『IS原作の妄想作品集』   作:ひきがやもとまち

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正直ココへ出す作品か?と迷ったのですが……読者様からアイデアを頂いてから思いついてた話を、上手く形にできずお蔵入りし続けてた作品が、昨日の晩に急に思いついて書けたので一応投稿です。

【悪役令嬢転生おじさん】×【インフィニット・ストラトス】×【言霊IS】のコラボ作。

ストーリー上の理由から、捻くれセレニア規準となりますので、ご了承ください。


補足:
説明し忘れてましたが、今作はPS3ソフト【IS2ラブ・アンド・パージ】が舞台の作品です。番外編でしたので。
投稿したとき頭茹でってたせいで説明が遅れ、分かり辛くなり申し訳ない…(謝罪)


番外編【IS ラブ&悪役令嬢パージ 「プレイヤーと主人公は別物です」】

 

「――はッ!?」

 

 

 オーヴェルヌ公爵家の令嬢『グレイス・オーヴェルヌ』は、目を覚まして空を見上げる。

 馬から落ちて、打ったはずみで真っ白になっていた頭の中が、急速にクリーンになっていくのを実感として感じさせられる。

 

 目を覚ましたばかりの視界には、一面の青空と屋敷の庭園を囲む広い森。

 ―――見覚えのない景色だった。

 いや、覚えている。

 

 真っ白になっていた頭の中に少しずつ記憶が戻っていき、やがて自分が誰で、此処が何処で、なぜ自分が今この場で寝転んで空を見上げる“羽目”になるに至った経緯を、頭が真っ白い霧で覆われた中から徐々に己が浮上してゆくのを彼女は確かに感じ取っていく。

 

「お嬢様! ご無事ですかグレイスお嬢様ッ!?」

「グレイス! 怪我はないかいグレイス!?」

 

 

 心配そうな声が聞こえてきたので、そちらを見やると金髪や赤髪やら緑色の瞳やらと、色取り取りの身体的特徴をもった、だが妙に見目麗しい男性たちが多いように感じられなくもない人々が慌てたように自分の方へと駆けよってきて、口々に労りの言葉をかけてもらえる。

 

 その人たちの名前と顔を、自分は覚えている。記憶している。・・・だが見た覚えはない。

 自分自身には会った記憶のない人々。

 だが自分の身体は、そんな相手と過ごしてきた期間をハッキリと記憶している。

 

 これも一種のデジャヴュと言っていい状態なのだろうか・・・? 現状を表現するのに適切な単語が即座には思いつかず、公爵令嬢グレイスは豪奢な髪型をした豊かな量の頭髪でかぶりを振る。

 

 その仕草をどう解釈されたのかは予測の域を出ようもないが、とにかくグレイスは屋敷の中にある自分の部屋へと連れて行かれ、寝間着に着替えさせられた姿で一休みして安静にするよう言いつけられ、

 

「では、後ほど再び診察に上がります。どうか御身を優先して、ご養生くださいますよう」

 

 と、やたら慇懃な仕草と大仰な言い回しで深々と一礼しながら医師たちが退室し、自分の部屋で自分一人だけとなった状態になった後。

 

 公爵令嬢グレイス・オーヴェルヌは――あるいは、グレイス・オーヴェルヌを“動かしている中の人”は、彼女の身体に深々と溜息を吐かせてから立ち上がり。

 

 

「・・・・・・仕方がありませんね。まずは状況の把握だ、です」

 

 

 何となく偉大な支配者っぽい態度とセリフを、微妙に丁寧語を交えたアンバランスな語調で呟いて―――部屋の中をウロチョロし始める。

 それは間取りを一つ一つ確認しているようにも見えたし、部屋の各所に隠されているナニカでもないかと探っている姿にも見え、単に檻の中の肉食動物が意味もなく何となく行き場のない密閉空間の中を徘徊しているだけのようにも見えなくもない。そんな状態。

 

 しばらくの間そのような行動を続けた後。

 グレイス・オーヴェルヌは――否。

 

 グレイス・オーヴェルヌの肉体の中に入った『異住セレニア』は、現状の自分が置かれた状況をようやく受け入れる。

 

 

