ただし、多すぎてしまって、前にも同じの出してるかどうか確認するのが困難です。
もし見つけた場合には連絡していただけると助かります。
「IS学年1年1組生徒、比企谷八幡による『IS学園入学に当たっての一言』
ーーISとは兵器であり、秩序が支配する世界を壊した破壊者でもある。
ISを賞賛する者たちは常にISの存在に自らを依存させ、自己と周囲を欺く。
自らを取り巻くIS社会という名の環境、そのすべてを肯定的に捉える。
何か致命的な失敗をしても、それは自分に「生まれもって優れたIS適正がないからだ」と失敗を正当化し、青かった自分の苦い思い出として記憶に刻むのだ。
例を挙げよう。彼らはISの登場により台頭してきた女尊男卑思想によって著しく職業選択の幅を狭められ、進学時における男子生徒が合格する割合も往事よりかは大幅に低下している現実があるのは事実だが、彼らはその事実を犯罪行為に手を染めた際に「女尊男卑思想による支配のへの反逆」と呼んで問題をすり替えようとする。
彼らは青春の二文字の前なら、どんな軽犯罪も一般的な解釈も社会通念すら捻じ曲げて見せる。彼らにかかれば嘘も秘密も罪科も失敗もISの存在さえも青春のスパイスでしかないのだ。
そして彼らはその悪に、その失敗に、ISに特別性を見いだす。
自分たちの失敗は悉くIS適正を持たない男に生まれたからであり、優れたIS適正を持つ女に生まれなかった自分が失敗するのは必然的な帰結であって、自らの努力が不足していたわけでは決してない。
自分たちの失敗はIS適正を持たない男であると言う事実を自覚し、歪んだ思想に満ちた社会を大らかな心と寛容さをもって受け入れて、IS社会に生きる大人の男となるために必要な階段だったのだと美化しようとする。
その一方で、彼らは才ある者たちには結果を求め、求められて答えられなかった者たちを失敗者、敗北者と見下すことで自己の細やかなプライドを守ろうとする。
自分たちIS適正を持たぬ者たちの失敗は悉く青春の一部分であるが、IS適正を持って生まれたIS操縦者たち選ばれたエリートたちの敗北と失敗は青春ではなく、才能が低い故の敗北であり失敗であると断じるのだ。
仮に失敗することが青春の一部分であり、IS適正を持って生まれたことが才ある者の証拠であるとするならば、偶然にも世界初の男性IS操縦者が発見されたことで実行された「全国男子IS適性検査」に引っかかり、世界で二番目の男性IS操縦者として大々的に発表された直後にフランスでも同じ様な理由で「世界で二番目の男性IS操縦者」が発見されたことで「偽物」扱いされている俺は誰よりも青春ど真ん中で生きてなければおかしくないだろうか?
しかし彼らも世間様もそれを認めないだろう。
なんのことはない。すべて彼らのご都合主義でしかない。
なら、それは欺瞞だろう。嘘も欺瞞も秘密も詐術も政治的理由によって国家と世間が罪のない無力な少年を中傷する行為も糾弾されてしかるべきものだ。
彼らは悪だ。ISと言う名の元凶が生んだ社会悪の産物なのである。
と言うことは、逆説的にIS適正を持ちながら青春を謳歌できていないと正直に断言する者こそが真の正義であり、誠の強さの持ち主でもある。
結論を言おう。ISと、ISで恩恵を受けてる全てのリア充IS関係者どもよ。
砕け散れ。
「砕け散るのは貴様だ、馬鹿者。なんなら今すぐこの場で私が直々に介錯してやろうか?」
「謹んで遠慮します。書き直します、ごめんなさい。殴らないで切らないで殺さないで」
俺の書いた作文を静かな声で力強く読み上げたIS学園教師織斑千冬先生は、背後に吹き荒れるブリザードを背に受けながら無表情に立ち上がって右手の指を一本だけゴキリと鳴らす。
ただそれだけの動作で命の危機を直感させられた俺は、即座に土下座を慣行。決死の命乞いが功を奏したのか、先生は軽くため息をつくと椅子に座り直して事なきを得る。
やがて日本刀みたいに鋭い目つきで俺の顔を睨みつけた。
「なぁ、比企谷。私が転入に際してお前用に出した課題は何だったか覚えているか?」
「・・・・・・はぁ、突発的に入学と転入が決まって勝手が分からない俺が『ISとIS学園をどう思っているのか』というテーマの作文だったと記憶してますけど」
「その通りだ。それで? なぜ貴様は原理主義を掲げるテロリストの宣伝広告文を書いてきたのだ? バカなのか? それとも死にたいのか?」
