尚、昨日更新した『旅路の終わりは・・・』の中身はアニメ版「圏内事件」を基にしたB案であり、「幻の暗殺者」を基にしたA案は一緒に出すつもりが体力とか色々な理由で明日以降になってしまった作品です。
そちらの方も読まれている方がいましたら御免なさいと謝罪しておきます。今日は色々あって悪意が堪って疲れちゃったものでしてね・・・。気力が持ちませんなんだ・・・。
昔から私は、口が悪かった。
親からは『もっと他人に気を使え』と言われた。担任教師からは『出来ない奴の気持ちも考えろ』と言われた。祖父母からは『人の痛みを分かってあげられる立派な人間になりなさい』と言われ続けて生きてきた。まったく・・・何を言っているのやらだ。
相手の愚行を批判するときに気を使ったのでは、怒りの感情が伝わるわけがない。
出来るよう努力して成した俺には「出来ない出来ない」と嘆いているだけの人の気持ちなど考えたくもない。
分かったところで何かしてやれるわけでもない他人の痛みを「分かってくれるだけで救われる」と語る、立派な服を着た道徳業者になりなたがる人の気持ちが理解できない。
そういう奴だったんだ、私という人間は。
相手が傷つくのを承知の上で、言葉を選ばないときは選ばない。
気持ちよりも結果を重んじ、結果に対してのみ非難と罵倒を浴びせかける。
精神的に救うための滝業よりも、物質的な救いをもたらす金に感謝を捧げてきた。
こんな人間は長生きしない。
自覚をして、覚悟を済ませてから人の心を傷つける言葉を吐きまくる人間に禄な死に方は待っていない。
『それでも構わない』と言い切って貫き通してきた生き方の果てに用意されていた結末なら、それは自分の選んできた選択肢の結実であり『そうなる道を自分が選んできた』とも言えるだろう。
ーー同級生から呼び出しを受けて夜の校舎にやってきたところ、案の定というか当然の展開と言うべきなのか、私は相手が隠し持っていたナイフで刺されて致命傷を負わってしまった。素人による偶然の一撃、ラッキーパンチがクリティカルヒットに成る場合があるからビギナーズラックは嫌いなのが私だった。
ーーだが、もう遅い。
結果が出てから『こんな事になるなんて思わなかったから』と叫んだところでクーリングオフは利かない。やってしまったことの責任は取らされなくては成らない。人生にリセットボタンはないからこそ、最悪の結末を想定しながら選択肢は選ぶべきなのだから。
其れを怠った報いは受けなければならないし、バッドエンドを覚悟して突き進んできた者もまた同罪。
私も。そして、彼も。等しく責任を取われて当然の愚かしい選択をしたのだ。
「・・・ならば、相応の報いが必要なのは当然のことだろう?」
「・・・ふぇ?」
ぶすり。
私は自分の脇腹に刺さっていたナイフを抜くと、「殺した!殺した!」と奇声をあげている彼の太股に刺し返してやって靱帯を傷つけておいた。陸上部エースであることが自慢の種な彼として、十分すぎる報いを受けさせられたと言えるだろう。
学校中に轟けとばかりにけたたましく鳴り響いていく出来損ないのロックボーカル。
これほどまでに若者たちが世の理不尽にたいして怒りと憎しみと不満とをぶつけまくった曲もあまり知らない。それほどまでに呪詛で満ち溢れた呪いの歌声がBGMとして流されながら、私は人生最後の刻を学校の冷たい床上で満喫していた。
殺されるという経験も、死んでいく感触も人生で一度しか体験できない希少イベントだ。レアなのである。
最後の最期で一度しか味わえないイベントを味あわされているならば、楽しまないと損じゃないか。どうせ死ぬのだから、どんな形であろうと『楽しみながら死んでいけた方がいいに決まっている』。
私はそう信じて生きてきたのだし、選んできた理由は最期まで初志貫徹しないと竜頭蛇尾も甚だしくてなんかイヤだ。
幸いなことに、彼自身の助けを呼ぶ声が予想以上に大きすぎてて近所にある家屋から騒音被害で警察に通報されるレベルになっている。これなら彼が警備員に邪魔されないため細工をしていたとしても警察が来てくれて彼は助かる。
報いは受けさせたかったが、殺すまでする気のなかった人間が助けられるのは良いことだと言っていい。素直に喜んでおくとしよう。これで私も後顧の憂いなく死んでいけることだしな・・・・・・。
