最近、文章が上手く書けずに迷走してしまって手こずってる間に時間過ぎちゃってた話を焦りながら書いたため、文章も話もビミョーになってしまって申し訳ございません。同時進行が多いと、どうしても焦ります故に…。
――カンッ! キンッ! ・・・ゴォウッ!!
シャルルと組んでチームで参加することになったタッグトーナメント第一回戦だったが、敵であるラウラの思わぬと言うか、予想以上の母ちゃん大好きっぷりによって想定外の苦戦に俺たちは陥らされていた。
「箒お姉さん! いったん後退して元の位置まで戻って下さいです! これ以上前に出ちゃうと横合いからラファールのアサルトライフルを食らっちゃうです!」
「むっ!? いつの間にデュノアがあんな位置にまで・・・・・・了解した! 後退する!!」
「――ちぃッ!! また引っ張り出せなかったか!!」
もう何度目かの挑発による分断に失敗して、俺は舌打ちをしながら白式を大きく跳躍させて後退させる。
その直後に俺の足下を狙って撃ち込まれてくる箒からの牽制射撃。明らかにラウラから入れ知恵された箒らしくない、小賢しい安全策に二度目の舌打ちをしながら更に機体を後退させて、挟み撃ちの奇襲が不可能になったシャルルもラウラが砲口を向けさせたリボルバー・カノンで撃たれることを警戒して後退。俺と合流して仕切り直しを測らざるを得なくされる。
・・・さっきから延々と、この繰り返しだった。
壁役の箒はともかく、敵司令官役を兼ねたラウラは挑発に対して過剰なほどの慎重策をとってきて、「あと一歩攻め込めるかどうか?」という距離の“二歩手前”で必ず待ったを掛けて箒を呼び戻し、ラウラはラウラで大口径の巨砲を撃つ素振りだけ見せて撃たない。
時間稼ぎによる判定勝ちを狙った戦法だった。
ラウラと箒は動きを最小限に抑えて、自分たちの初期位置からほとんど動かず、挑発に乗っても互いの有効射程までは出てこようとしない。
逆に俺の白式とシャルルのリヴァイブは高機動型であり、動き回らないと機体性能を活かすことができない。
昔セレニアから『攻城戦において普通なら騎馬兵のほうが不利なんですけどねぇー・・・』と、大河ドラマ見ながらボヤいてたのを聞いたことあるけど、まさか本当だったとは!
「シャルル、無事か?」
「一夏こそ、囮役を担って前に出ているんだから無茶しないで。このままだとジリ貧だし、僕もサポートに入ろうか?」
プライベートチャンネルを使うまでもない距離で交わす味方同士の会話。
敵は遠く、最初の場所へと戻って動こうとはせず、こちらが動くのをただ待っている『後の先の構え』
「・・・いや、いい。このまま例の作戦を続行しよう」
「一夏・・・。うん、わかったよ。このまま続けるね」
俺は、敵の作戦に構わずあらかじめ決めておいた作戦を続行することを決めて、シャルルに指示を出す。
どのみち、にわか仕込みの思いつき戦法で勝てるほど易い相手じゃないことは今までの展開で分かり切っていることだ。このまま『箒を先に倒す作戦』で行くしか他に俺たちには勝ち目がない。
それに何より、俺はこの“セコイ戦法”に向かっ腹を立てていた。
無難な動きと、足下を狙った射撃でコチラが無駄に動くことを強制してくる嫌な攻撃の仕方には、一人の剣士としてイライラさせられてしまう。
――こんな戦法に負けてたんじゃ、剣士の名折れってもんだ! 乾坤一擲、斬られる覚悟で斬り込んで分断し、敵のせこいチームワークをぶった斬ってやる!!
