『IS原作の妄想作品集』   作:ひきがやもとまち

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昔、シャルロットの家庭の事情が明かされる前の頃にシャルロットの義理の母の方に娘がいたらと言う設定で二次作書いてた事を思い出して今現在の設定で書いてみました。

原作展開にやや考慮してシャルロットが母とともに追い出された後で色々とあり、気の迷いからロゼンダ・デュノアさんが人工出産してしまった妹キャラと言う設定です。

姉との仲は意外に良く、憎まれ口を叩きながらも隠れたシスコンとして一夏にやや近い部分をもった女の子。

モデルはFGOに出て来るジャンヌ・オルタ。
愛機の名前は『ラファール・キャバルリィ・ノワール』。意味は「黒色騎兵」です。
名前の通りに猪突猛進型の機体で、ジャンヌ・デュノアちゃんも猪突猛進な性格。

「私の辞書に後退なんて面倒くさい言葉は必要ないから消したのよ!」


シャルロット・デュノアの妹、ジャンヌ・デュノアです。

「はじめまして、“お兄様”。今日からあなたの妹と言うことにされてしまったアルベール・デュノアとロゼンダ・デュノアの娘ジャンヌ・デュノアでーす。

 これから兄妹として、よろしくお願いしまーす」

 

 ブスッとした不機嫌そうな表情を隠そうともしないまま、僕の母を「泥棒猫」と罵った憎い女の娘を自称する少女は吐き捨てるような口調でそう言った。

 

 両親から受け継いだ混じりっ気のない僕の金髪と違って、錆びたような鈍い輝きが印象を暗いものに変えてしまうくすんだ色の金髪と、やや釣り目がちの僕より青くて濃い瞳。身長体格体重ほとんど全てがまったく同じなのに、どういう訳だか局所的に相反するよう反転させて僕たち姉妹は生まれてきていた。

 

 同じ人と結ばれた違う人同士の子供たち。

 そんな僕らが運命と出会うのは、世界初の男性IS操縦者『織斑一夏君』の情報を盗むため日本に行ってからのこと。

 

 これは僕の物語ではない。

 これは織斑一夏君の物語でもない。

 これは僕たち姉妹と周りにいて支えてくれた皆にとっての物語だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。この国では不慣れなことも多いかと思われますが、みなさんよろしくお願いします」

 

 転校生の一人、シャルルはにこやかな笑顔でそう告げて一礼し、クラス中をドッと沸かせる。

 なんと言っても世界で二番目の男性IS操縦者で、金髪でブロンドで貴公子だ。おまけに礼儀正しくてお金持ちの息子だなんて年頃の乙女が騒がない方がどうかしているレベルの超優良物件!

 

 ああーーそれにしても“兄妹”そろって、なんて綺麗なんだろう・・・。

 

 幾人かのクラスメイトが陶然とした瞳で二人を見つめ、内何割かはシャルルの隣で行儀良く起立したまま自己紹介の出番を待っている彼と瓜二つの金髪美少女に熱く熱心な視線を浴びせまくっていたのに気づいたのは、皮肉にも当事者ではないからと言う理由で織斑千冬担任教師だけだった。

 

 ーーこのクラスには変態しかいないのか・・・? そう考えて頭痛を感じながらも織斑教諭は残りの二人にも挨拶を促し、銀髪が答える前にくすんだ金髪が「わかりました。では、僭越ながら私から」と、自然な風を装いながらも強引に割って入って面倒事を早急に終わらせようと企図しはじめる。

 

 相変わらず面倒くさがりな妹の態度に“姉”は苦笑しながら一歩退き、腹違いの妹ではなく実の妹という設定に改竄された彼女、フランスの代表候補生にして『正式』な意味合いでの転校生ジャンヌ・デュノアに場を譲りわたす。

 

「はじめまして、シャルル・デュノアの妹でジャンヌ・デュノアと申します。

 この度の件では本来こちらに来る予定だった私に代わり兄を出向かせるよう国から指示がったのですが、仮にも国の名を背負わすには訓練期間が短すぎると父が渋って首を縦に振らず、妥協案として妹の私とペアでの転校と相成りました。

 ふつつか者ではありますが、皆さんどうか仲良くしてくださいませ」

 

