百合ラブコメ版IS学園の言霊少女の戦いはここからだ!(爆)
IS学園1年1組所属、イギリス代表候補生セシリア・オルコット。
誇り高き英国貴族の令嬢。三年前に両親を事故で亡くして以来、遺産を狙うハイエナたちから親の残してくれた家と財産を守り抜くため人一倍の努力を重ねてきた少女。
居丈高な物言いに相応しい才能を持つ天才でありながら、向上心を捨てない努力家でもある。
一方で、自分と同等の地位にある者には同等の成果と努力を求めるのを当然と考えるなど、やや自分本位な考え方を持ち、気位の高さ故に素直になれない地位身分の高さを持っている。
人になにかを教える際には感覚ではなく数字と数式で教えようとするため、教えを理解するには彼女に準ずるレベルの演算能力を必要としてしまい、大半の人間には理解が難しい。
生来は心優しい少女であるらしく、初心者には率先して教えに行こうとするなど親切なのだが素直でないところもあって、つい喧嘩腰になりやすく見た目に反して喧嘩っ早いなどの欠点も多く持つ。
――――要するに、“ボッチ”である。他意はない。悪意的評価でもない。
ただ、事実として彼女と上手くやっていけるかどうかは相手の努力に依存する部分が多く、「コイツはこう言う奴なんだ」と思ってもらえるかどうかが大きなウェイトを占めてしまう。それだけだ。それ以外の他意は微塵もない。
そのセシリア・オルコットが今、とある人物の自己紹介している姿に目を奪われた。
「えー・・・・・・えっと、織斑一夏です。よろしくお願いします」
そんな平凡極まる無難な挨拶をして、微妙に引き攣った笑顔を浮かべながら頭を下げる少年。
―――の、後に続いて入ってきた1組担任の織斑千冬先生に抱かれて真っ赤になってる年下としか思えない小さくて、バストサイズの大きな女の子。
「い、異住セレニアです。先ほど紹介があったらしい織斑一夏の家で養子になってる非保護者です。
・・・えっとぉ・・・・・・すみません、極めて私的なお願い事になりますけど、先ほどの赤っ恥な光景について出来れば皆さんの記憶から削除しておいてください。お願いします」
そう言って、ペコリと頭を下げた少女に誰にともなく「カワイイ・・・」とつぶやく声が漏れ聞こえてきたが、むしろ当然の反応なので誰も特になんとも思わない。
確かに彼女はカワイイ見た目をしている。言動も義兄よりかはずっと礼儀正しく見えるし、悪印象を抱くべき理由は何もない。だから第一印象が好意的になるのは普通の事だろう。
――ただ、今の自分が相手の少女に抱いているモヤモヤした好意の質と量を『普通』の一言で済ませていいのか否か、それについて経験のない彼女には判別できなかったのである。
セシリア・オルコット、16歳。イギリスの代表候補生にして専用機持ち。
・・・・・・彼女が味わう一目惚れと初恋の味は、甘く耽美な百合の味と香りに満ちていた――。
キーンコーンカーンコーン。
昔ながらのポピュラーソングも斯くやと評すべき時代遅れな授業終了を告げる鐘の音が響き渡り、織斑一夏の周囲に人集りができていくのを授業中と同じように、セシリア・オルコットは落ち着かない気持ちで見守っていた。
「ねぇねぇ、織斑君ってさ―――」
「好みのタイプの女の事とかさ―――」
「興味のあるアイドル歌手とかさ―――」
――そんな愚にも付かない同性同士でやれよとしか言いようのない話題を持ち寄っては、人間をパンダ扱いして平然としていられる日本人の倫理観に疑問を抱かせられながらも、彼女の視点は輪の中心である織斑一夏にはない。その直ぐ隣に座った小さな銀色の影の方に向けられて固定されていた。
「そう言えばセレニアちゃん。一夏君って、家では何やって過ごしているのかな?」
「一夏君と兄妹水入らずで遊んだりしてるの?」
「一夏君と一緒に手をつないでお買い物とかするの?」
・・・・・・セレニアに話しかけていながら、話題に出すのは兄の事ばかり。妹は添え物か、インタビュアー扱いだ。
それらの声にセレニアは迷惑と感じているのは明らかだったが、そもそもにおいて義兄が質問攻勢に意味のある答えを返せていない状態があるから自分にお鉢が回ってきている事を自覚しているようなので、イヤだと感じていながらも嫌がる事なく懇切丁寧に質問には答えてやり、突っ込んだ質問に対してはやんわりと回答を拒否したり、姉の名を持ちだして軽く脅迫したりするなど上手い具合に処理し続けていた。
