他にも載っていた中で読み直したい作品がありましたらいつでも投稿しなおしますのでご連絡お待ちしておりまーす♪
「えー・・・・・・えっと、織斑一夏です。よろしくお願いします」
儀礼的に頭を下げて、上げる。
クラス中の“女子”たちの視線が俺に集中してくるのを感じさせられた。
見渡す限り女子、女子、女子。クラスに男子は俺一人だけ。他の生徒二十九名はみんな女生徒。
高校受験の試験会場を間違えてしまった俺は、あろうことか女性しか動かせないはずのパワードスーツを『IS』を起動させてしまったせいで、IS操縦者を育成するため専門機関『IS学園』に入学させられる羽目になってしまって今日はその一日目。
入学式当日の自己紹介の真っ最中。姉さん、いきなりのピンチです・・・と、某ホテルマン風に思わず心の声でつぶやいてしまう程度には俺は追い詰められていた。主に精神的に。
「えーと・・・・・・以上で――んん?」
俺は迷った末に思い切って終わりの言葉を口にしようとしたら、一瞬だけ“見覚えのある色”が見えた気がして目をしばたかせる。
・・・あの銀髪・・・日本人には絶対見えない髪の色と瞳の色・・・高校の机に座ってるにしては場違いなほど小さな背丈・・・どっかで見覚えが―――って、あああっ!?
「セレニア!? お前、セレニアじゃないのか!? 中学で一緒だった異住セレニアだよなぁ!?」
「・・・・・・・・・・・・どうも、織斑さん。お久しぶりです。二週間ぶりぐらいですかね? また会えて光栄の至りですよ・・・はぁ~・・・・・・」
無理やり入学させられたIS学園で再会した、天文学的確率で奇跡的偶然の元クラスメイトは俺の熱烈なラブコール(主成分は『助けてくれ!』)を聞きながら礼儀正しく挨拶を返し、これ見よがしに盛大な溜息を吐いてみせた。
姉さん、千冬姉さん。事件です。俺の女友達がどいつもこいつもみんな薄情化しちゃってるんですけど、直す方法を知ってませんか? ――出来れば鉄拳修正以外で。
パァンッ!
「いっ――!? って、本当にいたよ関羽が!?」
「誰が三国志の英雄か、馬鹿者。お前は挨拶も満足にできんのか?」
・・・黒板のまえで繰り広げられ始めた姉弟漫才を教室の後ろの方で眺めながら、私はもう一度溜息を吐くのでした。
初めまして、皆さん。私の名は異住セレニア。《インフィニット・ストラトス》の世界に生まれ変わった元現代日本人で転生者です。あと、元男で現少女のTS転生者でもありますね。・・・マジでお恥ずかしい・・・。
この世界は『IS』と呼ばれる次世代パワードスーツの登場によって世の中が一変し、男尊女卑から女性中心の『女尊男卑』に人々の価値基準が移り変わったという設定で、そのISを操るIS操縦者を育成する世界で唯一の専門機関である『IS学園』が物語の舞台となってる流れを取っているそうでして。
私がこの学校に入学したのも、転生者らしく原作介入するため・・・・・・ではなくて。
ただ単に学費無料で国立エリート校という学歴に釣られただけ。受けてみても損はないので受けたら受かったというなぁなぁ極まりないものだったりします。
倍率一万倍と言ったところで、学園が保有するIS数は十機に満たず。大半の生徒が卒業時にはあぶれること確定な状態で入学してくる学校のため、設立当初はともかく最近ではエリート排出過剰に陥ってしまい、整備科志望で入学願書出してくる生徒には優遇的に入学を受け入れてくれやすくなっているのだと、とある学園関係者から聞かされております。
・・・機密事項漏らすなよ関係者・・・と言いたいところですが、その忠告もあって入学できた身としては強く出るわけにもいかず、目下同じ穴の狢状態を絶賛継続中な今の私です。
そして再会する原作主人公の少年、『織斑一夏』さん。
まぁ、中学校時代から一緒だったんで驚きませんけどね。所詮、転生者の人生なんて決められたレールの上をなぞるだけの物・・・原作展開と設定を元に歩むことしか出来ないものですよ。へっ・・・。
ま。それはそれとして―――
「いやー、参った参った。教室内、自分以外はみんな女子って雰囲気はいかんともしがたくてさー。セレニアがいてくれてホント助かったぜ。心の底から多謝!」
「・・・・・・なんで、わざわざ自分の席から離れている私の席まで話しかけに来てるんでしょうかね、貴方は・・・」
一時間目のIS基礎理論授業が終わった後での小休止時間。教室内の異様な雰囲気から逃れるように遠く離れた私の席まで小走りに話しかけに来た原作主人公の織斑一夏さん。・・・そんなに居心地悪かったんですかい・・・。
――え? お前、転生者なのに主人公の隣の席じゃないのかって?