 兄に負けず劣らず礼儀正しい挨拶と、お嬢様然とした立ち居振る舞いにクラスは熱狂。一時、大混乱に陥ってしまった。

 

 

 

 

「あれが本場のお嬢様かぁ・・・やっぱ“本物”はちがーー痛っ!? なにすんだよセシリア!」

「ふんっ!」

 

 

 

 

 ーー余談になるが、この後で生じた織斑一夏とラウラ・ボーデヴィッヒの因縁発生時件はジャンヌへの好印象が災いして悪印象を強くする結果を招いてしまった。

 前後の順番というのは意外と重要なものである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・つっかれた~。お嬢様ぶったしゃべり方とか柄じゃないから早くやめたいんですけど、やめちゃダメなのかしらねこれ? あと、ついでとしてヒラヒラしたなっがいスカート脱ぎたい。邪魔」

「・・・・・・ジャンヌ・・・。あまりお姉さんみたいなこと言う資格はないって分かってはいるんだけどさ・・・」

「あん? なによ? なにか言いたいことでもあるわけ?

 親元で愛情いっぱいに育てられた優しくて気立ても良い生粋の“本物さま”が、私みたいに子供の産めない母が気の迷いから人工子宮で生み落としてしまった、出来損ないのなんちゃってお嬢様に御用でもおありで・・・」

「スカートの中、ここからだと見えちゃってるよ・・・?」

「・・・・・・・・・・・・」

 

 静かな態度で座り直し、スカートの裾を整えてからコホンとひとつ咳をして。ジャンヌ・デュノアは居住まいを崩しながら目線を横に逸らし、お行儀悪く言ってのける。

 

「・・・別に下着とかどうでもいいけど、スカートヒラヒラするのはやめておくわ」

「うん。僕としても、そうしてくれると嬉しいかな。兄として学園内での立場とかあるし」

 

 キッと、キツい視線で睨みつけてくる妹だが、流石にこの流れで怖がるのは無理がある。どう見ても照れ隠しとしか映らない。むしろ微笑ましくすらあるだろう。

 

 だが、それをしてしまうと逆ギレする性質の妹には火にオイルを注ぐ行為なので、シャルロットはしない。そこら辺は気配り上手な彼女の得意分野だ。誰にも負けないし、当然ぼっちの妹に勝ち目など端から存在していない。

 

 所変わり、国が変わろうとも、デュノア姉妹の有り様に変化や揺らぎを生じさせることは不可能だった。

 今まで通りと変わらず姉妹のやりとりは見ている者をホッとさせるが、あいにくと此処はジャンヌの個室であって相部屋ではない(ただし普通のよりやや小さい。急に増えまくった転校生のため突貫工事で作った部屋だからだ)

 見ている者はこの場にいる二人だけである。残念。

 

 

 

 ーー二人がIS学園に転校してきてから四日が過ぎていた。

 やはり姉のコミュ力は半端なかったようで、ルームメイトになった翌日の朝から目標である織斑一夏と連れだって食堂に来て仲睦まじく食事をとっている様を見せられたときには思わず

 

「はやっ! 早すぎ! アンタ、ちょっとそれはビッチ過ぎるわよ! はしたないわ!」

 

 と、素がでてしまったために誤魔化すのには苦労させられたものだ。 

 

「・・・・・・・・・ふんっ!」

 

 やがて黙ったまま思い出し笑いで微笑んでいる姉に追求する術を見失い、ジャンヌはいつも通りにそっぽを向いて近くに置いてあったマンガを読み出す。日本のマンガだ。

 彼女には、どう言うわけだかフランス製の物よりも日本発祥のサブカルチャーを偏愛する奇癖があった。

 

「おもしろいの? それ」

「・・・少なくとも、つまらなくはないわね。だいたい中の上くらい」

「なるほど」

 

 つまり『癖はあるが自分好みでスゴくおもしろい』と言うことか。

 二年間の共同生活でジャンヌ・デュノア言語の翻訳機能を完全にマスターしたシャルロット・デュノアは妹の意志をあやまたずに解読して、後で自分も借りて読もうと心に決めた。

 

「ーーそれよりも、早く織斑のところに戻んなさいよ。アンタの役割は情報入手で、そのための手段については多少強引な手でも構わないって言われてるんでしょ?」

 

