とりあえず、体力無くても勢いだけで書きやすい作品を出しとこうと思って今作です。
ギャグはこういう時、楽でいいですが……人選ぶんですよなぁ…。
――それは篠ノ之箒が、まだ小学二年生の頃だった。
「おーい、男女~。今日は木刀持ってないのかよ~」
「・・・・・・竹刀だ」
「へっへ、お前みたいな男女には武器がお似合いだよなぁ~」
「・・・・・・」
「しゃべり方も変だもんな」
「やーいやーい、男女~」
彼女は放課後の教室で三人の男子生徒たちにからまれ、身体的特徴をからかわれていた。
それらの圧力に対して箒は一歩も引くことなく、凜とした眼差しで相手を睨みつけるだけで無言のまま、相手の挑発に答えることはなかった。
・・・・・・だが、相手の言葉に無言だけで無視してはいたものの、相手の言葉を無視することまでは出来ていなかった。
不快さを堪えて無視してやるつもりでいたが、無言を貫きながらも『睨み付けること』は止めれなかった時点で、自分なりに反撃せずにいられなかった本心は明白だったからだ。
後になって思い返せば結局、「自分が負けた事になるのが嫌だった」のだと分かることができる。
剣道道場の娘として本気で殴れば暴力になるから、所詮コイツらが子供なだけなのだ大人になれと、相手の愚行に力で応じることなく無言を貫いてはいたが、不愉快な奴らを本気で好き放題言わせたまま何も反撃せず、『言われっぱなしの立場』になるのを箒のプライドは、どーしても甘んじることが出来なかったのだ。
そんな時分の自分だったからなのだろう。
「・・・・・・うっせーなぁ。てめーら暇なら帰れよ。それか手伝えよ。ああ?」
「なんだよ織斑、お前こいつの味方かよ」
「へっへっ、この男女が好きなのか?」
「邪魔なんだよ、掃除の邪魔。どっか行けよ。うぜぇ」
「へっ。まじめに掃除なんかしてよー。バッカじゃねぇの――って、おわっ!?」
割って入ってくれた、1年前から同じ道場に通っていた男の子に、『自分と同じもの』を感じ取り、自分と同じように表面上のものとは異なる本心を隠し持つのは一人ではないことを本能的に感じ取った彼女は、自分を抑える必要性が急速に薄れていくのを自覚して、その後バカ共と見下す男子たちを相手に悶着を起こし――彼との仲が近づいていく切っ掛けになる。
「・・・・・・お前は馬鹿だな。あんなことをすれば、後になって面倒になると考えないのか?」
「あん? ああ、あの事か。そうだな、考えねーな。許せねぇヤツはぶん殴る。大体、複数でってのが気に入らねぇ」
「・・・・・・・・・」
「だから、お前も気にすんなよ。前にしてたリボン、似合ってたぞ。またしろよ」
「ふ、ふん。私は誰の指図も受けない」
腕を組んでそっぽを向く。1年前に出会った頃からは想像できないほどの軟化した対応。
そーかと返事をして顔を洗う。冷たく心地よい井戸水で練習後の汗を流す彼の姿が、たまらなく好きになってきていた自分を自覚したのは、あの事件が起きてからしばらく後の事だった。
「――だ」
「うん?」
「私の名前は箒だ。いい加減、覚えろ。次からは篠ノ之ではなく、名前で呼べ。いいな?」
「わかった。俺は割と、身近なヤツの指図は受ける。――じゃあ、一夏な」
「な、なに?」
「だから名前だよ。俺のことも一夏って呼べよな。わかったか? 箒」
「わ、わかっている! い、い、一夏! これでいいのだろう!?」
「おう、それでいいぜ。・・・指図じゃなくて頼みなら、ちゃんと聞いてくれるんだな」
「ふ、ふん!」
最後に強がりを残して立ち去る自分と、おかしな奴だなと爽やかに笑って見送る彼。
季節は六月。もうすぐ夏が訪れる季節の太陽に照らされながら、オレンジ色の光景の中。
・・・・・・やがて、二人の影は徐々に重なっていき―――
「・・・・・・一夏」
「箒・・・・・・その水着、綺麗だぜ」
「バカ――♡」
――そして。
「・・・・・・あ、れ・・・・・・?」
椅子に座っていた箒は、ぼーっとした頭で現実へと復帰してきたばかりの周囲の状況を確認する。
壁の時計は、午後四時半を指し示していた。窓の向こうには紅くなってはいなくとも、三時間前よりかは水平線に近い位置まで高度を下げた太陽が視界に写る。
そして、箒の見下ろす先にある眼下に見えるのは―――ベッドに横たわった三時間以上も目を覚まさないままな、包帯まみれの一夏の姿だった・・・・・・。