そう覚悟を決めた直後のことだった。
「あっ! そのお顔はまたズルい負け惜しみを考えてますねヘンタイさん! “敵が使ってくる戦法に追い詰められるのを敵のせいにするのはヒキョー者のやることです”って、お母様が言ってたですよ! ヒキョーなのはよくないと思います! 反省してください! メッ!です!」
「容赦ねぇな!? どこの世界でもセレニアは本当に!!」
言ってることは確かにそうなんだけど、剣士には剣士の流儀ってもんがあって、指揮官のそれとは違うんだってことも娘にはちゃんと教えておいてくれないかな異世界セレニアさんやホントの本当に!!
「だ、だいたいラウラ! お前だって箒に戦わせてばかりで自分は一歩も安全な場所から動いてねぇじゃねぇか! お前の母親がセレニアだって言うなら、そういうことも良くないって教えてたはずだろう!? だとしたらお前の方こそ、セレニアの娘として恥ずかしくないのか!?」
「はいです! ぜんぜん恥ずかしくありません! だってラウラ、お母様から『危ないことはしちゃいけませんよ?』ってよく言われてたですからね! ラウラはお母様の言いつけは絶対やぶりませんです!」
「いい子だなぁーオイ!?」
物凄く常識的な母からの教えで、俺たちが当初に立ててた作戦は破綻させられてたのか!? これじゃ通用しないわ絶対に!
常識論で奇策を打ち破る、すっげぇセレニアらしいやり方で俺の立てた作戦破られちゃってたのかよ!!
「くそぅ・・・こうなったら仕方がねぇ・・・。こんなやり方だけはしたくなかったが、他に手はない! 一か八かだ! やってやる!! うおりゃぁぁぁぁぁぁッ!!!!」
「むぅっ!? 白式単機でのイグニッション・ブースト突撃だと!?」
俺の覚悟を決めた特攻に、ラウラではなく箒が驚きの声を上げて、そして直後に不敵な微笑みへと変わる。
「早まったな一夏! このままでは勝ち目がないからと味方との連携を捨て、力尽くで勝負に出ようとは!! 《零落白夜》での一発逆転を狙ったのだろうが、そうはいかん! その程度の特攻戦法など横に移動すれば済むことよ! 直進しかできないイグニッション・ブーストを絶対視した己の未熟さを呪うがいい一夏!!!」
「あ。待ってくださいです箒お姉さん。あの動きはたぶん――――」
「うぉぉぉぉぉぉッ!!!!」
俺の動きから何かを察したらしいラウラが声を掛けようとするのが聞こえたが、もう遅い! 第一ロケットの噴射が終わって、今はすでに第二ロケット発射の時間だ!!
「でぇぇぇぇやぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!」
「なにっ!? 零落白夜を振りかぶるための減速もせず、むしり更に加速して―――うわぁっ!!!???」
ドガッシャァァァァァァッン!!!
・・・俺は加速を掛けた白式による体当たりで正面から突っ込んでいって回避行動が終わる寸前だった箒を弾き飛ばし、そのままラウラに向かって突撃。再度のイグニッション・ブーストでより加速を掛けて―――激突する!!!
ズガッシャァァァァァッン!!!
・・・・・・い、痛い・・・。
バリアがあっても防ぎきれない衝撃だけでメチャクチャ身体中が痛みまくるほど、前面に突き出してる突撃用のラムがない体当たりは、やった側の俺が痛い・・・。痛すぎる・・・。
「だ、だがしかし! これで箒との連携は崩してやったぜ!! これなら――」
「・・・やるですね、ヘンタイさん・・・。箒お姉さんを先に倒して、ラウラとは二対一でボッコボコにする戦い方です。
機体セーノーでも、操縦ギノーでも箒お姉さんはシャルルお姉さんより弱いですから、時間稼ぎしてるだけで有利になれるです。ヘンタイさんの作戦勝ちです」
「俺たちがお前に勝つために立てた作戦の説明役を奪うのは止めてくれないか!?」
ヒデェ! これだとなんか俺がスゲェ馬鹿を演じちゃったみたいで格好悪すぎるようになっちまった!?
敵の作戦看破して、完全解析したものを詳しく説明してくれる異世界セレニアの英才教育マジ酷ぇ!?
