前々からISと八幡のコラボを夢見てて、でも実現するには八幡への理解が足りな過ぎてとゴチャゴチャしている時に考え付いてた作品です。
サブタイトルは決めてないので適当に「プロローグ」とだけ。
これを投稿したらゲーム始めるつもりでいます。次の更新は他の連載作にするつもりですのでご了承ください。
IS学園に美少女ひねくれボッチが入学してくる話
IS学園1年1組 比企谷八舞
タイトル「ISについて考えてみた」
ーーISとは、悪である。なぜならISは女性の権利を保障し、社会への進出を促した、諸悪の根元とも呼ぶべき邪悪な存在だからである。
本来、我々女性という性別を持つ種族は家を守り、家庭を守り、自宅に引きこもって自家とはかかわり合いのない赤の他人との関係を途絶し、無責任な野次馬たちが放つ無自覚な悪意から愛する我が子を守り、守護せんとする崇高な使命を与えられて生を受けた存在であるはずなのだ。
にも関わらずISは女性の社会進出を促し、モンド・グロッソの人気が『女は強い』等という幻想を生み出し、挙げ句の果てには国家代表候補生たちエリートが美女美少女ぞろいであることから「IS操縦者は皆、美人で性格のいい優良株だ。お近づきになって損はなし」だなんて勘違いを招くまくるのである。
ーーその誤解が現代日本の女性社会に、致命的なまでの格差社会を構築してしまう元となってしまった。
例を挙げてみよう。中学校の卒業パーティーの出席の是非を問うときに進学先の名前を聞かれる場合がある。一般高校に進むしかない男子生徒であるなら問題はないが、これが「IS学園への入学が確定している」高適正保持者である場合、とても悲惨な結果を生んでしまうのだ。
出たくもない卒業パーティーに出席させられたり、二次会、三次会にまで強制参加させられては男たちに言い寄られ、欲しくもないメルアドが書かれた紙を何十枚も渡されてはゴミ箱が一杯になる。踏んだり蹴ったりとはこの事だろう。
思いの外に長くはなったが、結論を言おう。
IS操縦者にして国家代表候補と専用機持ちのリア充どもよ。砕け散れ」
シュパッ!!
ーーIS学園教員にして元モンド・グロッソ優勝者でもあるブリュンヒルデ織斑千冬先生は、額に青筋ひとつ立てることなく俺の作文を静かな声で読み上げた後、手刀で真っ二つに切り裂いた。
ブリザードの気配を全身から発散しまくりながら織斑先生は私の目を見据え、氷の臭いがする声で静か~に語りかけてくる。
「おい、比企yaーー」
「すいません、書き直します。今すぐ書き直しますから殴らないでお願い。ISでも壊せそうな手刀で切られたら俺、死んじゃいますんで」
速攻で土下座しながら全面降伏する私。
女は男と違って面子とかの詰まらないしがらみに捕らわれなくていいから、こういう時には楽だと思う。ああー、女に生まれといて良かった~。
「そうか。なるほど、わかった。手刀だと壊れると言うなら正拳突きで行く。それならば問題あるまい?」
訂正。男より女が楽なのはIS学園以外の場所限定みたいです。鬼斑先生がいる元女子校のIS学園は女たちにっての煉獄です。
誰だよ? さっき女に生まれたのを喜んでたバカは。一度死んでみれば?
