『IS原作の妄想作品集』   作:ひきがやもとまち

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気分転換のため久しぶりに【ひねくれ少女】を書いてみました。
全部は無理でも半分ぐらいは書きたいように書けたと思いたいですね。


IS学園のひねくれ少女 第19話

 ――篠ノ之箒は、暗い、暗い闇の中にいた。

 

『笑う? 何がおかしかったって? あいつがリボンしてたらおかしいのかよ。すげえ似合ってただろうが』

 

 記憶の奥底から、子供の頃に“彼”から言われた言葉が蘇ってくる。

 今でも長身な箒は、子供のときから並の男子よりも背が高く、実家が剣術を教えている道場でもあるために男子生徒が相手であろうと体育の成績でも試合でも負けたことがなかった。

 それが悪かったのだろう。つまらぬプライドに拘泥する子供心の面子によって、箒はクラスの男子たちから謂われない皮肉や嫌味を言われ続けるようになり、特に自分たちの方が劣っている箒の優れた身長は弄られるネタとして使われることが多くなっていった。

 彼女は彼ら相手に一歩も引くことなく、『剣に女も男も関係はない』という武士としての信念を貫き通し続けてはいたものの、年頃の少女でもあった彼女の心が傷つかずにいられなかったのも事実ではあった。

 

 そんな状況の中で、一夏だけが声に出して庇ってくれた。

 自分が初めて頭にしてきたリボンを褒めてくれたのだ。・・・それが幼い箒にとってどれほど嬉しかったことか今の一夏には理解の及ぶところではないだろう。

 

 あの日以来、彼との仲を育み続け、その絆を確かなものとし、心に灯る淡い想いを恋心へと昇華させ、9歳のときに離れ離れにってから6年後のIS学園入学時にテレビのニュースで一夏のことが報じられて同じクラスの生徒になり、自分と同じIS操縦者の道を歩み出したのだ。

 十五歳の春を迎えたばかりの恋に恋する乙女にとって、運命を感じさせるには十分すぎる出来事だった・・・。

 

 ――だが、甘く切ない運命の吐息は、現実の苦い溜息によって脆く打ち砕かれていくこととなる・・・・・・。

 一夏の周囲に次々と現れる高スペックな【別の女たち】

 自分だけが持っていると信じていた幼馴染みという特別な絆には【2番目】がいて、彼を鍛え直してやるための訓練にも自分以上の適任者が現れだしている昨今の現状。箒としては正直、気が気でならない日々が続くようになっていったのである。

 

 そして何より、いつも一夏の方から接近したがっている“銀髪のチビ娘”・・・!

 自分が気恥ずかしさから照れ隠しでキツく当たっている一夏に対して、なんだ!? あの馴れ馴れしくも親しげな距離感は!?

 自分以外は全て女子という空間の中にあって自分以外に一夏が話しかけてこれる相手などいるはずないと高をくくっていた計算が狂ってしまったではないか!

 

 ・・・・・・その上、異世界の一夏とは結婚していて、子供までいただと・・・・・・? そんなことが許されていいと思っているのか・・・?

 否、許されていい訳がない。たとえ天が許しても私が許さん。絶対に許さん。斬る。切る。KIIL!!!!

 

 ・・・・・・誰一人として気づく者はなかったが、昨今の箒は既に臨界点に達しつつあり、我慢の堤防を越えるため最後の一滴となる切っ掛けを探し求める心理にまで至りつつあったのだ。

 だが一方で、勇気を出して一夏に想いを伝えることの出来ないヘタレの箒に状況を自力で改善することは不可能に近く、別に外的要因によって一夏との距離が縮まらずに邪魔者ばかりが入るようになり、その自分だけが持っていない条件さえ満たせば再び元の地位へと返り咲けるに違いないと彼女は確信するに至るようになってきていた。

 

 自分と彼女たちとの間で、何が違う・・・? どこに差がある・・・? ――決まっている。

 

 

 自分だけのために造られた、専用機だけだ。

 

 

 たとえそれが、相手にとっては価値のない一部でしかなかったとしても構わない。

 持つ者である彼女らにとって価値なき物が、私にとっても平等に価値がないと決まっている訳ではない。

 たとえ彼女たちからどれほど蔑まれ、罵られる結果になろうとも。

 持たざる者である私の気持ちは、彼女たち持つ者たちには決して解ることなど出来ぬのだろうから・・・・・・。

 

 

「相手が一夏じゃなくてゴメンね・・・」

 

 ズガンッ!! ズガンッ! ズガンッ! ズガンッ!!

