原作3巻、アニメ版第一期最終章の『VS銀の福音』で一夏が昏睡状態に陥ったのは自分のせいだと自責している箒に鈴が発破かけるシーンを、
『俺ガイル』文化祭でのラスト近くで相模に八幡が毒吐きまくってたシーンを重ね合わせたお話です。
やっつけ仕事で書いて送ってみたら意外と高評価を受けてしまい、どっちの雰囲気で新作書いたらいいのか分からなくなったので筆が進まず、皆様方にもご意見を伺いたいと思い投稿してみました。
宜しければ感想もしくは思う所を書いていただけると本気で助かります。
旅館のベッドに横たわったまま、三時間を目を覚まさない一夏。
その彼を悲痛な面もちで見下ろしたまま身動ぎすらしない箒。
(私は・・・どうして、いつも・・・・・・)
胸に過ぎるのは悔恨の念。
いつも、力を手に入れるとそれに流されてしまう。
それを使いたくて仕方がない。
わき起こる暴力への衝動を、どうしてもか抑えられない瞬間がある。
(なんのために修行をして・・・・・・!)
ーーリミッター。
自らの暴力を押さえ込むための、抑止力。
けれど・・・それは非常に危うい境界線なのだと思い知る。
薄い氷の膜のように、ほんのわずかな重みで壊れてしまう。
(私はもう・・・・・・ISには・・・・・・)
一つの決心をつけようとした時に、背後で静かにドアが開けられる音がした。
それは箒には壊れて歪んで軋しみ上げる心の音と重なって聞こえ、IS学園生の宿泊用に取り替えられたばかりのドアを開ける音でありながら、錆び付いて立て付けの悪くなった扉を開いた時のように、ぎっと大きく鳴る幻聴として鼓膜に響く。
「働かずに高級旅館泊まれるって、美味しい特権だよな」
音源へと振り向いた箒が見たのは一人の少年、比企谷八幡。
世界で初めて男性操縦者の実在が確認されたことで、世界中が『世界で二番目』を探しだし、ようやく見つかった“元”三番目。
本来の二番目であったシャルロットが実は女であったことが発覚した今では晴れて世界で二番目に繰り上げ昇格された少年であり、一夏たちと同じ専用機持ち。
「・・・・・・比企谷か。何のようだ」
「デカい。態度がデカい、自分から仕事辞めるつもりのエリートニートは身の程を弁えてー。
俺、学生なのに国防まで押し付けられた勤労少年よ、誰かさんのお陰で只でさえ少ない戦力減らされて余計な雑務まで手伝わされてる可哀想な可哀想なブラック企業の下っ端社員。ってか、 IS学園にもあったんだな記録雑務係って。初めて知ったわ、チョー意外だったー」
「・・・何のようだと聞いている!」
只でさえ神経が逆立っている中で聞かされた長広舌に、暴力衝動からの余韻が覚めやらない箒は声を荒げるが、対する比企谷はよりいっそう瞳を腐らせただけで全く答えた様子を見せない。
むしろ、相手の内側を見抜いたかのように「はっ」とせせら笑ってさえ見せてきた。
「ーーーっ!!!」
カッとなって、思わず箒は相手の胸倉を掴み上げてやるために接近しようと足を上げかける。
するとーー
「はぁぁぁぁぁぁ~~~~~・・・・・・」
盛大なため息。呆れて物も言えない、救いようがない。本当にバカだな、このアホ女は。
そんな心の声が聞こえてきそうなほど露骨に、最低に陰湿に。真っ正面から卑屈な視線で堂々と見下しているかのような腐った視線と言葉の刃を投げかけられた箒は、上げたばかりの片足を降ろして、思わず後ずさってしまうほどに気圧されてしまった。
今まで箒が見たことも聞いたこともない、圧倒的な悪意と劣等感、卑屈なまでの陰惨さが、ひねくれ者の形を取って今、彼女の前に立ちふさがっていた。
「篠ノ之、お前って本当に最低な奴だったんだな。見損なったよ。・・・いや、はじめから俺はお前に何一つ期待なんてしてこなかったけどな」
「な・・・」
「お前は結局、誰かに見てもらいたいだけなんだろ? 誰でもいいから自分を、自分だけを見てくれる奴が欲しいだけなんだろ? 構って欲しくて、自分の本質を見てもらいたくって力を示したいだけなんだろう?
今だって、慰めの言葉を誰かに言ってもらいたいだけなんだろうが。それなのに、言ってくれないから『ISなんかもう乗らない』ってガキみたいな駄々こねて見せてるだけなんだろうが」
「なにを・・・貴様は何を言っている! 私は・・・私はただ・・・!」」
「ただ、『一夏たちと同じ高見にたちたかった』か・・・?
