正直ネタも出し尽した感があり、新しいストーリーも思いつかくなって久しい作者のIS二次作でしたので……もう割り切って、前から思ってたネタを自制せずに思い切ってやって書いてみた次第(最近ヤケクソ気味)
八月のお盆週。その週末に私、篠ノ之箒はとある神社に行くことになる。
とある神社、というか・・・・・・私の生家である篠ノ之神社にだ。転校する前の子供時代に暮らしていた家でもある。
幼いころの一夏と共に学んだ、板張りの剣術道場は今でも昔のまま、聞くところによると定年退職した警察官の方が善意で剣道教室を開いてくれているらしい。
剣は、礼に始まり礼に終わる。その教え通りを自然に実践できるようになるため、子供たちに自分が使う道具の手入れと道場の掃除とをさせているとのことだが、素晴らしい考えだと思う。
(今では結構な数の教え子達もいるようだしな。
昔は、私と千冬さんと、それに一夏だけだったが・・・・・・)
そう考え、壁に掛かっていた木製名札に記されていた名前とともに、少しだけ昔の思い出に浸りたい郷愁に駆られてしまう・・・・・・
『今日は俺が勝つ! だあああっ!!』
『ふん』
べしっ! ぐしゃっ!!
『あ、明日は俺が勝つ!』
べししっ!! ぐっしゃぁぁ!!!
『あ、明日こそは・・・! 明日こそは絶対に勝つ!
俺は・・・俺は・・・俺は負けないぃぃぃっ!!』
『ふん。その明日とやらは、いつ来るのだろうな? この俗物ッ!!』
・・・・・・あれ?
い、いやいや待て待て、私はここまで愛想の悪すぎる子供ではなかった。なかったはずだ。・・・なかったよな?
いかん。夏合宿でいろいろあったことが原因なのか、微妙に記憶が混在して、無かったことがあったような気がしたり、あったことを無かったように思ってしまっているような、そんな気がしてきた・・・。
と言うより、剣以外の思い出はなにかなかったろうか? もう少し、こう、いい感じに甘酸っぱい出会いと別れの物語的な記憶があったはず―――
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「ま、まぁ過去に自分の全てがある訳でもないのだし、人は前を見て生きねばならない。大事なのは未来であって、過去ではない。
その程度のこと今更に気づくとは、私も未熟だ・・・フッ」
そう思い、時を経て曖昧になり信憑性の低下した思い出探しという不毛な作業を中断し、私は制服の胸ポケットから生徒手帳を取り出すと、そこに挟んでおいた『形ある過去の思い出の証拠』をそっと覗く。
―――剣道着を着た、一夏と私が二人で・・・・・・“二人だけ”で写っている思い出のツーショット写真を・・・♡
その写真を大切な思い出の1ページとして胸の中へと、ギュッと抱きしめて―――なんとなく綺麗な思い出の両端になんかいたような気がする記憶は、信憑性なくなった曖昧な過去の出来事なので無かったことにするとして。
それはともかく。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・暑い」
ミーン、ミンミン、ミーン。
ジワジワ、ジューワジュワ。
窓の外から響いてくる、セミだかカワセミだかの鳴き声を大合唱を聞かされながら、私は夏休み中も規律正しい生活を送るため着用している制服の暑っ苦しさに些か以上のイライラを感じさせられながら、日課の素振りを終えて寮の自室へと戻っている最中にある・・・。
先程まで、子供時代の剣術修業エピソードを思い出していたのも、それが絡んでの郷愁によるものだった。
現実逃避したかったからでは決してない。断じて違う。私は逃げない、立ち向かう。・・・・・・だが、暑い・・・・・・。
基本的に、朝の習慣としての素振りを欠かしたことのない日本生まれ日本育ちの日本人な私だが、まとわりつく汗と熱気と暑苦しさまでは流石に気持ちいいと呼べるものではなくなってきている昨今だった。
夏休みが始まる前の7月までは、まだ良かった。
だが7月が終わって8月に入り、日に日に気温が上がり続けていく季節へと突入した今となっては、噴き出す汗の量と蒸し暑さばかりが気になってしまい、他のことに全く集中できん・・・。
「く・・・っ、私もまだ未熟だ・・・心頭滅却すれば火もまた涼しの境地に至ることが未だ出来ていないのだから・・・ッ。・・・・・・しかし、暑い。暑すぎる・・・・・・」
明らかに年々、平均気温が上がり続けているとしか思えなくなって久しい日本の夏。