 敵のフランスから来た留学生の専用機により、自分の機体にトドメと呼ぶべき重い一撃が穿たれて打鉄の残りエネルギーは完全に0にまで削り尽くされてしまった。

 

「・・・待ってて、一夏! すぐ助けにいくからね!!」

 

 そして、倒した自分を置き去りにして即座に一夏の元まで飛び去っていく後ろ姿を眺めながら、私は唇をかみしめ、動かぬ機体を罵りながら自分の無力さに打ちひしがれることしか出来なくなっていた。

 

「くそぅ・・・ッ! 動け! 動かないか! お前だってISだろうが!? このガラクタめぇ・・・ッ!!!」

 

 必死に打鉄を動かそうと躍起になるが、エネルギーの切れた量産型ISなど鉄クズにも等しい。重たいだけの役立たずでしかない代物に成り下がることしか出来ないのだ・・・ッ!

 ああ、クソぅッ! せめて・・・せめて専用機さえあれば! たかが二世代機のチューン機ぐらいにならば勝てるはずなのに! 性能さえあれば! 専用機さえあれば、こんな事には決してさせなかったのに・・・!

 

 そうだ。そうだとも。奴が私を倒すために使ったのと同じ、私だけのために造られた必殺の武器さえあれば、一撃必殺の刀さえあれば! 私は奴如きに負けはしない・・・必ず勝って一夏とのデート権を手に入れてみせていたことは疑いないのだ!!

 そうだ! あの一夏が使っている白式の零落白夜のような必殺剣さえ持っていたら私は必ずや・・・必ずや勝てていたはずなのだ! それなのに・・・ッ。

 

「力が・・・力が欲しい・・・ッ。私だけが持つ最強の力が・・・ッ、弱い今の私が変わることが出来る変革の力を・・・・・・ッ、私だけの専用機を・・・・・・ッ!!!」

 

 歯の間から血が流れ出すほど強く強く歯茎を噛みしめ、悔しさに打ちひしがれながら血涙でボヤけてきた視界が曇り中。

 

 ドクン・・・と。私の奥底から何かがざわめき始める音が聞こえた。そんな気がした。

 

『願うか・・・?』

(な、なに?)

 

 突如として聞こえてきた自分の内側から響く声に私は狼狽したが、声の方は至って冷静に先を続けてきて―――私にとっては決して聞き逃せない致命的な一言を心の奥底から静かに轟かせる。

 

 

『汝、自らの変革を望むか・・・・・・? より強い力を欲するか・・・・・・?

 かつて世界最強が手にしていた、最強の刀(チカラ)を汝は欲するか否や?』

 

 

 その単語を耳にした瞬間。

 篠ノ之箒の中で、それ以外すべての選択肢を選ぶ未来の可能性は完全に焼却され尽くされる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーっ、ホーキンが黒化したわ。オルタだね、オルタ。もしくはダークサイドに悪墜ち」

「・・・そうですねぇー・・・。ジェダイの剣士さんと少し似ていなくもない姿形はしていますからねぇ~・・・」

 

 私は傍らに立って、他人事のように他人事でしかない篠ノ之さんの変貌ぶりを楽しそうに評してくる姉さんの発言に溜息を吐くだけでツッコミは返さず、膝の上で頬杖つきながら黒い泥っぽいナニカに包まれて変貌した彼女の機体・打鉄が再び機動し始めて織斑さんたちと相対する光景を“見下ろしながら”

 

「・・・で? アレ何なんですか? 一体・・・ISに関する情報だと聞いたことない機能なんですけど・・・?」

 

 と、“眼下の景色内”で起きている出来事の説明だけをIS学園教員“ではある”姉さんに要求しました。

 ・・・何分にも他に出来ること“何もない場所”にいるものですからね・・・。本気で説明聞くぐらいしか出来ることが何もねぇ今の私でありましたとさ・・・。

 

「あれ? セレニア知らなっかたのアレのこと? おっかしいなー、セレニアなら知ってると思ってたんだけどな~。

 あー、でも言われてみたら私らの時代でも関係者以外は機密扱いってゆーか、記録から抹消って言うか、名前出したら殺すぞ社会的に。うちの国でも研究してたこと言及されたらイヤだからなとか、そんな感じのことを当時のお偉方から聞かされたことがあるような・・・無いような?」

