それは学校からの帰り道で歩いてた時のことだった。
転生の神様のミスで、死ぬ予定になかった俺は走ってきた車にはねられて呆気なく死んでしまい、お詫びの印に好きな作品世界で好きなキャラクターに転生できることになった。しかも転生特典でチート付きだという。なんというサービス。
が、そこまでは良かったのだが問題が発生した。
俺が望んだ転生対象の『桃白白(タオ・パイパイ)』では、世界観的にチート与えたところで最強になれないようなのである。
桃白白は言うまでもなく名作漫画『ドラゴンボール』の敵キャラで、世界一の殺し屋と呼ばれている(もしくは自称している)男だ。
DB序盤において、初めて悟空を圧倒したキャラとして知られている。
もっとも、その直後にパワーアップした悟空によりアッサリと倒されてしまうことから、出落ち感満載なキャラとしても有名な訳なのだが・・・。
俺自身は結構いると思っているのだが、ドラゴンボールの敵キャラクターの中で『レッドリボン軍』が一番好きだと思ったりしないか? 俺は大好きなんだけどなぁ~。
――それは、さておき。
直近の課題として序盤の最弱(に近い)集団レッドリボン軍の一員ではないにしても、Z以降も続いていくDB世界で桃白白が無双していくのは能力値限界的に不可能なのは神様でもどうしようもないらしい。
無理矢理な強化も昔は有りだったらしいのだが、最近チート転生案件が重なりすぎてしまったせいで上層部から加減を求められてしまったとのことだった。その人が本来持ってる上限を超えすぎるためには、何らかの理由付けが必要不可欠らしいのである。スーパーサイヤ人とかな。やっぱサイヤ人生まれはズリぃ。
結局、相談の末に妥協案として『専用のパワードスーツを着れば原作通りの力が出せる。代わりに普段は現地世界の常識を越えすぎない強さに留める』と言った感じに落ち着いた。
転生先は『インフィニット・ストラトス』と言う名の作品世界。
俺も何度か見たことがある、ISという略称の機械鎧をまとって戦う現代が舞台のバトルラブコメものだ。他にもいくつか候補はあったのだが、単に俺が知ってるのだとこれしかなかった。何も知らない世界に飛ばされて楽しむ前向きさは悟空たちだけで十分である。敵キャラ志願者に求めるな。
と言うわけで、転生の神様とはここで永久のお別れ。次会うときは無いとのことだったので、お互い後腐れ無く別れることが出来た。グ~ッドラ~~ック。
――そして、現在。
生まれ変わってから十六年が過ぎた俺・・・いや、“私”は今、ある場所に呼ばれて到着したところなのである。
「はじめまして。私が香港一の殺し屋『桃白白』だじょー」
『・・・・・・・・・・・・』
香港マフィア『九頭竜』の本部ビルで行われていた秘密会議の場は、部屋に入ってきた少年の挨拶により一気に白けたムードで満たされてしまった。
ふざけたガキだ、ふざけた恰好だ、ふざけた挨拶の仕方だ、ここをどこだと思っている!? ・・・そんな悪意で満たされていく部屋の中で少年は一人へ依然とボスの前へと進み出て、今一度ちゃんとした自己紹介と挨拶をする。
「どうも、はじめまして。私が香港一の殺し屋の桃白白です。今日は珍しくあなた方の方から仕事の依頼があると伺ったので参ったのですが・・・お取り込み中でしたかな? それとも私の悪口を聞いて欲しいのが依頼の内容でしょうか? 私としてはどちらでも構いませんぞ。
お約束の金さえいただけるのでしたら、何時間でもお付き合いして差し上げましょう。ちなみに料金は一人につき十分、五千万ウォンです」
「・・・・・・・・・どうも」
相手の不遜さに内心で歯ぎしりしながら、ボスは部下どもを一睨みして「少し黙れ」と脅しつけて縮こまらせる。