IS技術の普及でエコ設備なども充実し、一時期は文明社会の発展が自然環境を破壊し尽くすことはなくなったと騒いでいたテレビニュースの映像も、今となっては疑わしい限り。
やはり人類の技術上昇による弊害は、多少の新技術程度では自然と共存できるほどにはならないもので、地球が保たんときが来ていることを何故わからないのだア―――暑さのせいでよく分からない思考をするようになってきてしまった気がする。
早く部屋に戻ってクーラーで涼まないと危険かもしれん・・・・・・
「お、おのれ・・・・・・やはり夏の朝練ぐらいは薄着姿で移動するようにすべきだろうか・・・? いやだが、それをするのは自らを律する規律というものが・・・・・・ううぅぅ・・・」
生徒達ごとに割り当てられた室内はともかく、廊下にはクーラーのない寮の内部を歩きながら、私には今のところ呻く以外にできることが何もない・・・。
世界中から生徒達が集まってきているIS学園では、夏休みになると学園生の半分近くは母国にある実家へ帰省している。
だが私には、生まれ育った生家は近くにあっても帰る許可が下りづらい。一時帰省だけなら可能だが、長期になると話は変わる。
今年もまた、お盆週の週末ぐらいしか生家で過ごすことは許されないのだろう・・・・・・そう思うと悲しさと寂しさと、そして――姉に対する複雑な感情が再熱せざるを得なくなってくるのだが・・・・・・今は考えるのを止めておこう。暑いし。
それに―――と私は思う。
確かに色々とイヤな思いをさせられた姉とISとの因縁がある私だが、イヤなことばかりしか起きていない、という訳でもない。
その理由の一つが、今のIS学園寮には夏休みになった今も残り続けている。
それは――
『い、一夏ってさ。あんた、夏休みなのにどこにも行かないわけ?』
『ん? う~ん、そう言われるとどっかに行きたくなるなぁ』
『そ、そうでしょ? そう思うでしょ!? だ、だったらしょうがないわね、このあたしが融通利かせてあげるわよ~♪ アハッ☆』
「むむっ!? この声と気配は―――ヤツか!!」
微かに聞こえてきた、二人の人物たちの話し声を耳にした瞬間!
私の中から暑さなどという甘えた心は幻のように消え去り、瞬時にして摺り足で目当ての番号が記された部屋の前まで急速接近して、扉に耳を密着させて聞き耳を立てるッ。
『鈴が融通ねぇ・・・・・・どうせ金取るんだろ?』
『あ、あったり前でしょ? あのねぇ、遊び場を都合してもらって金も払わないってどんな図々しさよ、まったく。ほら、コレ。今月できたばっかのウォーターワールドの前売り券』
『そうか。で、いつ行くんだ?』
『い!? ・・・い、行くの? 本当に・・・・・・?』
『?? その為に持ってきたんだろう?』
『そ、そうだけどぉ・・・・・・でもその、いざとなったら心の準備が、えっとぉ・・・♡』
そうして耳を傾けている私に、扉の向こう側から聞こえてくる一方的に一夏へ向けた好意が丸分かりな甘い声音での語り口調――ええい! 相変わらず、あざとい女め!
この強気で偉そうな喋り方とは裏腹に、甘酸っぱさに満ち満ちた内心を半端に隠そうとしている、如何にも『盛りの付いたメスの声』は間違いない!
――鈴だ! 中国代表候補の凰鈴音!!
奴め、夏休みになっても母国に帰省することなく学園寮内に残っているとは聞いていたが、今まで姿を現すことが少なかったので大人しくしていると思っていたのに、ここに来て本性と馬脚を現すとは!!
確かにヤツとは、夏合宿の折には一夏を打ち落とした怨敵シルバリオ・ゴスペルを討つため力を合わせて共闘した仲ではあるッ。
共に背中を預け合った戦友同士としての記憶を忘れたわけではない・・・・・・無いのだが、それはそれ! これはこれだ!
こと恋愛という名の闘争において、敵への義理立てや情けは、我が身の為にも敵の為にも成らぬもの!
情け容赦なく全身全霊で相手を叩きのめし、その次に再起したときも、そのまた次に再起したときも、完膚なきまでに再起不能としなければならないのがデートという名の戦争なのだと私は学んだ!!
あの恋愛小説の主人公も、あの歴史小説のヒロインも、皆そう言っていたから間違いない! 恋愛とは戦争であり陣取り合戦!
合戦である以上は、仕掛けたからには確実に討ち取らねば!! 今そこに一夏の部屋の中で敵が一夏のハートに恋の弓矢を射ようと狙いを定めているからには、止めに入るため乱入するのが武士の道!
