『IS原作の妄想作品集』   作:ひきがやもとまち

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*:正月故だったのか、12話、13話となんかゴチャゴチャした話になってしまっててすいませんでした。近い内に1話内にまとめ直して分かり易くて読みやすいよう工夫した物を再投稿させていただきたいと思ってます。

頭の中までゴッタ煮な感覚になってたみたいでゴメンナサイ…。とりあえず今の12、13話は暫定的に残しておいて再編集版を投稿する際に削除する予定でおります。


IS学園のひねくれ少女 第13話

「しかし、意外だったなぁー」

 

 俺は廊下を並んで隣を歩いている銀髪少女を上から見下ろして、つむじの辺りに目を向けながら、今さっき出てきたばかりの自分の部屋で起きていた、喜劇なのか悲劇だったのか悲喜劇だったのか、よく分からないやりとりを思い出しつつ、そう呟いていた。

 

「意外って・・・なにがですか?」

「さっき言ってた“あの”セリフだよ。正直、お前にしては意外だったと思ってさ」

 

 デュノアの秘密を告げられて、散々にシャルルの父親を悪し様に罵りまくってから一応フォローもしてやって、『シャルルの願いを聞かせてほしい』と言った後。

 セレニアは戸惑う彼女に向けて、素っ気なくこう告げて話の締めとしたのだった。

 

 

『え、えと・・・そんなこと急に言われても僕、ほんとうにどうしたらいいか分からなくて・・・』

『そうですか。では、それを考えるのが当面のデュノアさんのやるべき任務という感じになるでしょうね。

 それまでは、私たちの方でできる限りのことをやっておくと致しましょう。どの道を選ぶにせよ、選択肢はできるだけ多くしておくにしくはないものです』

 

 

 ・・・そう告げてアッサリ話を打ち切ると、俺を連れてデュノア一人だけを部屋に残したまま廊下に出た彼女は今、こうして俺と並びながら歩いて話をしていると言うわけだ。

 

「てっきりお前だったら、あの場で自分の生きる道を、最低限方針だけでも決めさせるんじゃないかと思ってたんだが・・・」

「・・・私って普段から、そういう目で見られてましたので・・・? 個人的な自己評価としては未成年の少女相手に必要以上の負担を押しつけないよう意識していたつもりなんですけどね・・・」

 

 はぁ、と呆れの溜息なのか自嘲の吐息なのか判別しがたい嘆息を漏らしてから、セレニアは少しだけ居住まいを正して前を向きながら淡々とシャルルの現状について『本当に思っていること』を語り始めてくれた。

 

「デュノアさんには、ああ言いましたが・・・実のところ彼女の心理状態はあんまし良いとは言えないのではと私は見ています。なので少しの間、冷却期間が必要かなと思ってああ言ってみただけのことですよ。本当はもっと根が深いのではないですかね? この一件」

「そうなのか?」

「ええ」

 

 軽く応じてから説明に入るセレニア。

 

「考えてもみてくださいな。自分がやらされている企業スパイの任務がバレてしまったとき、自分だけでなく会社と父親がどうなるか彼女は分かった上で今回のことをやってたんですよ?

 そして、そのことを結果予測まで含めた上で織斑さんと、ついでに私にまで自主的にばらしてしまった・・・『話したら楽になった』とまで言い切ってまで、です。

 これって自分の自爆によって父親と会社まで破滅させてしまおうとする復讐計画と、どう違うのです? とどめとして、本人自身にはいまいちその認識がなさそうなのも気になりますしね・・・。

 『良いも悪いもない、自分には選ぶ権利がないから仕方がない』とか言っちゃってましたし、結構ヤバいのではないかと思ったわけです」

「・・・・・・」

「会社の方にしても、今のままでいられなくなることを軽く言ってましたけど、普通に考えて世界第三位の大企業が潰れるか他企業の傘下に入るだけでも大変なことですよ? デュノア社だけの問題では絶対にすまないレベルの大被害が周囲に拡散しまくりです。

