「でやあああああっ!!」
今日は九月三日! 二学期最初に一組と二組でおこなってる合同実戦訓練の日!
俺は鋭く重い金属音を響かせながら、『クラス代表同士でのバトル』として鈴の甲龍と戦っている真っ最中だった!・・・・・・そのはずだったんだが・・・ッ。
ガギィンッ!
「くっ・・・・・・!」
「逃がさないわよ、一夏!」
間合いに入ってきた相手のバリアエネルギーを削るため《零落白夜》として振るったはずの刃が、すでに輝きを失って通常の物理刀にしかなれなかったせいで押し切れず、はじき返されてしまう!
ならばと思い、一旦距離を置いて夏休み前に海での戦いの後に追加されていた射撃武装の《荷電粒子砲》を放とうとしたのだが――こっちも既にエネルギーが底をついていた! 小さく光るだけだ! これじゃ撃てない!
「ちぃっ! パワーダウンかよっ!?」
「最初にシールドを使いすぎたわね! 燃費と安定性を第一に設計された実戦モデルの甲龍は、伊達じゃないわ!」
「まだまだぁっ! まだ終わらねぇよ鈴ッ!!」
そう叫びながら手にした刃を振るっては見るものの、実際の戦況は追い詰められてジリ貧になってしまっているのは俺自身も分かっていることでもあった・・・!
原因は、新型にパワーアップして姿と武装が変化した新たな白式である《雪羅》がもつ、燃費が悪すぎるコンセプトと、何より新たな機体性能と武装を扱いきれてない俺が無駄打ちしすぎてしまったこと! それが今、鈴の《甲龍》に俺が追い詰められてる最大の原因!
夏休み直前の合宿先で《シルバリオ・ゴスペル》と戦って敗れた後、なんか理由は分からないけど新型にパワーアップして復活できた俺と新たな白式《雪羅》だったが――性能が上昇した分、エネルギー消耗量が増えてしまい、オマケに射撃武装もバリア突破機能あるが発射するたびエネルギーを食うという仕様だったせいで、今まで通りと同じ戦い方してたら速攻でガス欠するようになっちまった!
大型化した背部のウイングスラスターは出力が上がった分、使用に必要なエネルギーが上昇し!
俺の十八番になった《イグニッション・ブースト》は、チャージ時間が短縮して速度は上昇したけど、消耗する速度まで上昇しちまっている!!
さらに今は、不利な戦局を逆転可能にしてくれるはずの《零落白夜》は、雪片弐型に輝きが戻らなくなって通常の物理刀として使えなくなり!
左腕に追加された多機能武装腕の《荷電粒子砲》は、零落白夜と同じでアンチ・エネルギー・ビームとしても使える武器だから、片方を使えるエネルギーがなくなれば一緒に使用不能になるしかない!
そして他の武器は―――無いッ!!
元々バリアー無効化攻撃の《零落白夜》に極振りしてた仕様の白式に、射撃用の零落白夜みたいなアームド・アームを追加したわけだから、その二つだけで戦うしかなく、どっちか使えなくなったら両方共ほぼ使用不能にならざるをえなくなって、他の武器は白式にはもともと持ってな――――あれ?
ひょっとしなくても俺って今・・・・・・詰んでないか?
戦うための武器なんもない状態だと、流石にISバトルで勝てる方法ないような気がするのは俺の気のせいなのか!? あれ!? あれぇッ!?
「もっらたわ! 一夏! 迂闊なヤツね! えぇーいッ!!」
「ぐぅぅっ!?」 だ、だが俺は・・・まだっ!!
「たあああっ! 衝!撃砲ッ!!!」
ズドドドドドォッン!!!
