『IS原作の妄想作品集』   作:ひきがやもとまち

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同時進行で幾つか連載作の続きを書いてる最中です。
結果的にコレが最初に完成できたのは、単に楽だからって理由だけなんでしょうねきっと…。
何はともあれ、「ハイドIS」最新話となります。


『我が征くはIS学園成り!』第24章

 紆余曲折を経て、想いを寄せる男子への意思を一つにし、織斑一夏が大好きガールズたちは愛する男が死んでないけど死にそうだから仇を討つために夕暮れなずむ砂浜から今、飛び立とうとしていた。

 

「――よし、出たぞ。ここから30キロ離れた沖合上空に目標を確認した。ステルスモードに入っていたが、どうも光学迷彩を持っていないのか、あるいは我々を誘う罠か・・・・・・とにかく衛星による目視で確認できたからには現在地だけは確実と言っていい」

「さすがドイツ軍の特殊部隊の隊長ね、やるじゃない。シャルロットとセシリアの方はどうなのよ?」

「ノープロブレム。たった今、完了しましたわ」

「準備オッケーだよ。いつでもいける」

「よし。当然あたしの甲龍も攻撃特化パッケージはインストール済みだし、あんたの方はどうすんの?」

「私は・・・戦う。戦って、勝つ! 今度こそ、負けはしない!」

「ふふん、決まりね」

 

「――だが正直、お前まで私たちに力を貸してくれるのは意外だった。助かったのは事実だが、一体なぜ一夏のために私たちと一緒に戦ってくれるのだ・・・?」

「私にも色々あってな・・・・・・端的に言って、“誰でもいいからブチのめすため力を振るいたい気分だった”・・・・・・とでも言っておこうか」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 若干一名、箒にとって物スッゲー共感しやすいけど共感したくない動機での外部参加者が混じってはいたけど、戦力的にいてもらわないと困るので外す訳にはいかずに参加承認。

 基本的には織斑一夏大好きガールズ達による仇討ち部隊が(ライクも大好きには含まれる。男と女の友情と愛情は紙一重)夕闇染まった空へと決戦場へと向かって飛び立っていた。

 

 

 

 

 

 ――それと時系列的には、おそらく同じ頃。

 織斑一夏は、肉体を病室のベッドに横たえさせたまま精神だけを、どこともつかぬ砂浜の上を一人歩かせていた。

 

(ここは・・・・・・?)

 

 ざぁ・・・・・・。ざぁぁん・・・・・・。

 遠くから聞こえてくる波の音に誘われるまま、足を進めるたび足下の白砂が澄んだ音を立てている。

 足の裏に直接感じる砂の感触と熱気。海から届く潮の匂いと波の音。

 心地よい涼風と、ジリジリ照りつける太陽が、否応もなく今が夏だと教えてくれる。

 にも関わらず、ここがどこで、今がいつなのか分かることができない。そんな砂浜だけが延々と続いている謎の空間――。

 

(夏・・・・・・なのか? 今は・・・・・・)

 

 心の中で疑問符を浮かべざるを得ない状況ながらも、艦橋だけ見たら常夏の楽園リゾートパラダイスみたいな場所で一夏は一人、アバンチュールを満喫しているトレンディードラマの主人公やってる最中であった。

 

 IS戦闘中に箒をかばって撃墜されて、そのまま病室に直行させられたから、全身ヒーロータイツみたいなISスーツ姿で寝たきりになってるはずなのに、何故かいつの間にか制服を着ていて、ズボンは裾を折り返した状態で素足のまま砂浜を歩いていたから服が海水に濡れて洗濯が面倒になる心配もなく。

 いつの間にか脱いでいた靴を手に持ったまま歩いていたから、グチャグチャ水浸しになって気持ち悪くなる恐れもない。

 

 だが、靴下だけはどこにも無かった。

 靴下を履かずに靴だけ履いて歩いてたら、靴擦れしやすくなって痛いだけで大変そうだったけど、それでも靴だけ持ってて、いつの間にか靴下は持ち歩いていなかった。

 

 恐らくは、臭かったのだろう。

 臭い靴下を手に持って歩いて臭いが移るのがイヤだったから、気づかない内に棄てて今に至ってるんだと思われる。

 

《――。―――♪ ~~♪》

 

