『IS原作の妄想作品集』   作:ひきがやもとまち

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以前に書いた黒いセレニアISで使おうかと思っていた設定とストーリーを別主人公で書いてみた作品です。
2話できたので『我が征くはIS学園成り!』と含めて2作並べたシリーズ物と言うことにさせて頂きますね。

基本的に暗い作品ですのでお気をつけて。


「IS~邪騎士に選ばれた転生少女~」
IS~邪騎士に選ばれた転生少女~序章


「毎年ひとりふたりは間違いで入学試験を受けにくる子がいるものだけど・・・・・・」

 

 目の前に座る妙齢の美人教師が機械の示した数値を見た後、何度も何度も首を振りながら「処置なし」とでも言うかのように溜息をつく。

 

 間違っても税金で運営されている日本の国立高校入学受験会場で面接官を担当している者がとっても良い対応ではなかったが、『この世界では』これでも許されてしまえる特性が存在している。

 そして、特性を持たない者には持つ者に対して刃向かうことが許されていない。

 よしんば刃向かったとしても修正食らって叩き出されて、「相手も悪いが、君も目上に対する態度がなってなかった」だのと理屈をこじつけることで有耶無耶にされてしまう。

 この世界において特権階級にある者たちに、持たざる者が刃向かうとはそう言うことなのだである。

 

「ーー筆記での成績は上の中・・・一般高校だったら余裕で名門市立に受かれるレベルね。そちらの方への願書は出してあるのかしら?」

「受験シーズンが始まる前にはすでに出してありましたよ? 試験自体も昨日には終わってましたし、模試の段階で合格はほぼ確実とお墨付きをもらってますから問題ありません」

 

 ここで切っておいても良かったし、先ほどまで面接を担当していたメガネで胸のデカい女性教諭だったら異論なくそうしていただろう。

 ーーそれが突然、面接会場の扉が開いて若手の新人っぽい教師が入ってきたと思ったら「織斑先生が呼んでます」だの、「男が・・・男がISを・・・!」だのと部外者には門外漢には意味不明な言葉を羅列されたあげく「あなた受験生さん? 悪いんだけど山田先生を借りていくわね? 緊急事態なのよ」と引っ張っていかれ代わりに寄越してきたのがこいつでは何か余計な一言ぐらい付け足したくなってくると言うものだろう。

 

「ーー正直に白状しますと、そっちの方が本命でこっちは受験記念に受けてみただけな感じでしてね。超一流のエリートばかりが集まる学校に私みたいな落ちこぼれが受かっちゃったらどうしようかなーと内心では後悔していたところです。

 ・・・上を目指している方々の足を引っ張って迷惑かけたりしたら申し訳ない限りですから」

「・・・・・・そ。じゃあそっちの本命に期待しておきなさい。人生長いのだし、めげたりしないようにね」

 

 私の言葉の最初を聞いて、不機嫌そうに女教師が言い返そうとしてきたのを見計らって付け足した後半の台詞で言い掛けた言葉を飲み込まざる得なくなり、しばらく私のことを睨んでいた彼女は退室を命じ、神経質そうに机をボールペンの先で叩く速度を上げていく。

 

 もうここには用がなくなった私は「ありがとうございました、失礼します」とだけ告げて足早にこの場を去っていく。

 足取りに迷いはない。むしろ清々しい開放感に満ちあふれている。

 当然だ。やっと『IS学園に関わらなくてはいけない』受験シーズンを終えることが出来たのだから、気持ちが楽になり春の小川を弾むときのように歩いてしまうのも致し方のないことだとご理解いただきたい。

 

 ーーが、そんな私の抱えている裏事情など知る由もない女教師にとって私の態度は『皆がうらやむエリート学生になれるかもしれない可能性を損失した受験失敗生』の在るべき姿とは思えなかったようで、刺々しい口調で「お待ちなさい」と待ったをかけてくる。

 