「夢・・・か・・・・・・」
どうやら、うたた寝をしていたらしいと、先ほどまで見ていた思い出の中の光景を思い出し、ふいに苦笑させられる。
罪悪感に苛まれながら、一夏の傍らに寄り添ったまま何時間もうなだれ続けていたことで、さすがに自分の体も疲労を覚えていたらしい。
どんなに辛いときでも苦しいときでも――罪悪感で死にそうな思いに駆られていてさえ、人の肉体は疲れを感じて休みを取る。・・・それが妙に皮肉に感じられて、笑わずにいられなかったから。
(私のせいだ・・・・・・)
そして改めて、傷だらけになった一夏の身体を見下ろし、リボンを失って力なく垂れたままの髪と同じように力を失った心の中で、そう思う。
「私のせいだ・・・・・・。私が、しっかりとしないから一夏がこんな目に・・・・・・・っ」
そして今度は声に出しながら呟いて、自らを戒めるようにスカートを「ぎゅっ」と握りしめる。
銀の福音迎撃作戦が、失敗を言い渡されて旅館まで撤退してから数時間が経っている。
その間、自分のせいで一夏を傷つけさせてしまったと罪悪感に苛まれる箒は、一夏の姉である千冬から責められることなく弟の手当だけ指示するのを聞かされただけで作戦室へと籠もられてしまい、やり場のない感情の矛先を逸らす術さえ得られぬまま、ただただ無為に時間を浪費し続けることしか出来なくなっていた。
(私は・・・・・・どうして、いつも・・・力を手に入れると、それに流されてしまうのだ・・・!)
そして、後ろ向きなマイナス思考に囚われ出した箒は、過去の出来事まで思い出して関連付けて、そんなことまで考え初めて罪悪感を感じる理由に追加し始める。
彼女には昔から気にし続けて、コンプレックスになっている欠点があり、湧き上がる暴力衝動を抑えられなくなる瞬間があるのだ。
いつも力を手に入れると、それを使いたくて仕方がなくなってしまうのだ。
そのため箒は『自分を律するため』を目的に剣を学び始めたのだが、中学時代に姉と政府の都合で引っ越し続きで鬱憤が溜まり、剣道の全国大会決勝で『ただの憂さ晴らし』として対戦相手を叩きのめしてしまった。
(私は! ・・・いったい、なんのために修行をして・・・・・・!!)
自らの暴力を押さえ込むための抑止力として学んだはずの剣を、ただの暴力として使ってしまった己が酷く惨めになって絶望した近い過去の出来事まで思い出し、自己嫌悪の海に沈み込む篠ノ之箒。
・・・・・・一体どういう理屈によって、『犯罪者は殺されていい』と見捨てたことを注意されたことでショックを受けて、戦場で敵を前に棒立ちになってたところを砲撃されて、味方に庇ってもらわないと死んでたかもしれなかった敗北理由と、『家庭の事情でムシャクシャしてたからサンドバック代わりに決勝相手ボコりました』という中学時代のヤンチャ振りとが関連できる部分があったのか今一よく分からない自己嫌悪の内訳だったが・・・・・・後悔とか罪悪感とかで苦しみたい気分になってる時って大体そんなもんなんだろう。多分だが。
って言うか、全国大会の決勝に勝つため感情ブーストさせる理由に私情持ち込んでボコっただけで暴力になるなら、日頃から『哀と嫉妬と恥じらい』で素手の思い人に日本刀振りかざして相手の部屋の中で暴れ回って、学園の備品ブッた切りまくってる日常風景は彼女の中でなんと定義されているのだろうか?
たぶん、『だからつまり一夏が悪い!』で済ませているのだろう。多分だが。
自分が、後悔とか罪悪感で苦しみたいときだけ過去に苦しむ人の思考ってのは、そんなもんである。
(私はもう・・・・・・ISには・・・・・・)
そうして色々考えまくった末に、彼女なりの主観的な正しい責任の取り方として、他人から見た客観的視点では迷走しまくった結果としか思いようない結論として、『自分専用機の最新鋭第4世代IS』を姉にねだって造ってもらったばかりでありながら、『自分にはISに乗って戦う資格ない』と主観的に判定くだして、自分にはそれしか出来ないと主観的に敗戦と失敗責任の取り方も独断で決定して、それを実行しようと心に決める。
篠ノ之裁判長は、自覚ないけど結構、暴君。
そんな風に篠ノ之箒が罪悪感から、主観的な一大決心を決めようとした、まさにその時。
バンッ!!