 そんな臭い靴下を棄てて、臭くない靴だけ持って謎の砂浜を歩いていた一夏の耳に、突如として謎の歌声が聞こえてくる。

 とても綺麗で、とても元気な、そんな歌声。

 その歌声が無性に気になった一夏は、履く気もないのに靴を持ったまま棄てることなく声の方へと走っていき、そして―――少女を見つける。

 

《ラ、ラ~♪ ラララ♪♪》

 

 波打ち際で、わずかに爪先を濡らしながら、その子は踊るように歌い、謡うように躍り、西尾維新的な言葉遊びで表現したくなるほど、やってることは同じでも違う風に感じる書き方で伝えたくなる、そんな気分にさせられる謎の女の子。

 

 躍るたびに揺れる、眩いほどに輝く白色の髪。それと同じ色のワンピースが風に撫でられ、時折ふわりと膨らんでは舞い――ギリギリのところで中身の白い布を見られることだけは絶対にない。

 

(ふむ・・・・・・)

 

 そんな、白くてワンピースを着て、ヒラヒラ揺らしながら歌って踊っている、幼い少女の姿を見つけ、なんとなく声をかけて気付かれようと思うことはせず、近くにあった流木に腰を降ろすと、一夏は少女の姿をボーッと見つめた。

 

 ざぁざぁと波の音が聞こえ、時折吹く風に乗って、少女のスカートは翻り続けて中身は見えず。

 そんな光景を目の前にして、一夏はただぼんやりと流木に座ったまま眺め続けていた・・・・・・。

 

 

 ――なんか数十年前のポエムっぽい文章で表現してみたが(注:主観的な判定基準)

 他人の目には、一夏にそういう趣味があったとしか見えないかもしれない状況ではあったけれども、それでも一夏は重傷負って気を失ってて、これは全部精神世界の出来事であって現実ではない。現実世界じゃないから他人はいない。

 だからダイジョーブ。大丈夫だと、全ての青春群像ストーリーの主人公達は信じていると、誰かがどこか出そう信じていたのだから―――。

 

 

 

 

 

 

 

 さて、その頃。

 アストラル界で精神体一夏が、清純そうなワンピース姿のロリ少女がヒラヒラ踊りながら歌ってる姿に心癒やされながら一休憩してる最中に。

 

 目標地点まで、残り6キロと迫りつつあった箒たち全員に対して、彼女たちの最高戦力は厳かな口調で、こう宣言してたのであったのでした。

 

 

「よし、ここまで来れば安心であろう。

 では皆の者、後顧の憂いなく織斑くんの仇を討ち、本懐を遂げてくるがいい。

 それを邪魔せんとする者は、全て私が食い止める故、心配はいらん! 安心して己の全てを正面の敵のみにぶつけるのであーる!!!」

 

 

『『『『・・・・・・・・・はァッ!?』』』』

 

 

 ハイドから敵を目前にしての、突然の脱退発言に一夏大好きガールズたち動揺。超動揺。

 いやまぁ、確かにいても混乱させられるだけだし、普段はいない方が楽かなーとか思ってるヤツではあるんだけれども。

 ただまぁ、それでも強いし。一夏いない状態では間違いなく最強だし、いたとしても最強の座は揺るがないかもしれんほど超強すぎるヤツではあったので・・・・・・正直こんな時だけは当てにしていた、微妙に都合のいい展開好きなガールズたち的には驚きを隠せないのも当然な訳で。

 

 そんな彼女たちの驚愕に対して、ハイドからの説明は以下の通りである。

 

 

『ちょ、待っ・・・!? あんた今さら何言って――っ』

 

「皆まで言うな凰くん! 君たちが抱く心の痛み・・・このハイド、この上なく理解し、心痛めておる!

 もとより織斑くんを愛し、愛する者の仇を討たんと欲して危険を冒し、生きてこそ得ることの出来る栄光を手にするため、屈辱を耐えて撤退を決意し、アイシャルリターンを誓った戦場へと帰ってきた君たちにとって、織斑くんの仇を討つための戦は、織斑くんを慕う者たちだけの手で成就すべきと願うは当然のこと!! 部外者の助けなど無粋の極み・・・・・・そう思っているのであろう!?」

 

 

 要するに、軍用ISシルバリオ・ゴスペル退治は、一夏大好きな箒たちだけでやれ。たとえ千冬たちが援軍に来てもハイドが邪魔して行かせないから、最後まで自分たちだけで戦うんだ。勝って生きるか、負けて死ぬか。どちらか一つだ、さぁ選べ。・・・・・・って事ですね分かります。

 

『え? えぇッ!? い、いや私たち、そこまで教条的では―――』

 

「分かる! 分かるぞ篠ノ之くん! 武士道とは、そういうもの・・・・・・。

 このハイド、亡き主の無念を晴さんが為、忠義に散った武士たちへの憧憬の念共々、君と志を同じくする者として、効率や勝率といった理屈に寄らず、最期まで想いを貫く生き様をこそ美として、たとえ敗れて滅びようとも貫き通す意志をこそ尊しと考えておる!!