「う、うわぁぁぁっ!? お、俺はぁぁぁッ!! お前にぃぃぃぃ・・・・・・ッ!!」
足首を掴まれ、投げ飛ばされた地点に向かって衝撃砲の連続発射をブチ込まれ、10発ぐらい一方的に叩き込まれた後。
決着を告げるブザーが鳴って、俺の敗北は確定した。・・・・・・チクショウ・・・。
「ふっふ~ん♪ これであたしの二連勝ね☆ 約束通り、昼休みに学食でなんか奢りなさいよイ~チカ~♪」
「ぐ、ぐぅ・・・・・・なんでだ・・・なんで俺は鈴に勝てないんだ・・・パワーアップしたはずなのに・・・」
肩を落としながら試合が終わったフィールドから、鈴と並んで出て行くよう移動する俺・・・負けの悔しさは認めるしかないけど、精神的には正直プライドが傷ついてるのも自覚させられずにはいられない・・・・・・そんな状況。
せっかくパワーアップした機体を使えるようになったのに、強くなるどころか前より勝てなくなって、機体性能にも振り回されてる自覚あるとくれば・・・・・・流石の俺でもまったく気にしないという訳にはいかない。何とかしようと焦る気持ちぐらいは沸いてくる。
「だから燃費が悪すぎるのよ、アンタの新しい機体は。ただでさえシールドエネルギーを削る仕様の武器だったのに、それが二つに増えたんだから消費量も二倍で当然の結果でしょう?」
「うーん・・・・・・そうかもしれんが・・・でもなぁー・・・」
はぁ、と溜息を吐きつつも、結局はその増えた分を俺に合うよう調整できてないから負けるんだってことぐらいは分かるので、落ち込むしかない現状の俺。
・・・・・・なにしろ武装が増えたから、近距離戦闘と遠距離戦闘の即時切り替えれるよう基本戦略の組み立て直しする必要あって、今までは必要なかった射撃訓練もしなきゃいけなくなったし、武器以外の新装備に慣れるための経験と訓練も―――って、あああ!! やることが多い! 必要になったからやること増えすぎて多い!
しかも今までやる必要なかったのが結構多いのがキツイ! 今までだったらやっても使えない機体だったせいで禄に練習する機会なかったのを1から学べとかキツすぎる!
挙げ句、時期も時期だったしな! 夏休み終わって二学期始まったばっかりだ!
「・・・・・・なんとなくだが・・・・・・夏休みの宿題を二学期始まる直前まで後回しにし続けた結果として、登校日ギリギリ前の日に慌てまくりながら必死に終わらせようと足掻いてる小学生男子みたいな心地になってるんだよな・・・そのせいで、なんかこう・・・焦ってる気持ちが抑えられなくて」
「が、ガキみたいな言い分のくせして、妙に生々しいこと言い出すわねアンタ・・・・・・って言うか!
嫌なこと思い出させるようなこと言わないでよね! あたしは別に忘れてたわけじゃないし! 出来なかった訳でもないし!
出来るけどバカらしいから後回しにしてたのを、規則だから仕方な~くやってやっただけなんだから! 勘違いしないでよねフン!!」
そんな俺と出会う中学入学前の鈴がからんだ思い出話を交えつつ、俺たちは試合終わったので一旦フィールドの外へ出て次どうするかを考えるため移動していってた。その横の空間から。
「フハハハハハハ!! だからこそ言っているのだ! 君は弱~いのだよミス・オールシノーノ君!
ISの性能と、自分だけが使える只一機だけの最新鋭機であることが勝敗を決める決定的な条件でないことを教えてあげよう! カマーン!!である!!!」
「チィイッ! よく動く! 貴様の機体も新型機だからとでも言うのか!? だが、どれだけ避けようと私はお前を斬るため追い続けるっ!! たああああッッ!!!」
カキィィン!!という鋭く重い金属音が響いてきたので、そちらのフィールドを見てみると、海で束さんに与えてもらったばかりの第四世代機《紅椿》をまとった箒と、海での戦いで俺と同じように新型へとパワーアップした―――らしい、ハイドの新たな専用機《メカ・ハイド》がちょうど対峙しているところだった。
正直、そうなった過程を俺は全く見てなくて、気付いたときにはハイドの接近戦武装一本以外は全部とっぱらってた接近特化の専用機が、射撃武装オンリーで鈍重な動きしかできそうにない射撃戦特化にも変形可能になったという話を聞かされたときにも・・・・・・「ハイドらしい両極端さだなー・・・」ぐらいにしか考えないまま受け入れちまってたんだけれども。
だが今になって考えれば、アイツも俺と同じで今までやってこなかった練習が必要な武装で満たされまくった新型を使うようになったのだ。
もしかしたら何か、参考にできる部分もあるかも知れない・・・そう考えた俺は2人の勝負がよく見える位置にいき。
「ふっ! そのような攻撃――当たらない距離から斬撃を飛ばせば、どうということはない! 食らうがいい!