 妹の反撃に思わず口ごもり、顔を赤くするシャルロット。

 それは出立時に父から言われた命令内容が問題であり、それについて妹の口から告げられたことも含めて赤面せずにはいられないものだったのだから無理はないとも言えるだろう。

 

「う、うん。そ、そうだけど。そうだけどさ・・・」

 

 モジモジと顔を赤らめながら恥ずかしそうにうつむく義理の姉に、ジャンヌ・デュノアは白けた目と表情を向ける。

 

「今時の女子高生でハニートラップの話題にここまで過剰に反応するのは、スパイとしての適正欠けすぎてないかしら・・・?」

「し、仕方ないじゃないか! 僕、処女なんだから!」

「いや、義理とは言え妹の前で男女経験のあるなし語るなし。聞きたくないし知りたくもないわ。ぶっちゃけ、先に済ませてたら殺意わくのが女だし」

「露骨だね!?」

「これでも一応は女なので」

 

 普段からかわれてる事への意趣返しか、シレっとした態度と口調で言ってのける素直じゃない妹を涙目で睨みつけながらも、姉の方だって負けてはいない。猛然と反攻作戦に打って出る。

 

「だったら、ジャンヌがすればいいじゃないか。一夏への誘惑。胸は僕のよりも大きいんだし、適任でしょ?」

「む、胸は関係ないっていつも言ってるでしょ!? いい加減しつこいわね! 話蒸し返すのは止めなさいよ!」

「無理。だって男装しているからって僕はれっきとした女の子だから」

「ぐ! ぐぬぬぬぅぅ・・・」

 

 意趣返しされて呻き声を上げ、涙混じりの怒りの視線で睨みつけられたことで今日の勝負もシャルロットの勝ちが確定した。勝率は9対1・・・って、弱すぎだろジャンヌ。もっとガンバレ。

 

 

 ーーと、そこでシャルロットは表情からふざけた色を消し、まじめな顔で妹と向き合い姉として語りかけ始める。

 

「ジャンヌ。父さんがハッキリと断言してた言葉は、ちゃんと聞いてたし覚えてもいるよね?」

「・・・・・・・・・」

「ジャンヌ。僕の目を見て、ちゃんと答えて」

「・・・・・・・・・・・・・・・まぁ、一応、それなりには・・・・・・」

 

 翻訳すると『聞きたくない内容だったし、覚えていたくもなかったけど、遺憾ながらも完全に記憶している』となるので、シャルロットはそのまま話を進めていく。

 

「今回の件が成功しても失敗に終わっても、僕たちの行為は明確な違法行為で犯罪行為だ。フランス本国でならまだしも政府特権で無理強いが効くかも知れないけど、ここ日本だとまず不可能。絶対に捕まるだろうし、フランスへ強制帰国させられた後では力を失った現政権が僕たちを擁護してくれる可能性はきわめて低い。ここまでは忘れてないね?」

「・・・・・・・・・まぁ、一応だけなら」

「うん、なら本題だ。今回の任務で僕たちが成功しても失敗しても法的に罰せられずに済むイエローゾーンがひとつだけある。それの内容はーー世界初の男性IS操縦者織斑一夏君の子を宿すこと。

 それさえ出来れば彼にとって僕たちは守るべき対象となり、世界で唯一の存在を取り合ってる国家群が牽制しあって列強から外れて久しいフランス程度じゃ手が出せなくなる。利権が分散されて僕たち程度の存在感は大きく低下し、どこかの国へお預かりになるとしても一夏が擁護してくれれば多少の融通は利くし、彼に貸しを作っておきたい組織や国家は幾らでもある。

 ここまでで忘れてた部分があったら教えてくれるかな? 詳しく語り聞かせてあげるから」

「・・・・・・・・・ごめん、さっきのは私が悪かったからもう許して。そろそろ恥ずかしさで死ぬわよ私・・・?」

 

 頭から布団をかぶって話の途中から敵前逃亡を図ろうとしていたジャンヌだったが、引きこもり体質故に部屋から出られず結果的に義理の姉による言葉責めを終わるまで味合わされてしまった。

 

 真っ赤になった顔を見られまいと、深く毛布をかぶって丸くなった姿はアルマジロを彷彿させ、敵から身を守るために熱い鱗で覆われた草食恐竜の如き堅牢さを感じさせるものがあった・・・と思う。たぶんだが。