 せっかく解放されたと思ったらこれだ。勘弁してくれと言いたいところだが、あいにくと相手は『IS学園教師にしてIS操縦者』。

 量産型に過ぎないとはいえ自衛隊にも10機とない世界最高戦力の担い手であるエリート様の一人からの呼びかけに対して無礼を働きすぎると後が怖い。

 

 道理を無視して無茶を押しつけることが可能なのが、IS適正を持った操縦者と、適正を持たない生まれながらの一般人『ISと一生関わり合えないと確定している者』とが混在するこの世界『インフィニット・ストラトス』の世界観である以上、適正はあるが数値が低くIS学園に入学できない『IS社会不適合者』に認定されることが決まった私としては我慢して応じるしか道はないのであった。

 

「・・・なんでしょうか? 先生」

 

 せいぜいが礼儀を守り敬語で対応してやったのだが、それでも相手の溜飲を下げるには至らなかったらしく、先よりも切っ先を鋭くした視線の棘で睨まれながら私は彼女の『愚問』を聞かされる羽目に陥らされる。

 

「ここはIS学園の入学試験会場で、受験希望者数は毎年数千単位。とうぜん漏れてしまう子も存在しているし、受けに来たところで倍率一万倍の壁は高く厚い。

 それを承知の上で難関校の受験に挑んでくる子たちの大半は真剣に受けに来てるのに、毎年何人かは必ずあなたみたいに観光気分で受験しにくる問題児たちがいるわ。その子たちが事前に権利を放棄してくれたら別の子たちが受けに来れたかもしれないのに」

「・・・・・・・・・」

「ねぇ、わかるかしら? あなたは彼女たち『真剣に国家代表を目指して努力している才能もやる気もあふれている少女たち』から輝かしい未来へ至る可能性を遊び半分で奪ってしまっているのよ? 誰かに迷惑をかけるのがそんなに楽しい? ねぇ、なんで?

 どうして貴女はーーー落ちるとわかっているIS学園を受験して『自分自身の将来のために今、賢明に努力している他の子たちから幸せになる権利を奪っておきながら』平然と笑っていられるのかしら? 私にはあなた達のような子供の心が理解できないわ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・自分自身の将来のための努力・・・ね・・・・・・」

 

 それは余りにも愚かな愚問だった。それを口にすること事態が自分自身の今の身分を誇示することにつながり、上から目線で他人を見下ろし、わかった風なことを言いたいだけの下種な行動を模倣したに過ぎない。

 誠意の籠もった心情が、逆に人の上に立って見下ろしている特権階級の腐臭ばかりで鼻につく。

 

 何より性質が悪いのは、この女の今の言葉には悪意がないことだ。むしろ善意で物を言っている。自分は『遊び半分で踏み台にされ犠牲者となった大勢の子供達のために悪と戦っている』そう言う義務感と正義感で溺れ死にたくなるほど気持ちの悪い増長した傲慢ぶりだった。

 

 

「ーーなぜ、落ちるとわかっているIS学園を受験したか・・・・・・ですか・・・」

 

 そんなことは決まっている。考えるまでもないことだ。

 

「その答えは至ってシンプルですよ先生。

 ーー“あなた方の都合によってIS適正が見つかってしまったから”。そのせいで私はIS学園を受験せざるを得なくされたのです。・・・これでは質問の答えになっておりませんか?」

 

 私の答えに相手があからさまに「勝手な屁理屈を・・・」と言いたげに顔を歪めて見せたので「補足の形で説明不足だった点を付け足しましょうか?」と、やんわりした表現で聞いてみたのだが何故だかギョッとした表情をされてしまった。なぜだ?

 

 それでも頷きを返してきたので、まぁ進めていいのだろうと判断して話を進めた。

 

「IS適性の有無を調べる適正検査は毎年定期的に行われていますよね? では、そのとき適正が見つかった子供達が学園を受験するまでの間は如何にして過ごしているか、貴女はご存じですか先生?」

「・・・・・・・・・バカにしないで頂戴。テレビなどで見て知っているわ。学園を受験するため今まで習っていなかった分野を必死に勉強し初めて受験のために万全を期するんだってーーー」

「はっ!」

 

 私は先生の言葉を思い切り、鼻で笑って差し上げた。

 なんたるテンプレ! なんというマニュアル人間! なんというメディアに都合のいいだけの操り人形! こんな『上から金もらって言わされてるだけのコメントを』信じ込んでるバカ教師が現代日本の支配階層に位置していようとは!