 会社の規模と社員の数は基本的に比例するものですし、絶対数が多ければ比率的に同じであってもリストラされた人の数は圧倒的に大会社の方が多くなるのは考えるまでもないですし、仮に一人もやめさせないように工夫するためには最低限社員全員の給料大幅カットは確実。

 そうなると彼らの家族の生活費とか養育費とか将来設計は根底から見直す必要に迫られますね。場合によっては完全になかったことにして1から低予算でできる内容に変更する必要が出てくる人もいるでしょう。お金がかかる学校への進学を予定していた受験生なんかいた日には合格の祝辞が悲惨の一言に早変わり。

 製造から販売まで単独だけで成り立っている大企業なんてあり得ませんので、関連企業および下請けの小中子会社も一番の取引先が消えてなくなるか、さもなくば受注数の大幅減が見込まれますし、悪くすれば別の大企業に吸収されて自分の会社こそがなくなってしまう可能性も低くありません。

 そして彼らが生活必需品等を購入していたスーパーやら、昼食時に大勢が利用していた安くておいしい下町の小さな食堂なども利用できる回数が一挙に減って経営悪化。食材の仕入れ先なども被害を受けるかもしれませんねぇ~。

 このようにして、国内の大企業倒産に端を発した経済的被害が連鎖的に周囲の企業を巻き込んでいきながら、やがて国内経済そのものに大被害をもたらす現象のことを俗に経済用語で――――」

「せ、セレニア・・・もういい。わかった。わかったから、もうその辺で終わらせてくれ・・・頼むから・・・」

 

 いっぱいいっぱいになりかけていた俺が慌てて「ロープロープ」とセレニアの肩を叩きながら自制を求め、やや不満そうにしながらも相手がようやく矛を収めてくれたことに心底から安堵する俺。

 

 ・・・正直、ここまでデカい事態になるとか考えてなかった上に、デュノアのオッサンと人でなしの母ちゃんだけの問題で済むんだと思ってたから、これ以上話されるのはチトきつい。主に俺が罪悪感で、精神的に・・・。

 

「まだ説明が必要な部分が多々あるのですが・・・仕方がありませんね。必要最小限のことだけでも説明できただけ由としておきましょう」

 

 ・・・って、まだ最小限だったんかいアレ!? どんだけ広ぇんだよ会社一つの問題が起こす経済被害の規模って!!

 怖いわ! ガチで怖いわ! 千冬姉に近いレベルの恐怖を一瞬だけとはいえ味あわされかけたわ!!

 

「まぁ、会社の経営状態の方は別枠で考えるしかないとして。デュノアさんの心理状態だけを一言で言い表してしまうのであれば、ハッキリ言って自暴自棄に近いヤケを起こしかけてる状態にあると予測いたします。

 今まで相当に無理してきたみたいですし、しばらくゆっくり静養してもらいながら自分の進退について真剣に考えてもらうべき状態でしょう。

 さすがに『単機で国軍に匹敵する次世代兵器』の情報盗もうとしておいて死刑にならずに牢屋入りで済むと想定している人に解決役を任せられるレベルの問題じゃないでしょうからねぇ」

 

 辛辣! そして、ヒデェ!! …でも相変わらずたぶん正しい…。

 俺は中学時代の友人が抱いている別の友人感に恐怖しながら、今後一生経営とか経済とかに関わらずに済むよう平凡な一社員として人生を終える真面目に働くサラリーマンになる夢をあらためて胸に再熱させていく。

 

 そしてふと、そう言えばと思い出してセレニアにもう一つ尋ね直す。

 

「そういや俺たちって今、どこに向かってるんだ? さっき言ってたシャルルを落ち着かせて考えさせるため一人にしてやっただけ・・・って事はないんだろうな、お前の場合には」

