『IS原作の妄想作品集』   作:ひきがやもとまち

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三話目です。今出来てるのはここまでです。


第2話「世界最強、剣・斬!」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 

 狂った形相の瞳に限界まで涙を湛えて、束さんは私と相対し続けたまま一瞬たりとも視線を逸らそうとはしません。

 

 ーー逸らしたら敗けだ、負けたくない。私はもう二度と、ちーちゃん以外の人間には負けてなんかやらない!ーー

 

 そう無言で宣言されているかのようで、打つべき手も取るべき手段も、選びうる選択肢すら持ち合わせていない私には、ただただ見つめ合うことしかできませんでした。

 

 数秒が経ちました。まだ膠着状態は続いています。

 

 さらに数秒が経ちました。まだ今のところは現状維持です。

 

 三十秒がたった頃、ようやく事態に変化が訪れました。

 

 ーーアホが乱入してきたせいでで、状況は混迷の度を極めまくりやがったのですよ・・・。

 

 

 

「こぉのバカ幼馴染みがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!」

 

「ぐっはぁぁぁぁぁぁぁぁっぶべはらうぇらほうえほぅっ!!!!!」

 

 

 ーー猛スピードで走ってきたナニカに殴り飛ばされた束さんが吹っ飛ばされて行くのを黙って見送り、未来の全世界的加害者になる少女を前科持ちになる前に(つまりは無実です。将来的な危険度故に断罪されました。哀れです)打ち倒して成敗してのけた見覚えのある黒髪の少女の姿を、私はボンヤリ見つめてみます。

 

 轟音と共に走り抜け、爆音と共に天災を地に沈めた少女。

 

 なんだかスゴ~ク見覚えがあるというか、既視感がありまくる異常なまでの行動力。

 

 そう。彼女の名前は皆さんよく知る伝説の剣士。世界最強ブリュンヒルーー。

 

「ふはははははっ! 白い閃光参上!」

 

 ーー訂正。変態新人漫画家ピエロ・ダ・ワンサマー先生のお姉さんでした。決して未来の世界最強さんではありません。単なる未来世界で暴れまくってる妖怪のお姉さんです。只それだけです。ええ、本当に。

 

 

 そして始まる、訳わかんない剣舞な音頭。

 

 確か私が見たときには5人でやってましたが、この時空だと1人でも良いみたいですね。さすがはお姉さんで世界最強な人。レベルが違うな~。・・・変態としての。

 

 

「流派! 日の本不敗は正義の風よ!

 全身全霊! 滅私奉国!

 見よ! 南蛮は、紅く燃えているーーーっ!!!」

 

 旧日本軍かよ。

 いや、旧幕府軍か? それとも尊皇攘夷を(表向き)掲げた薩長連合でしょうかね?

 どちらにしても時代錯誤甚だしいんですが。

 

「ふっ・・・愚かだな、束。如何に世が移り変わろうとも、我々が成すべき道はひとつしかない。

 悪は直ちに殴る。

 即ち、悪・即・打。

 それが私、平成の世に生きる壬生の狼『織斑千冬』と言う女の生き様よ」

 

「う、うわー・・・・・・」

 

 再び訂正。壬生狼みたいです。・・・身ボロの間違いなんじゃないですかね? 燃えよ剣~。

 

 つか、これは痛い。痛すぎます。弟の前ではやたら肩肘張ってた原因はこれですか、織斑先生。

 そりゃ弟の蛮行前にしても何も言えんわ。教師としての役割も半端にしか果たせませんわ。どう見たって末期の厨二病患者か、単なるバカにしか見えませんからね。言う資格無いにも程が有りまくりますよ。

 

 てゆーか、都合良く弟が記憶なくしたからって理想の姉像を演じ続けるのは止めてくださいよ。見ている方が本気で恥ずかしくなりますから・・・。

 

 ・・・いやまぁ、この世界は転生の神様が悦しむためだけに捏造した疑似平行世界戦で、原作の《インフィニット・ストラトス》とは一切因果関係は成立してないんですけどね?

 ・・・私はいったい、誰に向かって言い訳してるんだ・・・?

 

「束・・・まさかお前がそこまで愚かだったとはな・・・見損なったし、裏切られた想いだぞ? まるで、信じていた友達に裏切られて父さんにも裏切られたのを思い出した時みたいな心境だよ・・・」

「お父さんからは具体的に、どの様な裏切りを?」

「冷蔵庫に隠しておいたプリンを食べられた」

 

 小学生の好きな食べ物上位はプリン~。

 

「・・・まさか私を差し置いて、学内で尤も大人しい深窓の令嬢と評判の異住セレニアに人生相談を持ちかけようとはな!