「・・・どっちでもいいですので、早く説明を」

 

 そんな話だったことを、ルビコン川超えちゃった後に言わんで欲しいんですけど本当に・・・。

 下手に名前出したらマズそうですけど、そんな名前があると知ってから名前だけ知らない状態だと逆に危なそうだからもっとイヤになっちゃうじゃないですか・・・。機密保持するんでしたら今少し徹底して下さいよ、どこの日本政府ですか全くもう。

 

「アイアイ、ん~とねー。たしかアレの名前は・・・なんだったけかな~? もうこの辺りまで出てきてるんだけどな。生まれる寸前の膀胱の辺りまで。

 えーと、え~と、なんかこう・・・・・・『ヴァルキリー・プロファイル』と『モビルファイター』に搭載されてる機能をゴッチャにしたような名前で~・・・なんだったかなー? アレって」

「ヴァルキリー・トレース・システムですかね・・・。その二つのヒントを組み合わせた場合に考えられる答えはの話ですけれども・・・」

「そう! それだ! ヴァルキリー・トレース・システム! 通称『VT』! 信管は要らない名前の奴だよ! な~んだセレニア、やっぱり知ってたんじゃないかぁー♪

 お姉ちゃんをからかうなんて悪い子だな~☆ メッ! 後で逮捕して月の代わりにHなお仕置きしちゃうぞ♡

 ・・・牢屋という密室ラブホテルの中で、愛のあるお仕置きし合おうセレニア・・・・・・ジュデ~ム・プリズン・アルカトラ~ズ・・・♡♡」

「要請の方は拒否しますけど、同じ公務員仲間として姉さんには警察で働いている公僕の方々に謝罪するよう要求だけはさせて頂きますよ」

 

 はぁ、とまたしても溜息を吐きながら眼下を見下ろし、どうやら話がついたらしいボーデヴィッヒさんとデュノアさんが下がって織斑さんが前に出て、いつも通りに一対一の決闘が始まる流れとなったようでありました。

 

「・・・で? さっきの質問の答えは何なんです? アレは一体何なのかという質問への回答は。

 名前の元ネタから連想するものだけで推測するなら、『ヴァルキリーと呼ばれる対象を自分の動きとシンクロさせて動かす機能』か、もしくは逆に『ヴァルキリーがトレースされた動きをするために中の人を動力源として使う機能』の二種類があるように感じるネーミングでしたけれども」

「大正解だよセレニア! 英語で言うと、ザッツライト!」

「なんで英語・・・。しかも合ってましたっけかね・・・? その翻訳・・・」

 

 今一よく判らない、日本の英語の授業しか受けたことない実践向きの英語を知らない、日英クォーターに生まれ変わった後でも状況的には余り代わってくれていない、現代日本人のTS転生者に直ぎぬ存在。それが私、異住セレニアでありましたとさ。

 こんな状況でも軽く現実逃避するための思考パズルというのは悪くない物ですねぇ。・・・何の役にも立ちゃしませんけど精神安定剤としてだけは使えないこともありません。

 

「ヴァルキリー・トレース・システムは、過去のモンド・グロッソでチーフーが優勝した頃に研究開発が始まっていたシステムでね・・・。

 今だとIS条約でどの国でも企業でも組織でも研究・開発・使用がすべて禁止されている機能なんだけど、その機能を平たく言ってしまうなら・・・・・・」

 

 姉さんが遙か下方の風景を真面目な目付きで見下ろしてから、私の方へと向かって身体ごと振り向いて本格的に説明を続けてくれた言葉に寄りますなら、そのシステムの機能とは。

 

「色々と理屈はあるんだけど分かり易く言うなら、『モンド・グロッソで優勝した最強のチーフーの動きマネすりゃザコでも最強になれるんじゃねーの?システム』・・・そんな感じだね・・・」

「なるほど。大変分かり易い説明をありがとうございます姉さん」

 

 スゴく分かり易かったので助かりましたね。夢はなかったですが。合ったとしても大人の都合で卵の殻を踏み潰すように蹂躙されてしまいましたが。所詮、現実なんてそんなもんだからいーんですが。

 

