『IS原作の妄想作品集』   作:ひきがやもとまち

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「ひねくれ少女」更新です。遅れてゴメンナサイ。途中まで出来てたんですけど、それに油断して他のを優先させすぎました。以後は今よりもう少しだけでも気を付けられるよう努力してみます。


IS学園のひねくれ少女 第10話

「ええとね、一夏がオルコットさんや凰さんに勝てないのは、単純に射撃武器の特性を把握していないからだよ」

「そ、そうなのか? 一応わかっているつもりだったんだが・・・」

 

 IS戦闘に関するレクチャーをしてくれているシャルルの言葉に何度も頷きながら、俺は相手の説明内容をしっかりと聞いていく。

 

「うーん、知識として知ってるだけって感じかな。さっき僕と戦ったときもほとんど間合いを詰められなかったよね?」

「うっ・・・、確かに。『イグニッション・ブースト』も読まれてたしな・・・」

「一夏のISは近接格闘オンリーだから、より深く射撃武器の特性を把握しないと対戦じゃ勝てないよ。特に一夏の瞬間加速って直線的だから反応できなくても軌道予測で攻撃できちゃうからね」

「直線的か・・・・・・なるほどなぁ」

 

 シャルルのわかりやすい説明に何度も何度もうなずき返しながら、俺はいろいろな理由で行き詰まっていた自分の殻が破れていくのを実感させられ、目の前のシャルルが救いの主のように見えてきている昨今だった。

 

 

 

 ・・・シャルルたちが転校してきてから五日が経過し、今日は土曜日になっていた。

 IS学園では土曜日の午前が理論学習で、午後は完全自由時間になっているから、他のみんなより後発組の俺は経験値不足を少しでも補うため土曜日でも解放されているアリーナを使わせてもらって地道なトレーニングを続けてきていた。

 今日からは、新しくルームメイトになったシャルルからIS操縦のコーチを引き受けてもらえることになり、こうしてレクチャーを受けている。・・・という次第である。

 

 

 ――思えば今日まで、短い間ながらも色々なことがあった・・・。

 シャルルと一緒に転校してきたボーデヴィッヒにいきなり殴られたり、二度も殴り飛ばされたり一方的に説教くらわされたり。

 そして、この世界とは似て非なるパラレルワールドみたいな世界が存在して、ボーデヴィッヒにはそこで今の自分と全く同じ自分として生きた前世の記憶が引き継がれていて、そっちの世界でボーデヴィッヒが母ちゃんだと思い込んでてらしいセレニアと再会した途端に前世の記憶が蘇ってきたとかで心が子供返りを起こして今ではセレニアと同室になっていて、セレニアがいるところでは常時お子様モ-ドで、いない時には軍人モードと両極端過ぎる人格に別れてから正式に俺たちとクラスメイトになったりした訳なんだけれども。

 

 

 ・・・うん、見事なまでの俺関係ないな。巻き込まれただけだな。中心にいるっぽい人物は俺よりむしろセレニアだよな。セレニア自身も巻き込まれただけっぽい気がするけど、俺よりかは中心人物に近い位置にいるよな普通に考えて。

 

 まぁ、俺は別に気にしてないけどな? 一回殴られたぐらいで許せなくなるほど子供じゃねぇし。女に二度も殴られて説教されたからって腹が立つほど子供じゃねぇからさ俺って。小学校五年の時にバカやってたクラスの男子連中とは俺違うから。

 

 お子様モードになって、俺への恨みとか全部どうでもよくなったらしいボーデヴィッヒから正式に謝罪してもらったし。謝って頭下げてきた相手に殴られっぱなしで一発も返せなかったぐらいで理不尽な怒りを抱くほど俺の器は小さくない。だって男らしくないからな、そんなのって。過去に負かされた恨み辛みで人憎むなんて男のやることじゃねぇよ。

 

 だから、このトレーニングはボーデヴィッヒに復讐戦を挑みたいとかいう身勝手な思いから来ているものじゃない。そこは誤解されないように断言しておきたい。

 単に、今月おこなわれる予定の学年別個人トーナメントに向けてトレーニングを強化しているだけだから。ボーデヴィッヒだけに勝ちたい訳じゃないから。戦うからには誰が相手でも勝ちを狙うのが男ってものだから。それだけだから。

 だから誤解するなよ!? 誤解されると男として恥ずかしいからな!!