という扉を開く大きな音と共に室内へと入ってきた小さな背丈の女の子は、言うまでもなく我らが英雄にしてドイツ代表候補生シュトロハイド・フォン・ローゼンバッハ――
「あー、あー、わかりやすいわねぇ」
・・・・・・ではなく、今回は中国代表候補の凰鈴音ちゃんでした。
登場の仕方が似てたから勘違いしちゃいましたよ、失礼。てへッ♡
「あのさあ。一夏がこうなったのって、アンタのせいなんでしょ?」
「・・・・・・」
遠慮なく入ってきた鈴は、うなだれたままの箒に話しかけてくる。
けれど箒は答えない。答え、られない・・・・・・。
――余談だが、一夏がこうなった一件の原因とも言うべき密漁船が、戦場に紛れ込まないよう空域と海域の封鎖を担当してたのは訓練機部隊の先生たちで、その先生たちを指揮してた指揮官ポジだったのは織斑千冬IS学園警備主任。
その彼女は作戦失敗してから、負傷兵の治療を指示して以降は作戦室に引きこもったまま出てこようとしていなかったりする。
「で、落ち込んでますってポーズ? っざけんじゃないわよ!
やるべきことがあるでしょうが! 今! 戦わなくて、どうすんのよ!」
「わ、私・・・・・・は、もうISは・・・・・・使わない・・・・・・」
「ッ――!!」
バシン!
頬を打つ音が室内に響き渡り、支えを失った箒が床に倒れる。
「甘ったれてんじゃないわよ・・・・・・専用機持ちっつーのはね、そんなワガママが許されるような立場じゃないのよ」
そんな箒を再度、鈴は締め上げるように振り向かせて、相手の瞳を自分の瞳で直視する。
そこにあるのは真っ直ぐな闘志と、怒りにも似た赤い感情。
――どうでもいい話だが、こういう場面で箒の側から『殴ったな! 親父にもぶたれた事ないのに!!』とか言い返してきて、食って掛かってきてケンカになる展開って中々ないような気がするのは何故なのだろう? やりそうな性格の持ち主は多い気がするのだが・・・不思議である。
まぁ、それはそれとして。
鈴は最重要とも言うべき一言を言うべき時がきたことを自覚し、めんどうな発破がけの最後のキーワードを告げようとして、それで―――
「それともアンタは―――戦うべきときに戦えないお」
バァァァァァァッン!!!!
「各々方!! 仇討ちであるッ!!!」
ここでようやく真打ち登場! シュトロハイド・フォン・ローゼンバッハ!!
鈴が立ってた床の下からバァン!と大きな音立てながら畳返しの要領で頭から出てきて、足下からコンニチハ。
普段の登場の仕方で出てきたのが鈴ちゃんだったのは、登場の仕方を変えたことが原因だったようである。
服装も今回の事件風にリニューアルして、箒よりも長い黒髪に、鈴よりも小っさい背丈でIS学園の制服の上から、黒と白のダンダラ模様の羽織をまとい、太鼓を持って、頭の上には小さな兜。
まさにハイドらしい新ハイド・コスチュームだった。むしろ、こんな格好の奴がハイド以外にもIS学園の制服着てたら恥である。
IS学園が変なの二人も入学許した、変人学園の汚名を着せられない為にも、ハイド一人の個性ってことにしといた方が多分だけど安全である。
「如何にも! 世は個性の時代であるからな! 常に同じ事ばかりしている者に明日はない!!」
「いや、誰も聞いていないのだが!? 誰に説明しているのだお前は!?
あと、凰が吹っ飛ばされて頭からゴミ箱に突っ込まされたせいで大変な姿になっているのだが、それは!?」
箒、思わず重体の一夏とか先ほどまでの自己嫌悪とか忘れて、目の前のことだけに集中して全力ツッコミ!
って言うかコイツ、どっから出てきて何時からいたんだ!? 床の下ってそもそも出てこれるもんだったっけ!?
色々な疑問を創造しまくりながら、いつも通りハイドはマイペースにハイド流の会話を貫く気もなく貫きます。
あとハイドが転生してくる前にいたはずのリアル現代日本では、個性的であることが罪悪のように思われている昨今ですけど、コイツの中では現在進行形で『世は個性の時代』です。
新しいものを生み出し続ける重要性を語りながら、語ってる自分は時代錯誤。それがハイド流の世界観。
「亡き幼馴染み織斑君の無念を晴らさんと誓い、一命を賭して必ずや仇討ちを果たさんとする篠ノ之君の覚悟と信念の強さ・・・・・・! このハイド、しかと見届けさせてもらった!
たとえ学園側の意向に背くことになろうとも、愛する者を理不尽に奪われた愛と怒りと悲しみを剣に込め、思いのままに仇へと打ち下ろし、その無念と怒りを少しでも沈めんと欲する、その意思こそ人の道!! 天道を歩む者の態度成り!!