彼とて気持ちは部下たちと同じだ。目の前のクソガキをぶち殺して死体をドブ川の底深くに沈めてやりたい。出来るものなら今すぐそうしろと命じたいほどに。
だが、彼を敵に回すのはあまりにリスクが大きすぎた。割に合わないのである。それをボスは、この二年間で嫌と言うほど思い知らされている。
それほどまでに目の前に立つ、お下げ髪の少年は危険極まりない人物なのである。
桃白白と言えば、香港裏社会で知らぬ者とていない悪夢の代名詞と呼ばれている人物だ。
数年前に突如として現れ、殺し屋として一躍有名人に成り上がってしまっている。今までに殺された組織のボスたちの顔ぶれを見れば、その急成長ぶりも納得せざるを得ないほどに。
彼の信念は、ただひたすら『金、金、金』であり、金さえ払えば誰からのどんな奴を殺す依頼であろうと受けてくれる。それを利用して対立組織のボスを亡き者にし、乗っ取ろうと考えた輩が共倒れに終わって最後に残った最大組織が『九頭竜』と言うわけだったから、その力と強さを誰よりも知るのが最後に生き残っていたボスであるのもまた道理。
だからこそ、いつ誰からの依頼で自分を殺しに来るかわからない存在であり、今では香港裏社会で随一の大物となった自分が枕を高くして眠れないようにしているクソ生意気なガキでもあるため心中穏やかではいられない。
本当だったら、こんな奴に依頼なんて死んでもしたく無い。・・・・・・が、そうも言ってられない事情が裏社会の側にもあるのだ。やむを得ない。
「・・・今日来てもらったのは他でもない。
オリムライチカについては君も知っているだろうな?」
ボスの口から思いもかけぬ名前が出てきたことから桃白白はわずかに驚き、片眉を上げる。
「ええ、まぁ多少は。先日見つかった世界で初めてISを動かした男の名前で、元IS王者で世界チャンピオンの弟でしょう?」
「そうだ。そのオリムライチカだ」
「そして、十年と少し前に世の中を一変させた『白騎士事件』の実行犯、織斑千冬の弟でもある男の名前でしたな」
「・・・・・・」
今度はボスは即答しなかった。むしろ黙り込んだまま「どうしてその事を?」と、強い視線で桃白白に答えを要求する。
それに対して相手は大したことではないと言うように飄々とした言動で軽く応じてやる。
「私も裏社会の人間です。一応は、ですがね。世俗の情報にまるきり興味が無いというわけでも無い。ある程度は良い耳を確保しておりますものでしてね・・・」
「・・・ふん、なるほどな・・・さすがに香港一の殺し屋は伊達ではないというわけか・・・」
「ああ、その人物について知りたければ金さえお支払いいただけたらお教えして差し上げるが、情報料は法外ですぞ? 最低でも1兆ウォンはいただきたい」
「・・・・・・・・・・・・結構です」
苦々しい口調と表情で遮って、ボスは部下の一人から桃白白に写真を手渡させ、仕事内容について説明を始めてやる。
「知っての通り、彼は今のIS社会にとって最大級の注目株だ。狙っている組織は合法非合法を問わず多数いる。そんな連中と互角にやり合いながら目的を達することが出来そうなのは君しかおらんのだよ。だから君に依頼した。彼の“護衛”をな」
「護衛? 失礼ながら私は殺し屋だと言うことは、そちらもご存じだと思って参ったつもりでしたが・・・間違いでしたかな?」
「間違ってはおらん。君の言うことは正しい」
ボスはうなずいて首肯し、「だが」と、その後の続きを連ねるのを忘れたわけではない。
「だが、君にもわかるだろう? 今は女尊男卑の世の中・・・時代は変わったのだ。男社会のマフィア同士で殺し合いをしていても双方共に何の利益にもつながらない。
むしろここは過去の遺恨を捨てて、女尊男卑政権とゆう強大な敵に立ち向かうため手を携えるべきだと私は考えておる。その上で女尊男卑を打倒し、男優位の世の中を取り戻した後でゆっくりと世界のその後を考えるべきじゃないか。そうは思わんかね君は?」
