったんだ?」
「俺と一体化する形で悪魔を召喚」
「・・・・邪気眼にでも目覚めたのか?」
「少し前に・・・ひょんな事から・・・合体できた」
「ひょんな事でまとめんな」
「夢の中にサキュバスが来て・・・俺に触れたら、合体してた」
うん、自分でも言ってておかしな展開だとは思ってる。
「つまり・・・サキュバスがお前と性的に合体しようとしたら、お前とドラ*ンボール的にフュージョンしたって事なのか」
―――そうなる・・・・・・痛っ、なんで叩いた!?
「突っ込みどころが多すぎるから」
―――納得した。
「納得すんのか・・・」
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そういえば聞きそびれていたが、ここは和真達が手に入れた屋敷でいいのだろうか?
「ああ、部屋に空きがあったから、そこに寝かせてたんだ。お前が持ち帰った荷物とかはそこに置いてある・・・ところで、あれって報酬なんだよな?冬将軍から貰った奴」
―――あ、見てなかったのか。中身は金貨だ。
「おおう・・・すげえな・・・・・・これだけあればデストロイヤーの報酬を全部借金返済にあてても余裕があるんじゃないか?」
―――報酬ってもう貰ったのか?
「いや、王都の方にある本部にデストロイヤー討伐の報告をして、それが確認できたら金をかき集めて・・・って感じだしまだだな。なるべく迅速に報酬金を準備するって受付の人は言ってたけど、数日は必要らしい」
俺が調べた賞金首モンスターの中でも、デストロイヤーの報酬は他より頭一つ高かったからな・・・あれ以上の賞金首なんてそれこそ魔王くらいだぞ。
「そういえばアクアの奴、お前が何をやったのか知りたがってたぞ。神と悪魔は相容れないってあいつ言ってたし、上手く誤魔化しといた方がいいんじゃないか?」
―――・・・・・・頑張ります。
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「サトシか!しばらくお前の顔を見てなかったけど、仕事で遠出でもしてたのか?」
―――そんな感じ。
しばらく居なかったアクセルの街も、流石に数日程度では大した変化もない。
もしデストロイヤーがここまで到達していれば、変わらぬ街並みではなく瓦礫の山が俺を迎えていたのだろう。そう考えると俺達は凄い事をやったのだと思える。
そして今、そんな物思いにふけっている俺に寄って来るのは・・・
「おや、何やらビームを撃てるようになったと噂のサトシじゃないですか。確か屋敷で寝込んでいたと思うのですが、もう大丈夫なのですか?」
めぐみんだった。アクアに背負われて移動しており、いつもの爆裂をどこかに放った帰りなのだと分かる。
―――大丈夫だよーほらほらこの通りー。
「一目で大丈夫と分かる動きですね・・・・・・正直ちょっとキモいです」
―――そんなー・・・
「えっ、何ですかその悲痛な顔は!?そこまで気にしなくてもいいですから!」
じゃあ落ち着く。
それはそうと、アクアは俺に聞きたい事があるらしいが。
「そうよ!サトシがあの時使ってたあの魔法!あれが悪魔召喚の魔法だったら、偉大なるアクシズ教の女神としては見過ごせないんですけど?場合によっては鉄拳聖裁も辞さないんですけど?」
確かにあれは悪魔召喚だが、一応のストーリーは考えてある。
「向こうに悪魔が出た。狩った」
完璧な回答だ。これで大丈夫な筈だ。
「「・・・・・・・・」」
「・・・・・・・・」
「・・・・もうちょい詳しい説明が必要さと思うんだけど?」
「・・・よく分からない。気がついたら・・・・・・吸収?してた」
実際によく分かってないのだからこれ以上の説明ができない。向こうの様子も確認したいし、またサキュバスの店にでも行くべきか・・・
「・・・・とりあえず今はそういう事にしておくけど、もしサトシが悪魔の手先なんかになったりしたらタダじゃおかないからね!」
そう言って、めぐみんを背負ったアクアは屋敷へと戻っていった。
めぐみんのあの目は、
・・・そういえばダクネスはどこにいるのだろう。和真も心当たりが無いらしいのだが。
昨日もしばらく何処かに行っていたらしいし、大した問題でもないと思いたいが。
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サキュバスの店を訪れたが、何やら男の冒険者で賑わっている。
行列ができている訳ではないが、前回より明らかに客が多い。近々まとまった金が入るだろうと考えて、今から金を使っているのだろうか。
「あ!サトシさんじゃないですか!昨日は大変でしたね・・・」
―――まったくだな。デストロイヤーに対処するために、
「あの子と話したい」
「あの子・・・ああ、あなたが契約した・・・・すみません、今は客が多く、彼女も接客に回っていまして・・・少しだけ奥の方で待ってもらってもよろしいでしょうか?」
―――ああ。
三十分くらいだろうか。
前回も座った来客用らしきソファに座って待っていると、彼女は駆け足気味に部屋に入ってきた。
「すみません、待たせてしまって・・・・何と言いますか、昨日は大変でしたね・・・」
「俺は
「寝込んだんですか!?こっちはちょっと拍子抜けするくらいに何もなかったですね・・・不調とかはないんですけど、新しいスキルを習得する、みたいな事もです」
一呼吸おいて、彼女は続ける。
「分かっているとは思いますが、私はサキュバス・・・悪魔としては下位の存在です。それに、淫魔自体が精神干渉に特化しているので、本来なら昨日あなたが扱ったような強大な魔力とは縁遠い存在なんです。
結論を言いますと、昨日私とあなたが合体した時のあの力は、あなた自身が持っていたものである可能性が高いんです」
「それがどうして?」
「分かりません・・・ですが、私達サキュバスというより、悪魔という種族全般があの力を引き出す要因になれるんだと思います。そっちの方がまだ自然ですし」
まあ、そうだな。サキュバスに依存する力とか何を想定したものなのかと。
しかし異世界まで来て俺自身の秘密の存在が明かされるか・・・悪魔関係となるとあまり良いものとは考えにくいが、一種の特異体質って事で受け入れてもらえる・・・かなぁ?