まさに君こそ、現代に蘇りし大石内蔵助! あるいは! ギレン・ザビの亡霊かっ!!」
「い、いやあの・・・・・・だから私はISにはもう乗らないし、戦う気はもうない――って言うかお前、褒めてるつもりで私の決意とか想いを完全否定しているのだが・・・・・・」
「うむ! みなまで言うな分かっておる! 篠ノ之君の気持ち、このハイド。手に取るようだ・・・・・・ッ。
敵を欺くにはまず味方からという汚名までも甘受して、ウツケを装い、耐え難きを耐え忍び難きを忍び、確実な仇討ち成功を目指さんとする、その想いッ。
心中察するに余りある・・・・・・このハイド! 及ばずながら助太刀いたぁっす!!」
「え? え!? ちょっ、待っ! 違――っ!?」
いつも通り、いつもの如く、ハイド的価値観による篠ノ之箒の罪悪感からくる責任取り方法のトンデモ解釈。
基本的にハイドは他人の行動を良いほうに解釈して、良かった部分を褒めて、悪かった部分を責めることなく失敗した部分は気にしません。
教育方針としては良い考え方なのかもしれませんけど、罪悪感とコンプレックス故の行動までポジティブシンキングで解釈されると却って辛いんで普通の人は止めてあげましょう。
ハイドは普通じゃないので止めませんが、止めろと言っても無駄だからこそ普通じゃない人なのですが。
「さぁ、いざ参らん! 亡き織斑君の仇の待つ海上へ! 狙うはシルバリア・ファミリー・ゴスペル君の首一つ!!
必ずや憎むべき怨敵ゴスペル君を討ち果たし、その御首を織斑君の墓前に捧げ、無念のうちに非業の死を遂げた彼の御霊を慰めようぞ!!」
「いや、死んでないのだが!? 一夏はまだ死んでない! 勝手に殺すな! あと仮に死んだとしても変なものを墓前に捧げようとするな! 祟られるわ!
却って一夏の霊が罪悪感で地縛霊になってしまうかもしれんような真似をするんじゃない!?」
箒ちゃんも、ようやくその点に気づいてツッコミ始めます。
そう、まだ一夏は死んでいません。助かる見込みは絶望的判定受けちゃってますが、それでも“まだ”死んでません。今はまだ。
なので、生き残れる可能性がある間は、死んだ前提での可能性話は止めてあげましょう。
言った言葉が現実の事態になっちゃった時とかにトラウマになっても知らんよ? ハイドの場合はなりそうにないので微妙だけれど・・・・・・。
「仇討ち作戦への出撃を前に、織斑君への想いを句にして捧げよう・・・・・・。
“風誘う、花よりも尚、雨も滴る五月かな”――よし、では出陣!!
敵は海上にあり、狙うはゴスペル君の首一つ!!」
「だから要らんと言っとろうが! それとチョイスも縁起が悪いのを混ぜるな! それは恨みを晴らそうとして果たせず死んだ主君と、恨みを晴らした後に負けて死んだ武将の言葉だろうが!?
あと、お前はいったい何処の国の何人なんだ本当にぃぃぃぃ――――ッ!?」
「ハッハッハ!! 細かいことは気にするでない! 皆が出陣の時を今か今かと待ち望んでおるのだ!
残るは大石箒殿による決行の下知を待つのみ・・・・・・さぁ、御城代! 決断の時であるぞ!!」
「私はいつから城代家老に!? そして仇討ちを何時やるかだけで、実行そのものは決定事項なのか!? 私の意思は!?
ちょ、止めろ離せ! まだ心の準備が出来てな―――私はまだ決めてな~~~~ッい!!」
・・・・・・こうしてズルズルと本当に引きずり込まれて退路塞がれ、仮に止めたくても止めれない状況へと連れ込まれていく箒ちゃん。
彼女から見た主観では、客観的に見て自分は自主決定をさせてもらえず、強引に他者の意向だけで仇討ち予定騒動(まだ死んでないので今のとこ予定)に巻き込まれて抜け出せなくなった被害者なのだが。
ハイドの主観では、箒は最初から仇討ちする気満々で、味方をふるいにかけるため敢えて怯懦を装い、ウツケを演じて仇討ちの意思と覚悟を密偵たちの目から隠そうとしているだけ―――という風に解釈されて信じ込まれていた。
大いなる時代錯誤によって、廊下を引きずられながら戦場へと強制的に帰還させられていく篠ノ之箒。
彼女が進まされる先の未来に待つのは、勝利の栄光か? それとも敗北による不名誉な死か? あるいはハイドによるギャグ展開の脇役ポジションか?
今の時点で知る者は誰もいない・・・・・・。
ただ一つだけ、分かっていることとして。
「う、う~~ん・・・・・・尻、が・・・・・・鈴の尻が、目の前・・・に・・・・・・ZZZ」
「・・・・・・ムキュ~~~・・・・・・(; ̄ェ ̄)」
ゴミ箱に頭から突っ込まされてったまま放置されてる鈴は、尻を冷やさないか心配という点だけである。
それしか未来のことは分かりようない世界観だから・・・・・・
つづく