「・・・これは所謂ゲーム世界への転生、いえ転生憑依という類いのジャンルとは似て非なる現象の結果なんでしょうね・・・。

 いやまぁ、それは一先ずいいとして。

 ――なんで私の動かす身体を乙女ゲームの悪役令嬢っぽいキャラにしますかね・・・・・・織斑先生のキャスティングは全く意味と意図が分からないことが多すぎますよ・・・。

 オルコットさんみたいな髪型と、鈴さんみたいに目つきの悪い肉体に、私の精神って・・・・・・ミスマッチにも程があると思うんですが・・・・・・やれやれ」

 

 

 

 疲れ切った上に呆れ果てた、とでも言い足そうに肩をすくめて謎の独白を呟く公爵令嬢グレイス・オーヴエルヌ。

 それは彼女が乗馬場で馬から落ちて頭を打ち、意識を失う少し前に―――こことは違う、どこか別の場所と別の空間で起きていたやり取りに端を発している出来事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これが前回、エラーが起きたという《ワールドパージ・システム》の改良型なんですか?」

「そうだ。山田先生だけでなく、倉持技研と篝火とも協力体制を取ることで完全に問題を解決した最新型、《ワールドパージ・システムGP2号機》それがこのマシーンの名なのだそうだ」

「はぁ・・・・・・」

 

 メッチャクチャ縁起が悪すぎるとしか思えないネーミングを付けられてしまった哀れなマシーンを私は見上げ(予測です。外れることを願ってはおります)外観的には差ほど変化したようには見えない機械の前に立ち。

 

 私は――大きく一歩、後ろへ後退りして距離を取る道を選びましたとさ。

 

 先日に織斑さんを中心とする、ラバーズ専用機乗りたち+α若干名が初試験テストをおこなって盛大にエラーを起こして、被験者たちの意識を物語世界に閉じ込めてしまい、その人が演じていた役割に物語通りのハッピーエンドを迎えさせることで解放されるだか何だかいう、よく分からないギャルゲーみたいな異常事態を発生させたという問題のマシーン。

 

 もともとは仮想空間で実機を使わずIS操縦の訓練をできるようにする為とかどーたら言う開発目的で作っていたという代物は、その事故によって危険性が解決できてないという事になり、結果として企画倒れのお蔵入り確定って処分になったと聞かされていたのですけど・・・・・・ま~だ諦め悪く開発続けてたみたいですね・・・・・・。

 

 いやまぁ、それは別にいいっつーか、私に関係ないところでなら幾らでもやってくれていいって言いますか。ともかく。

 私にとって問題なのは、そのマシーンがどうたら言うことではなく。

 

「――で、なんでそんな代物のことを私なんかに見せたりするんです? 一応は機密でしょう? ソレって。

 だとしたら一般学生でしかなく、専用機もろくに持ってない私には見せる価値まったくない相手なんじゃないかな・・・と自分でも思われるのですがね」

「うむ、それはだな異住。お前には、このマシーンの使用実験者を担ってもらうためだ。

 マシーンの機能を活かして、お前のような問題児の人格改善プログラムに使えるかどうかをテストするのが、今回の実験の趣旨なのだ」

「・・・・・・・・・」

 

 担任教師にして、一応は元同級生で男友達みたいな関係にある相手の実姉から与えられるヒッデェー評価。

 小学校時代の「あゆみ」でも、ここまでヒドい言葉でぶたれた事ないですのに~。

 

「お前はいくら何でも捻くれすぎている! 可愛げというものが、ほとんどない!

 それでは今後の社会生活に支障が出る恐れがあるだろう。治せるときに治しておいた方が良いと、私は以前より常々思っていたのだが・・・・・・ちょうどいい機械が来たのだから使わない手はなかろう?」

「そこまで言いますか、私のクラス担任の先生視点から見た評価的に・・・」

 

 ジト目で、教え子の指導に責任持ってるはずの役職にある人を見つめ返した私でしたが、残念ながら相手の方には気づいてもらえず、変わって机の中から取り出したるは―――なんかケバケバしい装飾の妙な薄いパッケージ。

 

 

『マジカル学園☆ラブ&ビースト』

 

 

 どっかのCMで見たことある気がするタイトルらしきロゴが書かれた、その薄めの箱はってオイ、ひょっとしなくてもソレってもしかして―――

 

「何よりお前には、級友を思いやり、助け合いと絆を尊ぶ精神が足りていない。自分の力と頭脳だけで全ての問題を解決しうると信じすぎている。

 だからこそ、貴様にはコレが必要だと思ったのだ。

 ワールド・パージによって、この物語世界の登場キャラクターとなって、相手の気持ちを考え、傷つけないよう適切な言葉を選び技能を学び、対等な友人たちと助け合いながら力を合わせ、普通の女子学生として絆を育む・・・・・・素晴らしい設定だと思ったのだ。

