『IS原作の妄想作品集』   作:ひきがやもとまち

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先日来『四季ちゃんIS』を書き続けていたのですが、一本ぐらい真面目なシリアス風味で書いてみたのがあってもいいんじゃないかと思い書いてみました。

偶には凝り固まった頭をほぐすためにも気分転換は必要です(ふんす)


織斑一夏の空(カラ)の妹

 ーーオレには同い年の兄がいる。

 織斑一夏というのが、そいつの名前だ。姉もいるが、しばらく帰ってきてないし無視して問題ないだろう。居なくて問題が起きてない人間は居ないものとして扱っても問題は起きない。

 

 必要なのは生きて働いている事実であって、オレたちに会うため家に帰ってくる事じゃない。養われてる側から見た保護者感なんてその程度のものだろう。

 

 同い年の兄姉ではあるが、オレと一夏は双子じゃない。

 一夏が四月生まれで、私は三月。少なくとも戸籍上の記述ではそう言うことになっている・・・らしい。

 

 嘘か真か、オレは知らない。興味もないから解らない。案外、姉の方の幼馴染みが細工してっただけで、オレも兄貴も人間ではない人外の化け物か何かなのかもしれないが、そんな詰まらない話に夢中になるほど物好きになった覚えもない。

 

 仮に自分が世界を滅ぼすために生み出されてきた化け物だったとしても、それを知ったところでオレ自身になにか変化が起こるという訳でもない。

 真実をひとつ知ったくらいで人が別人に生まれ変われるなら、オレは連日連夜放送されてるクイズ番組を観る度に生まれ変わらなくちゃならなくなる訳だ。

 転生の神様は大忙しだな。ブラックで結構なことだ。そのままクタバれ糞爺。

 

 

 人は誰でも早く大人になりたがるものらしい。だがオレは、子供の時から今一つその感情が理解できなかった。

 

 なんだって早く大人になって、早く寿命を迎えたがるんだろうか? そんなに死にたいなら首でも突けば今すぐ死ねるのにと、オレは昔から思ってる。

 

 よく映画やマンガに出てくる自分の出生について調べている主人公の語りを聞く度に不思議がってきたオレには、きっと一生かかっても理解できない類の謎なんだろう。

 

 兄の一夏も物好きなことに、それら早く死にたい類の人間だ。

 早く大人になって姉である千冬を手助けしてやりたいのだと、中学の時点で早朝の新聞配達やら個人経営の飲食店での従業員やらをやってはバイトの真似事に明け暮れる二年間を過ごしてきた。

 

 昭和じゃあるまいし、中学生が働いてくれたとして本気で喜ぶ経営者なんて今時実在しているはずもない。

 

「却って迷惑になるだけだから、家で勉強でもして良い就職先でも目指した方が千冬の負担も減るんじゃないのか?」

 

 オレはそう言ってみたのだが、あのバカの耳には届かないか聞こえていないのか、あるいは理解したくないだけなのか。

 とにかく一夏は受け入れることなくバイトもどきを続けて、影ながら姉に世話をかけさせ続けてた。

 だが、一年ほど前からは藍越学園に進学するための受験勉強という口実を手に入れて自宅に縛り付ける事に成功している。

 なんとも傍迷惑きわまりないバカ兄貴だった。

 

 

 ・・・・・・要するに、オレたち織斑姉弟は、人間的にどこか壊れているんだろう。

 だからこそ、普通の奴らから見たオレたちは歪んで見えていて、壊れてヒビが入ったフィルターを通してしか人も世界も見ることが出来ないオレたち兄姉には間違ったものだらけな世界としか写らないのだろう。

 

 

 だが、オレはそんな一夏のヤツが嫌いじゃない。むしろ好きな部類に入るんだろう。壊れている者同士の共感というヤツだ。

 もしくは同じ穴の狢、仲間同士の庇い合いと言い換えても良い。同類同士だからこそ、そうじゃない奴らよりかは仲間意識を感じやすくて楽で良い。

 

 

 なにしろオレは極度の人間嫌いだ。子供の頃からどうしても奴らが好きになれなかった。救いがないことに人間嫌いのオレ自身も人間なのだから自分でさえ好きにはなれない。大嫌いなままだ。

 

 そんなオレから見てさえ人間的に壊れている兄が側にいるのは、素直に愉しいと感じれた。人になれない人間モドキが人間たちに混じって過ごせばこういう眼で見られるのだと観客気分の他人事として見物できるのは、一人だと味わいようがない面白さを教えてくれる。

 

 オレは、オレを愉しませてくれる兄のことが好きだ。見ていて飽きがこなくていい。

 

 オレは一夏が、正義を理由に人を殴るのが好きだ。

 相手のことをバカだ餓鬼だと罵りながら、殴る蹴るで苛立ちを解消しないと満足できない自分をバカだとも餓鬼だとも思わない愚劣さが堪らない。吐き気がしてくるほどに。

 

 オレは一夏が、相手に気を使って合わせてやってるのを見ているのが好きだ。

 自分の言葉が相手にどう聞こえるかなど考えもしない気遣いには頭が下がる。最悪だ。反吐がでる。これだから織斑一夏の妹はやめられないと心の底から思い知れる。

 

 オレは一夏が、敵対している相手のことさえ『守ってやる』と告げる所が好きだ。

 誰だって自分より格下の相手を守ってやるのは気持ちがいい。快感だ。自分の物ではないうちに殴った相手であろうとも、自分の物になった後には殴りたくなくなる気持ちもよく解る。

 自分のために人を守ろうとするアイツの正義感は、見ているほどに心の内から熱くなる。昂まりを覚えさせられる。

 

 

 オレは、一夏のバカ兄貴のことが好きだ。

 好きな理由は単純だ。

 歪んだあいつを好きでいることは、壊れた自分を好きになることに繋がるかも知れないからだ。

 壊れて歪んだ人間モドキである自分のことが嫌いなオレだが、類似品で方向性が異なるだけの矛盾した正義バカを愛し続ければ、いつか自分のことも好きになれる日が訪れるかも知れないから。

 

 ・・・・・・ああ、そうなのかもしれない。そう言うことになるのかも知れない。

 

 そう言うことにしていけば、オレは自分に恋するために一夏に恋しているだけなのかも知れないな・・・。

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