「しかし、織斑先生の剣筋をなぞらせる為のシステムにしては、織斑さん相手に苦戦しすぎてませんかね? さっきから一太刀も当てられてないように見えるんですが・・・」

「ん~? あー、そりゃ仕方がないよ。相性みたいなもんだからね。

 チーフーの性格から見て、イッチーに対して剣術教えるときも、自分で剣振り下ろして『当たれば痛いから避けてみせろ!』的な教え方しかできないし、やる気も無かっただろうからねー。

 なんつーかこう、『手取り足取り教えられた技は身につかないから、一度食らって学び取った技の方が実践向きだ』な飛天御剣流師匠の教え方みたいな? あんな感じで」

「なる・・・ほど」

 

 これまた大変よく判りやすいたとえでしたね。動きをなぞらせるだけの機能なら、その動きをする太刀からの避け方逃げ方も教え込まれた人間にだけは逆に通じづらいと、そういうことですか。

 

「もしくは、『ガキの頃から剣術のつもりもなくて教え込まれてた、その剣術専用の攻略法』でも可だね。

 バトル物の定番『実力で俺が勝ったんじゃなくて、カンニングみたいなもの』で勝つ展開です」

「人が折角、心の中だけでも思わないでいるよう意識した表現をハッキリと・・・・・・」

 

 ハァ、と再び溜息を吐いて十年来の付き合いになる親族から目を逸らすことなく、最初から向けないまま眼下を見下ろし続けて織斑さんの叫び声が聞こえて。

 

「勝負あり、みたいですね・・・」

「そうみたいだねー。まぁ、他人の猿マネ剣術使って勝とうとしている時点で負け犬根性だから、当然と言えば当然の結果なんだけどさー」

 

 カッカッカと、快活に笑う強さだけなら織斑先生とも互角以上の化け物姉さん。

 こと勝負事に関してだけは、この人の気楽な発言も軽視する訳にはいきませんからなぁ・・・面倒なものですよね、本当に。

 

 まっ、それはそれとして。

 

「それで姉さん。私たちはいつまでここに居続けるつもりなのでしょうかね? 下での勝負は終わったみたいですし、そろそろ帰るためにも下りませんか? いい加減寒くなってきたので私的には帰りたくなってきたんですけれども」

 

 そう言って私は周囲を見渡し、だだっ広くて人が誰も居ない、ただ空風だけが寂しく寒く吹き込んでくるだけの青い空がよく見える場所。

 

 

 ・・・・・・ISアリーナの屋上からクレシア姉さんと共に解説をお送りさせて頂きました、インタビュアーのセレニアでした・・・。

 

 そろそろスタジオにカメラをお返しして、自分も数秒後には数十キロ先にあるはずのスタジオまで帰りたいですので降ろして欲しいんですけど、いやマジで本当に。

 

「えー? ん~?」

「まぁ、自分から避難させて欲しいと願い出ておいて勝手な言い分なのは自覚してますけど、ホラ。アレですよアレ。なんか皆さん下の方で避難しているみたいですから私たちも点呼に参加しないと先生方を困らせることになると思うのですよね、IS学園の生徒的立場としては正直言って」

「ん~? んんぅ~~~?」

 

 何やら含みありげな声で唸るばかりで、まともに取り合おうとしてくれない姉さん。

 そんな姉さんから無駄と知りつつも、一歩一歩と距離を置きつつ離しつつ、僅かでも残っているかもしれない可能性という可能性を掴み取れる希望を捨てる気には私はまだなれていませんでしたので、何かしら策はないかと無い知恵絞って色々考えては見ますけど・・・・・・浮かびませんね、サッパリですわ。

 

「フッフッフ・・・・・・ミノリさ~ん、いやさセレニア。まさか、こんな場所まで狼さんに連れてきてもらった赤頭巾ちゃんが、新しい命を宿すことなく帰れるとでも本気で思ってた訳じゃないんだろう・・・・・・?」

「・・・やはり、そうなりますよね姉さんの場合だと確実に・・・ッ。貴女と私とは、つくづく相容れられない宿命にあるようです・・・・・・」

 

 ジリジリと距離を詰めてくる姉さんと、距離を離すために、それでいて屋上から墜ちてしまわぬ為に頭を使う意外に勝ち目のない私・・・ッ。

 

 くそぅ・・・こんな事になるんでしたら大人しく座席に座ったまま針のむしろ状態に耐えてた方がマシだったことぐらい最初から解りきっていたことでしたのに・・・っ!