 それこそがお前に足りていない、人として最も必要な精神的素養だと確信したほどに」

「いやあの・・・間違った解釈じゃないですけど、多分それ先生が求めてるのとは微妙に内訳違ってるタイプでは・・・・・・・っていうか先生、そのゲームが一体どういうジャンルか分かって――」

「この――なんだ? 『乙女芸夢』とやらいう、学園青春ものの物語世界で、共に学友たちと汗を流し、グラウンドを駆け回って絆の大切さを学んで、一回り大きくなったお前との再会できることを私は楽しみにしているぞ、異住・・・」

 

 ダメじゃん!? 全然正しく理解してないじゃないですか!

 乙女ゲームについて全く分かってないまま、上っ面の説明だけ見て分かった気になって使用しちゃう無理解な大人の典型パターンやっちゃってんじゃないですかこの人って!?

 乙女ゲームは、昭和のスポコン学園ドラマじゃないんです! 学園内での恋愛で青春は飛び出さないんです! だから辞めてください!?

 

「ま、待ってください織斑先生。マシーンの被検体になることは100歩譲って、このさい受け入れざるを得ないと諦めてしまっていいですから、せめてパージする先の物語選定基準だけは再度の検討をお願いしたく―――って、押さないで!? マシーンに入れるため押さないで下さいってば! パージさせるため押さえつけないで!?

 絶対イヤな予感しかしない想定での楽観論に基づく見切り発車の問題解決策はやめ―――って言うか、オルコットさんたちまで何故そこに!?

 謀りましたね! 謀りましたねオルコットさんと鈴さ~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・・そこで本来の自分の記憶は途切れ、気がついた時には今の身体で地面に倒れ伏して空を見上げていた。

 一連の流れから見て、これは異世界転生という現象とは考えにくい。どちらかと言えばフルダイブ等の近未来VRゲーム世界に閉じ込められての《SAO》的な現象だと解釈した方が整合性が取りやすい程に。

 そう考えた方が、現在の身体と本来の自分とのミスマッチさにも納得がいく。

 

 今の異住セレニアの見た目は―――いや、グレイス・オーヴェルヌの容姿は公爵令嬢という身分に相応しいスペックを持つ肉体へと変化して、システムの機能によってか完全に動きがマッチするように出来ている。

 

 髪型は同級生のイギリス令嬢にして代表候補セシリア・オルコットによく似た、所謂ドリルヘアーの長い金髪巻き毛ロング。

 目つきは悪く、別クラスの同級生で中学が同じだった中国代表候補の凰鈴音と同じぐらいに睨みつけるみたいに見るのがデフォルトになっている。

 

 他にも、表情が硬くて強面みたいにキツいままを維持しやすいところは、学園で唯一の男子生徒に分かりやすくツンデレ純愛しているらしき篠ノ之箒に近いと言えなくもなく、眉が少し太めで角度が急なのは・・・・・・敵勢力にそんな人を見たことある気がする。名前覚えてないけれども、敵だったから。

 

 胸のデカさの部分は―――ノーコメントで。

 本来の自分と比べてどうかとか考えたくない事情持ちな女の子にとっては深刻な問題であり、今の方が小さかったら微妙な気分になりすぎて死にたくなってきそうだから敢えて考えないで辞めておく。 

 

「・・・で、私これから何して、どう動けばいいんでしょうね? こういう場合って・・・・・・」

 

 見た感じからしても今の自分、グレイス・オーヴェルヌ公爵令嬢という少女の肉体は、おそらく120パーセント近い確率で乙女ゲーム世界では《悪役令嬢》という役割を設定されてるタイプのキャラクターの一人と見て間違いなかろう。

 織斑先生が最後に示してきたパッケージロゴからして、この世界が乙女ゲーを土台にしたバーチャルリアリティで出来ているであろう事は予想に難くない。

 

 乙女ゲーというジャンルの基準で考えても、このような見た目をもった女の子が主人公という可能性は高くなく、それなり以上に見た目は良い点からして、モブキャラや主人公の友人キャラというほどでは多分ない、今の姿。

 