「待ってください、生徒を殴るのは国立学校の教師として問題行為です。教育法に明記されている条文によりーー」
「IS学園は治外法権だ。日本国刑法も憲法も大々的には関与できない」
「で、ですが元国家代表にしてモンド・グロッソ優勝者が一般人に手を出すのはーー」
「一昨日からとはいえ、お前も今ではIS学園の生徒だ。治外法権が適用される地位にある身分だし、IS学園生徒が守るべき法律とはIS学園の校則のみを指す。
ーー何より、国が関与しようとしても出来はしないさ」
「な、なぜですか? 一応とはいえ俺もIS学園の生徒であるなら国家が守ってくれる身分にあるのでは?」
「簡単だ。私がさせないように仕向けるからだ。元IS世界大会優勝者の権力とコネを甘くみるな」
「職権乱用だ! いや、特権乱用だ! 国家代表自らの口からモンド・グロッソが侮辱されているぞ! 誰か! 国に通報してくれー!!!」
「比企谷、無駄な足掻きはやめろ。あきらめて修正の鉄拳を受け入れるがいい。
悔しかったらーー自力で這い上がりモンド・グロッソで優勝して見せろーーーっ!」
「格好良さげな台詞が言うタイミング次第で格好悪すぎる台詞になる例題にーーっ!」
そして鉄拳制裁。沈むボッチ。
かくて陽は沈み、一将功ならずして万骨は枯る、か・・・。空しいものだな。かつての私は在籍する中学校一の美少女として光溢れていたと言うのに・・・。
ーーその光がウザったくて、毎度のように逃げ込むための影を近場で探し回っていたのも、今となっては良い思い出です。
「おい、何を気絶したフリして休息をとっている。早く起きあがって立ち上がれ。制裁は与えたが、まだ罰則を言い渡してはおらんのだぞ?」
ちっ、バレてたか。誤魔化すのは得意分野だがブリュンヒルデ相手には荷が勝ちすぎる。
次からは気絶じゃなくて死んだフリを採用しようと心に決めながら立ち上がって膝についた埃を叩き落としていた俺に、世界最強の暴力女教師が受け持つクラスの生徒情報を概略だけまとめられた二枚の紙が差し出され。
「嘗め腐った作文で私の心を穢した罰として、お前には二人の専用機持ちのうち、どちらかと戦ってもらう。異論反論は一切認めないし認めさせない。強さが全てのIS学園内では、元世界最強の私が言うことこそが法であり、この世の絶対正義だ」
「横暴にも程があるでしょうに・・・。生徒個人の権利と尊厳の保証については?」
「無論、圧制者に対して不平不満を抱かぬ人間など居らぬ以上、反感を持つこと事態は規制しない。言いたくなったら言ってくれて構わない。聞くだけ聞いてやろう。
ただし、聞くだけだがな?」
ボキボキと拳を併せて鳴らしながら言われた言葉には非常な説得力を感じさせられて、俺はおとなしく書類を見回し、片方の女生徒を懲罰官・・・じゃなくて、対戦相手に指名した。
「じゃあ、イギリス代表候補のセシリア・オルコットの方でお願いしますよ」
俺の言葉に織斑先生は微妙な表情を浮かべる。
なんだよ? まさか、自分から選べと言っておいて実際には選んで欲しかったのは別の方で、そちらを選ばなかった俺の命はゲームオーバーな展開だったのか?
・・・だとしたら、ごめんなさい。謝るから許してちょ。
死にたくないし、ぶっちゃけ他人に傷ひとつつけられたくすらも無い。
ボッチは、他人と戦う流儀を解さないし解せない。戦うとは向き合うという事だからだ。試合の度に一期一会の相手と対等な立場で向き合うことに意味など微塵も感じない。
だからこそ、先生のこの反応は正直なはなし意外だった。この人なら同じクラスになって日の浅い俺なんかよりもオルコットの事を把握していると思っていたのだが。
「ふむ・・・オルコットか。一応聞くが、なぜ彼女を選んだ? もう一人の織斑一夏の方が今だとネームバリューが高い。倒せば大金星間違いなしだぞ?」
「だからオルコットなんですよ。
今やアイツは男からも女からも好かれてる人気者で、しかも各国からオファーが来まくっていて日本政府にガードしまくってもらってる、一般人がおいそれとは近寄りがたい雲の上の人になりかけてる状態なんです。学園の中にいると気づき辛いですが、ネットとかテレビとかであいつの名前を聞かない日はないくらいにはね。
そんな奴と戦ってるシーンを動画で配信されでもしたら嫌われ者街道一直線じゃないですか。ヤですよそんなの、面倒くさいしウザったい」
「・・・・・・」
「第一回モンド・グロッソ優勝者な世界最強の姉を持った弟で、世界で唯一の男性IS操縦者でもある見た目はさわやか系の美少年・・・。世間の目から見て、物が違いすぎますよ。勝ち負けに関わりなく敗けが確定している勝負なんて、俺はごめん被りますね」
俺が発言し終えてから、織斑先生が押し出すような声を出すまで数分間が必要だった。
「・・・お前にとって対戦相手に選んだオルコットは、消去法の結果としての価値しかないと言うわけだな?」
「“今回の場合では”おっしゃるとおりですかね。二つにひとつしか選択肢が用意されてなくて、今この場で選ぶことを強要させられたわけですから。
まぁ、他に選べる道があったのなら答えは変わっていた可能性があるかないかまでは分かりませんが」
「・・・・・・」
「そう言えば、二つの内からひとつだけを選べ、他に選択肢はないって表現、なんとなくアイヒマン実験を彷彿とさせ・・・すんません、マジごめんなさい。土下座でも靴舐めでもなんでもしますんで殴らないで。
今度のはマジで殺したそうな目をされてらっしゃいますから、冗談抜きでマジ怖い」
ひたすらに平謝りして許しを乞うと、先生はしばらく黙り込んでからパッパと片手を振って犬でも追い払うように“出て行け”とジェスチャーしてくれた。
忠誠心豊かで賢い俺は、自己保身の精神に乗っ取り忠実に上司の命令を実行に移して戦略的全面敗走で逃げ延びる。
よし、今日も生き残れたぞ。やったぜ、ハッちゃん!
