コチラは原作ストーリー寄りになってます。コッチの方が続けやすそうだと思いましたので…。
他のIS原作の作品も順次更新目指すつもりです。
合宿二日目の午前中。今日は夜まで丸一日ISの各種装備試験運用とデータ取りに追われることになっている日だった。
ちなみに現在地は、IS試験用に旅館から宛がわれたビーチで、四方を切り立った崖に囲まれている、ちょっとした秘密のビーチみたいっつーより、秘密基地のマシン出撃ポイントみたいな場所。
学園アリーナを連想させるドーム状で、一度水面下に潜って水中トンネルを通らないと大海原に出れないところなんか、完全に正義の秘密ヒーロー戦隊の基地だよな。
もしくは『紅〇豚』
俺たちIS学園一年生全員は、その場所にずらりと並ばされていた。
そして今、
「ISのコアはそれぞれが相互情報のためのデータ通信ネットワークを持ってます。これは元々広大な宇宙空間における相互位置情報交換のために設けられたもので、現在はオープン・チャンネルとプライベート・チャンネルによる操縦者会話など通信に使われてます。それ以外にも『非限定情報共有』をコア同士が各自に行うことで、様々な情報を自己進化の糧として吸収しているということが近年の研究でわかってきました。これは制作者の篠ノ之博士が自己発達の一環として無制限展開を許可したため現在も進化の途中であり、全容は掴めてないそうです」
「さすがに優秀だな。・・・・・・そんなお前が何故、遅刻しそうになったかは分からんが――」
「はいッ! 隣の部屋がセレニアたちの部屋だったのでイロイロ気になっちゃって眠れなかったからです!
離れてる間に自己進化したオッパイのサイズとか3サイズとかブラジャーのサイズとか! 全容が公開されない部位の情報なんかが、隣の部屋では展開されてると思うとリビドーがですね!?」
「黙れ変態! 修学旅行中の男子高校生かお前はッ!?」
「抱~~~ッ失!?」
バッコ――――――ン!!と。
・・・・・・海を背景にして、セカンド幼馴染みが宙に舞わされる姿を披露していた・・・。
久しぶりに再会した幼馴染みの女の子が、会わない間に別人レベルで変わってしまってたって話を五反田からよく聞かされるけど・・・・・・俺の再会した幼馴染みは全く変わってなさすぎるのが逆に気になりすぎる・・・。
少しは変わって欲しいと素直に思う。もしくは、今のお前に変わる前に戻ってくれ。昔のお前はそこまでじゃなかったと思うぞ、鈴。たぶんだけれども。
「ハイッ! 織斑先生っ!!」
「・・・・・・なんだオルコット。なにか意見でもあるのか? 戯れ言はともかく、ISコア・ネットワークの説明については補填すべき点は無かったと思うが――」
「わたくしもセレニアさんのイロイロな部分が気になってしまって、なかなか寝付けませんでしたわ! あーんな事とか良いな、こ~んな事とかデキたら良いなとか!
決して鈴さんだけが熱い想いを、夏の夜のモンモンとした悩みを抱いていたわけではないことを解って頂きたいのですわ切実に!! ええ切実に乙女としてッ!!」
「文明崩壊した世紀末世界の中心で叫んでこい! このアホ同類―――ッ!!!」
「アウ~~~ッシ!?」
バチコ――――――ッン!!!と。
・・・・・・・・・そして海をバックにして、宙を舞わされる同級生二人目・・・。
なんなんだろう、この状況・・・。たしかIS学園は国立の超エリート校で、代表候補生は選ばれて選出されたエリートだと聞かされた記憶があるのだが・・・バカたちの別名としか思えなくなってきた自分がいる・・・。
「どうしましたお母様!? お顔が真っ赤です! おなか痛いですかっ! ラウラ、ポンポンのお薬もらってきますです!!」
「・・・・・・・・・大丈夫ですから、気にしないでくださいボーデヴィッヒさん・・・・・・。
大丈夫です、問題ありませんからダイジョウブ・・・・・・」
そして隣では、昨日に引き続き巻き込まれダメージを受けさせられ続けて蹲って顔隠してる旧友の姿が・・・。
なんかもうグダグダだが、これが中学時代に鈴と同じクラスだった頃には、途中から日常化しちまってたんだよなぁー・・・。久々に日常が帰ってきたような気になっちまってる自分の神経が、実は少しヤバくなってんじゃねぇかと思わなくもない、中学時代の旧友たちが一堂に会しちまっている高校入学後の今日この頃。
