「謎のモンスターっていうのはあれか・・・」
現在、謎のモンスターが発生しているというキールのダンジョン。
その入り口から次々と姿を現しているモンスターは、冒険者達が日ごろ戦うモンスターと比べて明らかに異なる印象を彼らに与えた。
依頼書にもあった通り、その外見を一言でいえば人形。膝に届く程度の大きさの三頭身で、仮面を被ったタキシード姿の怪しげな男をモデルにしていると思われるそれは、強そうな要素が見当たらなかった。
―――ちょっと調べてみる。
「おい聖!?」
俺はその辺の土から細長い棒を作り、人形の方へ向けて差し出してみた。
トテトテトテトテ・・・
ピョインッ。
ギュッ。
ドォン!
―――自爆した!?
「マジかよ・・・人形の方も残骸すら残ってないな。こんなんで大丈夫なのかこいつら?」
「・・・と、言ってる間に次が出てきたな。それも二体」
「この調子ですと、まだまだ次が出てきそうですね」
「あーやだやだ。あの仮面からなんだかムカムカしてくる気配が感じられるわ」
俺や他の無謀な冒険者が人形を調べている間も次々と這い出してきており、このまま無限に這い出してくるのではないかと思わせるくらいだ。アクアの言う事や俺の感覚も考えると、この人形が悪魔と関係がある可能性も十分にある。悪魔が何故こんな所にいるのかは不明だが・・・・・・
「このモンスターが無尽蔵に沸いて出てくる今の状況は決して良くありません。放置すればほぼ間違いなくこのモンスターが方々に散らばるでしょうし、現状維持も決して得策とはいえません・・・冒険者の方々には、このモンスターの発生原因を主に調査してもらいます。
今回の事件では、何者かがダンジョンの何処かに潜んでモンスターを召喚しているという線が一番濃厚です。封印の魔法が込められた札をこちらで用意していますので、召喚用の魔法陣があった場合にはこれを魔法陣に貼り付ければ無効化できる筈です。術者の討伐ないし捕縛もぬかりなきよう」
セナという名前らしい王国検察官がそういうと、和真の目に光が宿る。今の話でそんな反応をする点といえば・・・
「特別報酬か・・・借金返済に使えるか?」
「この一件、悪魔が関わってると思う」
「げっ・・・じゃあもしもの時はお前が・・・いや、お前の
「その内脱出して本気でアクセルを襲うかも」
「・・・・・・やっぱ行くしかないかぁ・・・」
「それじゃあ行くぞー!準備は大丈夫だなお前ら!」
俺達を含めた冒険者の集団は、誰かの上げた声に気を引き締め、無事を確約できないダンジョンの深部へと足を進めた。
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謎のモンスターは、単体で見ればそこまで脅威ではない。
自爆の威力は鎧さえあれば死なない程度だが、俺みたいな軽装の後衛職ではどこまで無事か。
とはいえ、それがダンジョンのあちこちから現れるとなれば話は変わる。一発が大丈夫でも二発、三発と立て続けにくらえば、ここに来ている大半の冒険者は致命的なダメージを受けるだろう。
だがしかし、
「フフフフ。ハハハハハッ!カズマ見ろ!当たる!当たるぞ!こいつらの自爆は私には通じない!流石の私でも自分から向かってくる相手には当てられるぞ!」
最近では止まっている的にも安定して攻撃を当てられるようになったダクネスが、今回の人形モンスターに対して相性が非常に良いのだ。レベルに対して低い彼女の攻撃でも相手は爆発し、そのダメージは控えめに言って常識外れな彼女の耐久力を貫通することはない。
脇道なんかから出てくる人形は後続の俺達と交戦しているが、それこそ長い棒で突くだけでもあっちが勝手に自爆するため、それを倒すのに苦労はしない。何の効果もない棒くらいならさっと生成できる俺がいるため、疲れた者が休憩に回る余裕さえある。
「ダクネスその調子だ!そっちを真っ直ぐ!ガンガン進め!」
「よし任せろ!ああっ、何だこの高揚感は!自分が、初めてクルセイダーとしてまともに活躍している気がするっ!」
クルセイダーの仕事は雑魚をなぎ倒す事ではない。本来なら今の俺達のように後衛を守る事が仕事なのだが、立場が逆転していないか?
「数が多い・・・あっ!何体かそっちに抜けたぞ!」
―――げっ!じゃあ俺の棒術を喰らえオラァ!
「クリエイターとは一体・・・」
何なんだろうね。
そして、そんな事を考えている内、和真とダクネスは俺達を置いて二人でダンジョンの奥へと向かっていった。
・・・まあ、冒険者仲間のフォローって事でいいだろう。何かあればあっちからも何かしら合図は出せるだろうし。
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そんなこんなでダンジョンの三分の二・・・・は言い過ぎか?・・・半分以上を制圧した俺達の前に、何やら妙なものが現れた。
「ええい、何なのだこの娘は!本来なら既に意識を失うか、我輩の与える苦痛に屈しているところだぞ!・・・ああ、ここまで強烈な痛みは初めてだ!流石は魔王軍の幹部というべきか・・・・・・素晴らしいぞこれは!・・・本当に何なのだこれは!」
一体何なのだあれは。
首から下はまず間違いなくダクネスだが、その顔には例の人形モンスターと同じデザインの仮面を被っており、さらにその上からは、検察官さんに渡された封印の札が貼り付けられている。仮面に隠されていない口元は頻繁に表情を変えていた。
・・・・・・本当に何なのだあれは。
―――和真もいるじゃん!これどういう状況!?
「聖!詳しい事は省くが、元凶の悪魔がダクネスに取り憑いた!これからアクアのいる地上に連れてく!」
―――なるぼど分かった!
「もうちょいだダクネス!頑張れ!地上に着いたらすぐ楽にしてやるからな!」
「くっ・・・・何故こんな妙な展開に・・・・・お構いなく」
―――「「なんて言った?」」
しゃべる口や声は同じなのだが、ダクネスと悪魔のどちらがしゃべっているのかは理解できた。
そうして入口の方へと騒がしく走っていった和真達を追いかけ、俺も同じ方向へと向かっていった。