そのメイド、神造につき   作:ななせせせ

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悶える人

あけましておめでとうございマ!



Day11(裏)

 彼女と出会ったのは、まだ俺たちが小さな子供だった頃。

 当時の俺は顔の火傷を理由に、村の子供たちからいじめられていた。この火傷は両親曰く、記憶もないくらい小さかった俺がやかんのお湯をひっくり返して頭から被り、その結果として残ったものらしい。

 当然の話、貧しい平民である俺の家に治癒魔法を受けられるような余裕などなく、顔の右半分を覆う火傷は永遠に残ることになった。

 

 大人はそんな事情が分かっているから優しくしてくれたが、同年代の子供はそんな俺を気持ち悪がり、決して仲間に入れてくれることはなかった。……まあ、今となってはそれも当然のことだと思うが、子供だった俺に理解できるはずもなく。なんで自分だけがこんな目に遭うんだ、と毎日鬱々と過ごしていた。そのせいもあってか、喋るのがとても苦手で、話したいことも話せなくなってしまった。

 そんな時だった。

 

 

「――ん? なんだお前、一人なのか?」

 

 

 そう言って微笑みかけてくれたその日から、俺はずっと彼女のことを――

 

 

 

 

 どう話しかけようか、どうやってきっかけを作ろうかと108通りの作戦を練っていたところで唐突に……本当に唐突に彼女が現れた。

 

 その日も血反吐を吐くほど厳しい訓練をしていて(実際に吐いた)、訓練場が汗と吐しゃ物とで大変なことになっていた。そんな地獄絵図のような訓練場の扉が開かれたのは正午のことだ。

 

 彼女は悲惨な状況の訓練場にも眉一つ動かすことなく、中に踏み入って視線をさ迷わせ誰かを探すようなしぐさをしてから、さくらんぼのような唇を動かした。

 

 

「失礼します。こちらに近衛騎士団第二隊所属のロイ様はいらっしゃいますでしょうか?」

「おっ、おっ、おっ、オフィーリア嬢!?」

「……御機嫌よう、ステファノ様。討伐戦の時はありがとうございました。ステファノ様のご助力がなければなしえなかったことでしょう」

「いや、あの時我々要らなかったような……オフィーリア様『お一人で』軍を半壊させ、首魁であったあの男も、情けなく倒れた我々騎士団を横目に『一人で』戦いミンチに変えていたわけですし。……あ、お前らこれ聞かなかったことにしろよ? いいな? 絶対だぞ? フリじゃないからな?」

 

 

 突然現れた女神のような女性に対して動けなくなっていた騎士団の中から一人、転げるようにして出ると師匠と話し始めた。あれは……グランド=ステファノ団長? 王国騎士団最強と名高い彼が参加するような討伐戦……「魔王討伐戦」か!

 「魔王討伐戦」というのは、今から数年前に突然現れ、すべての国を支配すると宣言した通称「魔王」を討伐するための戦いだ。大陸に存在する全ての国の最強と呼ばれる存在をかき集めて大規模な討伐戦を行った。確か公式発表では、他国の騎士たちによる猛攻撃で瀕死となったところをストリエ王国の騎士による攻撃で首を刎ねられて死んだという話だったが……実際は師匠がほぼ一人で決着をつけたらしい。

 

 ……いや待て!? 当時の師匠、18歳じゃないか!? なにやってんの!?

 

 俺が改めて師匠の規格外さに驚愕していると、一人の騎士がふらふらと団長に近づく。師匠にはまるで見えない壁がそこにあるかのように、一定の距離には近づかない。分かる。なんか格が違い過ぎて近づくのが躊躇われるんだよな。向こうから近づいてくる分にはいいんだけど。

 

 

「だっ、団長!? そ、そちらのご令嬢はもしや、もしや……!」

「……ああ。この人こそ、(いろんな意味で)王国最強。オフィーリア嬢だ」

 

 

 次の瞬間、団長の姿が消えた。いや、他の団員によって師匠から引き離されてこっち側に連れてこられただけだ。師匠の「まあ、お戯れを。最強なのはステファノ様の方では?」という発言は誰にも聞かれていないみたいだった。

 

 

(何やってんだよ団長ォ! 抜け駆けですか!? いつの間にオフィーリア様とお近づきにィッ!?)

(まっ、待て待て誤解だ! 俺はそんなことはしていない!)

(でも親しげだったじゃないですか!)