《空裂》!《雨月》!《空裂》!《雨月》!! 連続斬り斬り斬りーッ!!」
「ハァーッハッハァ!! その度胸やよし!
戦い続けて歴史を紡ぎ、現代へと至りし人類の英知と、英霊たちが守護する人類史すべてが詰まった、戦争博物の精神が形となったが如き我が新型IS《メカ・ハイド》の威力、とくとみるがよい!
ピギャャャ~~~オゥッ!!」
ズドドドドドドドッ!!
ズダンズダンズダン!!
ビーッ! ビーッ! ビ~~ッ!!!
「斬り斬り斬り―――って、え? ちょ、ちょっと待てハイド! 数が多い! 幾らなんでも数が多すぎて対処するには二本だと足りな・・・ッ!
えいッ! えいッ!! えーいえいえいえ――う、ウワワワワァァァァァっ!?!?」
ズボボボボボボボボボッッ!!!!
ズドバンズドバンズドバババンッ!!!
ズビーッ! ズビーッ!! ズビ~~~~ッ!!!!
「・・・・・・きゅ・・・・・・・・・きゅ、う・・・ぅ~~~・・・・・・ガクリ」
「勝った・・・・・・だが勝利とは、いつも空しい・・・」
――という感じで決しちまった勝負だったため―――まったく参考にできそうになかった。
やっぱハイドの真似は、IS使っただけの人間には無理だという事実を改めて思い知らされただけの、空しい結果だったなぁ・・・。
「くぅ・・・ッ! アイツいつもいつも調子乗って、上から目線で偉そうな態度で偉そうなこと言ってきてくれちゃってぇ・・・・・・!!
見ていなさい! プールでの恨み、今こそ晴らしてあげるわッ!!」
「――えっ!? ちょ、おい待て鈴! なんでお前までいきなりいきり立って――」
「もらったわ! この甲龍は燃費と安定性を第一に設計された実戦モデルなんだから! 大量に撃ちまくった直後でエネルギー消耗した今のアンタなら確実に勝てる機体なのよ!!」
「理由がセコくて狡いなオイ!? だから待てって鈴! リーン!!」
ズドバババババババババッ!!!
「たあああっ!!―――って、キャアアアアアアアッ!?」
ズボボボボボボボボボッッ!!!! ズドバンバンッ!!!!!
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・むきゅう・・・・・・・・・」
「ふぅ・・・空しい・・・・・・ああ空しい。戦いとは空しい。ああ空しい。――byハイド」
「・・・・・・」
とりあえず・・・ハイドによる「5,7.5」の俳句ができたみたいだったので・・・・・・今日のところは、それを成果として部屋に帰ろう。
そう思った。そう思ってる俺だったからこそ――気がつけなくなってたのかもしれない。
――俺たちの授業風景を隠れ見ながら、ほくそ笑んでいる黒い影の存在を――
「うふ♪ 風が吹いてきたようね・・・・・・。
そろそろ私も動きだすべき刻、世界を変える刻は今――か」
そして、翌日。
――の前に今日の午後。
「うぉぉぉぉッ!? やばいやばい!遅刻遅刻ぅッ!!
千冬姉の授業に3分も遅れるとか、マジでありえねぇーって状況だぜぇぇぇッ!!!」
俺は事実上の俺専用になってるロッカールームから、昼休みで一度離れてたアリーナに全力疾走で走って向かいながら叫ばずにはいられない大ピンチな状態に陥っちまってた!
なにしろ次の授業は、ヘルズ・ティーチャーこと織斑千冬先生が担当のIS実習なんだからな! 千冬姉に慈悲の心なんて一欠片も期待できねぇ!
やばい!やばい!! 流石にやべぇ!!! このままだと俺は・・・・・・クソゥッ!!
こうなったのも全ては、あの謎の美少女先輩に振り回されちまったのが原因か・・・ッ!!
ISスーツに着替え終わった直後に、背後から両目を目隠しされて「だ~れだ?」とか言ってきた、二年生のリボンつけてて扇子をもった謎の先輩女子生徒――名前も告げずに去って行った彼女がいったい何者だったのかは分からないが―――とにかく今は千冬姉の裁きを許してもらうため急ぐしかねぇ!! そしてぇっ!!