そんな決まりは誰も決めてねぇですので、違う席です。
「・・・・・・ちょっといいか?」
「え? 箒?」
突然、横合いから話しかけられて驚く織斑さん。見ると、ポニーテールの凜々しい巨乳美人さんが彼を睨み付けておりました。
「廊下でいいな? 早くしろ」
「え、えーと・・・」
きっとヒロインの内の誰かなんでしょ。適当に思い出話でも花を咲かせてきてくださいませ。
「私のことはいいので、どうぞ彼女さんをお大事に。――言っときますけど、彼女さんという表現はそう言う意味でつかってませんので、変な誤解はされませんように」
「お、おう。じゃあちょっと行ってくるぜ」
機先を制して、怒鳴ろうとした女の方を黙らせてから織斑さんに連れて行かせて、残された私は次の授業の準備開始。
『・・・貴様は! 久しぶりに会ったと思えばいきなりあんな破廉恥なことを言い出す女を他に作りおってからに!』
『え、なに!? なんの話だよ一体!?』
『やかましい! 一先ず殴らせろ! 話は殴ってからでも遅くはない!!』
『それで手遅れにならない人間関係は最初から壊れてる関係だけだろ!? ・・・って、本気で殴るなマジやめろぐわぁぁぁぁ―――っ!?』
ドンガラガッシャ―――ッン!!!!
・・・・・・なんか教室の外から怒鳴り声と破砕音が聞こえてきた気がしますけど、入学当日に騒ぎを起こすのは不良漫画の主人公と不良タイプの主人公だけですので、織斑さんは当てはまらないと思いますしたぶん大丈夫でしょう。多分ですけれども。
「・・・失礼。少し椅子を前に出していただけますかしら?」
「あ、はい。すいません、失礼しました」
外から聞こえる音と声に気を取られすぎていた私は、後ろを通ろうとしている生徒の通行を邪魔してしまっていたらしく、素直に頭を下げて椅子を前に移動させました。座っていた椅子を後ろに下げすぎていたみたいでしたので。
「いえ、お気になさらずに」
そう言って、上品な仕草で謝辞を受け流した相手の女性は、私の隣の席に座って机の中から教科書類を取りだし、並べ始めます。
几帳面な性格なのか、定規で測ったように正確な幅で配置された教科書、ノート、筆記用具類。その表情は真面目と言うより、いささか堅苦しさを感じさせられるものがありましたが、顔立ちそのものは眉目秀麗の一言。
柔らかさでも身につけたら、もしかしたら存外に面白おかしなキャラ属性を身につけるのかもしれませんねー、と自分勝手な誇大妄想に勤しみながら私の授業準備は終わって開始を待つばかり。
・・・この残り数分間が暇でしょうがなく感じるのは、国立であれ公立であれエリート校であろうと変わりようがないですよねぇー。あー・・・マジで暇。早く先生こないかなー。
――そんな風に頭の中で、今や懐かしの学研CMソングを流していた私は知りようもありませんでした。
この一時間目終わりの小休止までが、原作における穏やかな入学式風景最後の時間であることを。
自分の隣の席に座る女子がヒロインの一人で、英国貴族のセシリア・オルコットさんだと言う事実を。
そして何より、彼女が原作において織斑さんと最初に戦うライバルであり、その決闘宣言が成されるのは入学初日の今日この日だったと言う原作の流れを。
――原作未読組の私は知ることなく、平穏な学校風景を満喫していたのでした・・・。まさに知らぬが仏。神がいるとしたら未来にしかいない、です。
いや、ホント。
・・・・・・入学式当日にお嬢様ヒロインが主人公の侍系美少年にケンカ売るのが学園モノの定番って言うのは事実だったんですね~。始めて知りましたよハッハッハ。・・・はぁ・・・。
つづく
余談:
セレニア
「全然関係ない話ですけども、オルコットさんは織斑さんと同じ『お』で始まる名字の人ですが、席は彼の直ぐ後ろじゃありません」
注:出席番号と席順は必ずしも直結してないと思われるの意。
実際、『お』で始まる一夏は教室の中央最前列の席である。