なにもいいことのない、禄でもない人生だった・・・・・・とは言えまい。好き放題に自分の信じた道を貫いておきながら終わる段になって言っていい台詞ではない。
だからといって他の言葉を残すことは出来ない。なぜなら体力が残ってないからだ。先ほどの挙動で無茶をしすぎた。血が足りない。必要分は流れだし、私が浮かぶ血の池地獄を形作るのに使われてしまっている。因果応報とはまさにこのことだな。
霞みゆく視界。すべての音が小さくなっていき、聞きたいものが聞こえなくなり見たいものが見れなくなる。・・・これが私の死か。ラスト・バタリオンが言ってたほどに『殺されて死んでいく』のも大したものではなかったな・・・・・・。
やがて私の体は冷たくなって、死んで逝く。
何一つ言い残せぬまま。何一つ言い残す体力など残されていなくなったから死んでいく。
リアル人生劇場、これにて閉幕。
享年、16歳。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・そのはずだった。が、しかしーーーーーーー。
「やれやれ、まさかこんな事になるとはねぇー・・・・・・」
私は『空で行われている剣劇』を見上げて鑑賞しながら一人ごちる。
場所は東京だ。シュタインズ・ゲートでお馴染みのラジ館があるから見間違いようがない。
その日本首都東京の頭上を高速で飛び回りながら、襲い来るミサイル群の雨を切り落としまくっては眼下に見下ろす人々を守り抜かんとする一騎の『騎士』がいた。
純白の騎士だ。あるいは騎士の纏う鎧だけかな? 騎士とは馬に乗って戦うからこそ騎士なのであり、乗るべき愛馬をもたない騎士鎧に騎士を名乗る資格はあるまい。とりあえずは《妖精》とでも名付けておくか。
と言うのも、その鎧武者は騎士と呼ぶにはフォルムが曲線的すぎて丸みがあり、何となく『女性をイメージさせる』ものがあったからだ。
制作者の意図か、使い手の性質故なのかについては初見の私に分かるはずもない事柄ではあるが、それでも『其れが女性である事実』だけは一目瞭然すぎてハッキリ分かった。
周囲の人々が其れを見上げながら口々に何かを叫んでおり、聞き取る努力をしてみると幾つかの単語が複数の口から異口同音に漏れてきているのが判別できた。
『一ヶ月前』『篠ノ之束』『宇宙開発』『IS』。
そして『インフィニット・ストラトス』。
おそらく最後の奴が、あの空でチャンバラ演じている妖精の名前なのだろう。個体名か機種名なのかまでは知りようもないことなのでどうでもいいがな。
「さて・・・・・・こんなところで油を売っていても仕方がないのだし、どこかに行くか」
似たような展開を見ていることに飽きた私は背を向けて、その場を歩き去ることにした。
此処が何処で何であろうと、自分が出来ること、したいことは誰であろうと限定されている。
自宅の有る無し、両親の生死、年号、年月日、地図帳・・・etc.etc.。確認しておくべき事項はいくらでもあり、今の時点で確認できる事柄は非常に少なく時間は有限だ。
『撃たれてしまった後のミサイルがどう落とされるか』を見物するのに浪費する余裕はないのである。
一度でも撃たれてしまえば、日本に対処できる能力はおそらくあるまい。仮に迎撃ミサイルで撃ち落とせたとしても、この数が相手では焼け石に水にさえなれるかどうか。
自分たち全員が死ぬか生き残れるかは、手の届かない大空でチャンバラしている妖精が決めてくれること。“自分以外は自分の戦場に入ってくるな!”とでも言うかのような傲慢さは感じなくもないが、それでも事実は事実だ。受け入れて認めよう。
この事態に際して我々日本人にできることなど一つもないと。
・・・と言って、出来ないことを『出来ない出来ない』と喚いたところで出来るようになるわけでもない。なら、いま出来ることをやるだけだ。子供でも分かる簡単な道理でしかない。
選んで進むのに躊躇する理由はどこにも見当たらない、当たり前すぎる選択肢。
他の候補が存在しない選択肢を選ぶだけだから、気楽で良かった。
「へぇー・・・。私の造りだしたISの活躍に背を向けて歩み去れる人なんて実在してたんだぁ~。知らなかったなぁー、束さんビックリどっきりドンキー☆ きゃはっ♪
ーーーちょ~~~~~~~~~っとだけだけど束さん、興味わいちゃったよ。あの“女の子”に・・・。
ユ・ウ・カ・イ、しちゃおっかっなー☆ あはぁっ♪」
つづく