「・・・・・・・・・で? 遅刻の言い訳は以上か?」
という、冷たい視線で見下ろされながらの、ありがたいお言葉で迎えられるという大変に名誉な待遇だった・・・。
うぅ・・・走ってる時点で3分遅れちまった後だったから、今さら遅いとは分かってたけど・・・それでも走らずにはいられない、子供のころから叩き込まれ続けてきた千冬姉による鉄拳教育の賜物。三つ子の魂とは、このことか・・・!!
「い、いやあの・・・・・・あのですね? だから、見知らぬ女生徒が――」
「ほう? ではその女子の名前を言ってみろ」
「だ、だから! 初対面ですってば!!」
「ほぉう? お前は初対面の女子との会話を優先して、授業に遅れたのか」
「なっ!? いえ違――そういう事じゃなくッ」
やべぇ! どんどんヘルズ・ティーチャーの機嫌と話の流れが、俺にとって不利な方向へ向かって来ちまってる! このままだと断罪されるのは避けられねぇ!
――だが! だからと言って力を振りかざすのは違うだろう!? ここは起きたことを素直に言うしかない! 見栄は身を滅ぼすッ、俺にできることは正直に全てを告白すること! 只それ一つしかねぇ!!
「聞いて下さい先生! これには俺にも事情があった結果なんです!
俺がISスーツに着替えてたところで、いきなり背後から女子生徒が目隠しされて、俺一人だけしかいないロッカールームだったから目撃者が他にいなくて分からないだけなんです! 本当です! 信じて下さい!!」
「ほう・・・・・・事実上お前専用になっている『男子用ロッカールーム』の中で、初対面の女子生徒に背後から目隠しをされた・・・・・・か」
「――えっ!?」
「そして、名も知らぬ上級生の女生徒から目隠しをされ、『だーれだ?』などと言われるような、風俗嬢が如きやり取りをするために私の授業に遅れた・・・・・・と」
「ち、違っ!? そういう意味じゃな―――あれ? 違う、よな・・・? あれ? あれ??」
相手に言いながら返されながら、改めて考えてみたら―――もしかして俺の行動、ダメだったんじゃないか?
俺が求めたわけじゃないけど、男子更衣室状態で着替えたばっかの姿で、見知らぬ先輩の女子生徒に背後から甘い声をかけられる―――イカン。
なんか今になって、スッゲーふしだらな男だった気がしてきたぞ俺自身が。
「さて、バカの処分は後回しにするとして、だ。――デュノア。
《ラピット・スイッチ》の実演をして見せろ。的はこの馬鹿者で構わんだろう」
「はい、それじゃあ織斑先生。実演をはじめます」
「えっ!? ちょっ、待っ! 俺は構―――」
「それと、篠ノ之。お前も手に入れたばかりの新型は、ワンオフ・アビリティが任意で使用できない状態だったな? 慣らし運転が必要なようなら試し切りだ。藁人形は馬鹿でいい」
「はい、承知しました織斑先生。早速に(カチンッ)」
「いや、よくない!? よくないですよ先生! 俺的にはスッゲーよくないんですが!?」
「ああ、それからオルコット。
お前は元々BT兵器の実働データ取りが主任務で選ばれた代表候補生で、臨海学校での新装備大破について本国から問題視されているんだったか―――私が許す。ヤレ」
「イエス・マイロード。サンプリング採取の協力に感謝を」
「許されないぞ!? そんな行為は法治国家日本の法律とIS学園の校則と俺の人権的に許されな――――ギャァァァァァァァァァッ!!??」
ズダンズダン!! スパンスパン!!! ビシューンビシューン!!!
ドッカ~~~~~~ン!!!!
・・・・・・こうして、俺にとって二学期初の実戦訓練がある日は終わりを迎える。
こうして夜になって振り返ると、改めて思う。
争いは・・・いつも・・・・・・空し・・・イ・・・・・・ガクリ。
そして翌日。
「ふぅ。朝っぱらからSHRと一時限目の半分を合わせて使って全校集会とは、さすがはIS学園でやる学園祭についての説明って感じだな。規模が違うぜ」
「うむ。織斑くんほどの漢が男子生徒として招かれる学園に相応しい規模と言えるだろう。
流石は、大ケガを負わされた身体であっても、自分の部屋か宿屋で一晩寝れば全回復して戦闘も可能になれる漢が通う学園・・・・・・いずれ必ずや世界を救い、浚われた姫も救い出し、異なる時空や夢の世界や天空に浮かぶ城までをも巻き込む大冒険をなす人物が、少年時代を過ごすに相応しき学校よ!!