織斑先生は右手に持ったボールペンの先でコツコツと机を叩き続けている。
ただそれだけの行為が俺の不安をかき立てて、死を意識させられる。
やべぇよこの人、マジ怖ぇよ。帰りたいよ帰りたいよー。八幡、早くおうちに帰って妹の小町と遊び尽くしたいよー。
そんな風に全寮制のIS学園では叶うはずのない妄想をしていたところ、俺の作文を丸めた紙束で頭をはたかれる。地味に痛い。
「お前の目はあれだな、腐った魚の目のようだな」
「・・・とりあえず「くさった死体」の目じゃなかったことを喜んでおきますよ。あいつらの目玉落ち掛かってますから、前が見えなさそうでしたし」
ギランっ!・・・と、織斑先生の目が眇められる。マジで超怖ぇ。
もしかして俺、この場で殺されちゃうの? 死んじゃうの? 小町ごめんな、お兄ちゃんもうお前と遊んでやれそうにないわ。愛しい妹をおいて先立つ不幸を許してくれ。
あ、それからベッドの下にある宝箱にはふれるなよ? 絶対だからな? 死に逝くお兄ちゃんからの最期のお願いはトップシークレットだ。
「・・・・・・・・・はぁ」
しばらく物凄い目力で睨まれてたが、やがて先生は息を吐いて雰囲気を和らげると目からも力を抜いてリラックスする。
さっきよりかは穏やかな声になって、俺にゆっくり語り聞かせるように言葉を紡ぎ出す。
「まぁ、お前の気持ちも分からなくはない。今回の『コレ』は、多分に政治が絡められた結果だからな。大人の都合で振り回されただけのお前にしてみたら理不尽としか映らんだろう。
立場故に配慮はできんが、同情はしているのだぞ? 私なりに、ではあるがな」
そう言って向けてくる同情の視線は本来イヤなものであるはずだったが、この人の場合根が単純すぎて裏と表が存在しない、表裏一体の感性の持ち主故なのか、気づいたときに俺は「そりゃどうも」と比較的普通にすんなり返すことが出来ていた。
「一夏・・・いや、織斑の発見に伴い、未だ見ぬ男性IS操縦者を発掘しようと意気込んだ男性優位の男尊女卑勢力の圧力により全国で実施された男性のみのIS適性検査。その結果として発見された唯一の『披見体』・・・。
表向き世間に公表されていた報道とはかけ離れ過ぎた体験を味あわせてしまった事について、私はアイツの姉として正式に謝罪したいと思い続けていたところだ。ついでという形での謝罪は本来私の好むところではないのだが、この場合は謝罪を行う私の側がお前の流儀にあわせるのが筋と言うものだろう」
「・・・・・・・・・」
俺は答えない。ただ、はじめから腐ってる目の腐りを深めただけだ。
「すまなかったな、比企谷。この通りだ。謝罪の意志を示すための交換条件として、今回の件を不問に伏す。よもや異論はあるまいな?」
「・・・ウッス。お気遣い傷み入ります」
先生は俺の一礼に言葉で返さず、猫を追い払うかのように左手だけで「しっ、しっ」と払うジェスチャーで退室を指示してくれた。
俺はそれに対して既に顔を背けて机に向かい、書類と格闘し始めていた先生に改めてもう一度だけ軽く頭を下げてから職員室に併設されてる生徒指導室を出て、教室へと足を向ける。
「お、なんだ。もう帰ってきてたのか比企谷。探してたんだぜ?」
明るく裏表のない声で話しかけられて、俺は腐った目をそいつへ向ける。
そこには、俺をこんな状況に陥れた現況でもある男が、自覚もなしに爽やかな笑みを浮かべながら片手を上げていた。
「なんだよ、織斑。なにか用でもあったのか?」
「いや、一緒に昼飯でもどうかなって思ってさ。クラスの人たちに聞いたら職員室に呼ばれたらしいって教えられたから探しに行ってたんだけど、丁度行き違いになっちまってたみたいだな」
「・・・・・・・・・」
俺はそいつのーー世界最初の男性IS操縦者の少年「織斑一夏」の目を見ながら、黙って奴の話を聞いている。
どうやら、俺が職員室に呼ばれた理由については聞かされていないし、知りもしないようだ。いや、むしろ『そう言う汚い裏側』があること事態、考えてもいないんじゃないかと思えてくるほど脳天気な無邪気さが今は妙に勘に障る。
「いやだよ、お前一人でいけよ。もしくは篠ノ之でも誘ってやれよ。アイツのことだから喜ぶぞ、きっと」
「箒も呼んだけど、一緒に食べる奴が多い方が飯の美味さが増すだろ? せっかく食堂のオバチャンたちが精魂込めて作ってくれた料理なんだから美味しく食べて感謝しないと失礼じゃないか」
