主人公は、マジカル冥途こよりちゃん(偽)
ノリと勢いだけで悪を貫く、常時ハイテンション過ぎる女の子です。
*解り辛かったので改題しました。
IS。それは、すべてのIS操縦者の夢を叶える存在。
その人が見ている夢を具現化し、やがては操縦者そのものとして本人と入れ替わることを目的とする歪な願望器。
それによって見せられた己の醜さに耐えきれず、「消えてしまいたい・・・」と願った一人の少女が足掻き苦しむ可能性世界の未来が実在しているようにーーー。
が、しかし。しかしである。
世の中を生きるほとんどの人たちは、そこまで自罰的でもなければ己の欲望に拒絶反応を起こしたりしない。
ふつうの感覚を持ってる人なら大して気にしない『己の悪』を受け入れることのできない人間だけが高IS適正値を計測されるのはシンプルに『偶然』でしかない。
ならば、純粋な人間だけが高適正値を出し続ける偶然があるのと同じように、『不純な人間が高適正値を記録してしまった偶然』があっても悪くはないと思うのだ。
そんな『悪の偶然』によって誕生してしまった『己の悪を知って受け入れたIS操縦者』。それが彼女である。
エスカレーター式で大学までフォローしてもらえる名門中の名門『聖マリアンヌ女学院中等部』に通い、二年時には生徒会副会長まで勤め上げてたバリバリのエリートにして、自らの内に潜む穢れを知らない箱入りお嬢様。
そんな彼女が高等部進級を直前に控え、エスカレーター式のため体調管理にのみ気をつけていればそれで良いとされる二月のある日に、政府がIS操縦者を募集する一環として実施している『IS簡易適正検査』を見つけ、お財布は家に忘れてきたけど「タダでいい」と言われたから試しに受けてみた結果、元世界最強ブリュンヒルデ織斑千冬を含む超少数しか確認されていない『Sランク適正保持者』であることが発覚してしまう。
政府は迷う。如何に優秀なIS操縦者の数が、そのまま自国の国力を表すパラメーターになっている時代とはいえ、自分たち女尊男卑政党が何も知らない無垢な少女をだまして政治に利用するなど、果たして許される行為であるのだろうか・・・? ーーと。
政府は迷った。一瞬だけだけど迷いはしたので嘘じゃない。
反対意見が出た三秒後に決を取り直したら全会一致で政治利用が可決されたけど、三秒前には反対票の方が多かった訳だから決して嘘は言っていない。
嘘つきは泥棒の始まりであり、権力と法によって支配している民から盗みとる最低最悪の盗賊たち『腐った権力者』側にしてみたら「国家が優先すべきなのは国益! そのために、個人のちっぽけな生命や権利なんて惜しむべきじゃない!」という主張は建前じゃなくて本音なので嘘を言っているつもりは欠片もないのだ。(ただし、「国家=自分たちの権力」という図式が成立する場合に限られる)
テレビ中継が終わった後の主要な閣僚メンバーだけで行われた密室国会によって答えを出した日本政府は、早速行動を開始。少女に対して「きわめて希少な『Aランク出たよ! よかったね♪ おめでたいからパーティーをしましょう』という趣旨の内容を書いた招待状を出し、前後して両親に裏取引を持ちかけての買収に成功。
愛する愛娘の豊かで幸せな将来を願った両親は、泣く泣く政府が提示してきた額の『三倍』で手を打たされる。
「許してくれ、私たちの愛する一人娘よ! 御上に逆らって生きていけるほど社会というのは甘くないのだ・・・!」
夜空を見上げて涙を堪え、握りしめた拳の中から大量の札束を形が崩れないよう注意しながら大事に大事にアタッシュケースに詰め直した両親は、悲しい思い出だけが残る悲劇の故郷を捨て、アメリカに渡米。後に政府からもらったお金を元手にIS企業を経営して大成功を収めますが、別の話なのでどうでもいいです。飛ばします。
商道徳に基づき、所有者である両親から了解を得た上で購入した高額商品を、政府は最大限有効活用する方針で動き出す。
金で買えない物が存在することを、むろん彼女たちは知っている。
だが、現実問題として彼女は『金で買えたからここにいる商品』なので、
「価値に応じて買った商品を、買った私たちが好きに使ってどこが悪い?」
という屁理屈を否定してくれる正義の味方は今の日本に実在していない。いない奴から助けが来るはずないので、政府の行動ターンは継続される。
次に彼女たちが用意したのはISだ。
それもSランクが乗るに相応しい専用機を少女に与え、起動の仕方を優しく指導して自分から起動ボタンを押させる。
たとえ量産機であろうとISは希少だ。だからこそ専用機は、もっともっと希少だ。
それこそ出所不明、開発者には戸籍がなくて名前は偽名、いつどこで誰が持ってきてたのか政府は把握してない秘書が持ってきただけの、開発元に問い合わせたらアパートだったISコアであろうとも『第三世代専用機だから』という一点だけを理由と根拠にして未登録のコアを民間人の少女に政府が譲渡してしまうぐらいには希少価値が高すぎる存在なのである。
それらの結果、こうなりました。
「オーーーーーホッホッホッホ!!!! なるほど・・・これが、これこそがワタクシの本性だった訳で御座いますわね!