 

 

『あー・・・、一夏があの顔してる時って大抵の場合、私怨を一般論で理論武装して正当化してるときなのよね。私の経験則的に見て、大抵の場合には』

『まぁ、そうなんですの鈴さん?』

『うん。一夏って感情的でサッパリしてるけど、意外と尾を引きやすくて、決着をつけるまではヤラレタ事への恨みを忘れない所があったりするからね。昔からの癖みたいなもんだから仕方ないんだけど』

『ああ、たしかに・・・そういう所あるかもしれませんわね。知識として知ってるだけで分かった気になってた部分とか、一夏さんって変なところで理屈臭くて言い訳じみてるところがあったりしますから・・・・・・』

『わ、私はよいと思うぞ? そういう所はな! 男子たるもの女に殴られっぱなし言い負かされっぱなしで流してしまうようでは沽券に関わるというもの! そんな男は、男ではないのだからな!!』

 

 

 ――そこぉっ!! うるせぇぞ外野ぁぁぁぁぁっ!!! コーチやる気ないんだったら帰れよマジで! 俺もうシャルルにコーチ交代してもらってるから、もういいよ! お前ら帰ってしまっても! はっきり言って最初から最後まで邪魔にしかなってなかったから!!

 

 

『いや、(いえ、)アタシたち(わたくしたち)の場合、セレニア(さん)と放課後は一緒に行動できなくて暇だっただけだから(でしたから)』

 

 

 ――ちくしょう!! 男との友情より女への恋心を選んだ女友達の友情を信じてしまってた俺がバカだった!!

 

 そんな風に友達甲斐のない女友達×1と、セカンド幼馴染み×1の薄情さに心の中で全力で叫び声を上げ慟哭していた俺の耳に、横合いから静かな声と鋭い口調で話しかけてくるやつがいた。

 

 この感じ・・・間違いない! ヤツだ! ヤツが来たんだ!

 

 

「フン。情けない訓練風景だったな・・・あれでは新兵のダンスの方がまだマシというものだ」

 

 

 ――ラウラ・ボーデヴィッヒ!

 しかもセレニアいない場所だから、軍人モード!!

 まったく、やっかいなヤツが来てくれたもんだぜ・・・。

 

「・・・なんだよ、ボーデヴィッヒ。俺の訓練にケチ付けに来たのか?」

「ああ、そうだ。それが何か問題があるのか?」

 

 平然と言い返された! しかも小首をかしげながら悪意のまったく感じられない心底から不思議そうに聞き返してくる疑問形で! これは反応しづらいんだけどマジで!?

 

「・・・人が頑張って努力してる姿を上から目線でバカにするなんて、強いヤツのすることじゃねーんだよ。人のことより自分のことやれ、自分のこと」

「人の自分より劣っている部分を指摘して罵倒して何が悪い? 悔しければ改善して超越し、見下し返してやればいいだけのことだろう。

 素人が玄人にできない部分をキツい言葉で指摘されると挫けるからやめるべき等という屁理屈に逃げていたのでは、いつまで経っても勝つことなど出来ん。その程度は常識だぞ? 知らなかったのか?」

「ぐ・・・は・・・っ」

 

 こ、この母親(っぽいナニカのポジションらしい)譲りの容赦のない正論ツッコミぶり・・・っ! 間違いない!

 眉唾だと思っていたが、こいつは間違いなくセレニアの娘! それすなわち俺の敵ということ!!

 

 

「とゆーか、言い方に気をつけてほしいのなら頭を下げて頼むのが筋というものではないのか? 『自分は心弱いので強くなれるまでは言い方を弱めてください、お願いします』と。

 プライドだかなんだか知らないが、初心者の時点からそんなモノにこだわってどうする気なんだ?」

 

「ぐっ! はっ!?」

 

 お、俺の心が・・・っ! 傷つきやすい硝子で出来た男のプライドハートが粉々に・・・っ!!

 く、クソゥ・・・こうなったら最後の手段だっ。

 

 男として、この手だけは使いたくなかったが・・・悪いが使わせてもらうぞセレニア! 母の名を! 俺以外の普通の子供にとっては絶対の存在を!!

 

 

「――セレニアの前で俺にしたことは謝ってきたくせにぃ・・・」

 

 情けない言い分だと自覚しているからこそ、俺はみんなに聞こえないようボソッと小さな声で相手にだけ聞こえるよう細やかな抗議と反撃のつぶやきを漏らした。

 ただ、それだけだったのだが・・・・・・

 

 

「その件はゴメンナサイでした!! ラウラ、お母様と再会できるまで寂しくてワレを忘れてたみたいです! この通りです! 本当の本当にゴメンナサイでした!!!」

 

 

 言っちゃったー!? 大声出してみんなにも聞こえるよう内容分かる言葉で言っちゃったー!?