 全校生徒の前で、異世界人でしかない私ではない私の勝手な事情とはいえ、黒歴史連発するようなことを大声で叫びまくられていた×2の私の気持ちなんか、やはり姉さんには解ってもらえなかったようですからね! これも宿命ですよ! うちの家族が持つ変態の性という名の業なのです!!

 

「かつて変態っぽい白一色服着た仮面の指揮官さんは言いました・・・・・・『他者より早く! 他者より先へ! 他者より前へ! 自ら生み出した闇に食われて人は滅ぶ』・・・と。

 つまりは早い者勝ちと言うことですね、解ります。そして他人に唾つけられる前にいただいときます。それこそが人類の半分を占める女の業(性欲)!!」

 

「・・・かつて変態っぽい赤い服着た仮面の指揮官さんは言いました・・・・・・『作戦が失敗となれば直ちに撤退だ』と・・・ッ。止まったら助かるものも助からないそうですので走って逃げます・・・ッ!」

「フフフ・・・セレニアが私と遠くへ行きたがったから連れてきてあげたのに・・・つくづく悪い子だなぁ♡ お仕置きしてあげるから待て待てぇ~い♪♪」

 

 

 

 ・・・・・・こうして、アリーナの下の方でなんか綺麗にまとまっていたらしいのと同じ頃。

 アリーナ上の屋上では私と姉さんによる身内同士の醜い争いによる鬼ゴッコが勃発しておりましたが、誰もそんな事実は知らず、アリーナ内のIS騒動だけが知れ渡り、私たちにとっての黒歴史がこれ以上増えることだけは防げた訳でもあったのです。

 

 それは未来の歴史として良かったことなんでしょうけれども・・・・・・今はとにかく、なんと言うかこう・・・・・・

 

 

 誰か、助けて下さい・・・・・・体力ないモヤシっ子に走るのはちょっと、辛くなってきたみたいです・・・・・・ゼェ、ゼェ・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 そんな風にして地上と屋上とに別れてIS学園内で悲喜劇をやらかしちまっていた日から僅か数日がたった頃のこと。

 

 日本から遠く離れた、地図にも載らず、乗っていた島を抹消させた一人の女性が上機嫌にナニカを組み立て続けていたところに携帯の着信音が鳴り響き。

 

「おーっと、この着信音はぁ! トゥッ!」

 

 気合い一閃、大ジャンプして飛び上がってから着地し直して。

 取りやすいところに置いておいた携帯電話の通話ボタンを押して耳に当て。

 

「もすもーす。終日? 束さんです。連絡来る頃かなと思ってたけど、ナニカ用かな? ちーちゃ~ん♪」

 

 ブツン。――切れた。相手の額に浮かんでいる血管が二本か三本ほど纏めてブッた切れる破裂音が鳴り響いた気がしたけれども、内容的に通話ボタンまで切る訳にはいかない事情を示唆するものでもあったためギリギリの所で踏みこたえると。

 

『・・・・・・はぁ。まあいい。今日は貴様に聞いておきたいことがある。正直に答えてもらうぞ、束』

 

 そう前置きしてから電話をかけてきた通話相手・IS学園警備主任でもある織斑千冬は冴え冴えとした声音で、かつての級友に詰問口調で問いを発した。

 

『貴様は今回の件に一枚噛んでいたのか? 束・・・』

「クスクスクス・・・・・・」

 

 相手の質問を予期していたとは言え、束と呼ばれた彼女にとっては余りに愚問。答えるまでもなく回答など分かりきっているものでしかない質問内容を聞かされて、思わず答える前に忍び笑いを漏らさずにはいられない。

 

「ちーちゃ~ん。それ本気で聞いてきているのかな? 束さんは束さんだよ? この私があんな出来損ないで不細工なシロモノを作るとでも思っていたのかな? 私が作るからには完璧において十全でなければ意味がない」

『・・・・・・』

「そして、もう一つ。ちーちゃんの質問に正しい答えをプレゼントしてあげましょう。

 私はアレを造っていない。だけど“造られていたこと、誰の機体に秘密裏に搭載されていたかについては知っていた。そして知っていたという情報を誰かに教えることはしていない”・・・・・・これが正解の回答だね。どうだい? 勉強になったし参考になったかな? ちーちゃん先生♪」