思わず相手の顔を見直した俺は、なんら他意なく悪意も見えない剣道バカの脳天気な笑顔しか見いだせなくて深くため息を付いてしまう。
「・・・??? なんだよ比企谷、溜息なんかついて。調子悪いんだったら保健室行くか?」
「・・・・・・・・・・・・はぁ」
思わず、二度目のため息を付いていた。こいつの性格は、良くも悪くも裏がなさすぎるのだ。
常に前面しか出していないが、余りにもグイグイ押しまくってくるものだから好き嫌いがハッキリと別れすぎてしまう。評価が二極化しやすくて、周囲の人たちがどういう奴かでリア充にもなれるし、毛虫にもなり得る微妙すぎる奴だと俺は判定していた。
本音を吐くときにも嘘を付くときでも目的自体は変わらないままで、揺らがない。
一方で、嘘を付くときの理由が傲慢になりがちだ。
変な呼び方している幼馴染み(ファースト幼馴染みだったか?)の篠ノ之に対して気を使ってる時なんかには見ていられない惨状を呈するが、素を出しまくって問題ない相手と判断すると本音しか見せなくなる。
人の好き嫌いが激しすぎる。
人から好かれるかどうかが、相手の好みに依存しすぎている。
ぼっちの俺から見た今の織斑は、運でリア充になれてるだけの奴なので好きではないが嫌いに徹しきれない微妙な立ち位置にいる。・・・対応に困るから、出来れば話しかけてこないでくれると楽なんだけどなー。そうすれば俺も堂々と無視できてたのに。
「悪いが、織斑。俺は誰かと一緒に飯を食べると好き嫌いを問わず不味く感じて、作った奴への感謝をしなくなる病気にかかっているんだ。食堂のオバチャンに感謝してほしいんだったら別の奴あたってくれ」
「いや、どこのながっぱな狙撃手だよそれ。麦わら海賊団の一員以外にそんな病気にかかる奴がいるはずーー」
「あるんだよ」
相手の言葉を遮り断言することで一瞬だけだが鼻白ませて、その隙に奴の後方で席に着きながら凄い目をして睨んできている織斑のファースト幼馴染みに保護者の役割を押しつけてやる。
「ほら、お前が待たせすぎるから空腹の篠ノ之が怖い目つきで、俺まで睨んでるじゃないか。独り身のぼっちを痴話喧嘩に巻き込むのだけは勘弁してくれよ、いやマジで本気でやめてお願いだから」
「なっ!?」
「え? 箒って、腹が空いてたから朝から機嫌悪かったのか? なぁんだ、そう言うことなら早く言ってくれればよかったのにーーぐほっ!?」
「ち、ちちち、違うわ馬鹿者! そこに直れ! せ、せせ成敗してくれる!」
「だから何でだよ!? なんで俺は毎日毎日防具もなしで、お前の剣道の練習相手を務めさせられなきゃならないんだっ!?」
「私が知るか馬鹿者ぉぉぉぉぉっ!!! 天誅ぅぅぅぅぅぅぅっ!!!!!」
どごごごごごんっ!!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・はぁ。
廊下に出た俺は、今日もまた昼食にピッタリなベストプレイスで優雅な食事をとるため購買へパンを買いに行く。
学食があり、味もいいIS学園で購買利用者は希だが、数少ないリピーターからは以外と評判がいいのである。俺もここのパンは気に入ってるし、客足が少ないから品切れする恐れもない。
そして何より、仲間と一緒に食べたがるリア充どもが来ることは決してない。この一事を以てしてIS学園の購買は聖域認定されても良いのではないかと俺は常から考え続けているのだが。
ーーが、しかし。
「あら、今日もまた一人きりでランチですのね。異性ばかりの学校に一人きりで転校してきた殿方というのは哀れですこと」
「・・・・・・・・・」
思わず吐き出しかけた盛大なため息を、俺は寸でのところで飲み込んで黙り込む。
吉報は一人でしかこないが、凶報は友達を連れて来るという。つまり、ぼっちにとって友達がいるリア充は不幸と1セットの生き物だと言うことだ。ぜひとも一緒縁がないことを願いたい。
・・・ただ、そう言う意味で言うならコイツを凶報とは呼べない。なぜなら友達がいないぼっちだから、俺に不幸を連れてこないのだ。
「まぁ! わたくしからの声かけに際して沈黙で返すなんて無礼ですこと! やはり、このような野蛮きわまる島国で育った殿方に礼儀作法を求めるのは無理だったようですわね!」
胸を反らして片手を添えるポーズを取りながら、居丈高な口調で言い放たれたのは嘘偽りなく、他にどんな表現方法も思いつかない差別発言。