 しかもスッゲー誠実に頭下げてきてるし! 深々と下げまくってるし! これで下げてる顔の浮かべてる表情が悪魔みたいだったら人間不信になるんじゃないかってぐらいに誠意が伝わりまくってくる心のこもった謝り方してるし!!

 

 ちくしょう! だから俺にとってのコイツらは敵なんだよ! 有言実行で己の信じ貫く信念のためならプライドなんてクソ食らえって投げ捨てられるから男にとっては辛いんだよ! キツいんだよ! 相手しにくいんだよ!

 自分が情けなく思えてきちまって困る時あるだろう!? たまーにさ!!

 

「あ、相変わらずセレニアがいない場所でも、セレニアが関係する話になると子供モードになるんだな、お前って・・・」

「はいです! お母様は銀河系一です!!」

 

 満面の輝くような笑顔で、瞳に星をきらめかせながら言い切られてしまった。・・・って言うか、なぜに銀河系? 日本一でも世界一でも宇宙一でもなく『銀河系』という単語を使いたがるコイツの癖はパラレルワールド世界になんか関係してんのかな・・・?

 

 

『一夏・・・・・・』

『一夏さん・・・・・・』

『一夏・・・お前ってヤツは子供みたいな相手に、なんて男らしくない真似を・・・っ!!!』

 

 

 うっ!? しまった! 俺としたことがウッカリしていて外野のことを忘れていたぜ! 

 他人の目なんか気にしない俺だけど、この白い視線で見られの状況はかなり辛い気がするな!!

 

「あ、あはははは・・・・・・ハァ・・・」

 

 しかもさり気なくシャルルにまで溜息をつかれているだとぅっ!? クソゥッ! こうなったらヤケクソだ! なんとかして名誉挽回してやるぜ!

 

「だ、大体なんで俺に突っ掛かり続けてくるんだよ!? 千冬姉のことはもう気にしてないって自分自身で言ってたじゃねぇか! だったらもう俺と戦おうとする理由はないはずだろ!」

「あるです! 今の妖怪さんにはなくても、ラウラにはあるです! 妖怪さんに罰を与えてあげるためにラウラずっと努力してきましたから戦ってもらいます! 絶対にです!!」

「イヤだ! 理由がねぇ! ・・・って、え? 妖怪? 何のことだ??」

 

 今度は俺の方が言ってる意味分からなくて小首をかしげ、相手が何言ってんのか説明を求める側になる。

 この件は俺だけじゃなく、セシリアを含む全員が初耳だったらしく皆そろって首をかしげながら頭の上に「?」マークを浮かべている。

 

 ラウラは、そんな俺の質問にプリプリ怒り顔をしながらも懇切丁寧に説明してくれた。

 

 

 

 ・・・なんでも、この世界と似て非なるパラレルワールド側の世界にも俺と同じ『織斑一夏』と呼ばれる男が存在しており、そいつも俺と同じような理由と経緯によって【白式】の操縦者に選ばれてIS学園に入学してきていたんだそうだ。

 

 だが、セレニアと戦ってからソイツの人生は、俺と同姓同名なだけで別人のものに進路変更したらしい。

 

 おっぱいを愛し、巨乳を愛し、『C以下は無いのと同じだ!』と断言して、人を斬り。

 『人を斬らぬ剣に何の意味があるのか』と言い切りながら切り続け、人斬りの道を爆走し続け、敵の首を刈り取って手柄にすることを誇りと考える戦国武将みたいな性格なっていき、敵に対しては必ずと言っていいほど『首置いてけーッ!!』と叫んで斬りかかっていくキチガイな変態野郎になっていったことから、『妖怪・首置いてけ』と渾名されるようになっていったらしいのである・・・・・・。

 

 

 そして、その同姓同名で、ここにいる俺とは縁も所縁もない真っ赤な他人の織斑一夏くんが他の誰より執着して『おっぱい、おっぱい』と言い続けた相手こそが隣の席に座る女子生徒の異住さん・・・・・・後に結婚して彼の嫁になる女の子『異住セレニア』だったという・・・・・・

 

 

 

「お母様をねらっていた悪い虫さんの妖怪さんに、お母様に代わってお仕置きです! 覚悟するです妖怪さん!!」

「誤解だ―――――――ッッ!?」

 

 

 俺は叫んだ! 全力を挙げて腹の底から声を振り絞って叫び声を上げていた!! 誤解だと! って言うか、人違いだと! まったくの別人な赤の他人の話だと!

 

 なんで俺がそんな、同姓同名なだけで性格的には似ても似つかない全くの赤の他人なキチガイ変態がやったことで罰を受けさせられるために戦わなきゃならないんだよ!? 世の中間違いすぎてるぞ絶対に!