 主人公以上に見た目のいい美少女たちが大量に登場しまくる乙女ゲーというのは、ジャンル間違えてる気がするし、購買層が違うし、ギャルゲー行けギャルゲーにと素直に勧めたくなってくる。

 

 ・・・・・・となると困るのは、『今の自分は何をすればいいのか?』という点にならざるを得ない。

 だって悪役令嬢だし。

 普段の日常パートが想像しづらい人が多いのが『悪役』と呼ばれる方々であり、いまいち何やって日々を過ごしてるのか、よく分からん。

 

 何よりセレニアは、RPGやS・RPGが好きなジャンルでSLGやAVGもそれなりにプレイするものの、もっぱら歴史IFを描いた伝記物や泣きゲー、ギャルゲー等がメインであって、乙女ゲーに関しては昔の知り合いに好きなヤツがいた―――という程度の浅学な知識しか持ち合わせていない、所謂「TS転生者」と呼ばれる元男の子だった前世をもつ現少女なので領分ではまったくない。

 

「ま、まぁ多分、大丈夫でしょう。

 こういうのは大抵、普段の自分がやってる通りに動けば、身体の方が勝手に肉体の持ち主に合わせたモーションに変更してくれる自動翻訳装置みたいな機能がついてるものですし。

 中身が私に変わっていることが原因で起こる異常とかのイベントは、勝手に避けてもらえるはず・・・・・・大丈夫大丈夫、これはフラグ台詞じゃないから多分ダイジョウブ・・・・・・」

 

 少しだけ青い顔色をしながら、そんなことを一人呟くグレイス・オーヴェルヌ公爵令嬢、いや中の人セレニアちゃん。

 わざわざ自分で言っちゃってる辺り、薄々自分でも無理そうだとは自覚してるみたいで結構なことである。諦めがいいのは悪いことでは必ずしも無いことだし。

 

 そんな風に思い悩み始めた時だった。

 

 

 ―――コンコン。

 

 部屋の扉がノックされ、外から声をかけながら恐る恐るといった調子で、ゆっくりと扉を開きながらメイド見習いの女の子――という記憶を肉体が覚えていた少女が、着替え用の衣服を手にしながら室内におずおずとした歩調で入室してきて、

 

「し、失礼します・・・・・・お、お嬢様。

 お着替えを、お持ちしました・・・・・・」

 

 

 

 ――パンッ!!

 

 

「な、何をやっているのジョゼット!

 別にあなたから着替えを届けてもらって、「ありがとう」などという感謝の気持ちなんて、全く感じてないんですからね!! 勘違いなさらないで下さいますかしら!?」

 

 

「え、ええぇぇーっ!?」

 

 

 

 ・・・・・・意味不明で目的も理由も完全に不明すぎるツンデレ怒鳴り声で返事を叫ばれて。

 着替えを運んできたら何故か、怒鳴られたのか感謝されたのか判断に難しい言葉を言われて、返事に困るしかなくなった猫耳っぽいモノ生やした小さな幼女メイドは・・・・・・

 

 

 パタン・・・と。

 うろたえ様を見せまくったままの表情から復帰することができないままに、ただ扉を閉めて逃げ出しただけ。

 いったい他になにが出来て、どんな反応をしろと言うのか、謎すぎる現象を前にした者としては妥当な対応だったと言えはしたのだが。

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・(ず~~~ん・・・・・・)」

 

 

 部屋に一人残されたセレニアが、自己嫌悪と恥ずかしさで死にたい思いを抱え込む羽目になったのは・・・・・・自業自得だからメイドの幼女が罪悪感を感じてやる必要性は多分ない。

 

 どーやら、この肉体。凄まじく半端にしか今の身体のゲームキャラらしい行動に変換してくれないらしい。

 見た目からしてツンデレっぽいキャラだなぁー、とは思っていたけれども。・・・・・・まさかここまで超王道過ぎてアホの域に達したツンデレ対応をしなくてもよいと思わずにはいられない・・・・・・。

 

 今の実家で休みを過ごす長期休暇が終われば、学校に通う日々が始まることを、肉体の知識として学園の生徒になるグレイス・オーヴェルヌは記憶している。

 彼女が持つ記憶はセレニアにも共有されるため、来期から始まる学園生活については多少思うところは持っていたのだが。

 

 

 ・・・・・・その不安が一気に増大しまくってしまった瞬間であった・・・。前途多難である。

 こうして、公爵令嬢グレイス・オーヴェルヌとして物語の舞台となる学校で過ごす日々が幕を開ける。

 

 グレイスとなったセレニアにとって、『マジカル学園☆ラブ&ビースト』の本編ストーリーが始まるのは、ここからなのだから!!

