『IS原作の妄想作品集』   作:ひきがやもとまち

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すいません、4話目だし忘れてたみたいなので改めて投稿しなおさせていただきました。
それから折角なので続きの回を書こうと思ってます。
鈴の登場回ですので書くのを楽しみにしてたことを思い出しましたから♪


IS学園のひねくれ少女(試作版)第4話

『クラス代表決定戦?』

 

 

 

 オルコットさんと織斑さんの試合が決定してから一週間が経過し、決闘当日の月曜日が訪れました。

 試合会場として指定された第三ISアリーナは学園中の生徒がほぼ全員集められてでもいるのか凄まじい声量の歓声が選手控え室のピット内にまで響いてきます。

 

 ピット内にいるのは私とオルコットさん。

 ・・・そして意外にも、織斑先生が織斑さんのピットに赴く前に顔を出してきてたりしておりますです・・・。

 

「いや、素人と玄人の試合とはいえ、自分が受け持つ生徒同士の試合でもあるからな。身内のピットにだけ行ったのでは完全に差別だろう?」

「まぁ、そうなんですけどね」

 

 ぶっちゃけ、口先ばかりで身内贔屓しまくりそうなオーラを全身から漂わせている人だと思ってましたので、心の中で相手を再評価しながら反省する私。お猿さんの反省ポーズです。今は心の中だけですけれども、実際にやるのは部屋に戻ってからになりますけれども。

 

「とは言え、オルコットは国家代表候補生であると同時に専用機持ちでもある。今さら私が言わねば分からぬことは殆どあるまい? だからこそ一夏・・・織斑のもとへ行く前にこちらへ来たと言うわけだ」

「なるほど。そういう事情でなら納得ですわ」

 

 オルコットさんも首肯して了承し、自分の機体の最終チェックの方に意識を向けて固定されたようでした。

 実際、先生の言うとおりのようでオルコットさんが彼女に質問したのは必要最低限度の確認事項だけで、他は流れ作業的に“一応聞いておいただけ”。そんな印象。

 

「・・・・・・」

 

 それきり黙り込んだまま作業に没頭するオルコットさん。織斑先生も儀礼的に一定時間一緒にいるだけで後は普通に帰るつもりのご様子でしたので、折角ですから前に聞こうと思って聞けなかったことについて確認しておこうと思います。

 

「そう言えば織斑先生。一つお尋ねしてもよろしいですか?」

「ん? 異住か・・・なんだ? なにか私の授業でわからない部分でもあったのか?」

「はぁ。実はですね・・・・・・」

 

 そう前置きして私がはじめたのは、入学式当日でのやり取りで交わされていた会話内容の一部について。

 

 クラスの代表候補を決める際に自薦他薦を問わずに候補者を生徒たちに選ばせようとした件で言っていた言葉についての質問です。

 

「確か先生はあの時、こう仰っておられましたよね? 『自薦他薦は問わないと言った。他薦されたものに拒否権はない。選ばれた以上は覚悟をしろ』と」

「うむ。確かにそう言ったな。それが?」

「いえ、アレって普通に考えて・・・・・・」

 

 小首をかしげながら相手を見つめ、ボンヤリとした心地のまま本命の質問を発します。

 

 

 

「個々人の事情を無視して、全員に同じ基準を絶対のルールとして押しつけるのを平等とか公平って呼ぶのは、民主主義じゃなくて共産主義的平等の精神じゃないのかなーって」

 

 

 

 

 ―――ガコン!!

 

 ・・・質問を終えた私の耳に、大きな破砕音が届いてきました。

 見ると、織斑先生が控え室の壁に頭をぶち込んで頭突きをかまし、分厚い合金製だかなんだかで出来てるはずのそれを凹ませながら『ズーン』と顔の上から縦線を垂らしてる姿が見受けられたのでした。

 

 

「・・・・・・・・・なぜ、今まで気づかなかった私・・・?」

 

 “バカだからじゃないですか?”・・・とは言いません。てゆーか言えません。

 ――到底言えるような空気じゃねー・・・。

 

「まぁ、現代日本の一般認識だと民主主義ってそう言うものだと勘違いしている人たちが多いですからねぇ。そう言う考えのもとで教育されてきた貴女があんまり平等の精神とかに詳しくないのは仕方ないんじゃありません? 多分ですけれども」

「・・・・・・・・・・・・(フラフラフラ・・・)」

 

 教師と生徒という関係性から礼儀的に慰めの言葉をかけて、フラフラしながら部屋を出て行く先生の後ろ姿を見送る私。

 そこでようやく機体のデータ表示から顔を上げたオルコットさんが声をかけてこられました。

 

「織斑先生って、水平的平等の精神の持ち主だったんですのね。意外と言えば意外ですが、納得したと言えば納得の考え方ですわ」

 

 水平的平等。経済用語で『全員一律に平等』のことを指し、日本で言えば消費税が一番分かり易いたとえと言えるでしょう。

 これとは逆に『異なる能力を持つ人は異なる負担を平等にする』のが垂直的平等であり、累進所得税が有名どころでしょうかねぇ。

 

 

 ・・・今さら過ぎる疑問ですけど、何で私死んで生まれ変わってから、こんな事考えてるのでしょう? 税金問題も平等の精神も死人には関係ないはずなんですが・・・。

 神の前で死者は皆平等だという建前は、転生者に一番当てはまらない平等の教えなのかも知れませんね。

 これもまた死んでからは関係ないはずの平等の定義問題・・・いや、これはむしろ死んでから意味が出来る平等問題なのかな? 頭こんがらがって来たので考えるのやめましょう、面倒くさいですから。

 

 

 ピ―――――ッ。

 

 

「・・・どうやら時間が来たようですわね。

 では、行って参りますセレニアさん。

 わたくしが勝利の栄光を持って帰るのを待っていて下さいませな!」

 

「え? いや、一人だけでピット内から試合見てても退屈なだけですし、観客席から皆さんと一緒に観戦するつもりでいたんですけど・・・ダメでしたかね?」

「・・・・・・そですか・・・・・・。いえ、ダメなわけではないですのでご自由に・・・。

 確かにピット内で一人だけだと暇ですものね。ええ、間違いなく暇ですし退屈ですわよ、一人きりで試合終わって帰ってくるの待つだけだなんて・・・」

 

 

 なぜだかオルコットさんまで意気消沈しながら部屋を出撃していき、私は小首をかしげながら観客席へと向かうのでした。

 

 

 

「・・・逃げずに来たようですわね織斑一夏・・・その度胸に免じて最後のチャンスをあげましょう」

「チャンスって?」

 

「わたくしの悲しみと絶望に満ちた魔弾で撃ち殺されるか、孤独と悲哀を込めた呪いの銃弾で撃ち殺されるか。どちらかを自分の意思で選びなさい。

 それが殺す前にあげられる最後のチャンスですわ」

「それのどこがチャンスなんだ!? 自分の処刑方法選ばされてるだけじゃねぇか!?」

「死刑囚とはそう言うものです。

 三秒間待ってあげましょう。3、2、1・・・はい、終わり。お別れですわね。

 シネッ!!」

 

「理不尽だぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

つづく


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