『で、いくらなんだよ?』
『さ――二千五百円よ』
『・・・・・・高くないか?』
『ヤならいいのよ? 別に、一夏以外にも買い手はいるんだし、他のヤツに売ったって』
『そうだなぁ・・・ま、いいや。買った。せっかくプール行けるチャンスだし、出来たばっかの前売り券なら混んでないだろうしな』
・・・・・・中国から男あさりに来た雌が、雌らしい声の出し方で一夏を、年若い男女たちが薄着でふれ合う地へと誘惑する声が響き続けている・・・・・・。
おのれ! 中国からきた雌め・・・パンダの雌めが!
パンダなら中国の山奥に帰っていればよいものを、人様の国までやってきて人の幼馴染みをハレンチ極まる場所へと誘惑するとは! もはや許せぬ!
だが敢えて、私は一夏の部屋へと背を向けて、自分の自室への歩みを再開させる道を選ぶことになる。
「ふふふ・・・・・・だが残念だったな凰鈴音。今回は貴様の敗けだ。
私には既に――勝因となる切り札が確保されているのだから」
勝利を信じるに足る根拠を手にしていた私は、相手の話を盗み聞いたことで勝利の確信にまで自信を深める結果をもたらし、余裕と共に今日を終えることが出来そうだったからだ。
何故なら、私の自室の机の引き出しには―――今月できたばかりのウォーターワールド前売り券があるからだった!
今月分はすでに完売していたものを、クラスメイトの一人がキャンセル品を買い取って欲しくて困っているという話を偶然にも耳にしたことから手に入れてしまったプレミアムチケットがである!
売り手が困っていただけあり、このチケットが使えるのは明日の土曜日までが期限という代物。
フフフ・・・おそらく奴が提示したのは、あの自信満々な話しぶりからして、貸し切りに近い状態になれる日用の特別チケットに違いない。
きっと代表候補としての地位をチラつかせることで用意させたものなのだろう――その余裕が仇となる!!
「今日中に私が偶然をよそおい、一夏を同じ場所へ涼みにいくよう誘ったとしても、日時さえ違っているなら競い合いと思われる恐れはない!!
ふふふ、悪く思うな凰。すべては都合良く前売りのキャンセル券を売ってくれるクラスメイトと同じ組に配属されなかった、お前のクラス運が悪いのだから!!」
1年1組に配属されていたからこそ、偶然にも一緒のクラスになれた、今まで余り話したことのない――え~と、そう、名も知らぬ女子生徒よ! ありがとう! 心から感謝している!
1年2組に、専用機持ちの代表候補生で唯一の仲間はずれになった中国パンダ娘に後れを取らなかったのは彼女のおかげだ!!
「剣の道を生きる者として、正直、その・・・・・・恥じらいが無いわけではないが・・・・・・何もせぬまま日を送れば、敵手が網を張ったときへ至ることが確定されてしまった以上、もはや猶予はない。
先手必勝! 私は・・・覚悟を決めて、戦(デート)の鬼となる―――ッ!!!」
私はそう思い、寮の廊下を自信と共に歩んでいく。
夏休みの一件で、勇気と想いを新たにした今の私に、もはや恐れる心は――無いッ!!
いざ行かん! 一夏よ、私たちのデートを始めに征くぞッ!!!!
こうして、その結果のプールでのデート当日となり。
「でっけぇかな! でっけぇかな!! 見たまえ、織斑くん!!
ウォーターワールドという名に相応しき、人食い鮫とモーターボート海賊と最後に生き残った人類たちが争い合い小島統一の旗を掲げ合う、戦国乱世のワンダーランドが再現され、赤く燃えて見えておるようではないかァァァァァァァッ!!!!!」
『『な・ん・で!!
アンタ(お前)がここにいるのだ!?(のよ!?)ハイド―――ッ!!!』』
真夏よりも暑っ苦しいテンションの奴が、一夏と一緒に並んで何故かプール前にきて建物を指さし示すポーズを取っていた!!
いや、中国のパンダ娘もいたのだが! そっちも十分に驚きで邪魔なのだが!!
それが気にならなくなるほど鬱陶しくなるぐらいの熱さと暑苦しすぎる知り合いが来ている理由の方が、私には全く分からない!?