そしてやがて、育て親を殺され、伝説の子を産む父親に―――ッ!!」
「ならねぇし、なれねぇよ!? 規模デカ過ぎるにも程があるだろ! それだと千冬姉が死んでんじゃねぇか!? 勝手に殺すな人の姉を!
それに、それで伝説になってるのは俺の息子で俺じゃねぇーっ!?」
いつも通り横に現れたハイドから馬鹿話を聞かされて盛大にツッコミ入れなきゃいかん羽目になって始まり迎えた朝になっている!
いつもいつもコイツのテンションはいつも通りで言うこともいつも通りで――ああもう!!
いや確かに俺は海でゴスペルに大ケガさせられた傷を、合宿所の旅館に一晩泊まっただけで治っちまったけれども! 五反田がやってたテレビゲームに似たものあったのも覚えてるけれども!
それでも俺は勇者じゃない! 世界を危機から救う正義のヒーローになる気もない!!
正義のヒーローなんてヤツらは、泣きもしなけりゃ笑いもしないからな! それどころか、一言だって喋ってるセリフすらなかったし!
五反田のヤツは「そういう意味じゃねぇって」とか言ってた気がするけど・・・・・・絶対そうだって! 間違いないって! 俺は俺の正義のヒーローイメージを信じ貫く!!
「ハッハッハ、相変わらず織斑くんは一人でも祭りができるほど騒がしき漢よなッ。日本男児たる者そうでなければならぬ!
火事と喧嘩を江戸の華とし、火消しと共に暴れん坊できるようにならねば、刀一本と仲間たち数名だけで多くを守れる者になること叶わず! これからも精進するのだぞハッハッハ」
「お前はいったい何様のつもりで語ってるんだ・・・・・・ってまぁ、いつも通りがコレだから普通のつもりで言ってるだけなのか・・・」
「そこ、うるさい! SHR中は静かに聞けっ!」
「アウチッ!?」
カコーッン!!と。
いい音が響いて、前の方から誰かが投げてきた懲罰の一撃を食らって仰け反らされる俺だけ。ハイドは避ける。
く、くそぅ・・・体育館なのにチョークを持ってきてる奴が誰かいたなんて、誰かは分からないが、絶対に俺には分からないけど非常識な人が教師陣の中にはいたもんだぜまったく、流石はIS学園だ。
『ふふふ♪ なにやら楽しそうな騒ぎが一部生徒たちの中では起きてるみたいだね。学園祭が始まる前から元気に騒げるのは結構なこと』
「・・・・・・ん?」
ハイドに釣られて騒がされていたところに、壇上の方から声がかけられるのが聞こえてきて――はて? どっかで聞いたことがある声のような気が・・・そう思って顔を上げてみたところ――ええっ!? あ、あの子は・・・いや、あの人はっ!
『ふふ、やあやあみんな。一年生の人達には初めましてかな? 今年は色々と立て込んでいてちゃんとした挨拶がまだだったから申し訳ないね。
私の名前は、更識楯無。君たち生徒たちの長である生徒会長よ♪ 以後、よろしく』
全校生徒を平等に見回しながら、「ニッコリ」と微笑んで言ってくる、異性同性問わず魅了するような魅力的な笑顔を浮かべる人。
そんな人の視線が、俺のことを視界に捕らえた一瞬だけ
「――ふふっ」
「~~っ!?」
妖艶とも怪しげとも受け取れる、不思議な色が笑みの中に浮かんで消えたような気にさせられて・・・・・・妙にちょっとドキドキしてる俺がいて・・・こ、これは一体なにが・・・
『では早速、本題に移りたいと思います。今月の一大イベント学園祭だけど、皆さんも知っての通り今年は色々とイレギュラー尽くしな状態。
これで例年通りってやると、違いがない中で卒業してった人達からは、却って非難が来かねないほど。
――そ・こ・で♪ 今回に限り特別ルールを導入することにしました。
その内容というのは・・・・・・名付けて!!
【各部対抗織斑一夏争奪戦】!!
またの名を―――【織斑ファイト】!!!』
お、オオオォォォォォォ~~~~~~~~ッッ!!!!???
『IS学園では毎年、各部活動ごとに催し物を出したものに投票を行って、上位組は部費に特別助成金が追加される仕組みだったけど、今回はそれに賞品を追加ッ。
なんと! 一位になった部活動には、織斑一夏くんを強制入部させましょう!!!