 その想い、君もまた私と同じものを胸に抱いているのであろう・・・? 私には分かる。分かるのだよ篠ノ之くん。私と君は、共に武人の道を征く者同士として、言葉にせずとも伝わってくるもの・・・・・・。

 そう! これこそ心の友、心友(しんゆう)たる者同士による魂の共鳴!!!」

 

『う、うぐ・・・・・・ぅ・・・』

 

 箒、反論する前に普段から一夏に語ってきた言葉が徒になって、反論封じられて撃沈。

 武士道武士道言って説教してたヤツが、こんな時だけ別のこと言い出しても信じてもらえるのは難しい。

 

「という訳で皆の者、後は私に任せて先へ急ぐが良い! 殿は私が引き受けた!!

 ――私が力になれるのは、どうやら此処までのようであるからな・・・・・・」

 

『いやそれハイドの匙加減一つでしょう!? 君はもっと力になれるIS操縦者だって絶対に!!』

 

 

 ・・・・・・という理屈と理由によって、ゴスペルとの決戦を目前にして一夏大好き仇討ち隊のメンバーから最大最強の戦力が、戦う前から離脱した状態で決戦挑む羽目になっちまいましたとさ。

 その結果として、決戦を目前にして自信がちょっと揺らいだメンバーに対して。

 

 

『気持ちは分かるが、アイツだからな・・・・・・諦めろ。そして受け入れるのだ、それしかない。

 少なくとも私は、そうやって乗り越えてきた。お前らにも出来るはずだ。・・・・・・乗り越えろ・・・ッ!!』

 

『ら、ラウラ・・・!! ああ、分かった! やぁぁってやるわァァァァァッ!!!』

 

 

 と、ラウラが発破かけて少女たちの本能を呼び覚まし、スーパー系の勢いのまま、たぶん《熱血》とか《魂》とか精神の力を使った状態で突撃して、《ひらめき》とか《必中》は持ってなさそうなメンバーだけによる、海上マップの中央に位置するボスユニットとの、対ゴスペル決戦の幕が切って落とされることになったのであった!!!

 

 

 

 

 

 

 

 そして、それと大体同じ頃なんじゃねーかと思われる時間帯に、別の場所で。

 

(あれ・・・・・・?)

 

 ざあ、ざぁん・・・・・・。

 さざ波を聞きながら、少女の歌に聴き惚れたまま座り込んでた一夏は、少女の歌と踊りが急に止まったことで我に返って相手を見る。

 

「どうかしたのか?」

《呼んでる・・・・・・行かなきゃ》

「え?」

 

 声をかけた少女は動かず、空を眺めたまま声だけで答えて、一瞬だけ視線を逸らした一夏が顔の位置を元に戻すと相手の姿はどこにも無く。

 仕方なしに元いた流木の元へ戻ろうとすると、

 

《力を欲しますか?》

「え・・・・・・?」

 

 背中の方から再び声が聞こえ、急いで振り向くと今度は一人の女性が、海の上に立っていた。

 

 白く輝く甲冑を身に纏い、大きな剣を自らの前に突き立てて、その顔は目を覆うガードに隠され下半分しか見ることは出来ない。

 

 そんな白い鎧を纏った立派な女騎士の姿をした女性が、膝下まで海に沈めて静かに佇み、一夏に向かって問いを投げかける。

 

《力を欲しますか・・・・・・? 何のために・・・・・・》

「ん? んー・・・・・・難しいこと訊くなぁ」

 

 ざあ、ざぁん。波だけが女性と一夏だけの世界に聞こえてくる。

 謎の砂浜で謎の少女が忽然と姿を消し、時代錯誤で怪しげな格好の女性がいきなり現れ、訳分かんない質問してこられても全く動じず、質問に対する答えを「難しいことを訊く」と前置きした上で回答する。

 