「一夏! 説明しろ! なんだコレは!? なんでコレが今日この場に来ている!?」
「そうよそうよ! なんでコイツがアンタと一緒にプール来てんのよ!? ・・・・・・事と次第によっては覚悟した上でやったコトなんでしょうね・・・? ア?」
「ま、待て二人とも。ちゃんと説明するから落ち着け。特に鈴は落ちつくんだ、話せば分かる。話せば分かるから、まず右手を・・・な?」
「フゥ~~・・・っ! フゥ~~~・・・・・・ッ!! フゥ~~~~~ッッ!!!」
思わず興奮するあまり人語を忘れかけるほどの醜態をさらしている凰だったが・・・・・・ライバルが醜態さらす分には問題あるまい。
思いは同じでもあることだし、どんどんやって、どんどん言うがいい凰よ。
「あー、いや、そのだな。なんか山田先生が書類見落としてたとかどーだかで、今日の朝に白式の元々の開発室から研究員が来てたらしいんだよ。それで、ほら。
先月に海で第二形態になっただろ? だから改めてデータが欲しいってことで、今日は一日潰れて約束もキャンセルするしかなくなった――はずだったんだが・・・・・・」
「・・・・・・だが?」
「ハイドが、二世代機のコア使ってセカンド・シフト出来たって聞いたから見せたら度肝抜かしちゃって」
『『あ、あ~・・・』』
「それで、いい気になったハイドが、接近戦用の第一形態と、射撃用の第二形態にいつでも切り替えれるって言って、やって見せたら今度は腰抜かしたみたいで」
『『あ~~・・・・・・』』
「んで結果的にドクターストップかかって、研究員の人が今日のデータ取り無理だからって言われて。
それで鈴や箒達との約束守れそうだったから、急いでくる途中でコイツと会って一緒に来たんだ。それだけ」
「あ~・・・・・・なるほど。そうゆうことか・・・・・・チッ」
「――いやちょっと待て一夏!? 私は凰と一緒という話も聞いていないのだが!?」
「ん? いや言ったぞ? 箒から誘われたとき、『鈴と同じ日なんだな』って思ったからさ。ひょっとして聞こえてなかったか」
「う、ぐ・・・・・・うぬぅ・・・」
な、なんという不幸なる偶然の連続に次ぐ連続・・・。
いや、話を聞いた限りでは本来、今日の一夏の予定はデータ取りとやらで潰れるところだったそうだから、それを避けられた点で幸運だったと思うべき所なのだろうか? いやしかし・・・。
苦悩する私を横目に、話を盗み聞きされていた事情を把握しているわけではないらしき凰は、別のことが気になっていたらしく、
「・・・ム~~・・・って言うかアンタ、なんでこの場所に来てんのよ? 別に用ないはずでしょ? なのに何で・・・」
「ん? 言われてみれば・・・確かに」
聞かされて始めて私も気になった部分だったが、ローゼンバッハは何故この場に来ているのだろうか?
一夏が言っていた話の中で、ヤツは騒ぎの中心人物ではあったようだが、プールには特に縁がありそうな部分は一つもなかったはず。一夏もくる途中で会ったと言っていたし、コイツが関係してくる理由が見出せない。
流石に、プレミアムチケット無しでは入場できないイベントに、無理やり入ろうとする程の碌でなしではないと思いたいのだが、いやしかし・・・・・・
私が半ば以上、真剣に同学年のクラスメイトの暴挙を止めるため引導を渡す手法について検討し始め欠けていたところで「ハッハッハ」と気楽そうな笑い声と共に事情を語る言葉が紡がれだし、
「いや何、諸君らが驚くのも無理はないが・・・・・・私もまた、人の子であったという事でな」
『『・・・・・・“ヒト”の・・・・・・子・・・』』
「うむ。実は今日このプールにて一つの行事が催される。
その取り仕切りを、我が懐かしき旧友が任されるという大任を賜ったと、招待状を受け取ったのだ。
久方ぶりに友との再会を祝し、過去の思い出を共に語り合いたいという郷愁に駆られた私は居ても立ってもいられることなく馳せ参じた。そういう次第」
懐かしい過去を振り返る視線で、落成したばかりで新品のプールを見上げながら語るローゼンバッハ。
・・・・・・なんと言うか、昨日の朝に似たような経験をしたばかりの私としては、微妙にツッコミを入れづらい雰囲気が生じてしまう結果となってしまったな・・・。凰の奴も妙に居心地が悪そうな気がするが、何か思い当たることでもあったやもしれん。
「えぇ~~と・・・ウォッホンおほん! と、とにかくアンタは、今日ここでやるイベントの責任者と知り合いだったから招かれてきたって事よね?