それもポーズを取りながらなんてあざとさまで見せつけておきながら、堂々と自分の身分を誇る生まれながらにして生粋のお嬢様。世のすべてが自分を祝福すべきであると信じて疑っていない傲慢さ。
ーーそれ故に彼女の言動には“嘘”がない。
「・・・ちょっと考え事してたせいで返事するのが遅れただけだ。俺も悪かったと思ってるから、そう怒るなよオルコット」
俺は、彼女曰く『貴族に対する礼儀を弁えない、正すべき平民の態度』で返事をしてやると彼女は「まぁ!」と頬を怒りで紅潮させながら、さっき廊下で出会った直後には暗い色が宿りかけていた瞳に光を取り戻しながら、居丈高な口調で生き生きと『貴族に対する時の接し方』についてレクチャーをし始める。
生き生きと真っ直ぐに、嘘など微塵もないまま、この性格のせいで日本に来てから友達ができてない自分のやり方を変えないために。
「まるでなってませんわね! その程度では来週頭の月曜日にあなたと対戦するわたくしの勝利に泥をつけることしかできませんわ!」
一通りレクチャーが終わった後、彼女はいつも通りの言葉を俺に賜わし、続く発言は少しだけ声量を落とした上で。
「・・・わたくしが一方的に勝利を得るのは自明の理。ですが、それ故に後から『代表候補に一般生徒が敵う訳ないのだから』等とケチを付けられては困りますからね。
それに、ISについて詳しく教えてほしいと頭を下げて頼まれたら教えて差し上げると宣言したのもわたくしです。昨日、遅ればせながら頼み込んでこられたからには貴族として約束は守らなくてはなりません。IS操作の方も、軽くですが指導して差し上げましょう。今日の放課後、第二アリーナまで来るように」
そこまでは僅かに声音を低くしていたが、続く言葉を発する際には自分を鼓舞し、励ますような大声量で俺に向かって手を伸ばす。
「エリートであるわたくしから直々に指導を受けられるなんて、あなたがた下々の庶民にとっては奇跡の如き幸運なのです! まさか断ったりなどなさいませんわよね!?」
ぼっちで補欠の俺を救い上げるため差し出された貴族令嬢様の細腕は、振り払われる怖さからなのか若干の震えを伴っていた。
「感謝するよオルコット。お陰で転入初日の試合で恥かかずに済みそうだ。
確認するが、今日の放課後に、第二アリーナで集合。それで間違ってないか?」
「・・・!! ええ、その通りですわ! 今日の放課後に第二アリーナでの集合です!
先に申しつけておきますけど、一秒でも遅れたりしたら眉間に貴族に対する非礼として眉間に穴をあけさせてもらいますから、そのおつもりで!」
人差し指でピストルを型どり、撃つ仕草をして見せた彼女を俺は腐った目で見物してから。
「勘弁しろよ、射撃型の専用機持ちに銃で狙われたら命がいくつあっても足りないじゃねぇかよ。俺、将来は専業主夫になるつもりなんだぜ? 学生のうちに死にたくなんかないって」
「でしたら、遅れずにくれば済むことですわよ。礼には礼を、非礼には非礼で返すのが誇り高きイギリス貴族、オルコット家の家訓ですので。
ーーでは後ほど、今日“も”放課後の第二アリーナで」
最後の一言だけ含みを持たせて去っていくイギリス代表候補生セシリア・オルコット。転入初日に因縁付けられ、来週頭に試合することになった俺のIS戦初対戦相手でもある英国貴族令嬢。
何かと喧伝したがる『英国貴族オルコット家の誇り』。彼女にとって絶対に譲れないこれに関連している単語を除けば親切に初心者を教え導いてくれてるだけのノブレス・オブリージュ実践者。
そして、偉そうな態度が気にくわないからとハブられてる美少女ぼっち。
なんだかんだ言いつつも良い奴だと感じてる俺は、三日連続で彼女からのIS指導を受け続けていた。
試合の日まで後三日。日曜を除けば残り二日で如何にして上級者であり先生でもあるオルコットを出し抜けるのか。
「思案の為所だな。まぁ、最悪本気出して特攻か自爆でもすれば受けぐらいは取れるだろ。あいつの勝利に泥は付かない」
補欠でスペアな『世界で二番目の男性IS操縦者』。特別仕様の第三世代《白式》と違って普通に開発された量産型のカスタム機にしか乗れない出来損ない。
そんな俺にできる戦いなんて、正々堂々真っ正面から不意打つぐらいしかない。せいぜいイギリスご自慢の新型機に食らいつけるよう頑張ろう。
・・・・・・最低限、あいつのワンオフ・アビリティー展開までは持たせねぇと勝利に飾る花にもなれん。どうせ毒花なんだから、飾る奴の見栄えぐらいは良くしてやらんとな。