 

 

 

 ・・・・・・・・・本当に前途多難の4文字しか想像できない、壮大じゃない旅の始まりは、こうして幕を開けさせられる羽目になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、セレニアがグレイスとなって彼女の部屋で一人、自分の恥ずかしい言動を他人に見せまくってしまった羞恥で悶え苦しんでいたのと、ほぼ同じ頃。

 

 彼女とメイド見習いの幼女がいる場所から遙か遠く離れたところにある建造物の一室で。

 一人の少女が驚きの声と共に、ソレを見つめて叫び声を上げていた。

 

 

「ええっ!? 本当なんですの鈴さん! セレニアさんが、例のシステムに取り込まれて出てこれなくなった新たな犠牲者となってしまったというのは!?」

「セシリアか・・・・・・まっ、事実みたいね。コレ見た限りではの話だけど」

 

 息せき切って駆け込んできたイギリス貴族令嬢セシリア・オルコットの姿を振り返って一瞥した凰鈴音は、差ほどの驚いた様子も見せぬまま落ち着いた所作と対応で顎をしゃくって部屋の奥に鎮座しているマシーンと、それに付属している巨大モニターとを同時に指し示す。

 

 自分が最初に部屋へ飛び込んできた時、全く同じ反応していた同類ナカ~マだった事実は言わない。恥ずかしいしライバルに弱みを教える義理は微塵もねぇし。

 

 兎にも角にも、巨大モニターに映し出されている光景に視線をやると、そこには2人が見たことのない金髪ゴージャスなお嬢様キャラがどアップで映し出されており、画面の下半分近くを四角い囲いが表示されて、そこに文字が描かれ続けているのが見て取れる。

 

 どうやら画面ないに映っている人物たちが話す内容が、テロップのようにして文字表記されるシステムへと機能変更が計られているらしい。自分たちが先日使わされた時は実装されていなかったはずのシステムである。

 もちろん音声も流れてくるが、小声や細かい部分であっても聞き逃す心配はない利便性の向上は、この場合決して無駄ではないはず。

 

「こ、これがセレニアさん・・・ですか? 随分とイメージが違っているようにお見受けしますけど・・・・・・あ、でも名前の部分には確かに『グレイス(セレニア)』って書いてありますわね」

「そうなのよね~。あたし的にも正直眉唾だと最初は思ってたんだけど、そーいうシステムだって言われたらIS関連技術だと納得するしか道ないし。ホンットISってのは何でもありだと思うわ、本当に・・・・・・」

 

 盛大に溜息を吐き合いながら、昏々と眠り続けたまま目覚めることなきセレニアの意識が取り込まれたと思しきマシーンの中の光景を見つめ直す、イギリス代表候補のお嬢様と中国代表候補の合法ロリな二人の少女たち。

 

 相手の可愛らしい姿が見られるのではと思って期待して手伝い、・・・・・・あわよくば意識を飛ばすマシーンという機能を使って、自分への愛情を抱かせるよう誘導できたりしないかなとか算段していた自分たち自身の軽挙妄動が今となっては恨めしい。

 

 そんなの本当の愛じゃないとかの言葉を言ってきそうな一夏の反応だけなら気にするほどでもなかったし、どのみちナチュラルな現実の恋愛感情だけで誘導して抱かせた感情以上の愛し合う関係になることは現時点で確定している関係なのだから(注:一方的に。相手の了承は取ってない)

 今の時点でマシーンの力で、少しだけタイミングを早めるぐらいは問題ないだろうと思っていたのだが・・・・・・どうやら想定が甘すぎた報いを受けてしまったようだ。

 

「チッ・・・やはり外部の者の手を借りるべきではありませんでしたわね・・・。織斑先生も倉持技研も所詮は他人、頼るべき相手では最初からなかったのですわ」

「いい年してスクール水着着てるオバサンよりはマシだと思ったんだけどなぁ~。結局は外様に頼るとこんなもんよね、やっぱ外部が当てにならないわ外部は。

 信じられるのは相手を思いやる自分の気持ちだけって事ね」

 

 おそろしく自分本位な思いやる気持ちもあったものだが・・・・・・2人は自覚しなかった。恋する乙女は時に、盲目的で一直線。

 情け容赦は捨てて征くのが、恋愛女王への航路なり。

 

「ですが、そのセレニアさんを救い出すための手段として、何をやればいいんですのかしら?