妙すぎる人脈が気にならなくもないけど・・・・・・それだと今更どーしようもないとして、それで? そのイベントって何なのよ?」
咳払いで話を区切らせた後、凰の奴が私も気になっている部分についての確認を、ローゼンバッハに向かって問いかける。
コイツの知り合いによる仕切りというのは気になるが、仮にも大型レジャー施設のウォーターワールドで妙なイベントをやりはすまい。
もし仮に真っ当なイベント内容で、一夏との、その・・・で、デートに役立ちそうな内容であるなら一枚噛んで、場を盛り上げる手伝いぐらいはしてやっても良いと思わないこともないのだが・・・・・・♪
「うむ。君たちが抱く、如何なる勝負事であろうとトップを目指さんとする熱き闘志。このシュトロハイド、同じISファイターとして心から共感するところ。
世界各国のIS代表ファイターが世界一をかけて覇を競い、プールとか駅とか寺院とか空軍基地とか、果ては江戸城前の舞台で木札を壊すほど相手を投げ飛ばす。
そんな戦いのため、車を無手で解体するアルバイトをして旅費を稼ぎながら戦いの旅を続ける・・・・・・それこそ万国ISびっくりファイターの生き様というもの」
『『いや待て。そんな変なものになった覚えは私たちは一度も―――』』
「だが案ずるな!! 今日のイベントは至って平和的な競い合いによるもの!!
平和こそが文明を進歩させ、平和の中で行われるスポーツこそが人の精神に更なる成長を促す糧となるもの!
その健全なる平和的スポーツ大会の種目とは―――コレだっ!!!」
ビシィッ!!と、いつもであれば勢いよく指さしてそうなテンションのまま、叫んだローゼンバッハが叫びながら、ゆっくりと片手を上げて指さした先にあったもの。
一枚のポスターに書いてあったイベント内容とは、それは―――
『第一回ウォーターワールド水上ペア障害物レース大会!
みなさん、はりきってご参加ください☆
優勝賞品:南国の楽園・沖縄五泊三日の旅ペア旅行券』
そこに記されている一文を見たとき。
私と凰の瞳がともに、乱世のはじまりを悟った戦国武人の輝きを宿したことは言うまでもない―――
「さぁ、皆さん! 団体様で、いらっしゃーいま~せ~♪
男性客の方は自主的に空気をお読みになった上での行動をお願いしておりま――って、あれ? ハッちゃんじゃな~い。久しぶりね~、元気だった~?」
「おお、我が友! 学生時代以来の旧友よ! 君と生きて再会できたことは我が喜びの極み、共に再会を祝し合って――プロージット!!」
「いや止めろよハイド!? 未成年者で外見年齢はもっと低いお前の見た目で、ワイン取り出すな! グラスに入れて飲むな! 投げるな! 周囲の人達が見まくってるじゃねぇかぁ!?」
盛大に――ぷるるん♪と、豊満な胸を揺らしながらジャンプして現れて、小さく連続ジャンプしながら喜びを露わにしてきた大胆なビキニ姿の司会役らしき年上の女性。
どうやら彼女こそ、ローゼンバッハの再会しに来た旧友だったらしい。
正直、司会のお姉さんとコイツが知り合いだったのは驚きだったし、ヤツの話では今回のイベントを仕切ったのは彼女だと言うことでもある。
妙な関係ではあるが、レースの内容について差し障りがない程度で情報提供して頂けるかも知れないのなら、そう否定的に見るものではないかも知れず、そのえっと・・・(ポッ♡)
「す、すいませんお姉さん。俺たちのクラスメイトが騒いで、他のお客さん達に迷惑かけちゃったみたいで・・・・・・後で俺からもキツく言っときます」
「うふふ、いいんですよ別に~。ハイちゃんの性格は、私“たち”が一番よく知ってるつもりですから~、オーナーにも今日来るかも知れないって伝えて許可取っておきましたし~。
少しぐらい騒いだ程度だったら普通レベルですからダイジョウブ、ダイジョウブです~♪」
「そ、そうなんですか? それなら俺としても助かるんですけど・・・・・・でも、お姉さんとハイドって、どーいう理由で知り合った関係だったんですか? 正直そっちの方が全く想像できなくて・・・・・・」
「うふふ♪ そーかもしれませんね~。皆は分かりませんけど、私とハイちゃんが仲良くなった時のことは、今でも忘れらない思い出なんです―――」
『ハイドッ! 何故わからろうとしない!? サル共など地球の大地を穢すゴミでしかないことを!!』
『君こそ何故わからぬ!? サルから進化せし人類であろうと、それ以外の生物が進化した種族であろうと、互いに戦い合い勝利した者達こそが征服種族王!! それこそ星と大地の掟が決めた理であろうに!?』
『このままでは星が保たん刻が来ようとしているのだ!
