―――ここが例の豚熊貴族の屋敷?いかにもな悪趣味さね。
流石の俺もアーネスの言葉に同意せざるを得ない。
依頼者―――この辺り一帯の領主であるアレクセイ・バーネス・アルダープの屋敷はやたらと華美な装飾が多く、それぞれの存在感を食いあっているように見える。また、屋敷は見える範囲だけでも妙に綺麗で、建てられてからあまり年月が経っていないようだ。
門番――これまた華美な外観の鎧で、実用性は重要視されているかどうか――に依頼書を見せて数分ほど待つと、玄関から太った男が勿体ぶった態度で現れた。屋敷同様に
「ワシが、今回の依頼人であるアレクセイ・バーネス・アルダープだ。今日はよろしく頼むよ?」
「はい・・・・それで、何を?」
「・・・ああ、依頼書には書いてなかったな。今回依頼したいのは物置の掃除だ。ワシの屋敷には数多くの珍品が保管されているのだがな、それを保存しておく物置も随分と
喧嘩売ってんのかこいつ。円城寺家を見習え。
―――身元の怪しい冒険者をそんな所に入れる?怪しいとしか思えないわね・・・
―――そうだよな・・・何かしらの紛失とかないか逐一確認させるしかないか・・・?
―――衛兵とかが近くにいたら、そいつも警戒するべきね・・・
アーネスと思念で会話する。流石に俺でも怪しいと思ったし、彼女も同感のようだ。相手が相手だし、依頼を受けないというのは難しいだろうが・・・・・・
―――ん?今、悪魔の力が使われた気が・・・
―――俺も感じたな・・・しかも今の、屋敷の中から感じた・・・
―――この豚領主がどこかの悪魔と契約してたのか、こいつの評判を下げたい奴がいるのか・・・・どっちにしても、この一回だけで終わるとは思えないわ。
―――街の聖職者を集めて浄化でもしてもらうか?
―――相手は領主よ?これで悪魔が契約しているのがあいつだったら、どんな報復に出るか・・・
今の力はかなりのものだった。俺はどうやら先天的に悪魔の魔力に対して耐性があるらしいが、それでもアーネスと合体していなければ危なかっただろう。
どうやら俺がこの依頼を疑わずに受ける方に思考を誘導させるためのものだったようだが、こうなると物置――――あるいはその名目で向かわされる部屋で何をされるのか、ろくでもない事になるのが容易に想像できる。
ここは警戒を怠らないまま依頼を受け、向こうがボロを出せばすぐに逃走。可能なら悪魔の存在について何かしらの証拠の確保もしておく、くらいの方針で行動するか。
そうしてアルダープと衛兵二人に連れられて向かった部屋は、少なくともぱっと見た限りでは物置だった。
「さて、お主に掃除してもらうのがこの部屋だ。掃除用具は・・・そこのメイド!今からこの部屋の掃除をこの男にさせる。掃除用具を持ってきなさい・・・・お主にはまずこの部屋のものを全て廊下に出してもらう」
「それだと、この廊下の床板が壊れる・・・と、思います」
「・・・むぅ、それじゃあ向かいの部屋にするか。あそこならいいだろう」
「物品の紛失などがないか、確認できる手段は・・・・・」
「・・・・・・む、むぅ・・・そうなると、ワシが監督するのが最善だが、ワシは忙しいのでな。まずワシが一通り確認するから、終わったらワシのところに来なさい」
―――露骨に言葉に詰まってたわね・・・貴重品の盗難をでっち上げて、それで賠償金を得る、って腹積もりだったのかしら。
―――でも俺達から巻き上げられる賠償金が欲しいのか?賞金とかは確かにがっぽり手に入れたけど、借金を差し引いたからそこまで高額でもない・・・というか、もっと手っ取り早く脱税とかでもよかったんじゃ?
―――そうなのよねぇ・・・あんた達が持ってるもので、金で買えないものとか・・・・・・
―――どうした?
―――ウォルバク様の半身を得て、その力を得ようとしたとか・・・?
―――可能性の一つとして検討しておく。
アルダープが物置を調べ、中にある物品を一つ一つ紙に記していく。この行動は俺も見ているため、実際には置いていないような物を記してその所在を追及するような真似もできない筈だ。
一通り調べ終えると、アルダープはその紙を叩きつけるように俺に渡す。ろくでもない事を考えていたのは確定的に明らかだが、今回は無事に帰る事が最優先だ。
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部屋の掃除の最中には何事もなかった。
物がいつの間にか足りなかったり、といった事態も考えていたが、無事に掃除を終える事ができた・・・・と思う。
―――結局、あの悪魔の気配もあれから感じなかったわね・・・
―――今回は諦めたのかな?