「かつての級友を理解してくれていて助かりますね。説明する手間が省けます。・・・て言っても何も言わないわけにもいかないですけどね。

 普通に、織斑さんの提案していた解決策を実行しにいくだけですよ。順当にいって、それが一番自然な流れでしょう?」

「ふむ?」

 

 まぁ、確かにその通りだと俺も思いはするんだけど・・・・・・

 

「実行って、何しにどこへ行くもんなんだ? まだデュノアの正体がバレた訳でもないのに俺たちの方から言いに行くわけにもいかないだろう?」

「・・・いや、バレた後になってからじゃ遅いでしょ。普通に考えて・・・。

 バレなかったら秘密にしたままで通すつもりだったけど、『バレちゃったからヤバいの助けて、オリえも~ん』とかやるつもりだったんですか貴男は・・・・・・」

「う、ぐ・・・・・・うむぅ・・・」

 

 い、言われてみると確かにマズいな、その状況・・・。千冬姉がマジギレしかかっている姿しか想像できん・・・。むしろ俺、殺されちまわないかな? もしその状況になってしまった場合には。

 

「もちろん、学園執行部側には秘密にしといてもらいますけど、逆に言えば執行部の方に先にバレると厄介な問題でもあります。

 信頼できる先生方がいるなら、先に大まかな事情だけでも説明しておいて協力を取り付けておいた方が後々のためにもなるでしょうし、印象もそれほどには悪くならないでしょう。

 危機が迫るまで自分の都合を優先し、危なくなったら助けを求めて擦り寄ってくる人と、最初から素直に事情を説明して頭を下げてお願いしてくる人。――どちらの方が相手から好意的協力を得られやすいと思われますか? 織斑さん」

「・・・・・・断然に後者のほうだな。前者のほうは具体的に言われてみたら、なんかムカついたから」

「でしょうねぇー」

 

 軽く肩をすくめてみせるセレニア。

 

「ついでに言えば、それまで秘密にしておいたせいで、バレてから一方的に守ってもらうだけの立場になったデュノアさんの心理的負担も増大する一方になるのも避けなきゃいけませんのでねぇ。

 申し訳ない気持ちで一杯になるだけなら、まだマシですけど・・・罪悪感のあまり『自分さえいなくなれば皆にこれ以上迷惑はかからない・・・ッ!』とかの三流学園ドラマ的発想されたら困りすぎますし、できる限りバレた後の場合のことも考慮しておきませんと全ての努力と払った犠牲が無駄になってしまいます。私は無駄は嫌いです」

「お、おう・・・」

 

 日本人的『もったいないの精神』を持つ俺でさえドン引きな、セレニアの損得勘定。ときどき俺の級友は千冬姉のプレッシャーを静かに超えるときがあるのは気のせいなのかな?

 

「まぁ、とりあえずは織斑先生に話を通しておくのが妥当な選択でしょうね。あの人は私たちの担任教師ですし、一年生寮の寮長でもある。

 自分の管轄している寮内で、こんな大事件が起きていたことにも気づかないまま、いざ事が起きてから相談されて協力頼まれたときには、さぞかし肩身の狭い思いをする羽目になるんじゃないかと思われますし、あらかじめ話を通しておいた方が少しはマシでしょうよ。

 ・・・気弱な本人より先にこちらで事情を説明してしまえば、情報の取捨選択も可能になるわけですしね・・・」

 

 怖いっ!? そして、黒い!! 俺の中学時代の級友がダークサイドに落ちてもいないのに通常モードで黒怖すぎる時がある件について!?

 

 そして、よく考えてみたら俺もヤバい! 千冬姉にこんなこと直接頼みにいくって、そのとき俺どうなんのいったい!?