 

「そんな、テレビ写りを意識して適度に着飾り勉強机にかじり付いて見せてるタレント子役が、自身の将来のために言ってるだけの報道番組など見なくてよろしい。

 現場の声を聞きたいのであれば、汗だくになりながら毎日遅くまでグラウンドを走ってるだけの受験生に聞かなければ意味がない。IS学園を受験するために必要となる一番の条件は『体力をつけること』ですのでね」

 

 怪訝そうに顔をしかめる女教師。それを目にした瞬間にわかる。“こいつも自分が生まれた環境を恵まれていたとは自覚できてない類の人間だ”と言うことが。

 

「早期から適正を発見されて特別カリキュラムを受けてこられた代表校補生候補のエリート様方と、適正が見つかるまでは普通の一般家庭で生まれ育ってきた女子達。その最大の違いが何かおわかりになりませんか? 体力ですよ。

 私たち一般中流家庭で生まれ育ってきた普通の婦女子達には銃を持つどころか満足に100メートル走を走りきることが出来るかどうかも怪しい者たちが多いのでね。とにもかくにも体力を付けるために走り込みから始めなければどうにもなりません。体力がない者はスポーツにおいては役に立たない」

 

 当たり前のことなのに、どう言うわけだか多くの人たちが忘れている事実。この世界でも『私がまだ俺だった、あちらの世界』だろうと変わらない普遍的な常識。

 

 才能を持ってたからって全ての人間が体力に恵まれて生まれてくる訳ではない。アスリートの両親の間に生まれなくてもスポーツの才能を持っている子供達はいる。

 親の子育て方針が勉学に傾いてたり、運動会系を嫌う子供が無理してやらなくてもいいように工夫してくれている親だって沢山いる。

 

 にも関わらずIS適正という才能は平等だ。女でさえ在れば誰にだって持っている可能性は存在している。

 そして、可能性を調べられた際に『無い』と判定された者たちにとっては未来永劫ISとの関係は断たれて枠外へと追いやられる。永遠の部外者として野次馬根性しか持てなくなる。

 見物客として好き勝手に野次だけ飛ばしていればいいだけの気楽な身分で、戦う者たちの出す結果を訳知り顔して論評するのだ。

 

『こいつは俺たちと違って生まれながらにIS適正持ったエリート様なのに、この程度の相手にも勝てないのかよ』

 

 ーーそう言ってテレビを指さしながら笑い出すのだ。反吐がでる。

 

 

「ISを動かせるのは女性だけです。男は男に産まれた時点で無関係な赤の他人事ですし、女性であっても適正が見つからなければ動かせません。

 動かすことが出来ない以上、何を言ったところで実行させられる心配はありません」

「・・・・・・・・・」

「見ているだけでいい、一生関わり合わなくていい無関係な赤の他人ならば幾らでも正しい正論が言えます。実行しなくてよければ、人は無限に勇敢さを発揮できる。

 動かすことが出来ないISを『動かせるのは女性だけだから』同じ女性である自分たちは同類扱いしてもらえる。

 そう言う人たちから見れば私たち適正が発見された者たちは皆、同じように自分たちとは違う別の生き物か何かの集団にでも見えているのでしょうよ」

「・・・・・・・・・」

「だからあなた方の検査によって適正を見つけられてしまった私は、IS学園を受験せざるを得なくなりました。適正があるエリート様なのにIS学園を受験しないのは今の世間から見ればおかしいことだからです。

 適正を持ち、ISを動かせる者が権威と権力の象徴であるISと無関係に生きていこうとするのは今の時代、不自然きわまりない異常なことなんです。

 そんな道を望んで歩もうとする者がいるとしたら、それはーーーー」

 

