予想外に長くなりすぎたから慌てて省略したプロット版を出したはいいモノの矛盾ばっかりになっちゃってましたのでね(;^ω^)
今話が前話の説明回、あるいは辻褄合わせ回とでも思って頂けたら助かります。
1999年に恐怖の大王は降りてこなかった。核保有大国同士が熱核戦争を勃発させて世界を火の海にすることもなかった。
だが、それでも世界は滅亡し、人類社会は崩壊させられてしまった。なぜか?
地球の地軸がわずかにズレたためである。
これにより発生した大規模な地殻変動によって大地震が起き、産油国から各国に送られていたガスのパイプラインと、ネットワーク用の海底ケーブルが寸断され、残された回線に世界中の人々がアクセスを集中することで許容限界を超えたコンピューターの『発狂』を防ぐために発信施設を持つ各国政府が『情報の秩序ある統制』と『自国民の生活と安全を守るための物理的封鎖』を行った。
これら一連の事態によってネットワークに依存していた旧来の経済および物流システムは完全に崩壊。自給自足が可能な大国のいくつかが鎖国政策を決定したことも拍車をかけて旧来の世界秩序は後ろ盾を失って無意味化し、各勢力はそれぞれの地域ごとに群雄割拠し泡沫都市国家群が年単位で生まれては消え、世界地図は月毎に勢力図を一変させ続けた。
二百年以上に渡って続いた混乱から地球人類を救い出すため、空から降りてきた様々な技術を人々に授け、秩序を再構築してくれた者たちは、しかし神ではなかったし救世主でもなかった。
2088年に、人類初の月面都市『フォン・ブラウン市』を完成させて移住していたルナリアンと名乗る地球人類たちが地上を救った救世主たちの名である。
地上が受けた惨禍の傷痕はあまりに深く、傍観者であるルナリアン達も悲しまずにはいられなかったが、それでも総人口の激減によって貧困層の増大という社会的困難の最たるものは一掃されたわけなのだから、過去を嘆くよりも現状を改善すべく努力する方が重要であると考えた彼らは、あらためて地球上に新秩序を打ち立てるべく行動を開始させ、やがて今までの地球国家秩序がほとんど全て失われた地表に7つの国を再建させることに成功した。
彼らは地球復興のために、失われてしまった旧時代の技術と道具を多く地上の人々に分け与えたが、『空を飛ぶ技術』だけは取っ掛かりさえも地上の人々が持つことを許さなかった。
「かつて地上で行われた災禍から限られた人口しか住んでない月面都市を守るため」
――というのが表向きの理由だったが、彼らの本音が宇宙から地上を永遠に支配し続けようとしている意図を読み違える者は当時の時点さえ一人も存在していなかった。
こうして人類は再び地上に縛り付けられ、空を行く鳥を地ベタを這い回りながら見上げるしかない日々を送ることを余儀なくされるようになった。
それは三百年が経過した後も終わることなく続いており、地上人類にとって氷河期のように辛く厳しい服従と屈辱の日々は永遠に続くかと思われた。
だが、それはある頃を境に何の前触れもなく唐突に終わりを迎え、再開される日は二度と訪れることはなかった。
ある日、空から宇宙船が落ちてきて海へと落下し、各国共同で派遣された救助および探索隊は機内から無数の死体と、微細な病原菌を発見して持ち帰ることに成功し、その病原菌が密閉された月の人口都市を住人ごと絶滅させたのだと結論づける証拠として認められることになる。
毒素に満ちた汚れた地球の大気で生きる者たちにとっては無害な代物でも、箱庭のように潔癖すぎる人口都市に住む者たちには猛毒だったのだろうと推測したのである。
自分たちの頭上に君臨し続けてきた月面都市の人々の不幸を知った地上の人々は、わざとらしく葬送曲を奏でてやることで偽善に酔いしれる不健全な喜び方はしなかった。
涙を流して感動し、諸手を挙げて彼らの滅亡と死を喜び歓迎し、解放と宇宙への再出発を遂げる自分たちの可能性を隣人同士で抱きしめ合いながら祝福し合った。
探索隊はそのまま捜索隊へと改名されて機内を物色し、宇宙空間での作業用宇宙服とおぼしき機械の鎧を発見したこともあり、世界は篠ノ之博士の提唱した宇宙開発プロジェクトに走力を上げて協力していくことを約束し合って団結した。
空を飛ぶ技術が奪われて久しい地球人類の中で、その『天災的』とも称された圧倒的才能によって当時唯一の飛行機械開発技術を有していた彼女の指揮の下で人類は大規模な宇宙探査隊チームを結成し、全世界同時生中継で彼らの発進を拍手とともに見送った。
――そして、死が降り注ぐ。
月面都市の住人達が地上を永続支配していくための手段として開発した迎撃撃墜システムが、主亡き後も健在のまま地上に狙いを付けていたことを人々は捜索隊の全滅という形で教えられることになったのである・・・・・・
プライドを傷つけられた篠ノ之博士は、次次世代を征く自らの天災的才能をフル活用することにより、迎撃システム撃墜のための秘密兵器開発を成功させた。
《インフィニット・ストラトス》。通称《IS》とも呼ばれる宇宙作業用マルチ・フォーム・スーツ。
かつて鹵獲した月面都市の脱出邸に積まれてあった宇宙服を改造して開発された、戦力としても当時世界最高の人が纏って戦う機械の鎧である。
これを大量配備し、篠ノ之博士の親友でもあった当時世界最強のIS操縦者・織斑千冬航空宇宙軍大尉を総隊長に任命したISの大部隊が雄々しく出撃していき、人類が宇宙へ再び進出するための一大決戦が行われ―――そして、完敗を喫することになる。
時代の二百年先を行くと称された『天災科学者』篠ノ之束博士の次次世代を征く才能は、“300年という時代差”を覆すには至っていなかったのである・・・・・・。
斯くして人類は、支配者のいなくなった地上世界で再び空を見上げながら地ベタを這いずり回る屈辱を甘んじさせられる日々を送ることになる。
いつの日か正当な地位を取り戻すため、空の上から自分たちを見下し支配する圧制者どもの残した遺産を破壊し尽くして自由を得るため、今日も地上人類の人々は限りあるリソース数を対外的な戦争という形で無駄に費消することを由とせず、表面的な団結と平和と協力関係を維持したまま机の下でマスゲームを続けている・・・・・・。
そんな時代。
今日も地球は、征歴と改元された宇宙への征服を目指す人類が地ベタを這いずり回る悲喜劇を上演しながら止まることなく回り続けている・・・・・・。