ってゆーかセレニア。今回の臨海学校ではほんともう、コイツにとって厄日状態になってるよな完全に・・・。なんか前世でやったとかで呪われてでもいるんじゃないかってレベルで初日から酷すぎる。
あるいは、ラウラが来たっていうパラレルワールド版の別セレニアが、なんか海でやっちまってた報いとか。そういう非科学的なことさえ普通にありになってきてる感じがする、今日この夏の日な俺、織斑一夏であったとさ。
「ハァ、ハァ・・・ええい、もういい! アイツらは一端放っておいて、各班ごとに振り分けられたISの装備試験を行っておくように! 専用機持ちは専用パーツのテストだから、バカ共2人も忘れるなよ!? 篠ノ之は用事があるから、ちょっとこっちへ来いっ。
では全員、迅速に準備を行えッ!! 」
『は~~~い』
と、ハァハァ荒い息を吐いて肩を怒らせていた千冬姉からの号令に従って、全員が一同に返事をするとそれぞれの場所へと移動を開始。なんの用事かまでは分からんけど、打鉄用の装備を運んでいた箒も千冬姉に呼ばれてそちらの方へ。
「・・・・・・はぁ、ふぅ・・・・・・で、ではボーデヴィッヒさん。私たちも準備を始めましょうかね? 重たそうですけど、ソッチを持ってください。自分が使うものなんですから、力一杯持って壊しちゃったらダメですからね?」
「ハイです! ラウラお母様のいいつけを守るイイ子になるですから大丈夫です!
ちゃんと頑張って壊れないように力いっぱい運ぶです!!」
「いやまぁ・・・・・・いいですそれでもう、面倒くさいから・・・・・・」
そして娘のために気合い入れて復活したセレニアに呼ばれて、ラウラも自分の機体シュヴァルツェア・レーゲン用の新装備が置かれている方へトテトテと。
最近は落ち着いてきてたのだが、海に来てから再び情緒不安定になったらしいお子様状態のラウラは、セレニアが側にいないとIS操縦者としては使いづらいとのことで、別に国家代表候補でも何でもないけど一緒にテスト実験やらされる羽目になってしまった我が旧友。
ホントもう、今回は散々すぎるなアイツは・・・・・・そんなことを思いながら俺も、新装備つけられないから試験中はやること少なそうながらも自分の持ち場へと行くだけ行くか。――そう思っていた。その瞬間のこと。
「―――――ち~~~~ちゃ~~~~~~ッん!!!」
聞き覚えのある声と口調と呼び方が聞こえてきて、『ずどどどど!!』という凄まじい足音が砂煙を上げながら、見覚えのある気がする人物が関係者以外立ち入り禁止の合宿所ビーチに向かって急速接近してくる姿が視界へと乱入してきて、千冬姉に向かって飛びかかってきて、そして・・・・・・!!
「やあやあ! 会いたかったよ、ちーちゃん! さあ、愛を確かめ合うためハグハグし―――」
「あっ!! お人形さん遊びが好きで、いつもISお掃除してる“変なオバサン”です!
お久しぶりです! ISお掃除係の変な“オバサン”!!!」
がっくん!! ズザァァァァァァァッ!!!!!
・・・・・・途中で、瞳をキラキラさせてるお子様ラウラに呼ばれた一言によって、空中で急激に角度を変えてから砂浜に頭から激突。そのままヘッドスライディング。盛大に砂煙と砂埃を舞い散らかしながら進んで、ようやく停止する・・・。
たぶんISっぽい何かをつけてたから可能になってた空中での進行方向変更やった結果なんだろうとは思うのだが――何のための機能で、なんの役に立つ行為だったのかは全く分からない・・・。
無駄じゃね? あの無駄にスゲェ機動・・・・・・。
自分が損して痛い思いするだけしか役立ちようがない超機能であり機動だったような気がするのは俺だけなんだろうか・・・?
あと、ラウラが言ってた相手って、やっぱり束さんだったのか・・・。
条件満たせそうな人はたしかに、この人しかいないとは思ってたけど、人形遊び好きで掃除って・・・・・・何があったんだパラレルワールド束さん・・・。
まぁ、何はともあれ。
希代の天才にしてISの生みの親であり、箒にとっては実姉である人、篠ノ之束さんが堂々と乱入してきた事だけはたしかなようである。
年齢はたしか大体、二〇代後半。
小学生レベルの精神年齢になってる今の状態のラウラから見れば・・・・・・まぁ、“オバサン”と呼んでしまう年齢に見えても仕方がないし悪気はない人だと、俺は信じている人でもあった――。
「・・・・・・う、ぐ・・・お・・・ば・・・・・・」
「うるさいぞ束。――それと、大丈夫か?