 この裏切り者め! 人でなしめ! はぐれ魔術師! モグリの金貸し! ドラゴンも跨いで通る! ゴクドーくん漫遊記ーっ!」

 

 弟がマンガ好きだから、姉はライトノベル好き・・・似すぎる所を間違えまくってるとしか思えないんですけども・・・。しかも微妙に古いし・・・。

 

 つか、この世界における私の立ち位置ってお嬢様キャラだったんかい。今はじめて知らされたわ。

 いや、確かに銀髪碧眼で敬語キャラですもども。表面上だけは礼儀正しいですけども。小学生にしてさえ背がチッコい方ですけども。チッコい割に胸だけはデカいですけ・・・これはいらない要素なので除外させていただきます。

 

 本当にこれ、何とか取り外せないもんかなぁ・・・おしゃれ武装で貧乳とかってないのん?

 

 

 閑話休題。

 

 ーーこの世界の千冬さん(こっちも呼び方を変えました。紛らわしいのと違和感ありすぎで付いていけん)は古い名作ラノベ好きと言う設定みたいですねぇ。

 あと、ついでにエヴァみたいなセカイ系の行けるみたいです。好きなレーベルはファンタジア文庫・・・かな?

 

 時代的にはあっていなくはないのですが・・・イメージが・・・。

 

「悪を成敗! 天・誅・罰!!」

 

 叫んでから始まるのは、女子小学生の女子小学生による小学校のグラウンドを舞台にした一方的な正義による悪の粛正。

 

 千冬さんは正義の味方らしく悪と決めつけた相手を倒すことに容赦も遠慮もしてくれません。情け容赦なく倒れたままの束さんの背中を何度も何度も踏みまくります。

 ・・・拳は?

 

 

「ふぅ・・・悪は滅びた」

「貴女が自分の手で滅ぼしただけなんじゃないですかね? 主観が混じりまくった正義論は、客観的な意味合いでの正義から見れば悪と変わりないと思うのですが・・・」

「正義は勝つ! 強くなければ正義ではない! つまり最強の私こそが正義である!」

「うわー・・・・・・」

 

 こっちはこっちでヒッドイなぁ・・・。弟さんのヒドい時が混じり合ってます。て言うか、ダメな部分を合体させてどうすんの?

 

 ーーあと、倒れ伏して動かなくなってる束さんが少しだけ心配です。ピクリともピクピクともしません。完全に気を失ってらっしゃいますね、これは・・・。

 

「ところでだがな異住セレニア。お前・・・今のこいつから聞いた話をどう使う腹積もりなのだ?」

「貴女はどの部分を、どう使って欲しいと願っているのですか?」

 

 即答で反問してきた私に千冬さんは目に見えてたしろぐと、やや気圧された様子ながらもこちらの目をまっすぐ見つめ返しながら先ほどよりも1オクターブぐらい小さな声で、こう呟いて答えとしてきました。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・束がイジメに遭っていて、それを相談した先生からは音沙汰無いまま今日まで来ている事について、余計な介入はなしに願おう。

 これ以上厄介ごとを増やして、束の傷つきやすい精神を無駄に刺激したくはないのでな」

 

 やはりと言うか、予想通りと言うべきなのか。

 千冬さんもまた弟の織斑さんと同じ形で早とちりし先走った行動に出たようですね。そのせいで意図しないまま部外者のどっちつかずな第三勢力に情報提供してしまうという醜態を晒す事につながる。織斑姉弟の悪い癖、とでも言うべき特徴なのでしょう。血は争えませんねぇ~。

 

「そうだったのですか。それは知りませんでしたよ。私が知らなかった情報を教えていただきまして、ありがとうございます」

「な・・・!? 貴様、私を謀っていたのか!?」

「貴女が勝手に自分の親友の秘密を暴露しただけですが・・・?」

 

 ぷいっ! と、千冬さんは世界最強の名に恥じない早さでそっぽを向いてから口笛を吹き始めました。この姉弟・・・似てねぇー! むしろ千冬さんのダメな部分を修正したのが織斑さんのような気が・・・。

 

 今こうして過去の現物を見てみると、織斑さんって正義の味方系主人公としてはまだしもラブコメタイプではあったんですね。ヒーローギャグ漫画の主人公じゃなしに。

 いや、途中からはそうなってたか? あんまし覚えてないんですよねー、出会った当初あたりのことは。その後過ごした期間が余りにも濃密すぎたものですから、つい・・・。

 