 

 

「ちなみに性行為で確実に子種を宿すためには安全日のーー」

「聞きたくない知りたくない! あと、どこの誰に聞いてきた、その下世話な知識の数々!?」

「え? 執事のジェイムズさんが「お嬢様方のお命をお助け出来るならば・・・!」って、涙ながらに教えてくれたんだけど・・・」

「ジジイぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!!!!」

 

 自分のことを幼い頃から甘やかしまくってきた老執事の名を(名前じゃないが、彼女はジジイとしか呼んだことがないので間違っていない)怨敵を罵るような声で叫ぶジャンヌ・デュノア。

 あの老人の過保護は、自分そっくりの姉が登場してからと言うもの常軌を逸するものが感じられて正直怖くなっていたのだが、まさか極東の島国に来てまでジジイの呪いに苛まれようとは想定外にも程がある!

 

「だからね、ジャンヌ。僕たち姉妹が生き延びて、仲良く一緒に暮らしていくためにはーー一夏のお嫁さんと愛人さんになるしかないんじゃないかな・・・?」

「アンタ自分がなに言ってんのか、わかって言ってる訳!?」

 

 実の母を愛人として囲い、会社のためにと切り捨てた父を憎んでいたはずのシャルロットだったが、守りたいと思える対象が一夏よりも先に一人出来ていたため前向きになり過ぎてしまったらしい。発想が父と瓜二つのものになってしまっている。

 恐るべきはデュノア家のD・N・A! 略してデューN・A!

 

「上手いこと言ったつもりか! ぜんぜん上手くないわ! むしろ、つまんないし笑えない!」

 

 ・・・・・・サーセンでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ええとね、一夏がオルコットさんや凰さんに勝てないのは、単純に射撃武器の特性を把握してないからだよ」

「そ、そうなのか? 一応わかってはいるつもりだったんだが・・・」

「『一応わかっているつもり』。これは初心者が最も陥りやすい落とし穴ですからね。キチンと理解できていないことでも、知ってるだけで何となく分かったような気になってしまって自論の方が正しく思えてしまう・・・。そう言う経験って、したことありませんか? 織斑さん」

「うっ。た、確かに言われてみれば何回かあったような気が・・・」

 

 シャルロットに優しく間違いを指摘された後、自分の信じる物に僅かながら揺らぎが生じた瞬間を見逃さずにジャンヌが結構キツい指摘をやんわりとしたお嬢様口調で言い放つ。

 

 普段であれば反発する一夏だが、この時には最初のシャルロットが好印象を与えているので見た目的には瓜二つのジャンヌの悪態じみた指摘には然したる悪感情がわいてこない。

 その後に待っている具体的なIS操縦技術『イグニッション・ブースト』の改善点について考えに耽っていたというのもあるが、この姉妹のコンビネーションは意外なほど相性が良くまとまっていた。阿吽の呼吸という奴だ。

 姉妹故の遠慮しなさが、この際にはプラスに働いていたとも言える。お互い自分の都合で言いたいことを言うためにも相手の呼吸に応じていた方が問題なく事が進むのである。

 

 

 

「だからそうだと私が何回説明したと・・・・・・!」

「って、それすらわかってなかったわけ? はあ、ほんとにバカね」

「わたくしはてっきりわかった上であんな無茶な戦い方をしているものと思ってましたけど・・・」

 

 

 ブツブツ言ってる外野たちとは大違いだが、これには若干ジャンヌもシャルロットも異論があった。

 

「みんなは一夏のことを高く評価しすぎだよ。いくら初陣でセシリアのブルー・ディアーズと互角に戦えてたって、入学する前までIS知識皆無な初心者だった時間まで0にするのはさすがに無理があると思うよ?」

「「「「うっ!!」」」

 

 シャルロットの指摘に『強い一夏大好き』三人娘はそろって胸を撃たれたように押さえつけ、

 

「そうですね。それに皆さんのレベルが高すぎるのも問題ですし、得意とするレンジが織斑さんと違いすぎるのも問題です。専用機は基本的にワンオフ機であることも無関係ではないでしょう。