「でも、いいですか? シャルルお姉さんに箒お姉さんは勝てないですけど、箒お姉さんがやられちゃうより先に、一対一でラウラがヘンタイさんを倒せちゃうですよ?
今のヘンタイさんは、ラウラが知ってるヘンタイさんよりずっと弱弱ですから、ラウラ一人で楽勝です。ビクトリーです。
ヘンタイさん一人だと、シャルルお姉さんが来るまで持ち堪えられないですけど、それでも大丈夫です?」
「・・・・・・本気で俺のこと心配してくれてる顔でムカつく台詞をどーも・・・」
敵にとっては悪意的挑発セリフになる言葉を、本気の善意から心配してあげて言ってくる、『悪意なき善意だけの自覚あり言葉攻撃』はさすがにセレニアの愛娘・・・。異世界版でもアイツは何一つ変われてねぇんだなぁ、本当に・・・。
しかも、言ってること自体は完全に事実なところが、尚更セレニアの娘らしくて腹が立ってくる。
たしかに今の俺と、お子様モードのラウラとじゃ実力差がありすぎている。さっきまでの戦いの中で、それが嫌になるくらい理解させられた。
コイツ俺を“攻撃する気で攻撃”したことが今日の試合中一度もない。
「たしかに俺は、お前の知ってる俺より弱いのかもしれない。だけど、その俺だって最初っからそこまで強かったわけじゃな―――」
「はい。ぜんぜん違うです。今のヘンタイさんはスッゴくスッゴく弱いです。思わずラウラ、イジメになっちゃうから『手加減しなくちゃ!』って思ったぐらい弱いです。
イジメは悪いことだからしちゃいけませんって、お母様から教えてもらったラウラはイジメしないです」
「言わせろよ!? 人の言葉を最後までさぁ!?」
ヒデェ! 本当にヒデェ!! 子供の無邪気なKY発言本気でヒドすぎる!!
いや、時間稼ぎには有効に作用してくれる無駄話なのはありがたいんだけど、それすらも相手が合わせてくれてるだけだと解らせられてしまう、戦闘態勢解除しながらの無構え会話ポーズは《ISバーサス》に出てくる挑発ポーズみたいなものだから実際の試合でやられると本気で嫌すぎてヒドすぎる!!
「と、とにかくだ! 今の俺じゃお前には勝てない。だから・・・・・・悪いが“こうさせてもらう”!!」
「むむ?」
叫ぶと同時に俺は白式を加速させて、ラウラの“左側面”に回り込む!!
ラウラが黒い眼帯をつけている左目があるシュヴァルツェア・レーゲンの左側面に!!
「むぅ・・・ラウラの死角にはいるですか・・・」
「へへ、悪いな。本当はこうやり方は俺も大っ嫌いなんだが・・・さすがに今回ばかりは実力差がありすぎる。卑怯な手段だとわかってはいるが、シャルルが箒を倒すまでの時間稼ぎにお前の弱点を利用させてもらう!!」
そう宣言しながらも、俺は相手からは見ることの出来ない左側から攻撃することには躊躇いがある自分を自覚せずにはいられなかった。
だからこそ、その心の弱味を隠すためにも俺は敢えて強い言葉で断言して、卑劣感のように装って本心を偽った。
・・・これで騙されてくれるほど安い相手とは思っちゃいない・・・だがせめて、シャルルが来るまでの間逃げ回り続けるのに利用できる可能性があるなら使わせてもらうしかない。
「むぅ・・・こまったです。これだとラウラ、箒お姉さんが負けちゃうより先にヘンタイさんをたおしきれないケーサンになっちゃうです・・・。う~ん、う~ん、う~~~ん・・・・・・」
腕を組んで俯いて、ウンウン唸り続けるラウラ。
・・・どー見たって敵が目の前にいる戦場でやるポーズじゃねぇけど・・・まぁ時間稼ぎにはなるから仕方ないから我慢しよう。気持ち的にはスッゲぇ怒鳴りたいし「真面目に戦え!」って怒りたいんだけど、それやられると時間稼ぎが成立しなくなっちまうし・・・ああもう! アンビバレンツ!