“始めに炎を纏った赤い星が落ち、灼熱の火球は万物を焼き尽くす。
焼き尽くされた大地は、やがて冷え始めて全てが凍りつく。
長く厳しい冬が来るぞ・・・・・・!?』
『その程度のもの!! このハイドが薙ぎ払ってくれるわァァァァッ!!!』
『それはエゴだよ! ハイド!
サル共と我ら種族が解り合えば、星は滅びるしかないのだ! それが解らんと言うのなら―――必殺!!
ディノ・トピア・フィンガァァァァァソォォォォォォド!!!!!』
ズガァァァァァァァァァァッン!!!!
「・・・・・・そんな風にハイちゃんとは、昔は何度もヤンチャし合っちゃった関係なの☆ うふ♪」
「いや、待って下さい。なんかおかしい、明らかにおかしい昔語りでしたよね今のって? 司会のお姉さん、アンタいったい何も――」
「あ、イッケナ~イ! つまらない昔話をしちゃったせいで開会式まで時間なくなっちゃったわ~。ゴメンね~、君。彼女さんたちもレースの方ガンバッテ☆ じゃあね~、ハイちゃんまた今度ね~~」
「待って下さいお姉さん!? アンタこのイベントの仕切り役で、さっきの話してた頃にハイドと知り合った人なんですよね!? 大丈夫なんですか!? このイベントは本当に大丈夫なイベントなんですか!?
人のこと「サル」呼ばわりしてた人が仕切ってるイベントって、不安しかないんですけどちょっとー!?」
・・・・・・なにやら一夏が騒いでいるのが聞こえた気がしたが・・・・・・今はただ精神を集中して、試合に勝つことだけを考えるのみ。
レース開始前の呼び出しアナウンスも聞こえてきた―――いざ、参る!!
篠ノ之箒、出陣するため戦場へ、出る!!
・・・・・・そんな流れで、朝からなんやかやあった末に、俺たちの見ている前で落成したばかりのウォーターワールドで開催される障害物レースが幕を開けようとしていた。
鈴も箒も危なそうだから辞めとけと止めはしたんだが、二人とも何故かやる気出しまくってて聞く耳持ってくれやしなかったからどーしようもないし・・・。
せめて無事に、無難に、ハイドの友達らしい部分が現れるような変な出来事が起きないうちに、レースが終わってゴールできて安全に帰ってこれれば一番いい状況なんだけど・・・。
「フッ・・・織斑くん。君の考えていること、手に取るようだ。
嵐が来ようとしている――君もそれを察し、喜びの武者震いを抑えきれない武人の業に苦悩しておる気持ち・・・・・・解るッ!!」
「うん、ハイド。俺にはお前の気持ちだけは、分かっても解り合える日がくる気がまったくしないんだってことを、いい加減分かれ?」
そんなバカっぽい、いつも通りのやり取りを終えた後。
司会用の台の上にのって、例の司会のお姉さんでハイドの友人で、謎の過去持ってるらしい変な人が観客達の前に姿を現してきて、そして
『みなさぁぁぁぁッん!! 沖縄に五泊六日で行きたいかァァァァッ!? 恋人と♡』
オォォォォォォッ!!!
『水上ペア障害物レースは怖くないかァァァァッ!? ポロリもあるかも知れないし☆』
うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?!?
『OK! それでこそ選ばれし勇者達! 諸君らならば必ずや困難を乗り越えて目指す栄光を手にすることを私は信じている! 勝利の栄光は、君たちの手に!! ジーク!!!』
イエス・マム!! 返事はラジャぁぁぁぁぁぁッ♪♪♪
・・・・・・とりあえず、ノリが良くて、テンション上がってる人達を乗せるのが上手い人だってのは理解できた始まり方だった。
なんとなく一瞬にして、ハイドと彼女が仲良くなれた理由が理解できた気がしたのが、なんか微妙にイヤだと感じたのは、俺が薄情だからじゃないと信じたい・・・。
あと、台の上でピョンピョンと何度もジャンプしながら解説してる、ビキニお姉さんの格好が影響してる結果のテンションなのかも知れないが・・・・・・アレは狙ってやってる結果なのか? ノリと勢いなだけが理由の全てなのだろうか?
ハイドの知り合いって分かった後だと、なんか答えが分かりづらくなってしまってる俺がいる・・・・・・。
『では、ルールを説明しよう! と言ってもルールその者は至って簡単にして単純明快♪
この50×50メートルの巨大プール! その中央の島へと渡り、フラッグを取ったペアが優勝です!