 一夏の精神面もどうかしちまってんじゃねぇかと思われなくもない異常すぎる状況下で、異常すぎる反応をする織斑一夏少年16才であったものの、元々この場所にいるのは精神体の一夏なんだから異常って程では無いのかもしれないし、あるのかもしれない。

 

 あるいは、『強さに関する話題』だったら、どんな場所でも状況でも相手でもオールOK。強さに関しては一家言持ってる俺ワンサマー!・・・・・・とかの信念なり何なり持ってたのが理由かもしれない。

 

 そんなこんなで、とりあえず一夏は相手からの質問に、いつもの彼らしく『強さ』と『力』に関してだけはオリジナル理論を語りたがる癖を発揮して、詳しく解説し始める。

 

「そうだな・・・・・・友達を――いや、仲間を守るためだな」

《仲間を――》

「仲間をな。なんていうか、世の中って結構色々戦わないといけないだろ? 単純な腕力だけじゃなくて色んな事でさ。

 そういう時に、ほら、不条理ってあるだろ。道理のない暴力って結構多いぜ。そういうのから、できるだけ仲間を助けたいと思う。この世界で一緒に戦う―――仲間を」

《そう・・・・・・》

 

 

 その答えを聞かされて、その女性がどう思ってかまでは分からない。

 ただ彼女は静かに答えてから頷いて、そして言葉を続け、

 

 

《だったら、行かな―――――》

 

 

 

「素晴らしい・・・・・・素晴らしき信念であったぞ織斑くん。

 いや、クイーンズ・ホワイトナイト・オリムラ卿と呼ぶべきであろうか・・・・・・」

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・途中で、なんっか変なモンが混じってきてたような気がして言葉が止まり。

 

 

 

「な・ぜ、お前がここにいるんだハイドぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!???」

 

 

 ドッカーンと!!! 一夏の想いが大声となって爆発する!! せざるを得ない!

 これで爆発しなかったら一夏の忍耐は、永遠に爆発する必要性が多分ねぇ!! それぐっらいに―――ワケワカラン場所で謎の登場の仕方してくるドイツの国家代表候補生! その名はシュトロハイド・フォン・ローゼンバッハ!!

 

 一体なぜ、彼女はここにいるのか!? そもそも何故くることができたのか!?

 その理由が、理論が、今彼女自身の口から明かされる時が訪れる・・・・・・!!!

 

「知らん! 分からん! と言うより、此処はどこかね? 見たことも聞いたことも無き、摩訶不思議アドベンチャー空間な海辺であるが・・・・・・あの世かね?」

「違う! いや分かんねぇけど多分違う! って言うか、それだと俺が死んでるだろうが!? だから絶対に違う!!」

「ふむ・・・気持ちは察するに余りあるが・・・…死んだ方々は皆、そういう風に言うものぞ」

「お前は一体なんの経験について語っている!? あと、ここがあの世ならお前も死んでんだろうがーっ!!!」

 

 という理屈によって、ハイドは今この時、この空間に来れてたらしい。コイツには最初から理屈なんか期待しても、分かるのはこの程度のもんである。

 尤も、訊いた方の一夏にも、此処がどこで、自分がどうやって来たのか全くサッパリこれっぽっちも分からないし知らない者同士な同類でしかなかったので人の事とやかく言う資格はあんましなかったのだけれども。

 

 こういう時こういう反応するヤツには、なんとなく怒鳴り声で常識ツッコミする奴の方がツッコまれる奴よりは真面に見えやすい。それが人間心理という名の人の心ってものである。

 

「まぁ、そのような些細はどうでもよい。大事をなさんとする者が小事に拘ってはならぬ。それよりもだ、織斑くん―――私は今、猛烈に感動しておる!!」

 

 そして毎度のように色々無視して、近くにいる鎧姿の女の人には存在すら気付くことなく、涙をドバァーッと滝のように流しながら一夏の肩を掴んでガックンガックン!!

 リアルだと重病人になってる体を、精神体だから遠慮無く振り回しながら賞賛して絶賛しまくる。

 良い子も悪い子も、犯罪者になりかねんので辞めましょう。過失致死は立派な犯罪扱いされちゃう事故死です。

 

「先に君が語った熱き熱弁、あれぞ正しく世のため人のために戦うヒーローの熱き生き様!!

 この世全ての不条理から、仲間たちを力によって守ろうとし、力なくしては何も守れぬと固く信じて力を求め、道理の通らぬ力を振るう者は暴力とし、その者たちの間違いを正すため自らが振るう力は暴力では無いと断言する・・・・・・その自らの信念を信じ貫く想いこそ、ヒーローの大義。

 多くを語らず、熱き想いは内に秘め、怒りは暴力として振るって悪者たちをブッ飛ばして仲間を守る!