「・・・・・・・・・なるほど。確かにその通りかも知れませんな」
うなずいて、桃白白は了解する。
――コイツ、日和りやがったな、と。
考えてみれば当然のことで、世の中のあらゆる階層が女性層に移り変わってゆく中、香港裏社会だけが未だに男中心の男尊女卑社会であり続けていられてたのは偏に桃白白の存在による脅威が占めていた部分が大きい。
そんな彼がいない裏社会でトップに立ちたいと願う九頭竜のボスにとって政府に身売りするのに躊躇いなどわずかなりとも覚えはすまい。
「しかし、彼は先日の一件でIS学園に入学することが決まったと耳にしました。残念ながら私は男で、ISは女性しか動かすことが出来ないと聞きましたが?」
「それは心配ない。今回の仕事を依頼するまえに、別の仕事依頼があっただろう? アレは実は私が君をテストすることを目的として雇ったものだったのだよ。
その時の試験で確認したのだが・・・喜ぶがいい。君は世界で二番目の男性IS操縦者であり、特権階級の一員になれる資格を持つ人間だった。だからこそ今回の仕事は君でなくてはダメだった、と言うわけなのだよ」
「ああ、なるほど。そう言うことでしたか」
桃白白は納得した。
――そう言えば先日、織斑一夏の一件を聞きつけた中国の狂犬が、彼を追うようにIS学園へ入学させるよう軍上層部に脅しをかけてきたと言う話を耳にしたな、と。
香港政府としては中国に遅れを取り続けるのは好ましくなかろう。それで今回の一件を餌にして九頭竜から自分に依頼を持ち込ませた。政府は犯罪組織の違法行為に関与していませんとアピールした上で。
「こちらで最新鋭のISを用意した。――おい、誰か格納庫へ案内してやれ」
「へい」
ボスに命じられ、飼い犬の一匹が進み出てくる。
「その機体は我々が独自のルートで入手したコアに改造を施し、軍が保有する最新鋭のものと遜色ない性能を持たせた規格外の代物なのだが、なにぶんにも非合法の塊でな。IS委員会による監査が厳しすぎるので、偽造でごまかすには限度があるのだよ。
だから、ワシ個人がもつコネクションを使って香港政府から韓国代表候補という肩書きと共に入手してきておいた。このご時世、大抵の無茶は通せる肩書きと特権だ。仕事もさぞかしやりやすくなるだろう。期待してるよ白虎虎君。フフフフフ・・・・・・」
「どうも」
期待通りというか、予想通りと言うべきなのか。
まぁ、どちらでも良いし同じことなのだが、九頭竜は香港政治家の汚職に一枚かませてもらうのが目的で自分を手土産に差し出したらしい。
本気で自分には関係ない、どうでも良いことではあったけれども。
「ああ、ところでですが。一つお聞きしてよろしいですかな?」
「なんだ? まだ仕事内容でわからない部分があったのか?」
「いえ、仕事とは直接関係ないのですが・・・・・・その屏風の後ろに隠れて、私が入ってきたときよりずっと気持ちの悪い笑顔を浮かべている、犬みたいな醜い顔の女性はどなたですかな? もしサインが欲しいようでしたら書いて差し上げますが? もちろん有料で」
『!!??』
「あなた方、裏組織にも面子というものがおありでしょう。
よそ者の犬にいつまでもデカい顔をしていられるのは気にくわないが、男の自分たちだけだと楯突く力がないから優秀な番犬がいるのだという事実を見せつけたい。
その為にはソイツらの下っ端を見せしめにぶちのめせば良いという考えには同意ですし、ソイツらが狙っている対象がわかっているとするならば待ち伏せするにも丁度良いですからな。気持ちはわかりますとも」
『・・・・・・』
「ご心配なく。私は依頼人が何を目的として依頼してきたかなどに興味はない。ただ、お約束した金さえいただけたらそれで十分。織斑一夏だろうと、亡霊のようなテロ組織の犬だろうと消してみせましょう」