肉体の方は丈夫そうだが、不意打ちによる鼻血と鼻水で顔が酷いことになっているのだg――」
「だ・れ・が・オバサンだコラ――――――――――ッッ!!!!!!」
ドッカーン!と来た。・・・普通は来るだろうけどな。
二十代後半女性をオバサン呼ばわりできてしまえる、お子様精神は考えてみるとスゲェっつーかヒデェ。
「ぐぬぬぬ・・・・・・ふんっ! まぁいいもんね、どーせ図々しくて品のないドイツ娘なんて束さんは嫌いだもんね、やっぱ日本人と日英クォーターだよね。箒ちゃんとちーちゃんといっくん以外は日本人もどうでもいいんだけど。やっぱ日英クォーターさいこー――」
「??? なんかオバサンお洋服ちがってないです?
体じゅう真っ黒黒スケさんで、マントをばさっ!てやってて、えっとたしか、『東方不敗マスター束から東西南北中央不敗スーパー束に、私はなる!』って言ってた時のお洋服、棄てちゃったです?」
「誰だよ!? その変すぎる上に図々しいにも程があること言いまくってた女は!? 束さんは言った覚えないんだけど! そんな格好した記憶もないんだけど!
天災とは名乗ってるけど、『スーパー』とか『マスター』まで名乗ってた覚えはなぁぁぁっい!?」
そして、お子様メンタルと異世界記憶が混在していて違いが分からないラウラを相手には、自分のペースが通じてくれずに怒鳴り散らすことしか出来なくなっちまってる束さん。
理屈が通じる状態の時だったなら多分、大丈夫だったと思うんだけどなぁ・・・・・・今の時のラウラだとちょっとな・・・・・・完全に「??」って頭に何個もハテナマーク浮かべて見上げてくることしか出来てないぞさっきからずっと・・・。
子供相手に束さんの悪口並べすぎる癖は、言い回しが難しすぎて伝わらないみたいだった・・・・・・踏んだり蹴ったりな人がもう一人来てくれて良かったな、我が旧友よ・・・。
「ぐぬぬぬぅぅぅ・・・・・・!! ええい、そんな事どうでもいいんだよ! そんなことより、え~と――あ! いたいた、ヤッホ~♪
えへへ、久しぶりだね~箒ちゃん♡」
「・・・・・・どうも」
「こうして直接会うのは何年ぶりかな? オッパイは大っきくなったかな? お尻は大きくなりすぎてないかな? キチンと上向いてて垂れてないかな? この年から垂れると流石にキツ――」
「きゃあッ!? ――死ね! この変態バカ姉ッ!!!」
ごがきんっ!!
――もの凄い音がビーチ中に響き渡り、箒にすり寄って胸やら腰やら尻やらをワキワキした手で触り始めた束さんの頭を、怒り狂ったらしい箒が情け容赦なく、こんな所まで持ち込んできてた日本刀でぶっ叩いて静かにさせる苛烈な姉妹のスキンシップ。
抜き身の刃ではなく、鞘で叩くだけで終わらせてるのは姉妹愛故と言えない事はないのだが・・・・・・俺の部屋にラウラが寝ぼけて裸で不法侵入してきた姿を見たときには、こんなもんじゃ済まなかったからなぁ・・・・・・ただまぁ。
「ぎゃぁぁぁぁぁッ!? 頭がッ! 後頭部が陥没したように痛いィィィィィッ!?!?」
「ふんッ!!」
額を押さえ、頭から盛大に血を吹き出しまくりながら砂浜をのたうち回る束さん。
そりゃまぁ、『鞘で叩くだけ』つったって、刀が中に入ったままの状態で鞘で頭殴っちまったら普通に鈍器だし。
刃が出てないから斬れないってだけであって、棍棒だろ普通に。中に鉄の棒が詰まった棍棒で殴られたわけだから、そりゃあ痛い。
箒のヤツ、まだ束さんのこと許してないのは伝わってきたけど・・・・・・そろそろ『頭に来たら刀で解決する方針』は改めさせないと本気でヤバいことになりそうな気がしてきたな本当に・・・。
「あ、あの~・・・・・・篠ノ之束さん、ですよね? ISを開発した天才科学者の・・・えっと、この合宿では関係者以外立ち入り禁止になってまして、そのあのえっとぉ――」
「あたたぁ・・・・・・んんぅ~? 珍妙奇天烈なこと言うねキミは。ISの関係者っていうなら、一番はこの私をおいて他にいないでしょうが。あ痛痛痛ぁぁ・・・・・・」
「えっ? あっ、はい。そ、そうですよ・・・ね・・・? ん?