なお、コースはご覧の通り円を描くようににして中央の島へと続いており、その途中途中に設置された障害は、基本的にペアでなければ抜けられない仕様になっているものが多数敷設されています!
ペアの協力が極めて重要な以上、二人の相性と友情が試される!』
『し・か・も!! なんとこのレースは、相手選手への『妨害OK』という、場外じゃない乱闘有りスポーツ大会!
いや~、私的には不良同士でオリンピックとか運動会とかサッカーとかアイスホッケーみたいな展開になるんじゃないかとヒヤヒヤものでって言っても、若いお客様には分からない人多いかな? お姉さんはレトローゲーム好きだから知ってま~す☆ アハッ♪』
ワハハハハッ♪♪
なんか和やかなムードになっちまったけど・・・・・・ぜんぜん笑えなくね!? 今のルールって!
妨害ありって、それ本物の軍隊と同じ訓練受けてる奴らが2人も参加しちゃってるレースだと、器物破損しまくる理由になる予感しかしないんだがっ!?
大丈夫なのか!? このレースは本当に! そんなハラハラを感じさせられながらも、なんも起きてない今の状況で俺に出来ることは何もないし・・・クソッ!
そうこう悩んでる内にレース開始の笛が鳴っちまった!
『さぁ、では――レースを始めに行くとしようじゃないか、諸君・・・。
Raunndo1、FIGHT!!』
ピ―――ッ!!
ホイッスルが鳴り響き、選手達は一斉にプールへと飛び込んでいく!
最初は当然、国家代表候補生として訓練受けてきた鈴や、毎日厳しい修行を己に課し続けてきたらしい箒がダントツでスタートダッシュを切り、予想外に強すぎる最年少に近い二人に警戒心を刺激されたらしい他の選手達が数任せで妨害を強行してくるものの、それさえ力技で乗り切って、最後の障害になりそうな他とは体格が違いすぎるペアをも突破して(何でこんな大会に参加してんだコイツらみたいのが!?)
その瞬間に!
俺が恐れていた事件は勃発することになる・・・・・・なっちまった!!
「な!? 貴様、凰ひきょ――ぶべっ!?」
「よしっ! 勝ったぁ!!
数押しで攻め寄せてくる相手達を突破して疲れてきてたのか、体格が違う相手は骨が折れると解釈したらしい鈴が、箒を踏み台として利用して一人だけ前に出て、最後のゴール前に待つ浮島へと到着した。――そう思ったときのこと。
「ありがとう、箒。あんたのおかげよ、今日のことは忘れな―――へッ?」
ズボボボボボボボォォン!!!!
水柱立てて浮島が大爆発して吹っ飛んじまったー!?
なんだ!? 何が起こった!? IS武装レベルの攻撃受けたように見えたけど、箒の《紅椿》ってそういう装備とか持ってたっけ!?
『お~っと!? コレは驚きの展開です! 参加者達の中で飛び抜けて高すぎるスペックを持つ選手がいた場合にのみ反応して起動するよう仕掛けられていた障害物が、まさか作動させられるほどの猛者が現れるとは~ッ!?
いったい彼女たちは何者なのでしょうか!? 間違いなく只者でないことだけは確かです! あの仕掛けを作動させるに足るほどの者が、まさか蒼い星のプールにいようとはぁ~!!』
「いや、アンタが何者だよ!? そんな仕掛けをレジャー施設のイベントなんかに持って来てんじゃねぇよ! 死人が出たらどうする気なんだ本当に!?」
「うむ・・・彼女は昔から、人を楽しませる仕掛けを作ることを好む趣味があった。
若き時分に彼女が自作し、夏休みの宿題として提出しようとした古代城の模型は、内部の出来を確かめに行った先生方が戻ってこぬまま行方不明になったことで、作り直しが言い渡されたことがあったとかなかったとか・・・・・・
「どんなだよ!? どんな宿題だよ!? 先生が行方不明になる夏休みの宿題って、一体あの姉ちゃん何作って提出しやがったんだ本当に!?」
「聞いた話でしかないのだが・・・・・・『黒く巨大なナニカの叫び声が・・・』という謎のメッセージが、先生方の残した最後の言葉であったとか無かったとか」
「どっちだ!? そして本当に何作った!? お前ら本当に一体何なんだよ本当にーッ!?」
案の定というより絶対コイツが関わってると碌な事になるわけ無いと思っていた事態が、今回もやっぱり起きちまったみたいだった!
チクショウ! 今日のはハイドじゃなくて、ハイドの知り合い程度の繋がりだから常識から逸脱しすぎないと思ってた俺がバカだった!