 ごめんなさい、原作の織斑さん。もしも第四の人生が再び《インフィニット・ストラトス》だった場合には初期から尊重しますので、後生ですから許しといてください。

 

「それで? 情報提供には感謝の意を表しますが、私からの質問の答えにはなっていませんので、出来ればお答え願えませんか?」

「・・・・・・? 何のことだ?」

「だーかーらー、貴女のお願いであり要望についてです。

 貴女が私にして欲しいこと、してもらいたいと願うこと、してくれたら助かるな嬉しいなと言った些細で個人的なお願い事ですよ。それが有るなら聞かせてくださいとお願いしているのです。

 つーか、それがあるからこそ階段を使わずに、わざわざ3階の窓辺から飛び降りてきたのでは無いのですか?」

 

 私は彼女が出てきた場所、やってきた方向から逆算して向かい側の校舎にある窓の開け放たれた教室に目を向けながら、こちらを見下ろす生徒たちで溢れかえった音楽室を見上げてため息を付きます。

 3階は3階でも、着地地点の足場が桜並木になってる場所なんですが・・・。割と本気で、どーやって生き延びたの?この人・・・。まさか本物の東方先生じゃないでしょうね? あるいは弟子だったとしても私はドン引きしますよ?

 ・・・あれ? なんか織斑さんが弟子入りしたって言ってたドイツ人の忍者さんがいたような気が・・・気のせいです。気のせいだと思いたいです。これ以上Gの世界に浸食されたくねぇんで。

 

「・・・で? お返事は?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 私からの再度の問いかけ(見ての通り誤魔化しです。内心知られなけりゃ誤魔化せます。たぶん!)に千冬さんは激しく逡巡して狼狽えはじめたので不思議に思っていると。

 

「・・・・・・・・・そ、そう言うのはちょっと・・・苦手だ」

「・・・・・・はい?」

「私は、守るための刀だ。皆を守るため、仲間たちを守るため、正義を守るための刀。

 刀は人を切ることで人を守る武器。強力な武器自身が願いを持つのは危険すぎる・・・」

「はぁ」

 

 う~ん・・・やっぱり変なところだけ織斑さんとソックリで、ダメなところだけ寄せ集めてるヘンテコな感じが物凄い。妖怪さんと織斑さんが融合して、なんだかよく分かんない変な侍少女になっちゃってますね。

 

「では、最初の質問を補完するために必要な補助としての質問です。

 貴女にとって守るべき者たちの定義とは、一体どう言ったものなので?」

「虐げられている者たち、理不尽な暴力に怯える者たち、弱き者たち、強くはない者たち。そして何よりも尊く守り抜いてやりたいと願うのは、自分よりも強い者に挑むために強くなろうと足掻いている、今はまだ弱い者たちだ。

 彼ら彼女らが弱いうちに手折られるのを防ぐことこそ私の使命、そして生きる証なのだ」

「わかりました、了解です。そうなってきますので今しばらくお待ちください」

「そう! だからこそ私はーー! ・・・って、あれ? 今なんて・・・」

 

 まだ演説の途中だったらしく、陶酔した口調でなにかを続けようとしているかにも見えた彼女でしたが、私は敢えて無視して話を先に進めることにいたします。

 正直、トリューニヒト国防委員長のアジ演説に慣れちゃってる私には退屈だったんですよねー。

 あ~あ、やっぱ凄いわあの人は。美辞麗句だけで同盟市民130億の心を鷲掴んだだけのことは有りまくりますわ。ド素人の三流演説が三流以下の聞くに耐えない雑音にしか聞こえなくなるなんて、いくらなんでも凄すぎる。誰にでも取り柄っていうのは有るものなんですねー。

 

 ーーそう。誰にでも取り柄はある。私にだって勿論あります。戦争です。

 

 ーーけど、

 

 ーー戦争の手法を戦争でしか用いれないなんて・・・ヤン提督が聞いたら悲しまれちゃうでしょ?

 

 

「え、あの、ちょっと・・・」

「大丈夫です、安心してください。直ぐ済みますから」

「い、いや、安心とかじゃなくて心配でもなくて、そもそも何をどう心配して安心していいのかだけでも説明をだな?」

「大丈夫です。問題ありません」

 

 はい、これでフラグは立ちました。

 後はただ、バッドエンドになればゲームオーバーで依頼達成です。

 

「先生、ひとつだけ宜しいでしょうか?」

「な、なんだ異住? 今までおとなしかったお前が突然、藪から棒に・・・」

 

 見物客と化していた一人、担任教師の岡部先生(体育教師風の見た目はともかく、進級直後の春にタンクトップ姿はどうかと思われますが)は、今日初めてまともに私から話しかけられて若干ですが挙動不審です。

 慣れない生徒に手を焼くのは小学校に限らず、学校教員の宿命ですからねー。しゃーないしゃーない、本当にしゃーないのです。

 

 ですので、先生。仕方ないのだと割り切って、今日から二年間問題児二人+一人の起こす揉め事担当のお役目をお願いしますね?