 

「ちょ、ま・・・待ってくれセレニア!! 俺にも決戦に及ぶ前には心の準備時間というものが必要であってだな!?」

「男の子で、日本男子で侍で武士道の覚悟なのでしょう? 割り切りなさいよ、それぐらいの気持ちの問題程度なら簡単に。受け入れろ、そして乗り越えろ。です」

「鬼かお前は!? そして、赤髪の大海賊かお前は!?」

 

 思わず五反田から借りた漫画のネタでツッコんじまうほど混乱させられる俺。

 逆にセレニアの方は至って冷静に肩をすくめるだけ。

 

「冗談です。こういう時には中途半端な第三者が間に入ってくれた方が、感情的な衝突にならず曖昧な形で話を終わらせることができますので、その人の元へ先に向かっているだけです」

「な、なんだそうか。ビックリした・・・。でも、そんな都合のいい人って、この学園にいたっけか? ひょっとしなくても山田先生とかか?」

「ん」

 

 問われたセレニアが指さした先、俺たちが向かっていた目的地の到着点である、寮の一室。

 部屋の扉にかけられた名札は『宿直室』。

 

 ・・・そして、その下にブラ下がっている、部屋名よりもデカく書かれた現在部屋を使用している人の名前は・・・・・・

 

 

『白兵戦指導教官:クレシア・クレッシェント。永久所在地』

 

 

 

「なる・・・ほど・・・。これ以上ないほど適任な人選だな・・・」

「・・・・・・すいません。うちの姉が迷惑かけまくってしまってて・・・・・・」

 

 

 納得して褒めたにもかかわらず、なぜか今から頼ろうとしている人のことで謝ってくる実妹のセレニア。

 

 ・・・・・・わかるけどな。気持ちはものすご~く分かるんだけどな・・・・・・。

 理屈で納得できてても、感情的に謝っとかなきゃって気持ちになるときはセレニアにだってあるんだと旧友の新たな一面を知らされながら、肩を「ポンポン」と叩いてやりながら部屋の扉をノックして入室し、シャルルの権利と自由を勝ち取るために俺たちが行う今夜最後の戦いの幕を開けにいく。

 

 なんか色々ありすぎた夜だけど、俺たちが問題解決のため立ち向かわなければいけない本当の戦いは、これからだ・・・・・・ッ!!

 何故かはわからないが、そんな予感を感じながら俺は強敵が待ち受ける最初の門を仲間とともに潜り抜けたのだった!!

 

 

 

 

 ――そして、その戦いの結果。

 

 

「・・・大凡の事情は把握した。まったく・・・お前たちは飽きもせず毎度のように厄介ごとを学園内に持ち込んでくれるものだな。

 まぁ、今回の件では私たち学園側にも手落ちがある以上は、そう悪いようにはせんだろう。とはいえ、全くの無罪放免ともいかんだろうが・・・・・・」

 

 

「ま~ま~、チーフー。そう堅いこと言わなくても別にいいじゃーん。シャル大佐も悪気があって秘密にしてたわけじゃないんだし、むっつりイッチーも今回はなにも悪いことしてないんだから怒るのは可哀想ってもんでしょー? それぐらいで許してあげなよ、チフえもーん」

「そうは言いますが、クレッシェント先生。たとえ本人の意思でなかったとしても、学園側に偽造の身分証明書で入学していた事実がある以上はなんらかの処罰をしなくては他の生徒たちに示しがつきません。

 ――あと、教え子たちに変な渾名つけるのやめろバカ後輩。むっつりって何だ、むっつりってオイ」

「まーまー。そんな、名前とか本当の性別が違ってたとか些細な問題を気にしすぎないで楽に生きようよ、気楽にさ~。

 男のフリして女子校かよってた女の子なんて、女子高生のフリして女子校かよって全校生徒の憧れ『エルダーお姉様』とかの地位に選ばれちゃった男の娘より遙かにマシでしょー? それと比べたら許してあげたって別にいいじゃんかよー。

 ―――もっとも、男が性別偽ってセレニアと同室になってたとかだったら骨も残さず燃やし尽くして殺してたところだけど。セレニア以外だったら別にいいわ。問題なしよ。モーマンタイ」