 素晴らしい! まさに古き良きアメリカンヒーローの在り方を体現した、現代に蘇りしカウボーイとは君のこと!! あるいは、ジョン・ウェイン君の亡霊かッ!!」

「違うッ! そりゃただの暴力野郎だろうが!? 俺をそんなのと一緒にするんじゃねぇ!!」

 

 一夏、大激怒! ハイドの解釈を全力で否定する!

 彼としては当然のことであり、事実無根の間違った解釈であり、曲解されてしまった一夏自身の考え方、略して『イチニズム』を正しく相手に理解させるため、言葉による対話で介入を開始する!!

 

 相手の誤解を解くため、間違っているんだと理解してもらうため、本当の自分の思いを分かってもらおうと、『今まで自分が他人に語ってきた言葉』を一つ一つ思い出しながら語り始める!!

 

 

「俺はただ!

 許せねー奴がいた時だけブン殴ってきただけで、強さってのは心の在処が大事なもんで自分がどうしたいか分からない奴は強い弱い以前の問題で、つまり、やりたいことやったもん勝ちで、つまんねー遠慮とか我慢とかは損するだけ・・・で・・・・・・」

 

 

 ・・・・・・そして、段々と声が小さくなっていって・・・・・・最終的には俯いて黙り込んでしまうのだった。

 話ながら自分でも、「あれ・・・? 俺ってそう思ってたはずの割には言ってる事おかしくね・・・?」と、自分が放ってきた過去発言の数々が結構ダメダメだったことに気付いて驚かされ。

 

 

 

「・・・・・・コホン。ま、まぁそんな感じの奴らがやるような間違った力の振るい方するのを暴力と呼ぶんだ。群れて囲んで複数で一人の女に絡んでくるようなのが暴力なんだよ。

 俺はそんな事一度もしたことないから暴力じゃない。断じて違う。絶対に間違っている」

「うむ。正義の人助けヒーローたる者、斯く考えるべし、という奴であるな。

 君が挑みし、人類一人一人の自由を得るための戦いを神が見捨てる訳はなし。不条理に虐げられし者たちは、君の力を欲していよう。

 立てよ、クイーンズ・エグザムナイト織斑卿! 悲しみを怒りに変えて正義の剣と、自由なる翼を持って戦場へと舞い戻り、圧倒的な力の差で敵陣を征服し尽くすのだぁぁッ!!」

「だから、その呼び方はよく分かんねぇけど辞めろッちゅーに!!」

 

《あのー・・・・・・》

 

 

 そして、ここに来てようやく口挟むことが出来た、ハイドとは直接会うのは初対面で、コイツの超ハイテンションマイペースへの耐性が全くなかった唯一この場にいる人だったせいで完全に蚊帳の外に追放されてしまっていた白い騎士鎧姿の女性が、自分たちの話題で盛り上がりまくってたハイドと一夏に声をかける。

 

 その超えに振り向いたハイドは、「おお!?いつの間に!」と素直で正直な大声によって―――騎士鎧の人には存在すら全く気付いてなかった事実を自白しちまう超無礼者ぶりを発揮しまくり。

 

「いや失礼した。どこの何方かは存ぜぬが、さぞ名のある鎧を纏った騎士殿とお見受けいたす。

 我が名はシュトロハイド・フォン・ローゼンバッハという、通りすがりに迷い込みし迷子のドイツ国家代表候補生である。

 またの名を、IS学園1年1組所属《ドイツの蒼い雷》とデビュー後には名乗る予定。お見知りおき願いたい」

《・・・・・・どうも》

「ところで、謎の鎧を纏った謎の女性騎士殿。つかぬ事をお伺いするが、すね当てと剣の切っ先が海水に浸かっておられるようだが、錆止めの方は大丈夫なのかね?

 西洋鎧と剣は鉄製でできている故、潮風と海水に当たりすぎるは毒。どうか、お気を付けなさるが宜しかろう」

《・・・・・・話、進めてもいいですか?》

 

 もういい加減、コイツに付き合ってても話が永遠に進みそうにないことを短い間で悟らされたのか、謎の鎧を纏った謎の女性騎士は色々無視して省略して、一夏に直接現状を伝えるため、雲一つ無い青空をスクリーン代わりにして一つの光景を映し出す。

 

 ――それは、一夏の仲間たちが戦っている姿だった。

 そして苦戦させられている。敵の姿は、変化しつつあったが見覚えがある。

 間違いない。自分を負傷させられた恐るべき強敵、軍用ISシルバリオ・ゴスペル・・・!!