―――豚領主のあの様子、策が潰された、って感じだったわよね・・・・むしろ帰ってからが本番になりそうね。
そんな会話をアーネスと思念でやりつつ、俺はアルダープに依頼達成を報告するために物置を後にする。
―――!今の・・・・・
―――例の悪魔の気配だな・・・この感じだと俺の方に何かやったみたいだが、精神的なものじゃなさそうだな・・・
自分の状態に気を配ると、いつの間にか懐に何か入っている事に気づく。
―――これは・・・・・・物置に置いてあったペンダントだよな?
―――確か、所有者の身を守る魔道具で、歴史的価値なんかも考えると時価1000万は固い・・・・とか言ってなかったかしら?
―――もしかして、気づかないまま報告に行ってたら、俺が盗んだ、って事にされてた?
―――でしょうね。そうして無力な冒険者から、賠償金をせしめていた・・・のかしら。
とりあえず、俺はペンダントを元の場所に戻し・・・
―――!壺が・・・・割れてる・・・・・・
―――今のも悪魔の気配・・・やられたわね・・・・・・こうなると『私達だけがいた場所で壺が割れた』っていう証拠がしっかり残ってしまう。貴重品を壊さなきゃならないから、向こうにとっても苦渋の策だったんでしょうけど・・・
―――だが賠償金が冒険者にどれだけ支払えるか、って考えると、金銭目的じゃないよなあ・・・・・・やっぱり邪神の力を手に入れようとしてたとか?
―――やっぱりそうなるわよねえ・・・今のところは正直に報告して、賠償金の話になったら長期的にでも現金で支払うように話を持っていくしかないわね・・・・
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その結果。予想通りというべきか、パーティーの仲間も一緒に今後の事を話し合うこととなった。
これは俺の問題であって仲間は関係ない、と言ったものの、同居までしている仲なのだから同席させるべき、と押し切られてしまった。
「――――しかるに、この者が割った壺の賠償金は700万エリスが妥当だと思うのだが・・・・・・お主らに払えるのか?」
「・・・払えません。何回かに分割して支払えるのなら、まだ可能性はあると思うんですが・・・」
「ワシは被害者だぞ?その者を信頼してこの依頼を任せたのに、こんな形でそれを裏切られた・・・・・そのワシに支払いを待て、とお主らが言うのかね?」
アルダープは和真にそう言い切り、一同を舐めるようにねっとりとした目付きで見回す。
―――うわっ、あの男がクルセイダーの子を見る目付き、見た?
―――ねっとり具合が数段階上がってた気がする。
―――確か、あの男は前からクルセイダーの子を知ってたのよね?
―――じゃあ、アルダープの狙いはダクネスかもしれないって事か?
―――かなりの好色家だっていうし、ありそうじゃない?
「・・・まあワシも鬼ではない。お主らが・・・いや、お主らの誰か一人でも、
言葉通りではないだろう。しかし、ここをどうやって切り抜けるか・・・
「・・・その支払い、時間さえくれれば必ず遂行すると、私が保証するのは認められるか?」
見ると、ダクネスが懐からペンダントを取り出し、それを――――あるいはそこにある紋章をアルダープに見せていた。
「ふむ・・・・・・ダスティネス家であれば保証人としては十分か。では、支払いは二ヶ月以内だ。それまでに返済できなければ・・・その時はこちらで返済方法を提示するとしよう」
隠しようもない好色な雰囲気をにじませながら、アルダープは続ける。
「まあ、近い内に
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帰り道。
「・・・つまり、あの屋敷にいる謎の悪魔のパワーでこんな事態になったんだな?」
―――うん。
「間違いないわね。上手く気配を隠しているみたいだけど、私にはわかるわ」
「私にはその気配がわからないのだが・・・・もし本当に奴が悪魔と契約しているのなら、単に浄化すれば解決、とはいかないな」
「なんでよ!居場所が分かってるならそこに行けばいいじゃないの!」
「そこに行く方法が無いって事だろ・・・事情を知らない衛兵を浄化しても多分効果はないぞ?」
「むうー・・・・」
やや間を開けて、めぐみんが口を開く。
「ところで、ダクネスが見せたあのペンダントは何だったんだのですか?」
「ああ、あれは・・・・いや、こんなところで話す話題でもないな。屋敷に戻ったら説明する。それでいいか?」
俺・・・・圧制なんかに絶対負けない!
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『あんさんぶるガールズ!!』に登場する、円城寺れいかの家。地域でも有数の資産家で、大きな屋敷を持っている。
円城寺れいか以外の人物は作中では登場しないが、