この素晴らしい世界にアンサンブルを!   作:青年T

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 でかいオリ設定をぶっこみましたが、これ以上に世界観に関わるオリ設定は盛り込まれない。筈。


来訪者は突然に

 天光(あまみ)(さとし)の朝は早い。

 またも借金漬けとなった今、ポーションの一つでも作って家計の足しにしたいのだ。

 地球の暦であればもう年明けかという時節、日の出と共に聖はベッドから身を起こし、

 

 「るるる!転校生のひと!おはようございます!」

 ―――アイエエエエ!?るり!?何故るりがここに!?

 

 

 ────────────────────

 

 

「こっちの世界に干渉する方法を探していて、俺経由で来た」

「るるる!現在はるりをそちらの世界に投射することしかできません!世界間の移動にはさらなる情報、演算が必要です!」

 

 なるほど?

 天宮(あまみや)るりは謎の能力で同じ時間軸に同時に二人存在していた節のある君咲学院の先輩だが、どうやら実体の無い幽霊のような形でこの世界に姿を現すことができたらしい。どういう事なの・・・?

 

「聖ー?朝っぱらから大きな物音出すなって・・・おわっ!?誰だこの女の子!?」

「るりは天宮るりです!大宇宙~☆」

「日本の知り合い」

「ああなるほど・・・・いやちょっと待て!?何をどうやったら日本から人が来れるんだよ!?」

 

 そう言う和真の手を取り、るりの手に――――るりの手がある位置に触れさせる。

 

「あ、あれ?すり抜ける・・・幽霊か何かか?」

「るるる!怪奇現象と呼ばれるものにも明確な原因とプロセスがありますね!それを理解すれば同等の事象を発生させられます!」

「?????」

「考えるな。感じろ」

「お、おう・・・・・・」

 

 初めてるりと出会った時の俺のような表情で俺達を交互に見る和真。まあ今回は流石の俺も面食らったし、気持ちはわかるけどな・・・

 

「るりは並行世界とは異なる異世界へと干渉する手段を模索していました!現在は『特異点』を介しての観測手段を試行しています!るりは観測および発言のみでそちらに物理的接触はできませんね!」

「喋るのは干渉じゃない?」

「思念を送信しているだけです。物理的な接触は現状では不可能です!」

「・・・・・・え、ええと、るり・・・さんはいつまでこうしているつもり・・・なんですか?」

「るるる!二時間ほどの観測を予定しています!転校生のひとは何をする予定ですか?」

「こっちの魔法で薬を少し作って、その後で朝食を食べる」

「ではそれを観察します!大宇宙~☆」

「もう二度寝できる気もしないし、今日は俺も手伝うわ・・・・あ、自己紹介はした方がいいか。俺は佐藤和真。見てわかるかもしれないけど、聖と同じ日本人。こっちに来た経緯は・・・・・信じてもらえる気がしないから、証人が起きてから話す・・・・あれ、るりさんが帰る前に起きるか?」

「・・・・・・ポーション、作るか」

 

 とりあえず、俺達はこの辺りで一般的な性能のポーションをまず一つ作る。その間るりは、それぞれの素材や工程の説明を逐一求めてきた。違う法則の存在する異世界の薬品を俺がどれだけ説明できるのか、という問題こそあるが、少なくとも駆け出し冒険者の街(アクセル)で通用するポーションを作れる程度には知識がある。

 

「ふわぁ~・・・サトシったらまた何かやって・・・・・・って、誰この・・・・・・何?」

「無限に広がる大宇宙・・・・☆」

「幽霊・・・・じゃないわよね。むしろ・・・・・」

 

 ・・・そういえば、俺達の地元について、以前アクアが何か不穏なことを言いかけていたような。

 

「何かある?」

「え?ああー・・・・」

 

 俺の問いかけにアクアが悩む。ひとしきりうんうんと唸ったところで、ようやくアクアは口を開いた。

 

「事が事だから気軽に話す気にもなれなかったんだけど・・・サトシ達の故郷って、昔は呪術とかそういった方面の技術が発達してたのよ・・・昔といっても遺跡も残ってるかどうか、ってくらいだけどね?その頃に色々やってた影響で、あの辺りには変なものが沸きやすいし、当時の名残みたいな能力を持った人間が生まれたりしてるの」

 ―――えっ。

「聖は大丈夫なのか?本人は悪い事とか考えなさそうだけど」

「多分何かの目的のために改造された人間の子孫とかそんな感じだと思うんだけど・・・これだけ経っても何も異変とかが無いし、大丈夫じゃないかしら?」

「適当だな・・・ところで、そこの・・・るりさんは・・・」

「明らかに能力を使いこなしてるわね・・・今の状況だって、やってる事は神にだって匹敵しているわよ。こんな事ができるのなら今更暴発とか心配する必要も無さそうね」

 

 普通とは違う人がちらほらいるとは思っていたが、やばい土地だったんだな・・・まあ俺としては、それで苦しむ人がいないのなら別にかまわないし、むしろ楽しいと思うけど。

 

「地球もわりとファンタジーだった・・・・・」

 ―――ファンタジーじゃなくてもいいじゃん。

「そうは言ってもさあ・・・」

 

 そんな風に和真達と会話していると、不意にるりが口を開く。

 

「良かった。あなたはちゃんと、幸せなんだね」

 ―――まあ、な。

「それじゃあ、あたしは元の世界に帰るね。この世界で何があるのかあたしにも分からないけど、あなたなら頑張れると思うから」

 

 そう言って、るりは(かすみ)のように姿を消した。

 先ほどまで彼女の姿があった場所には、少女がいた痕跡は何一つ見つけられなかった。

 

「「「・・・・・・・・」」」

 

 物音一つしない部屋で、俺、和真、アクアの三人は向かい合う。

 

「まあ、なんだ。お前には色々と助けられたし、俺としては今更お前をどうにかしようとは思わないからな。うん」

 ―――お、おう・・・

 

 

 

 ────────────────────

 

 

 

 そして朝食時。

 

「・・・そういえば、お見合い」

「昨日俺達が行ってきた奴か。色々あったが要点だけ言うと、ダクネスは今後もウチのパーティーで面倒を見ることになった」

 ―――ダスティネス卿はそれを認めたのか?