君咲学院や夢ノ咲学院には特殊な体質の人間が多くいたな。常人の数倍あるいは数十倍の腕力を無意識に発揮してしまう少女、水中の環境に適応した代わりに乾燥に弱い少年、日常生活にさえ悪影響が及ぶレベルの聴覚を持って生まれた少女・・・考えればキリがないが、その中に悪魔と融合し力を発揮する少年がいてもおかしく・・・おかしく・・・・・・おかしくないな(適当)。
昨日は力を使った後に気絶したが、あんな風に倒れるのはなにもめぐみんだけの特権ではない。魔法初心者が無理に身の丈に合わない魔法を行使しようとすれば同じように倒れる。才能次第では効果だけはある程度発揮してから倒れる例もあるらしいが、昨日の俺はまさにその状態だったのではないだろうか。
で、そうなると特訓が必要になるだろうし・・・
「これからも、よろしく」
「え、えっと・・・それは、私と正式に契約をするってことでいいんですよね・・・?」
「せっかくだし」
「そ、それじゃあよろしくお願いします!」
彼女は二つ返事で了承し、具体的な契約内容を見直すことから始め・・・
「ところで、名前は?」
「名前、ですか・・・」
―――どうかしたのか?
「いえ、実は私達みたいな下級の悪魔には、個別の名前が無いんです。実績を積むか、人間と契約を結んで初めて名前を名乗る資格があるんです。先日の契約は、後日契約内容に変更を加える意思がお互いにあったので、正式な契約とはならなかったんですけどね・・・」
「この契約なら名乗れる?」
「はい!それで・・・・・・実は、今までに考えてた名前の案が、ここにまとめられてるんですが・・・」
すごく楽しみにしてたんだな・・・羊皮紙一枚だがその密度がすごい。よりどりみどり過ぎて迷う・・・いや、この横線は取り消してるのか。人の黒歴史を見ている気分だ・・・『バニ』とか『ニル』とかの文字が入ってる名前がけっこう取り消されている。憧れの人とかだろうか。乙女だ・・・
そんなことを考えながらリストを読み上げ、ある名前に目が行く。
「サリス・・・ですか?」
―――嫌、か?
「い、いえ!何と言いますか、今後はこの名前を名乗ることになるじゃないですか・・・そう思うと感慨深く・・・
これから私はサリス、なんですね・・・」
サリス、彼女が考え、俺が決めた名前。
彼女――――サリスとはもう他人同士とは言えないな。この関係をどう表現するべきなのかは分からないけど・・・・・・ん?
ドサドサドサッ!
「「「・・・・・・・・」」」
「「・・・・・・・・」」
サリスの先輩のサキュバス達だ。どうやらドアの向こうからこちらの様子を
「「「お、おかまいなく」」」
「~~~っ!」
サリスは顔を赤くしながら、涙目で先輩達をぽこぽこし始めた。可愛い。
・・・しかし彼女達にとって、今のやり取りはどういう扱いなのだろうか。
・
君咲学院1-C所属。三つ編み&アホ毛な糸目の茶髪ちゃん。
テニス部に所属する癒し系少女。しかし常人をはるかに上回る筋力を持ち、しばしば物を壊してしまう。
彼女はその力をいいことに使いたいと思っている。その思いを胸に彼女は『七夕セブン』として日々努力しているのだ・・・☆
・
夢ノ咲学院3-B所属。水色の髪と目にアホ毛。
海洋生物部の部長であり、ユニット『流星隊』のブルー担当。また、『三奇人』という有能な変人達の一角に数えられている。
ふだんからのんびりしたせいかくで、ほぼすべてのせりふをひらがなでしゃべる。なにやらうみにまつわるでんせつをもったいちぞくのとうしゅらしく、じしんを『いきがみさま』としょうしており、じしんのかていについてたにんにかたることをさけている。