 その、えっと・・・・・・お、乙女GAME?という電子遊戯に閉じ込められているのでしたわよね。その中の主人公ではなくヒロインでもなく悪役側の一人に・・・・・・その場合ってどうすれば宜しいのですかしら?」

「それなのよねー、問題なのは・・・。ヒロインになってる場合は、ゲームをクリアして物語を終わらせれば解放されるみたいだし、主人公だった場合も条件は同様。

 ・・・・・・ただ、ライバルキャラの悪役令嬢になってる場合には、どうすれば条件満たしたことになるのか、初めてのことで分からないって話なのよね。まったく、どうすればいいんだか・・・」

 

 深々と溜息を付き合う2人。

 ライバルである悪役令嬢にとっては、物語が本来のエンディングを迎えることは、自分の妨害工作が失敗して主人公と相手役の少年が結ばれてハッピーエンドを迎えた状態を意味することになる・・・・・・と予想されるのだが、如何せん。

 

 そもそも主人公が、どの攻略対象の男の子を選んで攻略するのかが、部外者である自分たちには予測することが出来ない。

 悪役令嬢の行動が成功することは、主人公と相手との恋愛が失敗することを意味してしまうため帰れなくなるので却下。

 

 ・・・・・・身動きが取れない状況へと追いやってしまった状態で、セレニアは乙女ゲーム世界に囚われてしまっていたようだった。本人が想ってるより自体は結構ややこしそう。

 

 と、セシリアが何かに気付いて画面を指差し、鈴の名を声高に呼ぶ声が聞こえた。

 

「あ! 鈴さん鈴さん、なにか画面に動きがありましたわよ! いったい何なのです!? アレは!」

「え!? どれどれ・・・あ~、これは『選択肢』ね。この内のどれかを選んで正解を当てればいいのよ、そうすれば最終的なクリアに繋がるって寸法の代物だから」

「そ、そうなんですの? ですが・・・そうだとしたら、わたくしの出番ですわね!

 このイギリス貴族令嬢セシリア・オルコットが、英国社交界で鍛え上げた海千山千の社交技術で、見事セレニアさんが乗り移っているという公爵令嬢を完璧なる淑女へと誘導してご覧に入れます!!」

 

 意気揚々とコントローラを握りしめ、画面に映っている選択肢と、その中から選んだ行動を返してもらえる―――オズオズとした態度で、あざとい猫耳を頭に生やした、母性本能をくすぐりそうなロリッ娘メイド少女のグラフィックを見つめ返しながら。

 

 そんな、あざと可愛い容姿と、どっかの転生者っぽいドイツ軍人が普段からやってる行動を連想してしまいながら。

 

 

 

 

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

 

 

 

 

 彼女はコントローラーっぽい操作ボタンを押す。

 ポチッ、となと。

 

 

 

 

 

『な、何をやっているのジョゼット!

 別にあなたから着替えを届けてもらって、「ありがとう」などという感謝の気持ちなんて、全く感じてないんですからね!! 勘違いなさらないで下さいますかしら!?』

 

 

 

 

 そして自らが選んだ行動と結果を眺めやり、深い満足感と共に安堵の息を吐く。

 ・・・・・・たとえ愛する人が自分たちの元へ戻ってくるためであろうとも、『別の女』に色目を使われることは愉快じゃない。邪魔したくなる。

 それが本気で誰かを愛した女の情というモノだと、この二人は信じ貫くタイプであるが故に。

 

 

 想いを寄せる相手が自分たちの元に返ってきて欲しいが、その為に別の女と仲良くなるのはNTRされた気分になって、なんかイラつく。

 本気で前途多難すぎるゲーム攻略が始められていたことを、ゲームの中から外が見れなくなったセレニア本人はまだ知らない。

 

 

 そんな乙女ゲーマー心(注・一部の人たちの意見。総意ではないものだけを指す)を尊ぶ少女たち2人と、ゲームの中に閉じ込められた想われ人側のTS転生者の憑依体による恋物語みたいなナニカは、こうして始まりのプロローグ部分を迎える事になるのであったとさ。

 

 めでたいのか、めでたくないかは、まだ分からん。

 BADになるときゃなるのが乙女ゲー世界故に。

 

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