この前のほほんさんからテレビで聞きかじった言葉を聞かされたのって、こういう意味での言葉だったのかよ!!
「う~~~~~ん・・・・・・わかったです。じゃあしかたないですから、ラウラも“こうする”です」
「な!?」
唸り終えたラウラが左手をゆっくり持ち上げて、左目の辺りまで近づけていったと思った次の瞬間。眼帯が宙を舞い―――。
そして俺の目の前には、ラウラが急速接近してきて右手の鉤爪を突きだそうとする姿が、まるで瞬間移動してきたかのように現れていたのだ!!
慌てて俺は身をひねって初撃を躱し、次々と繰り出されてくるラウラの軍隊式とおぼしき近接格闘術めいたクローによる連撃を回避しながら全力で逃げ回るだけで手一杯に追い込まれる!!
――イグニッション・ブースト!?
速すぎて直線でしか使えないはずの技を、ラウラは完全に制御して縦横矛盾に使いこなし、晒された黄金の左目で俺をタカの目のように捉え続けて決して逃すことなく補足したまま追尾してくる!!
「くっ!? はっ! クソッ・・・! ぐふぁッ!?」
「むにゅう~、やっぱり、こういう武器はニガテです。接近戦はムズカシイです。テッポウで撃つときの半分ぐらいしか当たってくれないから、ラウラも弱くなっちゃってるです」
「・・・全力じゃなくても、この動きだって言うのかよ・・・!?」
俺は内心で冷や汗を流しながら、異世界セレニアの英才教育をあらん限りの言葉で罵りまくりながら全速力で逃げまくる!
いったいドコの世界に、こんなバケモノ戦闘術を子供に教えられてて放置しておく親がいる!? 俺と千冬姉を捨てた碌でなしの親たちだって、ここまでのもん持ってたら流石に怒るぐらいはしたと思うぞ!?
「ラウラ、目が良すぎるからコレ使って戦っちゃうと“ちーと”になっちゃうから、ダメってお母様に言われてたです! ちーとは使いすぎちゃうと甘えすぎて、ココロと体に良くありませんって、お母様言ってたです! だからラウラ、フーインしてました!
でも、お母様は『デンカのホウトウは抜かれる日のために作らせてヨーイしておくものです』って教えてくれたときもあったです! ラウラ、お母様の言うことはぜんぶ守るです!」
「都合がいい臨機応変な正しい理屈すぎないかソレ!?」
すさまじく便利な言い回しの癖して、超がつくほどのド正論を食っ付けることで矛盾なく成立させちまってる詭弁っぷりがまさにセレニアだな!!
アイツって、筋を通すときは最後まで通しまくるけど、詭弁を使うときもやっぱり徹底するときあるからな! これは明らかに後者の時だわ! 戦うときのセレニアだわ! 戦って敵たおせばそれでいいときにセレニアが使う論法だわ! 超メンドくせー!?
心の中で怒鳴りながら、大声で異世界セレニア(とついでにラウラ本人のことも!)を罵りながら!
俺は、ラウラ自身の不慣れさが原因で避けられてるだけだという事実に、誰よりも自分自身が気づかされながら、焦りまくりながら必死に逃げ道を探し続けるしかできなくされてしまっていた!!
一撃ごとに精度を増していく攻撃と、数秒ごとに増えていく敵の攻撃が当たる回数が、何よりも雄弁に敵の強さと自分の弱さという現実を俺に教えてくれている!
・・・このままじゃマズい! だが、俺一人ではどうしようもない・・・! 悔しいが、ソレが事実だ! 今はただ、仲間を信じて耐えるしか俺に出来ることはない!
(シャルル!! 早く来てくれよ・・・ッ!!)
刻一刻と増えていくダメージ量と、減っていく心の砂時計の量とを秤にかけながら俺は必死に逃げ続け、来るべき援軍の到来を待つ!