あ、あれ・・・・・・? そういう問題なの、かな・・・・・・?」
そして姉妹二人の間に入って止めようとした山田先生が轟沈。――させられたと思ったけど、なんか今のやり取りの内容に妙なモンを感じたのか疑問符を浮かべながらウンウン唸り始める。
基本的になに言っても無駄で、好きにさせておくしかない束さんだけど、『天才』を自称するだけあって理屈がなんもないゴリ押しだけで要求通す展開は昔から好みではないタイプだったから、山田先生に誤魔化しが半端に通じなかったことで「チッ」と小さく舌打ちして周囲を見渡し、余計なことを言い出される前に次なる話題がふれそうな人物を探すようにして、そして――キラリ☆と瞳を輝かせる。
「おい束。自己紹介くらいしろ。うちの生徒たちが困っている」
「えー? 別に束さんは赤の他人の生徒がいくら困ってても別にいいのに、めんどくさいなぁもう。――でもまぁいいか、今回は。
私が天才の束さんだよ~♪ ハロハロ~♡ セレちゃーん、久しぶり~☆ 元気だった-? 相変わらず捻くれ可愛いね、愛してるよチュッチュッ♡ チュッチュッ~♡♡」
「・・・・・・・・・・・・ど~も」
そして俺の背中に隠れたがるようにして、今日は珍しく何も言わず静かで目立つことすらなかったセレニアが、目線を逸らしながら束さんからの投げキッス連発と、周囲からの注目集めまくる状況からの回避策に利用しようとするのだが。
・・・・・・無理だろう、どう考えても・・・。
本当に厄日としか思えないほど不幸に見回れまくってる、臨海学校来てからの旧友セレニアの現状。
ってゆーかコイツ、昔から妙な知り合い多いとは思ってたけど、束さんとも知り合いだったのか。いつ知り合ってたのかまでは分からんけど、随分と仲よさそうだし、なんかあったのかな?
「姉さん、余計なことをしてないで要件だけを果たして、早く帰ってください。
――それで、その・・・・・・た、頼んでおいたものは・・・・・・?」
「んん~? ああ――んっふっふっふ~♪ 大丈夫ダイジョーブ、それはちゃーんと用意してきてあるよ。それじゃ上をご覧あれ~」
姉の変態発言を注意しに行ったと思われた箒が、やや躊躇いがちな口調で声を小さくしてなにかを質問すると、束さんは直上の空に向かって「ずびしっ」と指さし、その言葉に従った周囲の生徒たちまで空を見上げると・・・・・・キラーンと、何かが光るのが見えて、それで。
『『のわぁッ!?』』
ズズ―――ッン!!!
いきなり激しい衝撃を伴って金属の塊が空から落下してきたのだった!
銀色の扉らしき壁が、落ちてきた次の瞬間にはバタリと左右に倒れて現れになった、中身として収まっていたモノ、それは――
「じゃじゃ――ん!! これぞ箒ちゃん専用機こと『紅椿』!!
全スペックが現行ISを上回るお手製ISだよー!
さあ箒ちゃん! 今からフィッティングとパーソナライズをはじめようか!