もう俺が助けに入るか!? IS展開させるか!? そう迷い始めた直後に、「ザッパーン!」と鈴に踏まれて箒が落ちてった辺りからも水柱が上がって、
「ふ・・・ふ・・・ふ・・・・・・やはり貴様と私とは、相容れられぬ不幸な宿縁にあるようだな凰・・・もはや許さん! 私の顔を! よくも、ってフベバァッ!?」
「箒―――ッ!?」
『おぉ~~っと!? 更なる驚きの展開です! まさか上からの鉄球まで発動して落ちてくるなんて・・・・・・!
頭頂部に落下させられても、痛いだけで決して死なず重傷すら負うことはない、人間離れした防御力の持ち主がいたときオンリーで起動されるようセットした仕掛けだったのですが・・・・・・さすがはIS操縦者!
いつでも何処でも取り出せるIS持ってる国家代表候補生は、バケモノです! 人間ではありません! まさに野獣! サルから知恵を進化させたヒトではなく、肉体が更なる進化を遂げた恐竜人の子孫とは彼女たちのことだったのか~~!?』
「お前はちょっと黙ってろ変態女!? 頭おかしいだろ絶対にお前は本当にぃぃっ!!!」
遂に怒り心頭に達して、敬語もお姉さん呼びもする気なくなった俺が怒鳴り声上げて、力尽くで止めるため前に出ようとした時には、爆発で打ち上げられてった上の方から鈴の声が降ってきて、
「・・・はっ、ハハハ・・・おもしろいじゃない・・・このあたしとやろうって事でいいのよね・・・?
だったら来なさい! 甲ロ――って、危ねぇぇぇッ!?」
「り―――ッん!? 生きてるか、り~~~~ッん!?」
『うぉぉぉ~~~ッ!? もはやメチャクチャです! まさか! まさかまさか!
このウォーターワールドを破壊できるほどのエネルギーを放とうとする頭のおかしい人が、もしレース参加者にいた場合にのみしか決して起動することがないようセットされていた禁断のトゲトゲ槍槍トラップが発動する日が来ようとは~~ッ!?
今大会のレース参加者はどこかおかしいです! 異常です! 普通ではありません! イカレています!
まさか、たかが民間レジャー施設のプールで行われる水上レース(賞品は沖縄旅行)での勝利如きを得るためだけに、ここまでの仕掛けを起動させるほどの破壊エネルギーを感知させるだなんて・・・・・・!!
やはりサルから進化したヒトは、大地に対し、大地の掟に対し、感謝と謝罪を忘れたとしか思えない粛正されるべき生き物だったと言うことなのか~~~~ッ!?』
「アンタが言うなァァァァァァァァッ!?
一番イカレてんのは間違いなくアンタだろうがよぉぉぉぉぉぉッ!!!!」
叫び声と共に白式を展開して鈴と箒を、イカレ女のトラップ地獄から助けるため飛び出してった俺の慟哭と、
「ハーッハッハッハ!! 相変わらずよな君も! 昔と何も変わらぬ友との再会を祝して――プロージット!!」
ただただ純粋に、楽しそうに嬉しそうに、懐かしい友達と再会できたことを祝ってるらしいハイドの笑い声を轟かせながら、このウォーターワールド内で行われていたレースは、
「よっ、えいっ、しょっと・・・きゃあッ!? せ、セーフ・・・・・・」
「大丈夫!? カコちゃん! よ、よーし、カコちゃんの分も・・・・・・到着ッ!!」
『おめでとうございま~す☆ 一番手でゴールしたのは、都内からお越しの【スイカ胸さん・スイカ子さん】のお二人です!
数々の困難と相次ぐトラブルに振り回されることなく、互いを思い合う絆を維持して優勝したお二人は、まさに勝者に相応しい友情と相性のペアだったとしか言い様がありませんッ。
では、優勝者のお二人にヒーローインタビューをしてみたいと思います。今のお気持ちは?』
「えへへ♪ 大変でしたし、ビックリすることが多かった大会でしたけど、カコちゃんを信じて力を合わせたから勝つことが出来ました☆ この勝利は二人の絆の証だと思ってます♪」
・・・・・・平然と眼下でレース続行して、優勝者まで出してたみたいだった!!
今この場で一番異常で頭おかしいのはコイツラだったのかもしれない・・・・・・
って言うか、このプールにまともな奴はいないのか~~~~~~ッ!?
誰か!! まともな奴がいて下さい! もしくは救急車ッ! 精神病院送っちまえこんな場所!!(怒!)
つづく