『・・・・・・」
「ですが、あなた方はとても運がいい。今年は私が殺し屋をはじめて十年と少しの『殺し屋さん十周年と少しキャンペーン』で半額セールを実施中でしてな。多少のアフターケアはサービスの範疇として還元させていただいているところ。
普段の私なら、こんなことでもお金儲けに使うところですが、今のはサービスということにさせていただきましょう。ラッキーですな、はっはっは。――では、失礼」
桃白白は部屋を出て行き、その後にボスがどうなったかについては興味もなかったので調べようとせず、だからどうなったのかまるで知らない。
ただ、少なくとも仕事量は毎月支払われてくるみたいだったから、それで良かった。
生きているのか代替わりしたのかなど関係ない。
金に、持ち主の色は付いていないのだから・・・・・・。
オリジナル設定:
桃白白
今作主人公の転生者。
香港政府がマフィアを通じて雇い入れ、香港代表候補生にして専用機持ちという肩書きを与えられた殺し屋の少年。
第四次スパロボFに出てくるウォン・ユンファとマスター・アジアがごっちゃになったような設定のキャラ。実際、似たような立ち位置にある存在。
見た目はチョビ髭をなくして背が低くなった桃白白。
生身の強さは千冬より弱いけど、学生の域は超えている。並の人間ではまず勝てない。
服にこだわりがあり、普段は桃白白コスチューム以外を着るのを嫌がるが、IS学園ではさすがに制服を着ている。
曰く、「学生でいる間は、このダサい制服で我慢していてやる」
・・・ただし、制服改造自由なのを知ってからは改造しまくって原形を留めていないレベルにまで達してしまうことは神のみぞ知る未来の出来事・・・。
戦う理由と目的は、ただただ『金、金、金』。それだけ。
逆に金にならない殺しには一切興味がないので、意外と敵を見逃してやることも多い人。
金目当ての悪人だが、恨みや憎しみで世界になにかしたいと願う絶望とは無縁な拝金主義者。
専用機
白虎虎(パイ・フウフウ)
香港が開発した第三世代機。技術的には中国に劣るが、それでも第二世代と比べたら十分に基本性能は高い機体。操縦者に合わせ、接近格闘戦を得意としている。
機体色はピンク。
武装
『連振青竜刀』
ISサイズの青竜刀。甲竜の双天牙月と違って常識的な大きさで片刃。あくまで剣術用の刀剣である。
『満漢全席』
イグニッション・ブーストで急速接近してから放たれる連続攻撃。武装というより、IS機能を取り入れた彼個人の技と言う方が正しい。
拳と蹴りの連続攻撃後に相手を蹴り上げ、ブースターで上空へと急上昇し、両腕を振り下ろして地面へと叩きつけて大ダメージを与える。
あくまで相手を『殺さないこと』が大前提の試合であるIS戦用としては意外と優れており、食らえばエネルギーを大幅に削られる上、彼の技量で回避が難しい。
ワンオフ・アビリティーは言うまでもなく【どどん波】。
元々はブルー・ティアーズのスターライトと同じ系統の武器で、高火力のビーム射撃兵装でしかなかったが、桃白白の技量が合わさることにより『バリア貫通能力』を有する武器に変質してしまった。
白式の『バリア無効化』と違って、バリアエネルギーを削る効果はなく、ただ一点突破で貫くだけ。装甲には普通のビーム兵器として作用する。
ただし、生身の人間に当たったら洒落にならんことになるので、桃白白自身のコントロールによりバリアーを貫通して本人に直接ダメージを与えられる程度にまで抑えられている。
セカンド・シフトで『スーパーどどん波』に進化することはあり得るのだろうか・・・?
*実はブルー将軍も大好きな作者。いつか彼を主人公にしたIS二次作とか書いてみたいですね♪