(討伐戦の時に一緒に戦っただけだ! それも俺たちはほとんど要らなかったけどな! 最後なんてすごかったんだぞ、俺たちが一瞬で倒されて、それでも立っていたオフィーリア嬢と魔王が顔を合わせたと思った次の瞬間、ボロボロで下着もほぼ丸見えになったオフィーリア嬢が冷たい視線でピンク色の肉塊を見てたんだ。あんなん見たら……うっ、ふぅ。お近づきになろうとか思えん)

(……あれ、待てよ? オフィーリア様は誰を探しに来たって言ってたっけ?)

 

 

 こそこそ話の流れがよくない方に向かっているのを察して人混みから離れたのがいけなかった。いや、結局はそうなっていたんだろうが。

 

 

「おや、そんなところにいたのですか。ロイ様、少しお時間をいただいてもよろしいですか?」

「……はい」

「では、少しお借りしていきますね」

 

 

 訓練場の外で明日予定があるか、ないなら少し付き合ってほしいと言われてすぐ頷いた。……明日師匠とデートできるというのは大変に嬉しい。嬉しいが、訓練がよりキツイものになった。一月は続くであろうことを思うと絶望感が襲ってくるが、それよりも明日一日の喜びの方が断然大きいのだった。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 翌日。何を着ていくか、髪形をどうセットすればいいのか、そういう(・・・・)宿の使い方はどうすればいいのか、キスやその先を想定して計画してみたが、緊張のあまり眠れずに結局いつもの制服と髪形で行くことになってしまった。しかも遅れた。

 

 これは怒っているだろうな……と深い後悔と絶望に頭を抱えながら、出来る限り急いで待ち合わせ場所に向かうと――女神がいた。

 

 村にいた時はずっと男らしい格好でいた彼女の、初めて見る女性らしい服装。落ち着かないのか、しきりにスカートを手で押さえたり髪先をくるくると弄る姿は今までに一度もないもので。

 胸が苦しくなる。なんだあの可愛い生き物は。

 

 なんとか身体を動かして彼女の傍に寄るが、強調されるような服を着ているせいで自然と視線が胸に行ってしまう。これはまずい。師匠に嫌われたりなんかしたらもう生きていけない。

 素数、素数だ。いや、歴史上の人物全て言っていこう。とにかく意識を物凄い吸引力を持ったあそこから引きはがさなければ……!

 

 

 ……よし、よし! もう大丈夫だ。俺は強い子。もう意識は持っていかれない! ……そうだ、しまった。最初はまず服装とかを誉めなきゃいけないんじゃなかったか!? この前雑誌で読んだじゃないか。

 

 ……い、言うぞ。言え、言うんだ。男を見せろ、俺!

 

 

「これですか? (私が)今日のために用意したものです」

 

 

 う、うおおおおァァァァ!!!! 駄目だ、今ここでいきなり叫び出したら駄目だが! 無性に叫びたい!

 

 俺は! 今! これまでの人生で一番幸せだ!

 身を焦がす熱、溢れだす想い――この気持ち、まさしく愛だぁぁぁぁ!!!!

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 ちょっと意識が飛んだりもしたが、なんとか正常に戻り。歩き始めて思うのは、彼女はこんなに小さかったのかということ。

 

 肩を並べて隣を歩くのは8年ぶり。昔は俺よりも背が高くて、いつもその顔を見上げていた。今じゃ彼女の方が俺を見上げる側だ。笑いながら頭を撫でていた彼女は、俺の方が撫でるのにちょうどいいくらいの身長になっている。歩幅だって、気を付けなければすぐに置いていってしまいそうだ。

 

 ――こんなに華奢で、触れれば壊れてしまいそうな女の子に守られていたのか。そのことに思い至った時、自然とこれからは俺が彼女を守らなくては、と思った。いや、戦闘力じゃ彼女の方が断然上だし、知識量だって敵いはしない。けれど、そんなの言い訳にもなりやしないだろう。

 

 って、あれ? 師匠どこいった?

 

 まさか人攫いに薬でも使われて攫われたのでは――と血の気が引いた。すぐに周囲に視線を走らせて……いた!

 思わず手が伸びた。師匠の手を握って、その小ささと柔らかさにもう一度驚く。その感触はどうしようもなく女の子を意識させてくる。静まれ……今は起きるときじゃないんだ、息子よ……!

 拳を腹の近くで固く握りしめた師匠の姿に一瞬で元に戻った。あれ、もしかしたら潰されていたのでは?