『!!! 束・・・ッ、貴様なにを考えてこんな事を・・・ッ!?』

「あっははは~☆ 愚問だねーち~ちゃん♡」

 

 楽しそうな笑顔を浮かべて、楽しそうな笑い声を一小節ほど奏でた後。

 

「束さんは、束さんの欲しいものを手に入れることを考えているのだよン♡ 人として当然の欲望、当然の意思。即ち――エ・ゴ☆ じゃね♪ バッハハ~イ♡」

『!? ま、待て束! 私の話をもう少しだけでいい! 聞け―――』

 

 プツン。ツー、ツー、ツー・・・・・・ジャ~ンジャーカ♪ ジャーカジャーカ、ジャーカジャンジャンジャン♪

 

「おおっと今日は千客万来、二度目の通話だ。もしも~し、久しぶりだねぇ! 元気だった? ずっとずっと待ってたんだよ!」

『―――。・・・・・・姉さん』

「うんうん、ダイジョブダイジョブ♪ 要件はわかっているよン☆ モチロン用意してあるよ? ハイエンドにしてオーバースペックな白き機体と並び立つことが出来るようになるキミ専用機がね~♡」

 

 

 そして二度目の通話も終えて一息つき、『ふぅ~』と溜息を吐き出してから視線をあげて、目の前にそびえ立たせていた深紅の機体に無感動な目を向けながら、“彼女が言いそうな評価”を思い浮かべて知らず知らずのうちに唇の形を皮肉げに歪めて笑みの形を作り直す。

 

 

「ハイエンドにしてオーバースペックな白き機体と並び立つことが出来るようになる専用機・・・・・・か。自分が一番欲しがってるものを全て他人から与えてもらって手に入れようと願う子には丁度いい試練だね・・・。

 頑張りなよ、箒ちゃん。お姉ちゃんもそうやって強くなったんだから、妹として同じ敗北を経験しなさい」

 

 優しくて残酷そうな声音でそう呟き捨てると、目の前の最新型ISには興味を失ったかのように一笑だけを残して背を向けて、先ほどまで作り続けていた精魂込めて丁寧に丁寧に作り続けている存在を、より完成に近づけるためどこをどう造形すればいいかを考え続ける有意義な思考作業に没入し直す。

 

「自分が欲しいものは、自分の力で手に入れなくちゃ意味がない。正しく報われた想いの結果だけを恵んでもらえた人間には、それが解らない。

 私はねぇ、箒ちゃん。自分が欲しいものを手に入れるためだったら・・・・・・もう、家族だって捧げられる覚悟は出来ちゃった後なんだよねぇ~・・・・・・」

 

 暗く、そして熱い炎を宿した瞳で“ソレ”を見つめながら彼女は呟き。

 近くに落ちていたヤスリ紙を拾って、それの横側を微調整するため余分な部分を削り落として、それで――――

 

 

 

「どわあぁぁぁぁぁぁぁッ!? しまったぁぁぁぁぁッ!?

 お尻とロリデカパイのパーツを0,000001ミリも多く削り過ぎちゃったぁぁぁぁぁッ!?

 束さんが三日三晩かけて精魂とか性欲とか色々なものを注ぎ込みながら作り続けてきた『45分の1セレちゃんフィギュア』が最初からの作り直しにー!?

 おのれ神よ! 人の苦労を無駄にするのがそんなに楽しいのか!? いい度胸だこの野郎、地上に降りてこい! 天災科学者束さんと決闘だぁぁぁぁぁぁッ!!!」

 

「あの・・・束様。責任転嫁の自己正当化目的でおこなう神様否定は、流石に見苦しすぎるのではないかと思われますが・・・」

 

 

つづく




*書き忘れていた補足事項:

セレニアたちがアリーナの屋上に行けたのは、クレシア先生が拳で突き破ったから・・・・・・ではなくて、一端アリーナの外に出た後に八艘飛びの要領で駆け上がったからというだけのものです。

壊すと警報鳴っちゃいますのでね。最初からセレニアを人気のない、助けを呼んでも誰も来ない場所に連れ込むのが主目的だったクレシア先生にとっては壊すよりも楽で都合良かったという流れ。

才能の無駄遣いしまくりですけど、特権乱用フル活用が『這いニャル』ですのでな。
生まれながらの才能も、生まれ持った特別な家族のコネも立派に特権の一つなので乱用してみた次第です。
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