 

 

「ふむ。一人の敵を相手に複数で囲んで攻撃しておるな」

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そしてハイドからの悪意0パーセントで、特に他意なき事実をそのまま言ってるだけの状況表現。

 

 いやまぁ、確かにそうなんだけれども。仕方ないんだよ。

 実力差とか性能差とか色々あるから、一対一だと勝てない相手に、複数人で寄ってたかって絡んでいって、陰険な策を使って勝利を目指すって言うのは、勝てない側にとっては仕方がないから暴力とは必ずしも呼ばないものであって。

 

 あと、敵も味方もIS乗りだから女の子だし。男が女を複数で囲んで絡んでいくのは男として許せないけど、女の子が女の子同士で強い相手に複数人で挑んで勝ちに行くのは間違ってないって言うか、男がどーこー言うことじゃないって言うか、え~とえ~と―――。

 

「・・・・・・案ずるな織斑君。ちゃんと私には分かっておる」

 

 ポンと肩を叩いて、変なところで理屈っぽくなりやすい一夏に笑いかけながら、言い笑顔を浮かべるハイドは曇りなき眼で一切の邪気なき優しい宣言。

 

 

「古来より、絆の力で結ばれた大同盟軍によって、悪辣なる帝国軍を完全包囲下に置き、一斉に全方位から攻め寄せて数の力で圧倒する勝利こそ、王道的な優しさと自由の勝利パターンであったのが人類の歴史というもの!!

 中世の再現はすべきではないと、中世的な国家体制で育った姫君も言っていたとおり、自己否定による自らの過ちに気付いて強くなることもまた、絶対正義ヒーローの王道というものであるという事実を、私はよく存じておるから安心するのだ!!」

「お前はもういい! 黙ってろ!! 俺のやる気的に、今のお前の存在こそが一番大丈夫じゃないからな!?」

 

 身も蓋も世もないハイドの理解と物わかりの良すぎさによって、大いに意欲に水刺されまくりながら―――それでも一夏は箒たちのピンチに駆けつけるため『自分の仲間たちがいる場所』に戻ることを決意する。

 

《それじゃあ、ね?》

「ああ」

 

 いつの間にか戻ってきていたらしい、白いワンピース姿の女の子からも微笑まれて見送られ、少し照れくさい気分になりながら一夏は真っ白い光に包まれて――やがて自分たちの世界へ戻るため消えていった―――

 

 箒たちを救うため、一夏“は”帰って行ったのである。

 

 

 

《・・・・・・で。貴女はどうして残っているのですか? と言うより、何時帰っていただけるので・・・?》

「さて。何分にも、いつどのようにして彼の地へ参ったのか自分でも皆目見当がつかぬ迷い人故に」

《・・・・・・・・・》

《・・・・・・・・・》

 

 

 こうして、白い砂浜と青空だけが延々とどこまでも続いている空間に、鎧姿の女性と白いワンピス姿の女の子と、ドイツ代表候補生にしてIS専用機持ちハイドの三人だけが取り残されて、どうやって来たのか方法が分からない帰し方もよく分からず。

 

 

 ・・・・・・これからしばらく三人だけで、この空間で過ごさにゃならんのかと、謎の女性が心の中で絶望したかどうかは、黙ったままだったから誰にも分からない・・・・・・。

 

 

 

つづく

 

 

 

 

オマケ『一夏たちがゴスペルに勝った後頃のハイドさん』

 

 

ハイド「ハッハッハ、安心いたせ問題ない! 何故なら私は、魔境・異世界・異次元・異空間・別の惑星アブダクション・魔界天界神界平行世界に、664回巻き込まれて転移させられ、665回の帰還経験をもつ男と呼ばれる漢の中の漢である! しかも今回はなんと記念すべき666回目! ゾロ目である!! なんと縁起が良きことか!! もはや数字だけで完全勝利と無事の帰還が確実であることは疑いあるまいハッハッハーイドッ!!!」

 

 

ナゾ《・・・・・・・・・(その数字は「664回も巻き込まれた不幸ぶりを表してるのではないか」と思っていたとしても言ってあげない)》

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