「比較対象がおかしすぎるわ!? あと、公私混同の度が過ぎるわ!! お前も一応とはいえ公務員なんだから生徒の前で迂闊にソレ系の発言を連発するんじゃない!! 学園全体の問題にまで発展するわ大バカ駄後輩!!」

「えー、いいじゃんかよ~別にー。公務員なんだから、公私混同と職権乱用ぐらいさせてくれたって別にいいじゃん。

 だいたい、公私混同と職権乱用とコネ採用と天下りを禁止された公務員なんかになって、一体何しろっていうのさ!?」

「いや、仕事しろよ!? 給料分だけ仕事をしろよ! そのために税金から給料払ってもらってるんだろうが私たち公務員って生き物は!?

 しかもお前、やっぱりコネ採用だったのだな! この汚職ダメ後輩め! 今日こそは腐りきった貴様の精神を叩き直してやるから覚悟しろ!! 天誅――――ッ!!!」

「ピキーン! 甘い! 甘いぞチーフー!! 正確な打撃だが、それ故にスパコン並の本能的な勘の良さを持つクレシアお姉さんには読みやすい・・・。

 お前が手に入れた世界最強ブリュンヒルデの栄光が、機体の性能のお陰であったことを忘れたというなら思いださせてあげようじゃないか!! とうりゃー!!!」

「なぁぁぁぁぁんとぉぉぉぉぉぉぉぉッッ!!!!!!」

 

 

 ズカバキドガガガン!!! ズバズババキン!!!!!!

 

 

 ・・・・・・見事すぎるほどの脱線ぶりで、千冬姉の部屋がわずかな間に戦場と化してしまった。生身とはいえ、世界最強と互角にやり合える人と千冬姉とのケンカに割って入るなんて無謀は俺たち既存人類には不可能なので一時撤退を決断。

 こうして俺たちは今夜最大の戦いを、戦わずして有耶無耶にすることに成功したのだった。

 

「・・・いいのかな? これで、本当に・・・・・・」

「・・・・・・・・・なんか、うちの姉がホントーにすいません・・・・・・」

 

 心底から申し訳なさで一杯になってるらしいセレニアが珍しく『シュン』となって俯いている希少な姿を見下ろしながら、俺がなんとなしに頬をかきながら「えーと・・・」とか意味のない独り言をつぶやいていると。

 