近接戦闘を基礎にして万能型に調整してあるから、すぐに馴染むと思うよ。あとはサービスで自動支援装備もつけておいてあげたからね! お姉ちゃんが!!」
「・・・・・・それでは、頼みます」
「んー、堅いね~。実の姉妹なんだし、こうもっとキャッチーでフレンドリーでセクシーな呼び方で呼び合ってもいい気がするんだけど、まあいっか。じゃあ、はっじめっるよ~♪」
コンソールを開いて指を滑らせ初めて、ぴっぽっぱと、口で言いながら素早くISのセッティングを終わらせていく束さん。
態度はふざけていても、やっぱり超がつくほどの天才だと、改めて実感させられる光景だった。
俺にとっては子供の頃に出会ってから見慣れていた光景だったこともあり、そういうものだと受け入れちまって素直に感嘆するだけで、特に他の感情が入ってくることも無ければ考えることもなかったんだけど―――ふと、背後にいる一般生徒の女子たちの一部から、こんな言葉が交わされているのを、俺は聞くことになる。
「あの専用機って、篠ノ之さんがもらえるの・・・・・・? 身内ってだけで」
「だよねぇ。なんかずるいよねぇ」
その声を聞き咎めたのか、他の誰より素早く反応したのは意外なことに束さん、
「おやおや、歴史の授業をしたことがないのかな? 有史以来、世界が平等であったことなど一度もないよ」
そして、
「と言うより、“ISを動かせるのは女性だけだから女は男より優れている”を大義名分として、生まれの上位性を制度化した社会が女尊男卑の世の中です。
しかも国民の血税使ってタダで学べるIS学園の生徒でなりながら、こういう時だけ平等論を口にするのは都合が良すぎますし、些か“ズルイ”というものではないでしょうかね?」
――セレニアの二人だけだった。
ピンポイントで事実を指摘して攻撃してくる束さんと、自分たち自身が言っていた言葉がブーメランになって自らを傷つける刃へと変貌させてしまうセレニアの矛盾突き。
この二人を前にして、単なるイチャモン付けが敵うわけもなく、発言者たちは慌てて急な用事を思い出したり、トイレに行きたくなったりして逃げ出してしまい。
残されたのは、意外そうな表情で擁護者たち二人を見つめる箒と、ニヤリと笑ってセレニアの顔を盗み見る束さん。
そして、束さんの視線から逃れるように顔と視線を逸らそうとするセレニアと、そんな旧友の珍しい姿を見つめる俺の四人だけ。
「いや~、相変わらずの切れ味と容赦なさだね♪ セレちゃんの言刃に束さんは今日も痺れる憧れ~る惚れ~る濡れ~る、セレちゃんは段々と束さんにプロポーズしたくな~る――」
「なりませんし、知りません。わざとらしい五円玉揺らしも結構です。
それよりホラ、なんか来たみたいですからアッチ向いてください。お姉さんたち、事件みたいですよ」
そう言って話を逸らしたそうに語るセレニアだったが、言ってる内容そのものにはコイツの場合ウソがないのが毎度のパターン。今回もまた、その例に漏れることはなく。
「たっ、た、大変です! お、おお、織斑先生ッ!!」
「どうした? 山田先生。何かあったのか?」
「こ、こっ、これをっ!」
いきなり山田先生が慌てながら駆けてきて、千冬姉に一枚の紙切れを手渡し、
「“特務任務レベルA、現時刻より対策を始められたし”・・・・・・だと?」
「そ、それが、その、ハワイで試験稼働をしていた――」
「しっ。機密事項を口にするな。生徒たちに聞こえる」
「す、すみませんっ・・・」
そして何やら千冬姉と山田先生は小さな声でやりとりをしている。数人の生徒の視線に気づいてか、会話ではなく手話でのやり取り。
しかも普通の手話じゃなく、千冬姉が昔、日本代表だった時に数回だけ見たことがあるのに似ている、おそらくは軍関係の暗号手話だと思われる特殊なもの。
・・・・・・よほど外部に漏れてはいけない、危険な情報が届けられたんだってことだけは分かるけど・・・・・・一体どんな話が二人の間で交わされてるのかまでは、全く分から―――
「えっとぉ―――“はわい沖で稼働試験中だった、あめりかといすらえる共同開発の軍用あいえす《しるばりお・ごすぺる》が暴走して日本にむかって飛行中。あいえす委員会から専用機持ちだけで迎撃するよう、極秘命令がとどきました”―――って言ってます」
『なぜバラす―――――――ッ!?(んですか――――――ッ!?)』
そして、ラウラに軍用手話を読まれて、翻訳して語られてしまって、隠そうとした意味なんもなくされちまう二人の大人たち。
そういや忘れかけてたけど、コイツも一応は軍人で、国家代表候補のIS操縦者だったんだよな・・・。
このメンツの中だと当時の千冬姉に一番近い立場になってるヤツが混じってた訳だし、せめて少し離れた場所でやった方が良かったと思うぞ? 千冬姉と山田先生・・・。
「と、とにかく! 全員傾注しろ! ただ今より指示を伝える!!」
『もう注目してます』
「う、うむ。そうだったな・・・・・・ゴホン。
え~~、現時刻よりIS学園教員は特殊任務行動へと移る。今日のテスト稼働は中止。各班、ISを片付けて旅館に戻れ。連絡あるまで各自室内待機すること。許可無く室外に出たものは我々で身柄を拘束する! いいな!? 以上、解散!
