そのメイド、神造につき   作:ななせせせ

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惚れる人

贅沢言わないから巨乳美少女に転生して周りの視線が集まる中これ見よがしに胸を揺らしたりして遊びたいだけの人生だった……


Before day2

 今でこそかなり持ち直してはいますけど、あの当時は大変でしたのよ?

 日に日にやせ細っていく母と何日も帰ってこなくなった父。次々に辞めていく使用人と――掌を返してわたくしから離れた他の貴族子女たち。

 

 常に周囲に誰かがいたことが嘘だったかのように、わたくしは一人きり。

 ああ、いえ。

 この言い方は正確ではありませんわね。

 

 人は近くにいましたのよ?

 ただ味方というか……オトモダチというか……そういった人がいなくなりましたの。

 まあ、当然の話です。彼らが見ていたのはわたくしの家の権力や財力であってわたくし自身というわけではありませんもの。

 

 ……それで終わるわけもないのですけど。それまで権力を笠に着て傍若無人に振る舞っていたような女ですから、ただ失脚した家の娘として捨て置かれるはずがありませんし。

 今までわたくしにいじめられていた側にとってみれば最高の復讐の機会。今までわたくしがやってきたことを返される時が来たというわけです。

 

 登校してみれば机が無くなっていて「おめーの席ねーから!」と言われ、何とか探し出してみればビッチだのチョココロネだのと悪口が所狭しと書かれてあり、物を隠される、壊される、すれ違いざまに刃物で服を裂かれるというのもありましたわね。

 戦闘実習で覚醒魔法を掛けられて殴られた時は死ぬかと思いましたわ。意識だけは早くなって鋭敏なのに身体は動かないし痛覚が異常に上がっているせいでただの拳でさえ意識を失うほどの痛みを味わうことになるんですのよ、あれ。

 

 ……そんなときです。

 いつものように実習で殴られていたところで、不意にそれが止まりました。

 何故だろうと顔を上げると、あの子が――オフィーリアがわたくしを庇っているんです。

 自分の身で実感していたから分かりますけど、本当に叫びたくなるくらいの激痛が走っているはずなのに、全く表情を変えないで立っているものだから一瞬痛覚がないのではと思い込んだくらいです。

 

 やがて何の反応も返さない彼女に呆れたのか、攻撃してきていた生徒たちはどこかに行ってしまいました。

 そうしたらあの子、振り返って「怪我はない?」って。

 

 おかしいですわよね。全身擦り傷だらけで額から血を流してすらいるあの子と、ちょっと服が汚れている程度のわたくし。どちらが酷いかなんて一目瞭然なのに。自分は全く痛くありません、って顔で人の心配をしてくるから思わず、

 

 

『あなたおかしいのではなくて!? 人の心配より先に自分のことを考えなさいな!!』

 

 

 って怒鳴ってしまって。

 ……だって仕方ないでしょう!? あの子のあの綺麗な髪とか、顔とかそういうの全部ぼろぼろになってるんですのよ!? それを全く気にしてないどころかそれでいいとでも言わんばかりの態度に無性に腹が立って仕方なくて……

 

 そうしたらあの子、「お……ワタシはこれでいい、です」とか言いやがりますのよ!! もう本当に、ああ……思い出したらまたムカついて来ましたわ。

 怒りのあまりあの子を正座させて小一時間説教して、あの子がちゃんと頷いたのを確認して、それで終わりにしてあげたのです。

 

 化粧の仕方も知らない、女性として必要なことも全然わかっていない、というかそもそも生活能力が皆無と……いえ、無駄に能力値だけは高いから出来たのでしょうけど、やる気が無かったというか……

 あら、意外? 巷ではなんでも出来る完璧超人として通ってますものね、あの子。あんまり自分のことに興味がないというか、あれはなんていうか……そう、まるで自分が女性だと思っていないかのような感じですわね。

 

 毎日毎日おのれは本当に女なのかと問いたくなるような生活をしていることが判明しては怒り、サボろうとするあの子に宿題をやらせ、夜更かししようとするあの子を寝かしつけて……そんなことをしていたらいつの間にか仲良くなっていましたわ。

 なんですの? ……ですから本当に、笑い事ではないのですよ? 男子だけのグループに誘われてもほいほいついていくような子ですし。

 

 まあでも、そんなあの子だから、わたくしのことも気に掛けてくれたのでしょう。

 いつだったか、聞いたことがあるのです。

 どうしてあなたをいじめていたわたくしを助けたりしたのですか、と。あの子ったら、

 

 

『友達になりたかったから、かな』

 

 

 なんて、本当に同性のわたくしですら見惚れるような笑顔で言ってのけるんですのよ? 何故だか悔しくなって、またいじめるかもしれないのに? と聞いたらまた笑うんです。それで――

 

 

『アゼリアちゃんはもう傷付けられる痛みを知っている人だから。傷付ける痛みも分かるでしょ? だからそんなことはしないよ』

 

 

 って。

 そこでようやく気付きましたの。

 ああ、わたくしは最初からこの子と友達になりたかったんだ、と。いじめていたのは気を引きたかったからで、どこかつまらなさそうに、どうでもよさそうに世界を見ているあの子に振り向いて欲しくて――って、これではまるで恋する乙女のようですわね。

 ……あなたたち、そのニヤニヤとした笑いをやめなさいな。リリア! その書き写した紙をどうするつもりですの!?

 

 ……え? それから、ですか?

 

 特に、何も。

 大したことはありません。あの子が何かしでかして、わたくしが怒って。そんな感じです。いつの間にかいじめられることもなくなって、あの子のお蔭でわたくしがいじめた子たちと話し合うことも出来ました。もちろん、許してもらったわけではありませんけれど……ええ、わたくしに出来る償いは全てするつもりです。

 

 一人でいたら絶対にそんなことを考えることなく、どうしてこうなったのかとうじうじ悩みながら、もしかしたら命を絶っていたかもしれません。

 そういう意味では、わたくしにとってあの子は手のかかる娘みたいなもので、親友で、それから命の恩人なのです。

 

 ……。

 少し、話疲れましたわ。

 

 って、あら。

 オフィーリア、あなたあの勇者様方のところに行っていたはずでは?

 は? ちょっと何を言っていますの? 遺跡? 勇者と? 三人で?

 ちょ、お待ちなさいな。いえ、そうではなくて……貴女はもっと警戒心を持ちなさいと言って……あ、こら、何を逃げようとしているんですの!?

 

 ちょっと待ちなさい! ほんと待って!

 ……待ちなさいって言ってるでしょうが! 待てこらああああ!!!!




ここで書いてる作品だと割とさくさく書き進められるのに賞に応募しようとしてる作品は一行も進められない不具合
バグかな
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