 

 ~~~アイ♪ 生命~のアイ~~♪ チの色は♪ 大地に~捨てて~~~♪

 

 

 と、なんかよく分からない歌詞の楽曲がどこからともなく鳴り響いてきた。・・・って、本当になんだこの歌は!? どこから聞こえてきてる!? そして歌詞のルビはどう振ってあるんだ!? 『アイ』って『愛』なのか!? それとも『逢い』なのか!? どっちだ!?

 

「あ、すいません。私の携帯に着信あったみたいなので、ちょっと出てきますね」

「お、おう。セレニアの携帯の着メロだったのか・・・驚いたぜ。って言うか、スゲェ着メロだったな今の歌・・・」

「特定の人からかかってきたときに一瞬で分かるよう設定したものですからねぇ~。面倒ではなくても話が長くなりやすい人ですし、先にお部屋へ戻っていて下さっても構いませんよ?

 デュノアさんもそろそろ独りぼっちだと寂しくなってるかもしれませんし、安心させてきてくれると嬉しいのですが」

「ん・・・、そうだな。それじゃ先に行かせてもらうわ。お前も遅くならんうちに部屋へ戻れよ? 寮の中だからって女の子が一人で出歩いても大丈夫な時間はいい加減すぎる時間だからな、そろそろさ」

「は~い。お気遣いどうもありがとうございます。お休みなさーい、また明日~」

 

 片手をあげてヒラヒラさせながら廊下の隅へと向かって歩いて行くセレニア。

 その後ろ姿に、先ほどまでの色々あったのが重なって脱力した俺は部屋へと戻る足取りが重くなるのを堪えながら力強く踏み出していく。

 

 ・・・明日から忙しくなるかもしれないし、今日はしっかり寝といた方がいいかもしれないからな・・・。

 シャルルを守るための今日の戦いは終わったけど、まだまだ彼女の親たちとの戦いは始まったばかりなんだから気を引き締めてかからないといけない。そのためにも今日は寝て英気を養う。

 俺たちの戦いは今日の分は終わって、また明日からだ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・・そして、織斑さんの気配が背中に感じられないぐらい遠くなったのを確認してから、私は携帯の通話ボタンを押したのでありましたとさ。

 

「・・・はい、もしもしセレニアです」

『は~い☆ モスモス終日セレちゃんかい? 幼い頃から君の憧れの的で大好き愛ししているだったタバネンさんだよ~♪ 元気してたぁー? ぶいぶい☆☆』

「――申し訳ありませんが、現在私は出かけております。ご用の方は適当にメッセージでも何でも入れておいて下さい。あと、出来ましたらメールでお願いします。以上です。それじゃあ」

『・・・オーイ。わざとらしすぎる偽留守番電話メッセージで久しぶりに電話してきた幼馴染みのハートをブロークンしようとするのはやめようよ~・・・。

 折角いいお話を持ってきてあげたのに、言う気なくなっちゃいそうだな~? どうしよっかな~? この違法ハッキングしてまで手に入れてあげた機密文書の処置は? 燃やしちゃってもいいんだけどな~~~~ん???』

「・・・・・・はぁ・・・・・・。最初から商談を持ちかけてきていることぐらい分かりきってるタイミングだったんですから、面倒くさい前振りはいらないって言いたかっただけですよ・・・。

 ――で? 要求は?」

『おや? 書類の中身も確認しないで言い値で買い取る約束とは、セレちゃんらしくもないな~。

 ひょっとしなくても久しく逢わない間に錆び付いちゃったのかな? だとしたら束さん的には大ショックなんだけども~~??』

 

 わざとらしい口ぶりで、久しぶりの会話となる私を試してくる相手の彼女。

 《IS》の生みの親にして、既存人類の限界を超えている天災科学者の女性。

 

 そしてついでに言えば、『子供の頃に絡まれて以来、付き合い続ける羽目になっている幼馴染みの変なお姉さん』

 

「この世界有数の超VIPが、わざわざ私ごとき小物相手にプライベートな商談を持ちかけてきている時点で、偽物を用意してやる手間暇かけてやるほどの理由はないと分かりそうなものだと私は思いますけどね・・・・・・?

 貴女はそう思われないのですか? 【篠ノ之束】さん」

『アハハハハ☆ OKOK♪♪ その調子その調子☆

 そういう減らず口聞いてくれないとセレちゃん相手には束さんもやる気出すの苦労させられちゃうからね♪ メンドくさいのは束さん大嫌いなんだも~ん♡♡』

 

 ひとしきり笑って旧交を温め合った後。

 私と相手は今日最後にして、おそらくは事件の決着そのものさえつけることが可能な商談に取りかかることに致しました。

 これが今日最後の減らず口です。

 

 

 

『んじゃ、さっそく商談なんだけど・・・・・・近いうちに束さんもソッチに行くから海でデートしようよ、百合レズデートを。

 その代わり束さんは、デュノア社社長のアルベールくん家への直通回線と、フランス現政権の閣僚たちがイグニッションプランで負けた後にデュノア社から乗り換える予定の外国資本から、幾らぐらいの個人的融資を受けているかの内部資料をシュレッダーから取り出して完全再現したものを進呈してあげるけど・・・・・・どする? Yes.or NO?』

 

「Yesでお願いします」

 

 

 

 ・・・こうして戦いは無事に終わらせることができました。

 電話一本で最終的解決ができてしまう程度の戦いなんて、こんなものです。

 手に汗握る商談なんてものを、高校生なんていうガキ如きに求めるんもんじゃーありません。

 

 

つづく

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