今までの優等生でよい子ちゃんだったワタクシは嘘偽りだった。自分を押し殺していただけで、本当のワタクシは欲望ダダ漏れ、怠惰でグータラなダメ女に過ぎない・・・・・・そう!
救いようのない、なんちゃってお嬢様でしかなかったという事なのですわね! オーホッホッホッホォォッ!! ーーぐぇっほ、げっほ・・・はぁはぁ・・・わ、笑いすぎて喉が詰まりかけて死ぬかと思いましたわ・・・・・ISの操縦者保護システム超便利ですわね」
人間が生まれ持っているとされる己の中に秘めた欲望ーーーー
強欲、
色欲、
暴食、
怠惰、
憤怒、
嫉妬、
虚飾。
それら全てを『お前も持っているのだ』という事実を突きつけることにより、苦労知らずで人を信じることしか知らない、けれどもISが求める生体融合しやすい高適正保持者としての肉体を持った少女の心を一足飛びに奪い取ろうとしたのだが、いささか以上に想定外過ぎる事態が発生してしまう。
先に述べた七つの悪徳、七つの欲望、七つの罪、人が生まれ持った七つの大罪。
それら全てを貪り食らって悦に入る自分の姿を幻視させられた彼女は気づいてしまったのだ。とある絶対的な真実に!
「人が持つ欲望・・・それらすべてを併せ持つ絶対悪の存在・・・・・・それ即ち『現代日本のニートな若者たち』ということで御座いましょう!?
ならば七つ全てを持つワタクシは、七つ全てを極めることにより伝説のニート戦士、ニートチャンプになることを目指してご覧に入れる運命にあるのです!」
完全に明後日の方角へと勘違いしまくった少女は、ドン引きしながら差し出された政府からの命令書を引ったくるように受け取り、読み終えたら突き返して横柄な態度と口調で右手の平を上にして差し出す。
「ようするに、この前見つかった世界初の男性IS操縦者のオポンチサマーが万が一にも活躍してしまうと女尊男卑政党としては都合が悪い。
だからと言って、暗殺なんてドラマみたいな手は使いたくねぇ。
よろしい、ならばクリークだでぶっ倒して手柄立てるの邪魔してこい、って事で御座いますわね? 任務了解しましたわ。なので金と権限と適当な肩書きをお寄越しなさい。
あ? なんで国家権力が介入できないIS学園生徒になるのに、そんな物が必要なのかですって? はっ! どうせ建前に過ぎないので御座いましょう? 今時その程度のこと小学校に通っている生意気だけが取り柄の馬鹿ガキちゃんでさえご存じです事よ。
それから、どんなに危機的状況にあっても金があって困る社会なんて人間には作り出せないで御座いましょう?
なればこそ! ワタクシが出来る限り楽して戦って任務遂行さえすれば勝てなくても良くなるように、権力と肩書きと権限とお金をプリーズですわ! プリーズ・オア・デスですわ! 世界最強ISまとった今のワタクシに殺されたくないのであれば、とっとと有り金はたいて未来のニートチャンプになるワタクシに相応しい地位をご用意なさいませで御座います! ピシィッ!!」
わざわざ口で効果音を発しながらIS武装の鞭を振るう『悪のIS操縦者』になった少女は、翌週にはIS学園へと向かう。
織斑一夏の活躍を妨害するため、邪魔するため、足を引っ張ってやるために。
そして、政府所有の建物で三食昼寝付き、光熱費も生活費もすべて税金でまかなってくれる理想のニートライフを送るために。ただそれだけの為に!
「待っておいでなさい理想のニートライフ! いやさ、織斑なんちゃらかんちゃら様!
今、ワタクシが参ります! ワタクシがあなたの元へと参ります!
あなたを邪魔して寄生して、理想のニートライフを満喫するために!
待っていてくださいましね! ワタクシの理想の旦那様! 妻になるつもりは皆無なれど、一生つきまとう気満々な女が今参ります!
専用機《ヴァルシオーネ・ウィーゾル》始動! 漢字名は難しいから読めませんでしたが、それはともかく! レッツ・ビギンで御座います!!!」
こうして、最強のニートにして伝説のニートチャンプを志す少女『天魔こより』の戦いと自堕落に訓練を怠ける日々が始まった!
主人公の主張:
「この世すべての悪とは、全人類を善と悪に二分して戦わせ続けてサボらせてくれない、正義の事でございます!」