この素晴らしい世界にアンサンブルを!   作:青年T

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技名決定と戦闘

 デストロイヤー討伐の報酬を受け取った数日後。ギルドから冒険者達にある通知があった。

 なんでも、西方に突如現れ(おれがたて)た城の近辺を中心に、モンスター達の活動がにわかに活発になっているらしい。

 城に住む何か強大な存在を恐れているのでは、というのがギルドの見解だが、確認されているモンスターにゴブリンもいると知った和真が何かを察したような表情になった。

 

「いやな?実はお前がいない時にチンピラに絡まれて・・・ああ、そいつらとはもう和解して、今では時々一緒に飲むくらいには仲はいいんだが・・・その時に流れで受けたクエストはゴブリン討伐なんだ。それが実は初心者殺しっていうヤバいモンスターに誘導されて来た群れだったんだ」

 ―――初心者殺し・・・確か相当狡猾なモンスターだって聞いたな。

「弱いゴブリンを囮にして討伐に来た冒険者をおびき寄せ、ゴブリンなんかとは比べ物にならない力でそいつらを捕食する・・・って話だ。そのときの奴の存在は報告したんだが、結局討伐できたって話は聞いてない。もしかしたらそいつがまた来たんじゃないか、って思ってな」

 ―――強そうな相手が来たら逃げる・・・みたいな話もあったと思うんだが、撃退したって訳じゃないのか?

「いやあ俺は・・・そいつの目に砂をかけて逃げただけだから・・・・・・恨まれてそうな気がしてきた」

 ―――それは・・・相手はかなり知能がありそうだあしなぁ・・・

 

 地球でも、カラスは自分達に危害を加えた相手を覚え、執拗(しつよう)に攻撃するものだ。だからこそすず(ねえ)は衣装のためのカラスの羽根を強奪せず、自然に抜けたものだけを集めていたわけで。

 

「・・・俺に倒せる?」

「初心者殺しは瞬発力がすごいからな・・・多分だが、まともにダメージを与えられるくらいのパワーがあるゴーレムだと攻撃が当たらないんじゃないか?流石に、パワーもスピードもあるゴーレムなんてポンとは作れないだろうし」

 

 構造なんかに変える余地が無いのなら、そういうのは魔力を多く消費しなければならない。簡単な話と言われればそうなんだが、その多量の魔力をどこから持ってくるのかを考えれば簡単でもないだろう。

 目に見えてゴーレムの基礎能力が高まるほどの魔力をぽん、と手に入れられるのなら、魔法使い達はわざわざ修行をすることはないだろう。そういった術は往々にして法律で禁じられており、大抵の者はその理由――例えば、悪魔が契約者から取り立てる代償など――を多少なりとも理解している。

 そんなデメリットが生じずに今すぐ使える都合の良い術なんて・・・

 

 ―――あっ。

「ん?倒し方を思いついたのか?」

「羽根生やせばあるいは」

「・・・羽根?羽根・・・ああ、この間から使えるようになったあれか?もうちょいマシな呼び方があると思うんだが」

「じゃあフォーム・オブ・ブランディアブル」

「何語だよそれ!・・・そういやあの馬もまだ名前が決まってないんだっけか?どんな名前が思いつくかちょっと言ってみろ」

「・・・白の幻馬(スレイブニル)?」

「・・・・・・・・まあ、そっちはあり・・・か?いやでもルビ振るような名前じゃ他のスキルと比べて浮いてるだろ。似たようなスキルに合わせて決める方がいいんじゃないか?」

 

 ふむ、似たようなスキルか。あれは別に何処かからあの馬を召喚してる訳じゃなく、発動の(たび)に周囲の冷気を寄せ集めて馬の形をしたものを作る、クリエイト・ゴーレムに近い魔法だから・・・『クリエイト・〇〇』みたいな感じか?それで作るのが冷気の馬だから・・・

 

「『クリエイト・フリーズホース』・・・?」

「おお、それっぽい・・・じゃあ今後はあの魔法を『クリエイト・フリーズホース』って呼ぶことにしていいか?」

 ―――しっくりくる名前にできたしな。

「・・・で、あの悪魔の翼を生やすあれはどういう名前にするつもりだ?」

 ―――ブランディアブルじゃ、駄目?