 癖があるからこそ強い専用機は、指導の仕方にも偏りが生じやすいですし、習うことしかしてこなかった人が、いきなり教師役というのも無理があるかと。優れたスポーツ選手が優れた監督やコーチになれるとは限らないのと同じ理屈ですね」

「「うっ、ぐ、は・・・!!」」

 

 ジャンヌの言葉に専用機持ち二人は更なる追い打ちを受けて身を屈めるが、攻撃対象から外れた箒は控えめに手を挙げながら「あのー・・・私の指導は・・・?」と自信損失しかかってる声で尋ねて、

 

「そもそも射撃訓練に剣道の教え方は役に立ちませんよ? もちろん、応用できれば別ですけれど・・・そんな器用な真似できたりしますか?」

「ぐっ、はっ!!」

 

 二人よりも更にデカいダメージを食らってもんどり打って倒れた箒を至福の表情で見下ろすジャンヌ。

 

 ーーどうやら昨晩、姉に言い負かされた記憶が尾を引きづっているらしい。存外、執念深い少女だった。

 

 姉妹の間で余人には聞かせられない(聞かれたらたぶん死ぬ。死因は恥死)内容の語り合いが行われた翌日の土曜。授業は午前の理論学習だけという、優雅にフリーダムな午後を自堕落に過ごせる至福の祝日である。

 

(土曜・・・グッジョブ!)

 

 心の中でいい顔しながら親指を立ててるジャンヌ・デュノアと、普段通りに微笑んでるシャルロット・デュノアの偽物兄妹ホントは姉妹は、各国代表候補の指導が役立ってないからと織斑一夏にIS操縦の基礎をレクチャーする運びとなっていた。

 

 

 

「ところでさ、そのISなんだけど、山田先生が操縦してたのとだいぶ違うように見えるんだが本当に同じ機体なのか? あっちのネイビーカラーに四枚羽のとは色も形も変わりすぎてて、別物としか思えないんだが・・・ジャンヌの黒い奴は特に」

 

 一夏の言葉通りデュノア姉妹の駆る機体には、通常の『ラファール』とは大きく異なる改造点がいくつも存在する。

 

 シャルロットの『ラファール・リヴァイブ・カスタムⅡ』は本来量産機であるラファールの利点を無視して、コスト度外視の改良が施されており国家代表候補生が乗る専用機にふさわしい性能が発揮できるよう大幅に戦闘力が向上されている。

 

 まず、武装数の桁が違う。基本装備から威力の高いビーム兵器を大部分削ったことで確保した容量を拡張領域の倍増によって更に肥大化させてあり、ほとんど人型サイズの武器弾薬庫と言っても過言ではない絶大すぎる火力を有する中距離射撃戦の王者と呼ぶべき高性能機にまで引き上げられたのだ。

 

 

 一方で、ジャンヌの『ラファール・キャヴァルリィ・ノワール』は武装の数は増えていない。むしろ減っている。減らしすぎだ。

 なにしろ全武装を合わせても三つしか装備してないのだ。通常の量産型より更に武器の数を減らして一体どのような利点を得たと言うのか?

 

 答えは端的に言ってーー邪魔なお荷物を取っ払ったお陰で、ジャンヌ本来の戦い方である蹂躙が可能となった、である。

 

 彼女は、ハッキリ言って猪突猛進型だ。深く考えて慎重になっては長所を殺すだけであり、敵を利する効果しかない。

 

 猛スピードで突っ込んでいって突き刺し、薙ぎ払い、切り払い、圧倒的な圧力で敵陣地を制圧してしまう。攻撃特化というよりかは、攻撃にしか役立たないと言うのが正しいだろう偏りすぎた性格が彼女の戦績を中途半端なものにしてしまっている事実を彼女外はみな知ってるが彼女だけは気づいてない。お約束だろう。

 

 外見は、背中にある大きな二枚羽『シェルフ・ノズル』と、左手に取り付けられてる固定武装の『ショット・ランサー』が異彩を放ち、右手に持つ主力兵装『ビーム・フラッグ』は、旗型の斬撃用ビーム兵器という斬新すぎるアイデアが災いして全ての国の選手たちが使用を拒否したデュノア社にとっての黒歴史的な遺産でもある代物だ。

 

「ーー良いなぁ・・・これ。格好いいかもしれない・・・」

 