 今までIS学園の女性たちに理不尽な理由でヒドい目に遭わされたことは何度もあったけど、コレはそんなのがどうでもよくなるレベルの超理不尽すぎる理由によるヒドい目だぞ!? 世の中間違えるにも程があるべきだろうが絶対に!!!

 

 

「そのためにも妖怪さんは、ラウラと戦ってもらうです!

 今度の“がくねんべつこじんトーナメント”っていうお祭りの時に、みんなの見ている前で『ギャフン!』と言わせてあげるですから、覚悟しておくです妖怪さん! それまでサラバです! ジュワッ!です!!」

「ちょっ、待っ!? 待ってくれーっ!? 誤解振りまきまくったままIS展開しないまま自力で飛び去っていかないでくれー!?

 千冬姉の助けが呼べなくなるから頼むから待ってくれボーデヴィッヒ! 置いていかないでくれ!

 全周囲からの冷たい視線と殺気が怖すぎるんだよーッ!? ・・・・・・ハッ!?」

 

 

 背中に感じた鋭すぎる殺意の視線・・・・・・これはまさか!? ヤツらか!? ヤツらが襲ってきたというのか!?

 

 

『一夏・・・アンタのラッキースケベなラブコメ主人公体質は知ってたけど、まさかアタシのセレニアにまで手を出していたとはね・・・・・・シネ。死んで償いなさい・・・。

 あのデカパイはアタシんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――ッッ!!!!』

「知ら―――――っん!? そして要ら――――――ッん!! 俺にそういう趣味はねぇ! お前とか別世界の俺とかの趣味を俺にまで押しつけようとするな! 迷惑なんだよメチャクチャよぉ!? ・・・・・・ヒィッ!?」

 

『・・・ウフフフ・・・・・・ギルティ。判決は常にギルティですわ一夏さん・・・。大英帝国貴族令嬢セシリア・オルコットが命じましょう、死になさい。疾く死になさい。

 貴族が所有すると決めていたモノに手を出すような平民に、生きる価値などありませぇぇぇぇぇぇぇっん!!!』

「暴君! そりゃただの暴君だからなセシリア! そんな貴族に誇りも何もねぇよ! ヒトラーの尻尾だよ完全に! あと、誤解! 人違い! 俺はセレニアの胸に指一本触れた覚えなんてねぇぇよっ! ・・・って、ヒィィッ!?」

 

『一夏・・・・・・男としての責任・・・・・・結婚、婿養子、一生かけて幸せにしてみせる・・・・・・事故とはいえ若い娘の乳房を揉んでしまったからには責任をとって娶るのが日本男児の男らしい生き方というモノ・・・・・・くくく、けけけけけ・・・・・・ふはーっハッハッハッハ!

 終わった!終わった!すべて終わりだ!終わらせる! 私の手に入らないのなら、せめて私の手でお前の全てを終わらせてくれるわァァァァッ!!!

 チェストォォォォォォッ!!!!』

「他の誰よりトチ狂ってんじゃねぇよ箒!? お前別にセレニアのこと好きでも何でもないはずじゃ――――ちょ、まっ、やめ、本当に死ぬ・・・・・・ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 

 

 

 

 

 この事件が起きた翌日。IS学園の掲示板に張り出されたトーナメントの告知表にて。

 

 

『トーナメントに向けての練習中に一部生徒たちが暴走してアリーナ内のバリアーを破損させる事件が発生したことから、学年別トーナメントまで生徒同士による一切の私闘を禁止するものとする。

 また、個人競技では選手個人の自己責任になり、精神的に未熟な生徒たちには暴走を抑制する抑止力たり得ないことが判明したため急遽トーナメントの試合形式をタッグマッチに改め直し、連帯責任という形をとるものとする。

                          IS学園警備責任者・織斑千冬』

 

 

『――なお、以下の者たちはアリーナ破損の当事者として一週間の謹慎処分を命じる。

 1年2組生徒、凰鈴音。1年1組生徒、セシリア・オルコット、篠ノ之箒。

 そして、連帯責任により織斑一夏――――』

 

 

 

 

「理不尽だ――――――――――――――――――――ッ!!!!!!」

 

 

 

 IS学園寮の自室で啼くコロニー・・・・・・。

 

 

つづく

 

注:コロニー【colony】の辞書的な意味:

 植民地、入植地。動植物の群棲・群落。

 または、身体障害者や精神障害者のための集団生活施設のこと。

 

 お後がよろしくないようで(^_^;)

 

 

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