「あいつがバカな事をしでかさないように、ってさ」

 ―――ああ・・・・・・

 

 俺をおいてダクネスのお見合いを片付けた和真達だったが、どうやら無事に終わったみたいだ。

 

「そっちは何かあったか?」

「金は増えた」

「そうは言ってもしょせん数日分だしなぁ・・・どうせならパーっと楽に稼げる依頼とかがあればいいんだが」

 

 ちょっと気合入れた程度で金が稼げるなら誰も苦労はしない。かといって一気に稼げるような賞金首モンスターにはそれ相応の強さがある。俺一人で倒すのはまず無理だろう。

 

「・・・お見合いといえば、あの時私に言っていた『凄い事』についてはうやむやになっていたな」

 ―――え・・・ダクネスに?和真が?凄い事?それもあんな風に顔を赤くするような?

「いや、あれはつい、その場の勢いで・・・」

 ―――ああ、お見合いでもいつものダクネスだったのか・・・

「まあ、そんな感じだった。じゃあこの話終わり!めぐみんが作ってくれた朝ごはんを心して食べよう、うん!」

 

 あ、逃げた。

 

 

 

 ────────────────────

 

 

 

 そしてギルド。今の時期は王都ならともかく、こんな駆け出し冒険者の街では厳しい冬の朝からここに来る者はそうそういない。

 その筈が、今朝は何名かの冒険者が掲示板に――――もっといえばそこにある一つの依頼を見ていた。

 

『キールのダンジョンに発生した謎のモンスターの調査』

 

 キールのダンジョンは俺も知っている。この街の近くにある初心者向けのダンジョンで、和真も先日挑戦したダンジョンだ。彼は盗賊スキルとアーチャースキルの合わせ技でダンジョンに潜れるか試したのだが、その際に誰も見つけていなかった隠し部屋を発見。そこにいたリッチーをアクアがひそかに浄化したというダンジョンだ。

 どうやらそこから新種のモンスターが出てきているらしいが・・・

 

 ―――和真、何か知ってる?

「いや、俺が行った時は、道中は公式に確認されてるモンスターしかいなかったな・・・あの貼り紙によると、その謎のモンスターは人形みたいな見た目の群れなんだろ?そんなのがいたら流石に何かしら気づいたと思うんだが・・・」

「ええ。私もそんなモンスターは見てないわね。あそこのボス部屋にはついでに浄化の魔法陣も張っておいたし、邪悪なモンスターは退散すると思うんだけど・・・」

 

 ふむ。二人も心当たりが無いか。人形みたいなモンスターとなると、誰か製作者がいる可能性が高いが・・・・・・

 

「・・・・・・え?アクア今なんて言った?」

「だから、あそこの奥には私が浄化の魔法陣を張っておいたって・・・」

「・・・・それ、下手したら今回の一件の原因がアクアだと思われないか?」

 ―――確かに、今回のモンスターは人形みたいってもう分かってるし、自然発生したものではない可能性が高いが・・・

「いいか?このまま調査が進めば、遅かれ早かれ奥には着く。そこにはつい最近誰かが設置した魔法陣。王都の方には魔力からその術者を探す手段もあるって聞く。そうなればアクア、お前はどんな奴だと思われる?」

「有能な美人アークウィザード?」

「怪しいだろ普通に考えて!俺はいやだぞまた借金が増えるような事になるのは!」

 ―――ぐはあっ!!

「そっちがダメージ受けるのか!?・・・まあともかく、俺としては謎のモンスターの出所を早急につきとめ、俺達に容疑がいかないようにしたい・・・お前らはどうする?」

 

 和真の危惧は極論かもしれないが、必ずしもありえないとは言い切れない。アルダープという不安要素がある以上、隠蔽工作をしておくのもいいだろう。事前にギルドにでも申告しておくという選択肢もあるにはあるが・・・・・現地で見つかったら話せばいいか。そのモンスターが浅い層に留まっているのならそれでいい。俺達は何もやってないって事で通したい。

 

 ―――とりあえず、調査に参加するか。

「ああ。私としても、その新種のモンスターには興味がある」

「本当にそういう魔法陣じゃないのに・・・・まったくしょうがないわねー・・・・」

「我が爆裂魔法はダンジョンでは使い辛い・・・今回は留守番・・・では暇ですね。ダンジョンの入口辺りまでは同行することにします」

 

 決まりか。和真はこのクエストをカウンター(当然のようにルナさんの所)に持っていき、必要な手続きを行った。ルナさん曰く、昼過ぎ頃に受注者達で集まって打ち合わせを行い、その後出発という流れらしい。

 俺達はその時までに、それぞれ消耗品なんかの確認を行うことにした。




 突然ですが、この章の執筆が終わったら長めに休載期間を設けようと思っています。リアルの方も忙しくなってきたので・・・

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