・・・愛とは、戦って勝ち取るもの・・・・・・戦って、戦って、戦い続けて勝利し続けて!!最後まで勝ち残った部活動一つだけが、IS学園祭オブ・チャンプの栄光と愛をその手に掴んで、新たな世界を生み出す最初のアダムとイヴになれるのよ・・・・・・。
さぁ――隣人を愛する生徒諸君。今こそ愛と部費を手にするため・・・・・・レディ―――』
GOOOOOOO~~~~~~~~~~ッッ!!!!
・・・・・・なんだか凄い状況になってしまったようだった・・・・・・。
俺は一言も了承とかしてない事柄のはずなんだが・・・・・・なぜ・・・・・・。
トントン拍子に進んでいく、突拍子もない事態の流れについて行けず・・・・・・俺は思わず、当てになるならないは別として、流れには流されそうにないハイドに意見を聞くため顔を向けて視線を下げて。
「うぅむ・・・・・・なんという・・・ことだ・・・・・・」
そこに―――意外なほどのシリアスな態度と表情で事態を考えているらしきハイドの姿を見出し、思わず蹈鞴を踏まされながら、その理由について聞くのを避けることは・・・出来なかった。
「ど、どうしたんだハイド? なにか会長の言ってたことにヤバいことでもあったのか? それとも学園祭になにか危険なことが・・・?」
「うむ・・・皆の不安を煽るべきではない、と思っていたからこそ控えていたが――織斑くんには言った方がよいかも知れぬ。重要な事柄故に・・・」
「俺にとって、重要な事柄・・・? そいつは一体・・・」
「うむ・・・・・・その重要事項とは――――」
「こういう流れで学園祭をやると大抵が、織斑くんのような人物が途中でハグレて、一人だけ敵に浚われて、一人だけ痛い目に遭わされて、新たな仲間に助けてもらえるまで痛めつけられるだけで勝てない―――という未来が確定してしまうのがロボット操縦者育成学園での学園祭における伝統なので、織斑くんは大変そうだなと。南無三」
「南無三じゃねぇよ!? 嫌だよ! そんな目に遭いたくねぇし、痛い目に遭わされて勝てねぇのも嫌すぎるから避けてぇよ!?
不吉すぎる予言を始める前からしてんじゃねぇ――――ッ!!??」
「分かっておる! 君の気持ち、このハイドには痛い程によく解る・・・・・・だがしかし!!
仕方がないのだ! これは運命なのだ!!
女性しか動かせぬロボットを操れる唯一の男として育成者学校に招かれた男子は、必ずや学園祭で一人きりになり敵に襲われて傷つけられることが、運命によって確定されてしまう! それは宇宙開闢より続く運命の絶対法則!! どう足掻いても、逃れること叶わず!
・・・・・・乗り越えよ・・・そして更に限界を超えた向こう側へ羽ばたくのだ!!
それこそが君の運命だ! 宿命だ!! 痛めつけられ大ケガをさせられるのがパワーアップに必要なのが、君のような男の絶対運命黙示録デスティニーというもの!!
さぁ・・・・・・運命が君を待っているぞ!! クイーンズ・ナイト織斑卿よ!!!」
「嫌に決まってんだろうがぁぁぁぁっ!?
あと、その呼び名も嫌だから辞めぇぇぇぇっい!!!!」
「うるさいと言ってるだろうが阿呆共ォォォォォォォッ!!!!」
カコ―――ッッン!!!
「ヘブ~~~チッッ!?」
盛大に音が鼓膜と脳髄に響き渡って、俺にとって二学期最初の実戦訓練の次の日の朝は終わりを迎えた。
否応もなく、一学期を超える程の波乱と嵐の予感を感じさせられる、新たな季節の始まる時期に・・・・・・俺は新たな力と機体を手にして始まりの一歩目を記したのだ。
この先になにが待っていて、何が起きるのか・・・・・・分かる者は誰もいない。
だから俺が、どんなヒドい目に遭わされるのかなんて、誰に解るわけがないから予言でしかない。予言は予言でしかない外れる迷信で、非科学的で、IS全盛の時代にはそぐわない。
だからハイドの言うことは間違っている。それが正しい。それが真実。
ただ一つ言えること。それは―――――グフッ・・・(がくり)
つづく