 

 威嚇するように睨み付けてくる師匠をなんとか説得し、手をつなぐことに成功した。睨み付けるといっても、身長差のせいで上目遣いにしか見えない。可愛い。

 

 その後師匠が一番王都で好きだという料理、「サロメのバーナ」を食べさせられて悶絶した。辛い、痛い、を通り越してもはや何も感じない。何も感じないのに涙が出てくるし咳も出るし尋常じゃない汗が噴き出す。

 バーナという料理を食べたのは初めてだったが、こんな狂気、いや凶器を何故嬉々として食べられるのか。師匠おかしい。痛くないのか聞いたら、「んー、と。多分だけど、俺無痛症だからそういうのないんだよね」と笑いながら言われた。おかしい。笑って言うことじゃないよ師匠。

 

 ちなみに店内の客は俺たちの他に、辛気臭い神父しかいなかった。その神父の積み重ねた皿で何故この店が続いているのか分かった。

 

 

 

 

 楽しい時間というのはあっという間に過ぎるもので、気づいたら夕焼けが街を照らすような時間になっていた。

 明日からまた訓練か……と考え、そして最近悩んでいることがつい口から零れていた。師匠なら何か答えを出してくれるかもしれない、と期待していたのかもしれない。それは全くの無意識だったけど、師匠は真剣に答えてくれた。

 

 ……そういえば、殿下がなにかもやっとした表情でこっちを見てくるのは、そういうことだったのかもしれない。分かってたのか。人を見る目は確かだからな、あの人。

 

 ああ、やっぱり。師匠はすごい。俺たちはあの頃と大きく変わっているけれど、それは表面的な部分だけだ。何も――何も変わっちゃいない。

 師匠の凄さも、俺の臆病さも。師匠への、オフィーリアへの想いも。全部。

 

 殿下には悪いが、絶対に譲ることは出来ない。……よし。帰ったら殿下にはちゃんと言おう。俺が好きな女性(ヒト)は誰なのか。そのうえで――正々堂々、彼女を手に入れると宣言しよう。

 

 

 

 

 ……あの。ところで、そろそろ一人の男として見てもらえたりは、あ、しませんか、そうですか。




治癒魔法:傷を治すファンタジーの定番。持ってるやつは重宝される。お金はぼったくり。治癒魔法ギルドが釣り上げてる。

108通りの作戦:煩悩ともいう。除夜の鐘では祓えなかった模様。

近衛騎士団第二隊:第一隊は王につく。第二隊は王子とかにつく。それだけ。

グランド=ステファノ:ゴリラ。違った。王国騎士団団長。近衛とかも含めたすべての長。田舎貴族の次男坊だった彼は剣の才能があったのか、ついに団長にまでなり、討伐戦に参加する。が、魔王の強大な力にあっけなく倒れ、オフィーリアの戦いを眺めた騎士のうちの一人となった。35歳独身。

魔王討伐戦:読んで字のごとく。数年前に現れた魔王の脅威は非常に大きく、侵略されていく世界に危機感を覚えた各国代表が結束。それぞれの国の最強を送り出す。ストリエ王国からは団長と、(まさかメイドであるとは思われなかった)オフィーリア。最終的にほとんどオフィーリアが倒したわけだが、外聞的にどうなの、ということで各国の騎士の奮闘と団長の一撃で死んだことにされた。一応国家機密。さらりと話したけどバレたら全員土の下に行くことになる。

魔王:彗星の如く突如現れた男。一応世界征服が目的だったらしく、各国の騎士をなぎ倒し、征服一歩手前まで行ったが激昂したオフィーリアによって肉塊へと変えられた。なにやら秘密を持っている様子……?

王国最強:生ける伝説

何やってんだよ団長ォ!:止まるんじゃねえぞ……

冷たい視線:汚物を見る目

うっ、ふぅ:あられもない姿にか、冷たい視線にか。いずれにせよ団長も大丈夫ではない

そういう宿:ピンク色のネオンが輝く!

物凄い吸引力:吸引力の変わらないただ一つのおっぱい

雑誌:一般市民でも買えます。大衆娯楽の類も成長してきている途中です。

この気持ち、まさしく愛だ:cv中村悠一のフラッグファイターの口説き文句

息子:前尻尾のことをそう呼ぶ人もいる

無痛症:歪曲の魔眼は持ってません

辛気臭い神父:やたらエロい食べ方をする神父。cvはもちろん中田譲治

積み重ねた皿:山。一つの机を占拠する。




あ、ここから下は関係ないただの私の近況です

グラーフとアドミラル・ヒッパ―とZ46出て嬉しいし、葛飾北斎出たのめっちゃ嬉しいし、正月フレイヤ出たの嬉しいし、オリヴィエがレベマなってジャンヌ出たの嬉しいし、SSRふみふみ出たのめっちゃ嬉しいし、戦乙女アリーシャレベマ嬉しいけど、正月アリス出なかったの悲しい。
あと、就職決まりました
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