「明らかに他より浮いてるだろ!何が由来の名前なんだよ!」

「フランス語で『白』『悪魔』をそれっぽく」

「フランス語!なんでフランス語にした!?」

「知り合い・・・の中二病がフランス語を」

 

 彼女――――黒森(くろもり)すずとの関係性を一言で言い表すのは難しいと思う。彼女は姉さん(アンジー)の弟である俺の世話を焼きたがっている節があり、友人と言うには近く、しかし姉弟と言うには遠い。男女の関係などではまずない。

 

「安易にドイツ語とかにしないんだな・・・そいつってどんな奴なんだ?高貴ぶってたり?」

 

 高貴って・・・フランス=高貴なのか?

 

 ~~~~~妄想~~~~~

 

 高貴な黒森すず「よろしくてよ!」

 

 ~~~~~~~~~~~~

 

 駄目だ笑いそうになる(しかし真顔)

 それはそれとして、すず姉がどんな人か、か・・・

 

「翼の折れた堕天使(ルシフェル)

「ルシフェル」

「またはクロシェット」

「クロシェット」

「ギター弾ける」

「ギター」

 

 オッドアイはコンプレックスだしこんなところでは言わない。

 

「って違う違う。能力のネーミングの話だった」

 ―――おっと素で忘れてた。

 

 でも俺がこっちの世界で調べた限りだと、変装とかではない肉体レベルの変身なんて、人間に可能な範囲を超えてるんだよな・・・

 ごく一部の魔族が変身能力を持っていると噂に聞いたことがある。それに合わせて考えるなら・・・

 

「第二形態?」

「雑っちゃあ雑だけど・・・変に凝った名前にするよりは安心ではあるな。とりあえずそれで」

 

 こうして、俺が新たに手に入れた力の名前が決まった。

 

 

 ────────────────────

 

 

 そして街外れの森。

 普段は群れからはぐれた個体をたまに見る程度なこの近辺でゴブリンの群れが確認されたらしく、ギルドでもゴブリン討伐の依頼が貼りだされていた。

 まだ大半の冒険者はデストロイヤー討伐の報酬が有り余っており、大事(おおごと)にもなりにくそうなゴブリン討伐をわざわざやる奴はいない。本来なら和真もしばらくはクエストに行く気はなかったのだが、初心者殺しがいるかもしれないという不安を解消したいのもあってこのクエストを受注したのだ。男二人のレベルが仲間より頭一つ低いという不安の方が大きいのだろうが。

 初心者殺しの事はギルドに話していない。こんな根拠のない話を持ち出されても向こうはどうもできないだろうし、和真が少しでもそれらしい痕跡を見つければすぐに全力で《潜伏》を行う手筈だ。そしてその時はきちんと報告する。初心者殺しクラスのモンスターなら発見しただけでも小遣い程度には報酬が貰えるだろう。

 

 そしてある程度森の奥に進んだところで和真が反応した。

 

「・・・そろそろゴブリンの群れが近いな。ん・・・ちょっと多いか?ゴブリンの群れは一つに十匹もいるかどうかってレベルらしいけど、これって十は越えてるんじゃないか?」

 ―――ちょっとヤバい数?

「数だけならお前もいるし大丈夫そうだが、この間初心者殺しにあった時は三十匹くらいの群れだったな・・・たまたまこの数が集まっただけ・・・ってのは楽観視し過ぎか?」

 ―――何かこう、他と違う反応とかある?

「・・・強さとかで反応が変わる訳じゃないんだが・・・あれ、一個だけ反応が・・・上の方にあるのか?高さ的には木の上くらいだが・・・」

 

 それを聞いた俺は、第二形態の準備をする。具体的には『インスタント・サモン・デビル』の呪文を唱え、後は発動しようという意思で魔法が発動する状態だ。正式に契約した以上はこっちの簡易的な召喚にする意義は薄い、というのが常識だが、いつ奇襲がくるかも分からない状況なら詠唱の短いこっちにする意義は十分ある。

 

 呪文が口から漏れる。重苦しい静寂の中で、それだけが異様に大きな音に聞こえた。

 ひょっとすると、相手はすでに俺達に気づいているのかもしれない。もしそうならば、進めばどこか――おそらく木の上――から襲われ、引けば後ろから襲われるのだろう。

 これから起こるであろう激戦を思いながら足を進めると、ゴブリンの群れがいる場所を発見した。木々によって見え辛いが、確かに十は越えていそうな数だ。

 和真があごで示した場所を俺も見ると、特に大きめの木が生えているが、その葉と枝で樹上の獣の一匹くらいは身を隠せそう・・・・いや、よく見ると一対のネコ科らしき眼が見える。実際に隠れているのか。