ただし専用機持ちは全員集合しろ! 織斑、オルコット、デュノア、凰! それとボーデヴィッヒと異住と篠ノ之も来い!!」
「はい!!」
『は、はい!!』
ざわめく間も与えることなく千冬姉は女子たちを一喝し、今までにない怒号に怯えた様子で専用機持ち以外の一般生徒たちが室内待機するため旅館へと大急ぎで戻り始め、俺たち専用機持ちたちだけが千冬姉の指示を受けて、どうやら何かの任務を与えられる様でもある。
それは図らずも、さきほど女子たちが箒に向かって語っていた評価への解答を、現実という名の事実によって分かりやすく示されたと言っていいのかもしれなかった。
身内だからという理由だけで与えてもらっただけであったとしても、専用機持ちとなった箒には俺たちと共に戦う義務が千冬姉から与えられて、身内に束さんがいなかったから専用機をもらえない女子たちは千冬姉の命令を実行するためだけに旅館に戻る自分を疑わない。
――それが彼女たちの疑問に対する、今の彼女たち自身という答えだったのだから――
そして――――
「・・・・・・へぇ、あなたが極東の島国の篠ノ之博士なんですの・・・ご高名はかねがね伺っておりますわ。申し遅れましたが、わたくしは“セレニアさんに選ばれし親友の”セシリア・オルコットです」
「――どーも。はじめまして金髪。私が“セレちゃんの幼馴染みの”束さんだよ、はろー以上。自己紹介終わり。ふ~、変な金髪だった。まあ人間の区別なんかつかないんだけど~」
「・・・・・・お久しぶりです、束さん。“セレニアと一番仲のいい女友達の”凰鈴音です。覚えててくれると嬉しいですね。まぁ別に忘れられててもいーんですけど、あたし他の国のヤツなんかに興味ないですし」
『『『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・チッ』』』
―――なんか、アッチはアッチで激しいバトル開戦する寸前みたいな状況になっちまってるみたいなんだが!?
いつの間にか復活してたらしい鈴とセシリアが束さんと、互いに互いを睨みつけ合い、お互いの身体をジロジロ眺め合って、そして―――って、「そして」多い気がするな今日の俺って!今更だけども!!
『『『―――ふッ』』』
・・・・・・と、なんか見下したみたいな目つきと笑い方で“3人全員が”笑顔を浮かべ合ってから、無言のまま千冬姉たちの後を追って旅館の方へと並んで背を向けて去って行く3人の女性。もしくは、二人の少女と、一人の女性たち・・・・・・。
ぶつかり合わなかったのは良いことだと思うんだが・・・・・・なんか互いに見てた箇所が違うように俺には思えたんだよなぁ・・・・・・。
なんつーか、こう・・・・・・束さんはセシリアと鈴の胸部辺りを見下ろしてて、鈴は束さんの顔を見上げてて、セシリアは束さんの尻の辺りを重点的に見下ろしてたような・・・・・・そんな気が・・・・・・
「いったい何だったんだ? 何があったんだ、あの3人・・・・・・結局、仲直りしたのかしなかったのか? どっちなんだ・・・?」
「――多分ですが、“生まれながらの上位性”について、“自分の方が上だ”と確信できる何かしらの証拠でも得たんでしょうよ。放っときなさい。
劣等感で罵倒し合うよりは、自己満足の見下し合いで衝突を回避し合えるのなら、そっちの方が完全解決にこだわって戦いになるより少しはマシってものですから」
「・・・・・・なる、ほど・・・・・・そういうもの、か・・・・・・」
釈然としない思いを胸に抱きつつ。コソコソと俺の背中に隠れながら移動したがるセレニアが先を急ぎたがってるみたいなので、仕方なく付き合いで旅館を目指して移動し始める俺。
白黒つける方が好みで良いと思ってる解決仕方な俺は、やっぱりこういう所ではセレニアたちとは合わない部分を持ってるんだなと、つくづく思わされた今日の半日。
・・・・・・まだ半日残っていて、しかも状況激変しまくってるのに、なんか互いに仲悪すぎて意思疎通できてない気がするのは俺だけか!?
本当に、このままで大丈夫なんだよな!?
そんな不安に駆られて胸がざわついてるのは、俺一人だけなんだろうかと、本気で問いたい!!
つづく
*しょーもない余談設定:
『一夏とセレニアを好きになる者達への評価』
セレニア=惚れた女子が、みんな変態的になる。
一夏=惚れた女子が、みんなヤンデレになる。
――そんなオカルト現象の一種と噂されていた、今作版の二人の中学時代という設定。