その願いは天より先に仲間に通じて、予想より早くシャルルが来てくれたのはありがたかったのだが・・・・・・予想だにしていなかったものまでオマケでついてきてしまったことには驚きや怒りを通り越して茫然自失するしか俺には他に出来ることはなかった。
「・・・なんなんだ? アイツは・・・いったい!?」
黒く大きな、泥に包まれた人型の物体を見ながら俺は叫び声を上げる。
――それはシャルルが俺の救援に駆けつける、今からちょうど一分三十後の未来に起きる出来事だった・・・・・・。
そして、現在進行形の時間軸で、一夏とラウラ以外のもう二人の視点だと、こう↓
「――ッ!! 一夏ッ!?」
箒ちゃんとの戦闘を続けながら、僕は視界の隅でラウラに一方的に押され始めてる一夏の姿を捉えて、勝負を急がせる決意を固める。
高機動型として造られてるラファールと、ラウラと戦う本命での戦いを考慮して可能な限り節約とダメージ軽減をと思っていたけど、その余裕はなくなったらしい。
解ってはいたことだけど・・・ラウラは強い。予想していたより遙かに強すぎる! このままじゃ箒ちゃんを倒すより先に一夏の方が先にやられかねない!
「戦いの最中によそ見をするな! お前の相手は私だということを忘れてもらっては困る!」
いきりたって斬りかかってくる箒ちゃんの打鉄。その斬撃は鋭くて速くて、専用機もち以外の生徒だと接近戦で彼女に勝てる人は少ないんじゃないかって思えるほどに的確な一撃。
ただ惜しむらくは、彼女の機体は防御力に優れた打鉄であり、専用機持ちじゃない。
専用機持ちじゃないから、専用機持ちと戦った経験がなく、量産型に対して専用機がどういう面で優れているのか本質的に理解できていなかったことだけだった。
「悪いとは思うけど・・・時間がなくなったみたいなんだ。一発で勝負を決めさせてもらうよ」
「なっ・・・・・・!? バカにするなっ!!」
わざと放った挑発の言葉に箒ちゃんが乗ってきてしまって、刀を振りかぶってから全力で斬りかかってきてしまう。
僕はそれを近接ブレード《ブレッド・スライサー》で受け止めながら、本来は使う予定だった連装ショットガン《レイン・オブ・サタディ》で撃つのを止めて、至近距離なら確実に当てられる“隠し球”を今ここで使うことに決めた。
「・・・本当はラウラと戦うまで隠しておきたかったんだけど・・・っ」
そう思いながらも、今は時間の方が惜しい。確実に一撃で防御力に優れた打鉄を戦闘不能にできる武装がラファールには他に積まれていない以上、コレを使うしか一夏のサポートに入る道はほかにない!!
「この状況なら、仕方がない・・・っ!!」
「な・・・っ!? 《シールド・ピアース》・・・!?」
そう、ラファールの左手に装備されてる盾の装甲を弾け飛ばして、中からリボルバーと杭を融合させた装備として露出させた装備。《グレー・スケル》
その通称は、《シールド・ピアーズ》。
左右二枚もったシールド装甲が最大の特徴になってる日本の打鉄を倒すには最高に相性のいい武装だ!!
「この距離なら、外さないっ」
「くっ・・・!!」
自分の敗北を自覚したのか、箒ちゃんの表情が屈辱に歪むのを見て申し訳なくなった僕は、この時は“善意のつもり”で余計な一言を放ってから彼女にとどめを刺してしまう
「相手が一夏じゃなくてゴメンね・・・」
「!!!! お、おのれ――――――――ッッ!!!!」
ズガンッ!! ズガンッ! ズガンッ! ズガンッ!!
断末魔のごとき憤怒を込めた相手の叫び声が響き始めるのと、ほぼ同時にグレー・スケールの連射が始まって、やがて終わり。
動かなくなった敵機をおいて、僕は一夏のサポートに入るため場を後にする。
待ってて、一夏! すぐ助けにいくからね!!