ーーそんな風に心の中でだけ自画絶賛していると、
「おい、比企谷」
と、呼び止められてしまった。
内心「なんだよ~、まだ何かあるのかよ~」と不平たらたらな俺だが、それでも態度だけは誠実に見えるよう最大限度の礼儀を守って対応する。
『死んだ魚のようにドヨ~ンとした眼』とか、昔から色々言われてる俺の目は誤解と偏見の元なのだ。表面的に取り繕うことで誤魔化せる部分は誤魔化したい。
“自分には嘘をつきたくない。だがしかし、勝手な願望を元に思いこみで俺を決めつけてくる連中には、信じたがってる願望を崩してやる必要性は感じない”
ーーそれが俺の中学二年の時から続く信念って言うか、ポリシーだった。
「お前には、国家代表候補生としての誇りは存在しないのか?」
そんな俺に対して織斑先生は、勘違いも甚だしい“代表候補としての誇り”なんて概念で御下問あそばされて来られた。
ハッキリ言って失笑モノだが、正直にそれをやれば殴られるだけだろう。
俺はせいぜい謹厳実直そうに見えるよう気を使ってやりながら、質問への回答を口にする。
「候補なら俺の他にも十人以上いますし、その内代表入りして国の名前背負える名誉と権利を与えられるのは5人程度です。ISの総数は国によって違いますからね。公平性を尊ぶスポーツ競技では、これが限界でしょう」
「・・・・・・」
「そのうえ俺は『世界初の入学』に併せて入学を強制された身でありながら、親の仕事の都合で転校手続きが遅れることを一言伝えただけでアッサリと許可が下りてしまう、その程度の存在でしかない出涸らしですよ? そんな落ちこぼれに誇りなんてあると期待するのは無茶振りってものですよ」
「・・・・・・・・・」
「おまけに俺は実績知名度ともにマイナー中のマイナー選手ですからねぇ。果たして今年入学した生徒の中に俺を知っている奴が何人いるやら。ーーIS操縦者育成校であるIS学園の中でさえ、この有様です。その程度の奴に期待するなんて無駄なことです。馬鹿らしい」
「・・・・・・・・・」
「夢なんてモノは、追えるだけの才能と環境を誰かに整備してもらった奴だけ追えばいい。俺みたいな平凡な秀才は無難に生きていって、勝てる勝負と勝ち負けが人生にあまり影響しない勝負だけ挑んで受ける。それが身の程を弁えるって奴でしょうよ」
「違う! 比企谷、お前は間違っていrーー」
「失礼しました。失言でした。世界中の子供たちに夢を与えて世界平和にも貢献しなくては成らないIS操縦者の発言としては不適切だったことを自覚し、ここに謝罪いたします。
まことに申し訳御座いませんでした、この通りです。反省してますから許してください」
誠意を込めて謝罪しながら頭を下げる。
今の俺がどんな顔をしているかなんて分からないだろうし、分かりたくもないだろう。
当然だ。俺だって知りたくもないのだから。
ーー表面的な礼儀作法で相手を判断する奴には、礼儀を守ってやらばそれで済む。問題は起きない。
では、相手の態度ではなく心で見てくるような奴を相手にした場合には?