あんな風に特別機を与えられて、周りにいる誰もから見てもらえて邪険にされないし見下されない、『姉のような特別な存在に』なることで、自分も織斑たちと同じ国家代表候補と同じスタート地点に立つことが出来る。
自分が他の奴らよりも劣っているのは専用機を持ってるかどうかだけだ、専用機さえ有れば自分は奴らと同等に戦える。アイツらと同じ戦場に立てば、アイツらと同じように織斑の隣で肩を並べて戦うことさえ出来たならアイツは再び自分の元へと帰ってきてくれる・・・。
そう思ったから、インスタントに姉を頼って手っ取り早く専用機を手に入れた。強さを基準にして人間関係を計り、専用機を手に入れて強くなることで他の誰かに格下のレッテルを貼って、見下すことで織斑の中で自分が上位に居続けていることを確認したかった。
・・・・・・それがお前の言う、『強さ』の正体だ」
「・・・・・・」
「みんな多分、気づいてないだろうがな。お前の気持ちなんか誰も理解してないし、使用とも思っていない。
ーーはっ、『知らないことは存在しない』なら、誰も皆が知ろうとしてないことなら自分一人が目を逸らしてる罪悪感なんか感じる必要ないわけだもんな。分かるよ、その気持ち。俺にも同じ気持ちぐらいはあるからな」
「比企谷・・・貴様などと一緒にするな下郎めが!」
「同じだよ。最低辺の世界の住人だ。
よく考えろよ、お前の気持ちに織斑が気づいてたことが一度だけでも存在してたか? 周りにいる連中が一夏の隣にいない時のお前に話しかけてきたことなんてあったか? 『白騎士事件』以降、篠ノ之束の妹である以外に、お前の価値が誰かに認めてもらえた経験を一度だけでいい、してもらえたことがあったのか?」
「・・・!!!」
「お前の言う、暴力性とやらの正体はそれだ。単なる欲求不満なんだよ。誰でもいいから、ムシャクシャしてるから、我慢してきたから殴ってやりたいボコってやりたい殺してやりたい。
『私が本気出せばお前ら片手だけで殺せるのに我慢してやってるんだ、感謝しろ』・・・そんなチッポケな自尊心の守り方をいい年してやってたガキが、背丈と態度と声だけデカくなっただけで恋人欲しがれるんだから、本当にいい世の中にしてくれたもんだよなー、お前の姉ちゃんは」
「・・・・・・~~~~~っ!!!!!!」
「お前らってさぁ・・・ひょっとしなくても滅茶苦茶仲良いんじゃねぇの? こんなにも『弱くて他人任せの妹』のために、都合よく住みやすい社会を作ってくれたんだからsーー」
言葉を最後まで言わせず、泣きながら八幡の頬に平手打ちを食らわしてやってから箒は駆け出す。見返すために。見事、銀の福音を倒して、今の言葉を撤回させてやるために。ただただ自分自身の名誉と尊厳、それのみを取り戻すために!
「・・・・・・お~、痛て。戦闘で手伝ってやるんだから、もう少し手加減ぐらいして欲しいもんだよなー」
赤くなった頬に手を当てながらひとりごちる、部屋に取り残された八幡は、「ぷるるる!」と鳴った携帯電話を手に取り耳に当てる。
「もしもsーー」
「モスモスー! みんな大好きで大嫌いな束さんだよーっ! ハロハロー♪ はち君、元気してたー? ・・・って、同じ旅館でさっきあったばっかりだったよね! メンゴメンゴ、ゴッツンコ♪」
「・・・・・・切っていいですか?」
「やぁ~ん、こわーい♪ つめたーい♪ はち君のイケズ~♪ あんまり冷たくすると~、束さん拗ねちゃうぞ☆ 拗ねてヘソ曲げてガキみたいに駄々こねて核ミサイルの雨嵐を日本中に降らさせまくっちゃおっかなー♪」
「・・・すんません、マジ勘弁してください。小町とかいるところに落とされでもしたら死んでしまいます。主に妹を失って寂しくなった俺が」
「あははは~♪ あいかわらず妹思いだねーはち君は♪ ・・・だから君にだけは私の本心が見透かされちゃってたのかな?」
「・・・・・・」
「傲慢で自尊心に満ちあふれてて、他人を平気で利用しながら黒幕気取って道化を演じてーーでも、その実、表に出てきたことなんて数えるほどしかない。裏側でコソコソ策謀練るしか脳がない、他人を操り見下して、結局自分自身は何もしない。
そんな風に汚い自分が大好きで、そんな風に汚い糞野郎なんだと自覚させられるのが大嫌い。
それが私、天災科学者篠ノ之束の正体でござ~い♪ ま・さ・に! はち君のご明察どーり! パンパカパンツ~☆」
「・・・・・・」
「・・・そうだよ、はち君。人は強くなんてないし、弱い弱い糞みたいに弱々しい心しか持ち合わせてない吐きゲを催もたらほど汚らしい心の持ち主たちばっかりなんだよ。
だから綺麗なのにあこがれるんだよ。だから綺麗な場所に行きたくなるんだよ。だから糞ばかりの所に居続けるのが辛くて辛くて苦しくて・・・逃げ出したくなってしまうんだよ・・・」
「・・・・・・」
「束さんは此処にいる・・・。いつまでもいつまもでも暗い暗い穴の底から上の方を見上げてる。私よりも低い位置から、上から目線で見下してくるバカどもを見下しながら見上げ続けてる。いつか誰かに引きずり上げてもらえる日を夢見るだけで、自らは何もしないし出来ない、する勇気なんか持ち合わせてない臆病ウサギで居続ける」
「・・・・・・」
「いつかきっと拾ってくれる王子様が現れるまで、ウサギはいつまでもいつまでも穴の中で待ち続けるだけ。
不思議の国に行ったアリスは、本当のホントは夢の中。自分の作った妄想世界で夢見ているだけの馬鹿ウサギ~♪ クソッタレな世の中からは夢の中へと大脱出~♪ 夢への逃避はIS要らず他人要らず、ただただ自分一人の被害妄想だけで事足りま~す」
「・・・・・・」
「それじゃあ、バイバイはち君。また今度にね。敗北主義者の臆病ウサギ姉妹の長女より。チュッ」