 その下のゴブリンは、俺達を警戒しながらも頭上を気にしている。

 

「これ・・・本当に俺への仕返しをする気か」

 

 和真が小さな声でぽつりと漏らした言葉は、俺が抱いた感想でもあった。

 この様子だと、今から逃げようとすれば即座に襲ってくるだろう。戦うしかない、か。

 

「・・・三つ数える。それから召喚」

「わかった」

 

 俺の提案を和真が受ける。

 

 

 ―――一。

 

 

 ―――二。

 

 

 ―――三!

 

 

「『インスタント・サモン・デビル』・・・!」「ガアアアアッ!」

 

 紙一重。俺の魔法は発動し、魔法と同時に跳びかかってきた黒い獣の爪を、頬をかすめる程度で回避するのに成功した。

 

「初心者殺し・・・・・・!」

「グルルルル・・・・・・!!」

 

 和真も一層の警戒を(あら)わにして獣――――初心者殺しを睨む。それに反応した初心者殺しは、怒りに燃える眼を和真に向けた。

 

「『クリエイト・アース』『ウインドブレス』」

「・・・・・・」

 

 以前初心者殺しから逃れるために使ったというコンボを和真が使ったが、相手は目を(つぶ)って防がれた。やはり同じ個体か・・・

 そして相手は和真を睨みつけ、雷撃の様に素早い動きで和真へと襲い掛かる――――が、突如現れた土の壁によって防がれる。第二形態の俺が作った壁だ。

 

「グルルゥ・・・?」

 

 いつの間にか姿の変わっていた俺に怪訝そうな目を向けている。その警戒の目から、奴の狙いは和真ではなく俺に移ったと見える。

 お互いに相手の隙を伺う。俺は両手に魔力を集め、初心者殺しは身を(かが)めて俺の一挙一動を見逃すまいとしている。

 すると、俺の後ろに回る気配を感じる。ゴブリンか?和真の方には行ってないが、気づけば俺達を遠巻きに囲っている。

 

「ギギャアーッ!」

 

 俺の後ろから一匹のゴブリンが襲い掛かる。一匹では弱く、俺の魔力を込めた手刀の一撃で吹き飛ばされた――――が、それを好機と見た初心者殺しが俺に襲い掛かる。共生関係かこいつら!

 俺は腕を手前で交差させて攻撃を防ごうとするが、初心者殺しはその強靭なアゴで噛みついてくる。ぐうっ・・・痛い!

 ・・・・・・・・しかし俺は一人ではない。

 

「でりゃああああっ!」

「ゴウッ!?」

 

 和真の渾身の一撃が、初心者殺しの右後ろ脚――――膝の裏側を叩く。不意の一撃に初心者殺しの態勢を崩し、その隙に俺は初心者殺しから距離をとることができた。

 

「ゴルルルルル・・・・・・!」

「あ・・・これはちょっと、ヤバいな・・・・・・」

 

 初心者殺しは、更なる憎悪を込めた眼を和真へ向ける。

 

「ゴルルァアア!」

「ぐは・・・・っ!」

 

 その爪の一撃で、和真の身体は近くの木に叩きつけられる。腹部からは血が流れており、その身体はぴくぴくと痙攣している。

 

 初心者殺しは和真を狙うのをひとまず止め、あざ笑うような目つきを俺に向ける。悠然と歩く姿は、『すぐにお前もああなるのだ』と告げているようだった。

 

 そんな初心者殺しの足元――――さっきの和真の攻撃でダメージを受けた右足のところに尖った石を作り出す。

 

「グルアッ!?」

 

 和真が与えたダメージもあって、それは初心者殺しに僅かな、しかし致命的な隙を作り出す!

 

「『ストーンバインド』!」

「ガッ、ガアア・・・ア・・・」

 

 魔法によって作られた首輪は初心者殺しの首を絞めつけ、しばらく後にその命を奪った。




 書いていて、カズマさんの言動これでいいのかな?と思いはしましたが、今回は離脱も難しい状況だったので戦うしか選択肢がない、ということでそのままにしました。
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