同じことだ。
礼儀を守って、誠意を込めた対応を心がければそれで済む。
どこまで行っても人は、主観に基づく価値観で見た物を判断する生き物だ。相手が悪意ある人物だと決めつけてかかってくる場合には、初めから相手にはレッテルが貼られた状態でスタートさせられる。
逆もまた然り。この人は『良い人だ、優しい人だ』と言う前提で相手を見て話をするから、相手の反対側にたっている人間のことは悪者にしか見えなくなる。客観性が初めから失われた状態で同席している第三者なんて第二者となんら変わりがない。
主観無き客観などあり得ない。その人が俺を見たとき、話しかけたとき、どういう目的で話しかけてきたかによって行き着く先は初めから決まってしまってる。
その結末に辿り着きたくて、辿り着かせたくて始めた会話である以上は仕方のない結末だ。変わりようのない結末だ。
正義と悪は始まった時点で、相手の中では決まってしまっているのだから。
どちらの意見が正しいのかを話し合うのが目的ではなくて、『自分の正しさと、相手が間違っていることを』周囲に見せつけながら、相手に押しつけながら味方を集めて敵を孤立させ、最終的には包囲殲滅してしまうのが正義の味方の正義論なのだから。
正義の味方の中だけ限定で彼は常に正しくて優しい。
正義の味方の敵にとってのみ、彼は暴君で圧制者で高圧的な虐殺者だ。
正義の見方は、自分の正義が認めたモノしか肯定しない。
自分の正義以外、全ての存在にとっての敵が正義の味方だ。
正義は主観だ。客観じゃない。
自分の中でしか成立しない価値観が、正義であり信念であり正しさだ。
正義の味方に利害損得はなく、駆け引きも交渉も成立しない。
正義の味方とは、自分が間違っていると決めつけた相手の「Yes.」以外の言葉には、『説得という名目で相手の価値観を否定するための口実』としての価値しか認めていない存在なのだから。
「反省してます。今後このようなことがないよう気をつけますので、どうか許してください。お願いします」
だから俺は、相手の望む言葉を吐き続けてやる。
言って欲しいと望んでいた言葉を与え続けてやる。
欲しい言葉はくれてやる。言葉だけで済むならタダだから。言葉に元手はかからないから。
タダで得られる言葉に満足する奴とも、満足してないのに不満を口にして損をするのを嫌う程度の奴とも話し合いたくなんてないから。
言葉を安売りしたくない。思ったことを語り合える相手が欲しい。
心じゃなくて、行動でもなくて、言葉だけでもなくて、『ナニカ』が欲しい。
俺の知らないナニカ。理屈で考えることしかできない俺には計れないナニカ。考えることしかできないから、狂うぐらいに考えるのが丁度良いと認識している俺の頭では理解できないナニカ。
平たく言えば、与えられた偽物の役を演じ続けてるだけの人生で会えるものなら会ってみたい『本物』と呼ばれるナニカ。
それ以外の何を持っていたとしても俺は知らない。価値がない。
だって、本物だけが見たい俺には、本物以外を求める気なんて端から持ち合わせてはいないのだからーー。
「ーーもういい、わかった。行っていい」
織斑先生は投げやりな声で『今のお前に何を言っても無駄なのだな・・・』と、軽い絶望と失望の想いを伝えて来てくれる。
俺は「分かりました。失礼します」とだけ言って彼女に背を向けながら『あの人はダメだ。持ってない』と言う想いを新たにした。
彼女に正義はあるのだろう。信念やポリシーもあるのだろう。もしかしたら愛とかそう言うのもあるかもしれない。
でも、それらは今の俺が求めている本物じゃない。関連づけられるモノなのかもしれないが、少なくとも今の彼女からは何一つ感じることが出来なかった。
人は主観でしか生きられない生き物だ。傲慢としか言いようがない俺の思いも、詰まるところ感情論による主観でのみ成り立っている。
なら『本物か否か』は、感情だけで決めるべきだろう。
頭で考えるのは、本物と感じた想いが本物かどうかを検証し、解析する時まで保留すべき事柄だろう。
俺が求める本物。
周囲が求めていると決めつけて俺が与えている偽物。
なのに未だ返品依頼もクレームも入ってきたことがないーー。
いつか来るのだろうか? それとも既に来ているのを俺が気づいてないだけなのか?
答えは出ない。今の俺には出すことが出来ていない。出てきてないから迷っているし悩んでもいる。
宙ぶらりんでフラフラしている俺の価値観。
手に入れたいのに、あるかどうかすら判然としないイメージだけの空中楼閣『本物』。
現代の地球世界では中心地になっているはずのIS学園で、答えは出るのか出ないのかすら分からない。
分からないかどうかすら、分かっているのか判然とはしていない。
唯一分かったのはーーガキの頃にあこがれてスッゲェ大人に見えてた高校一年生も、成ってみると案外ガキのままなんだなと言う平凡な一事のみ。
銃で撃ち合い、剣で斬り合うのが日常のIS学園も、集まる生徒はどいつもこいつもガキなままの高校生ども限定。
「こりゃ、期待薄かな。・・・俺自身も含めてだが」
職員室の扉に背を預けながら一人ごちた俺は、親の仕事先で知り合った女性を思いだしながら寮の自室へと戻る。
世界中の全てを知ってるとか宣ってたあの人だったら、今さっきのやりとりでどんな返しをしてくれただろうかと自分勝手な決め付けを元に妄想して楽しみながら・・・。