義妹が雑音の大部分を引き受けているからなのか、織斑一夏の側にも余裕が生まれて大事な質問にだけはキチンと答えられるようになっている。
良い兄妹の関係性だ。普通ならそう考えるべき心温まる光景だっただろう。
だが、今の彼女には違う風に見えていた。
妹にフォローされながら、ぎこちない愛想笑いを浮かべて野次馬根性で集まってくるクラスメイトに応対している一夏の姿にセシリアは、今は亡き父親の姿を連想させられていたのだ。
(・・・女の背に隠れて守られながら生きていこうとする情けない男の眼差し。まるで母の顔色ばかりうかがっていた、父のような人ですわね。嫌いですわ、こう言う殿方って)
正直、この手合いは苦手だった
彼女の父は名家に婿入りしてきた人物で、母に多くの引け目を感じていたのだろう。幼少の頃よりセシリアは母の影に怯える父親の背中を見て育ってきた。
それが彼女の中で一般的な男尊女卑とは異なる思想、『強くて負けない男』と『女無しでは一人で立てない情けない男』の二種類に男性を別ける両極端な好みを植え付けさせていたのである。幼心に『将来は情けない男とは結婚しない』と心に誓うほど、それは純粋で強固で思い込みの激しい思想だった。
(ISを使えると言うだけで女性全般が男より強くなったと勘違いして努力しなくなった世の女性達。そんな情けない女に媚びを売る事で生きていこうとする情けない男達。
どちらもIS操縦者であればみんな偉い、特別な才能を持った特権階級だと褒めるフリして見下してきている輩ばかりです。才能があっても努力をしなければ活かせないという常識を認めようとしないまま、何もしない自分を才能のせいにする怠け者達ばかり。嫌気がさしますわ))
IS操縦者は原則女しかなれない。だからといって、その威を借りて威張り散らすのも、虎の威を狩るネズミに従うしかないのも違うでしょう?
権力が強者故の傲慢なら、すり寄るのは怠惰でいたがる弱者の甘えです。
立ち止まって上を見上げず、下を見下ろすだけになった人間は、男だろうと女だろうと醜い豚に成り下がるのだから・・・・・・。
(――そして何より! セレニアさんにあれほど細かく説明してもらえるほど親しい時間を過ごしてきたという事実がモヤッとしますわ!モヤッと! なんかこう・・・モニョモニュしたくなるんですわよ!モニョモニョと!)
セシリア・オルコット、結局そこに行き着く。要するに『嫉妬』である。
所詮、人間なんて感情の動物でしかない生き物さー。
(こうなったら、どちらが格上の存在かハッキリと示して差し上げましょう! セレニアさんの前で! ええ、セレニアさんの目の前で分かり易いようにハッキリと!ですわね!
ちょうど相手は初心者で、わたくしは代表候補生という肩書きがありますし、新人に乗り方をレクチャーしてあげるという形でならごくごく自然に格の違いと実力および知識量の差。
そして何より、わたくしの格好良さとスゴさと将来性有望な嫁ぎ先候補ナンバー1である事実が、誰の目にも明らかなほどハッキリと解るはず!)
そこまで考えて、ハッと気付いたセシリアは予防線を張るのも忘れない。
(で、でも勘違いしないでくださいましね!? わたくしがセレニアさんに強調したいのは将来的に結婚して子供とかを作った後に関係してくる将来性であって、今のわたくしが彼女のオッパイをモニュモニュしたいとかそう言うよこしまで淫らな想いをしている訳ではないのですから! そこのところは誤解なさいませんように!!)
・・・・・・いったい、どこら辺をどう誤解すればいいのか教えてもらいたくなるほど自らの欲望に素直に従って、セシリアは征く。織斑一夏の座する席上へ。
この後、色々あって原作通りの展開になり一週間後の決着の日まで彼女は織斑家兄妹とは敵味方に分かれたまま距離を置いて過ごす事になるのだが。
ただでさえボッチな彼女に、自分たちのホームである日本をバカにされたことで根に持ったクラスの日本人生徒(大部分)からハブられるようになり、一週間後の月曜日まで便所飯、屋上で一人飯、校舎裏の人気のない空きスペースで風を受けながらボッチ理論について思いを馳せるボッチライフを満喫する事になる確定された未来の事実を。
今を勇ましく征く彼女はまだ知らない。
なぜなら人は可能性上の未来ではなくて、今という刻を現在進行形で生きる生物なのだから・・・・・・。
つづく