 そんな見たこともない武装ばかりを装備したキャヴァルリィ・ノワールは、一夏の心の男の子な部分を強く刺激させる物であったらしく、視線が引きつけられて離せなくなってしまっていた。ぶっちゃけ厨二臭いのである、この機体。

 

「あら、お戯れを。このようなアンティークに・・・恥ずかしいですわ・・・」

 

 頬を押さえて赤くなりながら目を伏せるジャンヌだったが、内心では真顔で大きく頷いていた。

 日本の少年向けロボットアニメ大好きっ子である彼女にとってノワールは、まさに理想の機体と断言してもよい存在だった。心底から惚れ込んでいる。

 もう一生離さないと、専用機を始めて見たときに駆け寄って抱きしめて、大人たちが力づくで引き剥がすまで泣いて縋りついた機体なのは記憶に残ってないので覚えてない。忘れてるったら忘れているのだ。

 

 

 ーーとにかく彼女がノワールを褒められて頬を染めているのは機体が好きだからであって、同好の士を得たからに過ぎない。

 一夏もまた、同姓が限りなく少ないIS学園でここまで自分の好みに合う機体と出会えるとは思っていなかったから褒めちぎっただけである。ジャンヌ自身に向けた褒め言葉は一言も口に出してはいない。

 

 が、しかし。

 

「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」

 

 あいにくと世界中から理不尽系美少女を募集してきたような織斑一夏ラバーズを相手に、その手の言い分は通用しない。後ほど彼には厳しいお沙汰が下されるのが確定してから始められた訓練内容はシャルロットが射撃関係の諸々を。ジャンヌが高速機動についてと、それぞれの得意分野について専門的知識も込みで分かりやすく教えていった。

 

 

 

 もともとシャルロットを一年半で代表候補に通用するレベルにまで引き上げたのはジャンヌである。

 意外と劣等感が強いコンプレックスまみれの性格が、言われたことを理解できない初心者の気持ちを理解するのに役立って、結果的にシャルロットは短期間で驚くべき急成長を遂げることになる。

 

 なので他の三人と異なりこの二人には、同年代の初心者に教える為のノウハウが始める前から備わっていた。それを最大限活用できるだけの知識も(主にマンガで)貯め込んでもいる。

 はじめから教師役としては、圧倒的なアドバンテージがあったのだ。

 

 

「「「ぐぬ、ぐぬぬぬぬぬぬぬ・・・・・・・・・!!!!!!!」」」

 

 だが、あいにくと以下略。

 

 

 

 ーーと、その時。

 

 

「ねぇ、ちょっとアレ見て。もしかしてアレって、本国でトライアル段階にあるって言うドイツの第三世代型じゃないの・・・?」

 

 

 そんな声を耳にして、一夏はやや感情の削れた表情で声の向かう先に視線を移した。

 

「・・・・・・・・・」

 

 そこにいたのはもう一人の転校生、ドイツ代表候補ラウラ・ボーデヴィッヒだ。

 

「おい」

 

 オープン回線で声を飛ばしてきたラウラに、一夏は「・・・なんだよ」とぶっきら棒な返事を返す。

 

「貴様も専用機持ちだな。ならば話が早い。私と戦え」

 

 突然の申し出に、一夏は憮然としながら当然の答えを返すのみ。

 

「イヤだ。理由がねぇよ」

「貴様になくても私にはある。

 貴様がいなければ教官が大会二連覇の偉業をなしえただろうことは容易に想像できる。だから、私は貴様をーー貴様の存在を認めない」

 

 その声はオープン回線故にジャンヌの耳にも届き、不快さのあまり彼女の秀麗な顔を大きく歪ませた。

 

 『偉業をなしえただろうことは容易に想像できる』・・・まるで神を信仰しているかのような言いぐさだが、彼女が声から感じられる感情は怒りと憎悪と何かに縋りたいと泣きわめいている子供じみた癇癪だけだった。

 

 この少女ラウラ・ボーデヴィッヒには、かつての自分と同じ臭いを感じる。気に入らない。ぶちのめしたい。早くかかってこい。実力の差を教えてやる。

 

 

 暗い感情に妹が支配されていくのを慣れている姉だけが感知できて、他の誰にも存在すら気づいてもらえてない、忘れられた存在と化してしまっていたことはラウラにとって運が良かったのか最悪だったのか。

 とにかくこの段階でジャンヌとラウラが戦うことは、彼女の中でだけ決定していた。

 

 

 

「また今度な」

「ふん。ならばーー戦わざるを得ないようにしてやる!」

「ーーアンタこそがねぇぇっ!!!」

 

 ズガギィンッ!