 

「では、失礼して。ーーあなたが篠ノ之束さんのイジメ問題に関連して教職員として果たすべき義務を怠った無能怠惰な給料泥棒教師であることが判明しました。

 即刻土下座して罪を詫び、反省してください。無能を養う余裕は今の日本政府にないことをお忘れなく。PS.賠償要求はしないであげますので感謝なさい。

 ーー以上です」

 

 数十秒に渡って続いた長い沈黙。

 それが弾けてからは展開が早く、私は引き摺られる様にして職員室へと連行されていき、その道中でポカンとした表情のまま私の顔を見つめている織斑さんに小さく片手を振ってあげました。それだけで全てを察したらしい彼女は、確かに学校教師に向いているのでしょうね。

 その後、学校中に轟く大音量で「またしても謀ったな“セレニア”ーーっ!!」と叫んでいたのは正直どうかと思わなくもないですが、名字読みではなくなったので、一先ず良しとしておきましょう。

 

 

 こうして私は、小学校三年生に進級した途端にめでたく自宅謹慎を言い渡されました。

 

(ちなみにですが法律によると、退学処分は義務教育学校では認められていません。停学処分も同様です。

 ただし、私立だと退学が可能となるそうですので、正しさを追求しすぎる場合はお気をつけて)

 

 つまり、私は世界最強の守るべき対象に「仲間たちのため、勝てない敵に挑んで迫害されるようになった弱い者」を追加することに成功したのです。やったねセレちゃん!大勝利ー!

 

 

 どこからか聞こえてくる転生の神様からの感想は、

 

「あ~、そう来たかー。・・・やっぱ君はおもしろいね! すっごく意外で笑えたよ!

 これからも頑張って! 期待させてもらうから! グッドラック!」

 

 と、ここまでは良かったのですが、親指立ててサムズアップしている映像が脳に直接送られてきたときはウンザリさせられました。・・・この女神(?)超うぜぇ~・・・。

 

 

 

 このようにして私の第三の人生、《インフィニット・ストラトス》過去世界へのタイムパージは正式にスタートすることになりました。

 

 しばらくしてから私の家に、仏頂面したお二人が毎日遊びに来るようになる事を、今このときの私は知り得ていません。

 

 負け続けの私の人生(戦争)において何度も何度も経験してきた敗北。

 それでも私はこれを、良いものだと感じたのです。

 良い、敗戦だったと。

 

 

 オリジナルがどうであろうと、自分自身が誰かに造られた偽物だと言う事実を伝えられても、たとえこの世界で何をやっても無駄だ諦めろ、確定した未来は変えられないと教えてもらった後だとしても、やはり私は私です。変われないし変わらない。

 変わってやる気なんか、少しも持ってやしないのです。

 

 こっちの私は、あっちの私と違う。

 だから何だ、それがどうした。違っていたら戦争しなくちゃいけないなんてルールに私は従わない。従ってなんかやらない。私の戦争は私で決める。

 

 誰と何時戦うかも、戦う理由も戦う意義も価値もすべて。私の物だ。私の物は私だけが決めれる唯一の物だ。誰にもやらない渡さない。神様にだって決めさせてなんかやるものか。

 

 それが私です。少佐ではなく、オリジナルとも多分違う道を選んだのであろう、私という一人の人間。その戦うべき戦場が、生きていきたい戦争が此処だった。ただそれだけの事。大した意義も意味もありゃしません。

 

 これは自己満足です。この物語は自己満足のためだけに生きてる神様がコピペした、傲慢で独りよがりな転生者の少女の織りなすクソッタレな反吐がでる物語。

 

 記憶を引き継ぎ第三の人生を生きる『三番目』の私は、一体どんな糞食らえな人生(戦争)を生きて行くのでしょうか? 気持ち悪くて吐きそうなくらいワクワクしてきますよ。楽しくなさそうで。

 

 

 ーー余談ですが、戦争以外で敗北して初めて得た勝利の味は、母からのいた~いお尻ペンペンであったことをお知らせしておきます。

 

 ・・・生まれ変わって初めて流した涙は恥ずかしさのためでした。

 この事をオリジナルが知ったらどう思うのでしょうかね? 知りたくないから知れない世界に転生させてもらえたことを、神様に感謝いたします。

 

つづく

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