・・・・・・そして、置き忘れていかれた、この場における唯一の一般生徒であり凡人であり専用機を持たないDランク適正持ちの量産機乗り、篠ノ之箒の心理状態はというと。
(く、くそぅッ! 私はラウラを相手にするための前座だとでも言うのか!? 踏み台に過ぎぬとでも言うつもりなのか!?)
激しく心の中で屈辱と怒りがせめぎ上がってきており、それでいて怒りも憎しみも自分を倒したシャルル・デュノアには向いておらず、ただただ彼だと信じている彼女が乗り込んで一夏の元に向かっていくのに使っている機体、『フランスの第二世代とはいえ専用機』であるラファールにのみ注がれていた。
(私にも専用機さえあれば・・・! 彼女らと同じように、私専用に造られたISさえあれば! 条件さえ互角であれば私は勝っていた!
私は決して実力ではシャルル・デュノアにも、他の専用機持ちの女たちにも負けていない! そのはずなんだ!!)
箒はそう思い、そう信じて、ただただ専用機を欲しがった。自分が彼女たちより劣っているものは、専用機の有る無しだけなのだと、心の底からそう信じた。
そう信じた方が都合が良かったからである。
実際に持ったことがないからこそ、実際に持つことができない低ランク適正持ちでしかないからこそ、彼女には選ばれた者である専用機持ちと専用機の力を、良い部分だけ見て悪い部分を直視しなくていい特権が与えられていたからだ。
夢見る心に現実はいらない。都合の良い幻想上の夢に、無粋な現実はいらないのである。
ただ自分が思い描く、理想の自分へと至らせてくれる魔法の馬車とドレスとガラスの靴であってくれるなら、それでいい。
(・・・力が・・・専用機が欲しい・・・っ!! 私だけの比類なき最強が! 世界に一つだけの唯一無二の力が・・・!
私のためだけの代用なき専用機さえ手に入られたら、私は―――――っ!!!)
―――そう思い、そう願った瞬間。
・・・・・・篠ノ之箒の心の奥底から何かがうごめき、「ドクン」という音が彼女の鼓膜と心に重く冷たく響き渡った。
甘美なまでの誘惑の誘いと共に――――――。
「なん・・・なんだアレは!? 一体何がどうなって・・・!?」
「あ~~・・・・・・あ! 思い出したですよヘンタイさん!!」
「何!? 何か知ってるのラウラ! だったら教えて! 箒ちゃんに一体何が起きてしまったのか!」
「はいですお父様! ラウラ試合がはじまる前に機体のサイシューチェックしてたです! そしたら変なゴミがあったから捨てておいたです! たぶん箒お姉さんがそれを、拾い食べしちゃったんだと思うです! 拾い食べは良くないとラウラ、お母様から教わったです!!」
「またしてもお前か異世界セレニア―!! ・・・って、お父様? 誰のことだそれ?」
「・・・って言うか、なんで操縦者が試合開始前に機体の最終チェックまで・・・整備課がちゃんとやってくれてるはずじゃあ・・・」
「??? 自分が命をあずける機体のサイシューチェックはパイロット自身が、セービの人を信じていても自分の目でもおこなうのが常識だって、お母様が言ってましたですよ?」
「異世界セレニア・・・・・・今回はドコまで祟ってくるなアイツは・・・!!!」
「・・・・・・(コソコソ)」
*今回はやたらとネタにされまくっているので隠れ潜む方針の主人公。
隠れる理由は『噂されると恥ずかしすぎる内容だから・・・』
つづく
*唯一無二を求めて黒く染まった、VT箒ちゃん爆誕(#^^#)
余談ですが今作の束さんは、ひねくれセレニアの(悪)影響を受けて、箒ちゃんにも結構厳しめに対応する予定でおります。
あくまで家族としてですけどね?
補足:
書き忘れていた説明なのですが、今話の中でお子様ラウラがシャルルのことを『お姉さん』と呼んだり『お父様』と呼んだり安定しないのは、言霊本編でシャルロットになった後に誕生している人格だからです。
要するに、どう呼んでいいのか今一よく分かっていないから色々と呼んでいる。そんな感じの理由です。