 

 異常者です。

 

 

 私が放った最後の言葉を聞き、相手が何を思ったかは知らない。知りたいとも思わないし、知れたぐらいで理解できるだなんて思ったこともない。

 

 人にはそれぞれ抱えている事情がある。過去がある。背景があり、家族があり家庭環境がある。

 それしか知らない者たちにとっては、それが全てだ。

 それ以外の物を、それ以上に高く評価して尊重できる者はほとんどいない。

 「私ならできる」だなんて奢れるほど、私の『前世』は大した生き方をできてない。

 

 

「・・・・・・適性試験を受ける受けないは任意よ。強制されて調べられるものではないわ」

 

 だから私は誤魔化すようにつぶやかれた彼女の『言い訳』にもロクデナシらしく接する。今さら優等生ぶったところで化けの皮はすぐに剥がれ落ちる。どのみち一期一会の他人を相手に最後まで取り繕う必要性は皆無だ。

 

「今の時代、高ランクIS適正保持者がどれだけ社会で優遇されるかは私よりも先生方の方が遙かに詳しくご存じなのでは?」

「・・・・・・・・・」

 

 黙り込んで目を顔ごと逸らされてしまう。

 

 ISは兵器じゃなくてスポーツだなんだと言ったところで政治権力と結びついてしまえば結局はそこへと辿り着いてしまう、変えることの出来ない人の業。

 

 もしかしたら私の愛する子供にも、輝かしい明日が待っているかもしれない・・・・・・!

 

 そんな純粋で無作為で害意のない無自覚な悪意によって、結果的に一部の子供達が悲劇の主役となってしまう。

 受けるのはタダだからと言ったところで、大半の子供には自由意志により国家試験を受けにいく勇気など無い。親か教師からの後押しなり強制なりが必要不可欠な子がほとんどなのである。

 

 かくして形ばかりの平等の元、IS社会は中世の生まれながらに選べる道が限定されている身分制度時代に逆戻り。

 生まれた家の方針、優秀成績を上げたIS操縦者の近親者、政府権力に近いか遠いか反対勢力に所属しているか。

 息苦しいほど区分けされ、棲み分け現象が発生してしまっている現代日本のIS社会。

 

 そんな中、おそらくは家が優秀なスポーツマンの家系ででもあるのだろう女教師が、苦々しげな表情と仕草で手を振ることで、用は済んだから出て行くよう伝えてくる。

 

 代表候補に選ばれるようなIS操縦者には、子供の時から身体的に優れた素質を発揮できるようスポーツ系の家柄に生まれた者が多くいる。

 女性でありながら美しさを損なうことなく筋力面でも男より強くなれるのはそういう理屈だ。こういった面でもIS社会には適正とは関係しない『生まれた家』が強い影響を持ってしまっている。

 

 

「失礼します」

 

 私もまた用は終わり、この場所には何らの未練もないので躊躇なく背を向けることが出来た。

 

 私に背を向けられた相手が、今どんな表情をして何を思っているかなんて分からない。知りようもないし、知りたいとも思わない。

 決めつけることなら幾らだって出来るだろうけど、したくない。

 

 

 会場を出た私は、会場で吸い込んでしまった毒気を出し尽くすように大きく息を吸ってから深呼吸をする。

 

 

 こうして私の第二の人生である《インフィニット・ストラトス》の物語は完結した。

 

 

 

 ーーはずだった。

 

 

 

 あの呪われた蒼いISに出会いさえしなければ終わっていたはずの私のIS物語は、人血に塗れた蒼い騎士が持つ剣の刃とともに始まりを迎えさせられることになる。

 

 呪われたイビルIS《ダーク・タイラント》と、IS学園落第生《ISルーザー》である私、現代日本からの転生者『夜風翼』。

 

 一機の邪騎士と、彼に選ばれた傀儡の主たるロクデナシ少女の物語としてーーーー。

 

つづく

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