 

「なにっ!?」

 

 ラウラの纏った漆黒のISが戦闘状態へシフトした瞬間、刹那の間に右側へと回り込み死角からの不意打ちでランスによる刺突を食らわせる。

 

 厭な感じでニヤリと嗤うと、

 

「あーら、ごめんなさい。あんまりにも戦場で隙だらけだったから演習用の案山子と勘違いしちゃって。よく見たらドイツのデカいゴキブリさんじゃない。ちょび髭の尻を舐め飽きたから日本まで男漁りに来るなんて大変そうね、チビじゃり」

「貴様・・・フランスのアンティーク如きで私に前に立ちふさがるとはな」

「はっ! いきなり機体の性能頼りとは恐れ入るわね。

 良いこと教えてあげよっか? マンガやアニメでよくあるパターンよ。

 戦いが始まった直後に乗ってる機体の性能を自慢し始める奴は、ほとんどがやられ役の雑魚キャラとして終わる!」

「戯言をっ!」

 

 右手にある巨大砲リボルバーカノンを大きく振るってノワールを引き剥がそうとするラウラだったが、この場合は相手との相性が最悪だった。

 

 なにせノワールは超接近戦闘特化の強襲型だ。敵に肉薄して短期決戦を強いることこそ必勝パターンの機体なのである。食らいついて自分から離れる選択肢など存在していない。

 むしろ力任せに大きく振るってしまったことで隙が生じてしまい、ショットランサーに内蔵されたヘビーマシンガンの好餌となってしまう。

 

 ガガガガガガガガガガガガガガガっ!!!!

 

「ぐぅっ!!」

「ははははははははっ!!! アンタんとこのはいつだって、バカみたいにデカ過ぎんのよ! マウスの失敗で懲りなかったの? 学習する頭すらなかったの? ああ、そうか。ちょび髭だもんね。それじゃあしょうがないわー。バーカバーカ!」

「貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!」

 

 頭に血がのぼって我を忘れたらしく、ラウラが機体特性も禄に考えないで力任せに突貫してくるのを「望むところよ!」と威勢良く応じて自らも一撃必殺の大型ビーム兵器ビームフラッグを振りかぶった瞬間ーー

 

 

『そこの生徒ども! 何をやっている! 学年とクラス、出席番号を言え!』

 

 

 突然アリーナのスピーカーから担任教師の織斑千冬の声が響いてきて、ジャンヌは「ちっ」と舌打ちすると、最後の嫌がらせをラウラに対して言い放って締めとする。

 

「お迎えが来たみたいだし、早く行けば飼い犬さん。愛しのご主人様がお呼びですわよ? せいぜい尻尾を振って撫でて貰って喘ぎ声でも上げてなさい、クソビッチ」

「・・・・・・!!!! ーーふん。今日のところは引いてやる。決着は次だ、乳牛ブラコン女」

「なっ・・・!?」

 

 最後の最後で一矢報いて、背中を見せて去っていくラウラと、隠されていたジャンヌの本性を知って茫然自失の各国代表候補のメンバーたち。ついでに出番を奪われた一夏。

 

 そして感情的な妹の致命的すぎる失態に「あちゃ~・・・」と頭を抱える常識人な兄でもある姉と、隠れ巨乳シスコン妹の秘密を暴かれ真っ赤になってプルプル震えているジャンヌ・デュノア。

 

 なかなかに混沌とした現場に、ジャンヌの叫びが木霊となって響きわたる。

 

 

「わ、わ、わ、私のどこがシスコンだって言うのよーーーーーーっ!!!!!!」

 

 全部だよ。By.天の声




追記で年末の挨拶:

すみません。先ほどは他のも更新する予定だったために書かなかったのですが、色々あって無理そうなので追加で書かせて下さい。

皆さま、良い年末と年越しを! また来年もよろしくお願い致します!
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